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山岳ガイドの私物を拝見!実践・雪山装備一覧

雪山登山ではどんなものが必要になるのか。それは、雪山に慣れている人が実際に使っているものを見せてもらうのが、いちばん参考になる。ということで、八ヶ岳の赤岳鉱泉に泊まって、赤岳に登るという設定ならどんなものを選ぶか。山岳ガイドの遠藤晴行さんの装備を見せてもらった。

文◉森山憲一 Text by Kenichi Moriyama
写真◉廣瀬友春 Photo by Tomoharu Hirose
出典◉PEAKS 2019年12月号 No.121 

私の装備を紹介します。

遠藤晴行さん

山岳ガイドグループ「イエティ」代表。国際山岳ガイド資格を持ち、ガイド歴は30年以上。アルパインクライミングや高所登山の経験が豊富で、日本人では6人しかいないエベレスト無酸素登頂者のひとりでもある。

シェルジャケット

厳冬期対応の頑丈な「モンベル・ストリームジャケット」。ゴアテックス・プロ使用で着心地は硬めだが、八ヶ岳の稜線上は非常に低温になるうえに風が強いときもあるので、プロテクション性の高いこういうシェルを使う。

薄手フリース

定番のパタゴニア・R1。山中では基本的にずっと着ているので、脱ぎ着のしやすさよりも着心地のよさを重視してプルオーバータイプを選択。

中厚手フリース

毛足が長く保温性が高いモンベル・クリマエアジャケット。ミドルレイヤーは薄手フリースとの2枚重ねで、薄手フリースの上にこれを着る。サイドがストレッチパネルになっていて動きやすいタイプ。

ダウンジャケット

モンベル製。原則的に行動中に着ることはない。万一のときの防寒着として、そして山小屋で寒く感じるときなどのために、つねにバックパックに入れておく。

化繊防寒着

パタゴニア・ナノパフ・ハイブリッドジャケット。現在は廃番になってしまったモデルだが、軽くて着心地がよいので愛用。おもに山小屋でくつろぐときや就寝時に、フリースの代わりに着ている。生地の滑りがよいので、布団に引っかからず寝心地がよいのもお気に入りのポイント。

ベースレイヤー

ホットチリーズのメリノウールアンダーを愛用。汗をかきやすく、擦れやすい脇や背中、股間、ヒザ部分にのみ化繊素材を使ったハイブリッドタイプ。暖かさと乾きの早さ、耐久性などのバランスがよいので気に入っている。

シェルパンツ

ストレッチするゴアテックスを使用したモンベルの旧製品。足上げがよくなるので、ストレッチするものを好んで愛用している。インナーゲイターが付いているが、ほとんどの場合、別途にゲイターを併用する。

ソフトシェルパンツ

モンベル・ノマドパンツ。ベースレイヤーの上にこれを穿く。ソフトシェル生地なので、多少の濡れや風は防いでくれるため、アプローチではハードシェルパンツを穿かずに歩くことも多い。起毛裏地で暖かい冬期仕様のもの。ストレッチして動きやすい。

手袋

持っていくグローブは全部で3つ。メインで使うのは、モンベル・アルパイングローブ(右下)。二重構造で暖かく、内側のインナーが濡れたら予備(左下)に交換も可能。左上は予備として持つグローブ(モンベル・ウインターレザーグローブ)。右上は、アプローチで使う薄手のグローブ(マムート製)。

ヘッドウエア

行動中は左のビーニー(ザ・ノース・フェイス)。風雪のときなどは右のバラクラバをかぶる。ホットチリーズの「MECコンバーチブルバラクラバ」というモデルで、口元が立体的になっていて呼吸がしやすい。

ソックス

薄手と厚手のものを2枚重ねで履くのが遠藤流。薄手のものは1日目と2日目で履き替えるようにしている。山小屋で乾いたソックスに履き替えれば快適であるうえに、保温性の点からも安心。すべてメリノウール製。

ゲイター

フロントジッパーが省略されていてベルクロのみで閉めるタイプの「モンベル・ゴアテックス・イージーフィットロングスパッツ」。靴に雪が浸入することを防ぐために必須だが、八ヶ岳のように積雪の少ない山では、見た目を重視してシェルパンツの下に着けることも多い。

登山靴

昨シーズンから愛用している「ザンバラン・アイガーライトGT RR」。アッパーがフルカバーされた、いわゆるゲイターブーツ。これを選んだ最大の理由は保温性の高さ。通常のレザーアッパーのブーツに比べて確実に暖かいという。

