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山形と福島の県境、西吾妻山へ|私を樹氷に連れてって

山形と福島の県境にある西吾妻山は雪崩の心配も少なく、天候さえ良ければ初心者でも登れて、樹氷も見られるこのエリア。 雪山デビューの彼女(仮想)を連れて、いざスノーシューデートなのだ!

文◉櫻井 卓 Text by Takashi Sakurai
写真◉杉村 航 Photo by Wataru Sugimura
衣装協力◉ホグロフス、ラ・スポルティバ・ジャパン
出典◉PEAKS 2015年3月号 No.64

スノーシューが僕らをあの山に導く

いくらリトルといっても、 そこはやっぱりモンスタ ー。樹氷の間を縫うようにして歩いて行くと、まるで巨人の国に迷い込んだような錯覚に。

「私を樹氷に連れてって」。いつもはインドア派の彼女が、 いきなり切り出した。どうやらネットのニュースで樹氷が見頃だという見出しとともに、日本とは思えないほど美しい樹氷原の画像がアップされていたらしい。

とかなんとか書き始めたけれど、実際ワタシには彼女はいないし、一緒に山に行ってくれるような素敵女子もいない。じゃあ、なんなのかと言われれば、前述したネットニュースを見て、ワタシが勝手にした妄想、もといシミュレーションなのだ。

北展望台までは、ロープウェイとリフト3本を乗り継ぐ。ロープウェイは片道¥750。リフトは1回券¥450×3。時間と体力の節約を考えれば安いもんだ。

「山登りが趣味で」なんて言うと、ちょっと興味のある女子なら「アタシも行きたい!」とくる。通常 であれば喜ぶべきことなのだが、雪山となるとちょっと話が変わってくる。まずもってワタシには高難度の山を案内できるようなスキルはない。

ワタシごときが、あまり経験のない女性を雪山に連れて行くことなんて、ほぼ犯罪行為である。そんなこんなでゴニョゴニョ言っているうちに、その話題は尻すぼみになっていく。それではいかんと、最近では山に行く際には、常に心は女性をエスコート。

歩き始めてちょっと行くと、朝日岳が見下ろせる。

「ここだったら初心者でも?」など、さまざまなシミュレーションを試みているというワケなのだ。
タイミングよく、編集部の池ちゃんから山行のお誘いが来た。

「スノーシューの企画なんだけど、 どこか行きたいところある?」。
答えはもちろん「ワタシを樹氷に連れてって!」だ。そういえば池ちゃんとは、夜の居酒屋縦走はよくしているけれど、一緒に山に行ったことはない。年下のくせになんだか頼りになる池ちゃん。

「樹氷だと八甲田か、蔵王、西吾妻あたりですかね。八甲田はちょっと遠いから厳しいかな。となると、蔵王か西吾妻ですね」。サクサクと段取りを決めていく。なんだかコイツ、モテそうだな。

スノーシューを装着して いれば、重い荷物を背負っていても、ちょっとやそっとでは沈まない。アイゼンのツメを効かせながら快調に登る。

もちろん「女性の参加を強く希望する」旨も伝えた。「わかりました。誰か探しておきます」。む。やっぱりモテるっぽい……。

スノーシューでワシワシガシガシ凍った森を行く

行き先は、天候がよさそうな西吾妻山に決定。雪山登山は天候が命。樹氷原を見に行ったのに、ホワイトアウトでまったく見えないんじゃ話にならないし、なにより天候が荒れると、穏やかそうな山でもいきなり牙を剥き出して襲いかかってくる。

子羊のワタシには致命的である。もちろん、フカフカの新雪を快適に歩くための各種スノーシューの準備も万端だ。行程としては、湯元駅からロープウェイとリフトを乗り継いで、 北展望台から歩き出す。そこから中大嶺の脇を経由して、西吾妻小屋に泊まる予定だ。

スキー場のリフトを利用するので、初日の行動時間は2~3時間程度。起伏もなだらかだし、あまり山慣れしていない女性を連れて行く場所としても、とっても現実的である。

西吾妻山の北斜面に、こ れでもかというくらい乱立する樹氷の群れ。誰もが息を飲んでアホのような顔になる。こんな絶景が日本にあったとは!

