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山小屋泊で行く雪山からの招待状

文・イラスト◉ユーコンカワイ Text & Illustration by yukonkawai
出典◉PEAKS 2018年12月号 No.109

雪山を登るか迷っているすべてのボーイズ&ガールズに捧げる。

雪山登山をやってみたい! って思いながらも、「やっぱ怖そう……」「敷居が高いわぁ……」とモジモジしちゃってるそこの君!

たしかに滑落、雪崩、吹雪、凍傷など、雪山の危険要素は数え上げたらキリがない。おまけに雪山装備は高価なものが多く、「散財遭難」という名のホワイトアウトを彷徨っちゃってる人だっている。そりゃビビって当たり前だ。

しかし雪山登山への挑戦は、好きな人への告白にも似た思い切りが必要な世界。勇気をふり絞って告白した人にのみ、その先にあるバラ色の未来が開けるのだ。まずはその第一歩を踏み出すことが大切なのである。

では、そんなモジモジボーイズ&ガールズのみなさんはまずどうしたらいいか。雪山登山だからっていきなり「オラァ!」と気合いを入れて過酷な山頂を目指す必要なんてないのだ。

まずは安全な場所でちょいとスノーハイクするだけでも、最初は新鮮で楽しいもの。告白したからっていきなり鼠の王国での壮大なデートをかまさなくても、近所の公園をいっしょに歩くだけで十分ファンタジーでしょ?

ああだこうだと机の上でリスクマネジメントするのも大事だけど、まずは雪山の世界を気軽に楽しんでみるってことこそが大切なのだ。

そこでオススメなのが、無理に山頂を目指さず、山小屋で泊まることのみを目的としたお気楽スノーハイク。冬季営業中の山小屋を中心にすれば計画も立てやすいし、道もしっかり踏み固められて歩きやすく、道迷いリスクも低くて安心。

そしてなにより、じつは冬の小屋泊ってすっごく楽しい! 冬の山小屋は外界が寒く厳しい世界だからこそ、その存在感や人の温かさが夏に比べて際立ちまくるのだ。それは例えるならば、外見が超クールな女性から「得意料理は肉じゃがです」といわれるに等しい、ギャップ萌えの世界なのである。

そして冬の山小屋のメリットは、なんといっても「宿泊客が少ない」ってこと。夏みたいに、ひとつの毛布に複数の人間がギュウギュウ詰めになるという肉弾戦に巻き込まれることもない。ゆえに小屋の中は静かで落ち着いた雰囲気で、小屋のスタッフも宿泊者と話す余裕があり、さらにアットホーム感がアップする。

そんなのんびり空間のなか暖炉やコタツでぬくぬくとすごせば、まさにこの世の極楽。そのまま美味しいコーヒーでも飲みながら、小屋に置いてある厳選された山の本なんかを読んだりした日にゃ、至福の時間が約束されるってなもの。都会の中途半端な癒し系カフェより、よっぽど高いヒーリング効果が得られるだろう。

また外の空気も澄んでいるから、本を置いて木漏れ日のなかで周辺を散策するだけでも果てしなく気持ち良い。キラキラ光る雪上には動物の足跡があったりして、それをたどってみるだけでもおもしろい発見がある。もちろん場所によっては、山頂に行かずとも眺望が開けて絶景を拝める場所に行けることも。

冬の澄んだ空気のなかなので遠くの山までクッキリと見わたせて、夏とはまた違った感動を味わえる。そのときあなたは冷気でほっぺを紅潮させながらニヤリとし、白い息とともに自然とこんな言葉を漏らしてしまうだろう。「ああ、雪山始めてみてよかったな……」と。

そして夜は山小屋自慢の美味しい料理と美味しいお酒に弾む会話。気の置けない山仲間たちと語らうもよし、山小屋のご主人のおもしろい山話に耳を傾けるもよし。そこに居合わせたほかの登山者と交流するのも楽しいだろう。とにかく小屋の夜はモジモジせずに周りの人に積極的に話しかけてみよう。

基本的にみんな山の話をしたくてうずうずしているから、「あのう……、今日はどちらまで行かれたんですか?」なーんて聞けば、相手は待ってましたとばかりにいろんな話をしてくれるはずだ。こうして得た情報はまた次の雪山登山への糧になるし、なにより山が好きな者同志、とても楽しい時間を送ることができるだろう。

その後は酔い冷ましにフラッと外に出て上を見上げてみよう。そこには冬の澄んだ夜空に満天の星空。ここであなたはもう一発こう呟いてしまうはずだ。「ああ、冬の山小屋泊っていいなぁ……」と。

そして再びささやかで暖かい光に包まれた小屋の中に戻り、広いスペースの中で暖かい布団に包まれてぐっすりと深い眠りに落ちる。そして翌朝は近場の展望地からご来光なんぞを眺めてしまい、細い目で遠くを見ながら「もう、あたしゃ雪山にゾッコンやねん……」としみじみ思ってしまうのである。

これはもう行かない手はないんじゃない? そんな素敵世界があなたを待っている。モジモジしている場合じゃないんですよ!
しかも小屋によってもいろいろと特色がある。ご飯が自慢のところだったり、地酒が豊富なところであったり。なかには雪山登山の技術講習をしてくれる小屋もあって、実際の現場で経験豊富な人の講習が受けられるのは本当にタメになるからオススメだ。

また年末年始だけ営業している小屋もあるから、いつもとは違う特別なクリスマス、お正月を迎えることもできる。それはそれは本当に特別な時間で、そこに居合わせた人同士に不思議な一体感が芽生えてなんともいえない素敵な時間を味わえるのだ。これは一度体験するとやみつきになること請け合いだ。

仲間達とワイワイ行ってもいいし、恋人、家族と、もしくは癒しを求めてソロでも。無理して山頂を目指し、痛い目にあって雪山を嫌いになるくらいなら、まずはこのようなお気楽山小屋メインハイクから始めてみるのもひとつの手だ。

とりあえず「ここ行ってみたい!」ってな山小屋を見つけるところから始めてみよう。そのうえでウェブや電話で現地状況を確認し、しっかり計画を立てるのが雪山デビューの第一歩! それがやがては本格的な雪山登山へのステップアップにもつながるのだ。

さあ、いろいろ迷ってるか弱きモジ男&モジ子たちよ! 告白しなきゃなにも始まらない。いまこそ山小屋泊で、人生を変える素敵な冬の思い出を作ってみよう!

 

PEAKS 2018年12月号 No.109の購読はこちら

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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