もうひとつは、カカトをしっかりホールドしてくれること。雪山登山ではつま先立ちになるケースが多いので、靴の中で足が動かないフィット性はとくに重要だという。

チェーンアイゼン

モンベルの定番品「チェーンスパイク」。これは八ヶ岳登山特有の装備。美濃戸から赤岳鉱泉や行者小屋までのアプローチは、比較的平坦だが路面が凍っていることが多い。かといってクランポンを着けると仰々しくてかえって歩きづらい。そういうときに重宝するのがこれ。ほかの山では使わないが、八ヶ岳に行く際は持っていくという。アプローチ専用で、山小屋から上では使わない。

アックス

クライミングテクノロジー・ドロンプラス。リバースピックを採用したややハードユース寄りのモデルだが、選んだ理由はそこではなく、ヘッドの握りやすさ。ヘッド部分が細めに成形されていて、しっかり握れるのがお気に入りのポイント。

シャフトは66㎝とやや長めをチョイス(遠藤さんの身長は170㎝)。下山時の杖として使うには長めのほうが有利であることが理由。ロープ操作などのときにじゃまになるのでリーシュは付けていないが、一般的には使うことをおすすめするという。

クランポン

モンベル・カジタックスの 「LXF-12」。12本爪のノーマルなクランポンのなかでは比較的軽量なモデル。赤岳クラスならこれ以上重装備のクランポンは不要という。ただし12本爪であることは必要。携行時用にクランポンケースも持つ。

トレッキングポール

モンベルの「アルパインカーボンポールカムロック」。レバーで長さを調整するタイプであることが重要。ひねって固定するツイストロックタイプは、雪面で使うと徐々に固定が緩んでしまうことがある。バスケットを雪対応の大型のものに代えておくことも重要。

アプローチで使用するのみで、小屋から上では原則的に使わない。なお、軽さ重視のためカーボンシャフトをチョイスしているが、クランポンを叩いたりすると割れやすいので注意。

バックパック

キャニオンワークス・キタカマ38。38ℓ容量の中型パック。山岳ガイドに使用者が多いモデルで、雪が付着しにくい背面や、アックスの取り出しがスピーディにできる独特のホルダーなど、冬期でも使いやすい工夫が盛り込まれている。山小屋泊ならばこれくらいの容量がちょうどいい。

ゴーグル・サングラス

「モンベル・アルパインゴーグル」と「スミス・スイング」。メインで使うのはサングラスだが、稜線上で吹雪かれたときのためにゴーグルも持つ。ゴーグルは、サングラスをなくしてしまったときの予備もかねている。レンズは厳冬期ならオレンジ系をチョイス。紫外線が強くなる4 ~ 5月の残雪期になると、スモーク系に変える。

ヘルメット

「トランゴ・コメット2」というモデル。アジア人向け設計で横幅が広く、頭に合いやすいのがチョイスのポイント。サングラス型の収納式バイザーが備えられている珍しいモデルで、風雪時やアイスクライミング時などに便利。約300g と軽さも十分だ。

ガスバーナー

「ジェットボイル・ZIP」。原則的に非常用で、緊急時以外に使うことはほとんどない。ビバークやエマージェンシー時のお守りとして持っていく。

保温ボトル

容量500㎖の「 モンベル・アルパインサーモボトル」。山小屋出発時に温かい飲み物をこれにつめていく。使っている人が多いボトルなので、自分のものだとひと目でわかるようにステッカーを貼っている。これは意外と重要。

ツエルト

モンベルの軽量コンパクトなツエルト「U.L.ツェルト」。万一のビバークなど緊急時に使う。サイズは1人用で最小限の大きさ。

非常用具

包帯/滅菌ガーゼ/テーピングテープ/絆創膏/消毒綿/サランラップ(包帯代わりに使う)/ロキソニンテープ(ねんざなど)/止血用ワセリン/胃腸薬/カゼ薬/ナイフ/ライター/携帯カイロ/リペアテープ(ウエア修理用)/お守り。以上をポーチにひとまとめにして常備している。

ヘッドランプ

山小屋泊なのでヘッドランプの出番は多くなく、小型の乾電池対応タイプをチョイス。替え電池はバンドにテープで止めておくのが遠藤式。行動中に電池が切れても交換がスピーディ。

日焼け止め・リップクリーム

2月までの厳冬期はなくてもなんとかなるが、3月ごろから日焼け止めは必携。リップクリームは唇の乾燥予防に。4月ごろからは、唇の日焼け防止にUV対応のものを使う。

腕時計

バリゴ・ES7という、 高度計・気圧計・電子コンパスが搭載されたモデルを愛用。この種の時計のなかではかなり小型のモデルで、手首の動きに干渉しないのがお気に入りの理由。アイスクライミングのときなどは、バックパックのショルダーベルトなどに付けられるカラビナ付きの時計も使う。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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