そして迎えた当日。待ちに待った今回唯一の女性、シゲちゃんと合流だ。聞けば天然酵母のパンを焼くのが趣味という、のっけから女子力の高さを見せつけるシゲちゃん。移動中の車中も、いつもの野郎だけパーティのむっつりした雰囲気とは無縁。

ワイワイと盛り上がりながらあっと言う間にロープウェイの駅に到着した。そこからは、レトロなロープウェイに揺られ、さらに本のスキーリフトを乗り継いで行く。リフト終点まで行ったら、いよいよ歩行開始である。

手早くスノーシューを装着して歩き出す。フカフカの雪上をスノーシューで歩くのは、ある種の快感が伴う。沈み込むことなく、ガシガシズンズン歩いて行けるので、なんだか自分がちょっと強くなったような気分になれるのだ。

本来ならラッセルを強いられるような深雪もなんのその。スノーシューでの雪山登山は、膝への負担も少ないし、凹凸も少なくなるから、歩きやすさでは、夏山より上かもしれない。

すでにそこかしこに、樹氷の姿がある。ここ西吾妻の樹氷たちは、八甲田や蔵王のものよりかなり小振りで、別名リトルモンスターと呼ばれている。シゲちゃんもしきりと「かわいー!」を繰り返している。

いかに女子に「かわいー!」と言わせるかが、モテポイントのひとつであると常々考えているワタシからすれば、グッジョブ! リトルモンスターである。

ついに現れたリトルモンスターの群れ!!

樹氷をストックで突っつくと、思ったよりも簡単に雪が落っこちる。

歩き出すこと約30分。樹林帯を抜け、視界がパッと開けた。その先に待っていたのは、快晴の青空と見事なコントラストをなしている、樹氷たちの群れ。こんな景色、見たことない。最高のデートスポットじゃん……。

その絶景を前にして「ほえー」と、アホのようになる。いかんいかん。事前のシミュレーションでは、ここで一発決めゼリフなのだ。「見てごらん。樹氷がまるで入道雲のようだ。夏と冬のコラボレーションだよ」。

精一杯のいい声で事前に用意していたセリフをバシッと決める。それに対してシゲちゃんは、「なんか表現が彦麻呂っぽいですよ」と鋭いツッコミ。「じゃあ、シゲちゃんはなにに見える?」と聞いてみると元気な声で「菌!」という答え。

樹氷原はとても歩きやすいし、滑落するよう な危険箇所もない。ただ、天候が荒れれば話は別。じつはこの日、ヘリで遭難者の捜索をしていた。

え? 菌っすか?
「昔、菌を飼ってたことがあるんですよ。移動したり、増えたり、いろいろ変化があってとっても楽しいんですよ! このモコモコした感じが菌に似てるんです」。

菌って飼ったりするものなのか……。そういやパンを焼くときに使う酵母も菌だし、もしかしたらパンを焼くきっかけも菌だったのか。苔が好きな女子は多いけれど、菌か。菌ガール、なんて言葉もそのうち生まれるんだろうか……。

木々は春がくるま で雪と氷の鎧で身を守る。

菌、というマニアックなものから、巨人、恐竜、ゾウ、サボテンなど、似ていると感じるものを、お互いに挙げながら歩いて行く。 この樹氷の元ネタは、アオモリトドマツである。

この常緑針葉樹に、雪雲の中の過冷却水滴が枝や葉っぱに着氷。その隙間に雪が取り込まれ、それが互いにくっついて固く締まることで、樹氷になるのだという。風や雪の状態によって、樹氷たちは複雑に変化し、ひとつとして同じものがない。だから、見ていて全然飽きないのだ。

登りのときは、スノーシューのカカトの金具を上げると驚くほどラク。

まだ、モテ路線に走り出す前の、幼き頃。雲の形を見ては、 いろんなものに見立てていた、ピュアな心が蘇ってくる。うしろから、シゲちゃんの楽しげな鼻歌が聞こえてくる。「なまこー、なーまこー」。

どうやら、シゲちゃんのなかで樹氷は菌からナマコまで、進化を遂げたらしい。樹氷原を抜け少し登り返すと、今日の宿泊場所、西吾妻小屋が見えてきた。一階の入口は雪で埋まっているため、ハシゴを使って階から入る。ここは無人小屋で、 先客もいない。どうやら今日は貸し切りのようだ。

カキのちカレーそしてまさかのホワイトアウト

西吾妻小屋までは、休憩を入れながらゆっくり歩いても約2~3時間の距離だ。

荷物を下ろして一休みしたら、ちょっと早めの夕食の準備だ。「今日は鍋を囲みましょう」と、池ちゃんがゴソゴソ取り出した食材のなかに、なんと大量の蠣があるではないか。

夏山登山では、傷むのが恐くて持ってこられないような食材を楽しめるのも冬山の魅力。この日は大量の蠣鍋を食べな がら、のんびり宴会である。海とはまったく無縁の山中で食べる魚介類は、とても贅沢だ。

丸くラウンドした屋根が特徴的な2階建ての建物で、中は広々としていてとても快適。

担ぎ上げないと一生このシチュエーションで蠣は食べられないんだという、 どうじゃい感が、旨味を増幅してくれるのだろう。モテ路線を狙いすぎて、フランス産の気取ったチ ーズやサラミを持ってきた自分が、ちょっと、いやかなり恥ずかしい。

翌朝。視界真っ白である。天候の崩れが予想よりも早い。これだから冬の山は恐ろしい。昨日の鍋の残りを利用した蠣カレー(贅沢!)を食べ、これ以上天候が崩れる前に下山しようと行動を開始。

この日はなんと蠣鍋! 締めは蠣ラーメン、翌日は蠣カレーと、蠣尽くし。

本当なら西吾妻山山頂も寄る予定だったのだが、そのままダイレクトに下りることにする。歩き始めて数分後には、視界は 5m 程度になる。ホワイトアウトだ。1人だったら泣きそうになっている状況だ。

緩やかな起伏が続く山域なので、地形も読みにくい。慎重に行動しないと、 あっというまに沢などに迷い込んでしまいそう。

野菜はあらかじめ切っておいた冷凍のものを持参。具材を豪快に放り込むだけの簡単料理。

そんななか、カメラマンの杉村さんは、地形図とコンパスを駆使して先導。最後尾の池ちゃんは、 時折GPSを出しては、杉村さんと確認し合っている。ワタシはそのたびに相談の輪になんとなく加わっている風を装っているが、ハッキリ言って役に立ってない。

きっとシゲちゃんにもバレている。「女子を雪山に連れて行く妄想ばっかしてないで、もっとオノレを鍛えなさいよ!」。突然目の前にヌッと出現したリトルモンスター に、怒られた気がした。

天候の急変に備えを

行動時間は短くても天候が難しい山域

ピッケルやアイゼンは不要で、技術的な難しさはない。ただし、スノーシューかワカンがないと、ラッセル地獄でまったく進まないので、必ず準備していくこと。冬の時期は天候の変化が激しく、また読みにくいので慎重にいきたい。

道標は少なめな ので、踏み跡がないときや視界が悪い場合は特に注意が必要だ。樹氷が形成されるのは1月上旬から3月中旬頃までだが、3月に入ると樹氷の質はやや落ちる。

所要日数:1泊2日/歩行距離:約8km/難易度:中級者向け

  • 1日目 10:30ロープウェイ乗車 → 11:30リフト終点から歩行開始 → 14:00避難小屋着
  • 2日目 08:00避難小屋出発 → 10:30リフト終点着 → 12:00下山完了!

櫻井 卓

編集者。通称、サブ。 元来のヤル気のなさと、 諦めの早さから、勇気ある撤退を繰り返す、 ヘタレ系登山者。

重田麻衣

通称、シゲちゃん。パン作りという女子力高めの趣味をもつが、1人で米大陸縦断旅をするほどのアクティブ派。

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PEAKS 編集部

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