雪山をはじめて歩くためのエリアガイド
PEAKS 編集部
- 2020年12月08日
INDEX
雪山シーズンはまだ始まったばかり。今シーズンこそチャレンジしたいスノーシューハイキングから登山までを楽しめるエリアを集めてみた。はじめての雪山は、ガイドといっしょに歩けると心強い。
文◉編集部 Text by PEAKS
写真◉宇佐美博之、志水哲也、杉村航、矢島慎一、横地孝典 Photo by Hiroyuki Usami, Tetsuya Shimizu, Wataru Sugimura, Shinichi Yajima, Takanori Yokochi
出典◉PEAKS 2016年12月号 No.85
<初級>八ケ岳/縞枯山
樹氷が視界に広がる冬ならではの銀世界
森が広がる北八ヶ岳は、夏山登山における入門的位置づけだ。それは冬でも変わらず、とくに縞枯山はロープウェイで上がるので、登りの心配がないのが心強い。
最大の魅力は白い針葉樹がおりなす絶景にある。あたり一面に広がる樹氷のようすは、まるで白く輝くサンゴさえをも思い起こさせる。坪庭や雨池、茶臼山といった見所がほかにも点在するほか、青い三角屋根をした縞枯山荘も愛らしい。
北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅~雨池峠~縞枯山
- 標高2,237m地点ロープウェイで簡単にアクセス可能
- 山小屋に宿泊できるほか、ロープウェイで下りればペンションも
- コースタイム:1時間半
アドバイス
挑戦といった意味合いでは少々物足りないかもしれないが、冬らしい景色をお手軽に楽しむことができる。まさに雪山デビューにこそ最適な山といえる。だが、天候の急変やルートを見失うこともあるので、最初は経験者の同伴が安心だ。
<初級>関田山脈/鍋倉山
スノーシューを履いて深く濃いブナの森へ
鍋倉山は長野県と新潟県の県境に位置し、全長80㎞の人気ロングトレイル、信越トレイルも通っている。標高は1,300mにも満たないが、日本海から季節風が吹く関係から積雪量は極めて多い。山全体を覆うほどにブナ樹林が形成されている点も特徴だ。
森歩きを経て山頂にたどり着けば、そこには360°のパノラマが待ち受けているはず。スノーシューもレンタルできるから安心だ。
温井集落~巨木の谷~鍋倉山
- 山一面のブナの森をスノーシューで歩くことができる
- 標高が低めといっても豪雪地帯なので積雪量に注意
- コースタイム:4時間
アドバイス
山頂まで比較的短いコースながら、一部には急斜面の直登と下りが含まれる。雪の多さで知られるため天候の変化にも注意が必要。温井集落には駐車場がないため、ガイドツアーや公共交通機関を利用しよう。
<初級>八ヶ岳/天狗岳
稜線歩きを経験して経験値をアップしよう
北から南まで、魅力ある山々が連なる八ヶ岳。そのなかでも天狗岳は比較的地味な存在ということができるだろう。特別な地形や景観が期待されるわけではなく、標高も2,600m 程度と特筆することはない。
しかし、こと雪山登山の経験値を積むという視点で見ることで、魅力的なフィールドに姿を変える。稜線歩きという雪山の難易度を体験することができ、その手前では黒百合ヒュッテが通年営業をしている。
渋の湯~黒百合ヒュッテ~中山峠~東天狗岳~西天狗岳
- ピッケル、アイゼンを要する入門的な雪山の稜線歩き
- 通年営業の山小屋があるため小屋泊もテント泊もOK
- コースタイム:4時間
アドバイス
雪山では稜線と樹林帯で環境が大きく変わる。稜線に出ると風が直撃するので、樹林帯と違って防風・防寒対策は万全に。定番ルートなので、天気がよければトレースも見つけやすい。帰り際、冷えた体は登山口の渋の湯に浸かって温めよう。
<初級>北関東/谷川岳
稜線を進んだ先に待つ岩と雪の双耳峰へ
北関東に位置し、1,963mと標高もさほど高くない谷川岳。しかし、豪雪地帯に位置していることから、標高2,000m未満ながら高山にも劣らない雪景色を望むことができる。起点となる天神平駅へは、土合駅から谷川岳ロープウェイでひとっ飛びだ。
天神尾根を歩きながら、雪山の基礎をひとつひとつ学ぶことができる。体力や技術にまだ自信がなくても、この講習から雪山を始めてみよう。ひとりひとりに合わせたステップアップを実現してくれる。
谷川岳ロープウェイ~天神平駅~天神尾根~谷川岳
- ロープウェイに乗って尾根から歩き始める
- 天候を読めるガイドといっしょに行動したい
- コースタイム:3時間半
アドバイス
谷川岳は“魔の山”とも呼ばれ、死亡者の多さで恐れられている。だが、その大半はクライミングを要するルートでのこと。一般の登山道であれば、初級者であっても安心だ。ただし豪雪地帯にあるため、急な悪天候にはご注意を。
<初級>北アルプス/唐松岳
360°ぐるっと大絶景! 北アルプスの入門編
雪をまとった北アルプスを眺めてみたい。そう思い立っときにおすすめなのが唐松岳だ。ゴンドラやリフトを乗り継いで、標高1,830mの八方池山荘(通年営業)へ。
そこから八方尾根を登り、唐松岳頂上山荘を経由して標高2,696mの山頂を目指す。緊張感を漂わす高度感、そして後立山連峰のすばらしい眺めは北アルプスならでは。それでいて技術的にも困難な場所がない。
雪山ステップアップ講習と題した連続企画を実施するのは松原ガイド。机上講座、八ヶ岳での講習などを経て、最終の第6回にて唐松岳登頂を目指す。
八方池山荘~唐松岳頂上山荘~唐松岳
- 滑落や雪庇に注意しつつ、高度感を楽しもう
- 日帰りも可能とはいえ、まずは余裕ある1泊2日で
- コースタイム:5時間
アドバイス
技術的な不安は少ないといいつつも、滑落の恐れや雪庇の発達がつきまとう。視界不良時にはルートファインディングの力も求められる。リフトの終了時刻も気にしなければいけない。ガイドの指導を仰ぎ、ここから雪山に慣れていこう。
<中級>南アルプス/鳳凰三山
長い行程を歩きながら雪山縦走に挑戦
地蔵岳、観音岳、薬師岳という標高2,700~2,800mの山々からなる鳳凰三山。稜線歩きの連続という縦走らしい魅力を味わうことができる。さらに稜線付近まで樹林帯が迫るため、風もそれほど強くないのがありがたい。
冠雪した富士山を間近にくっきりと見ることができるのも、南アルプスならではの魅力といえよう。磨いた体力によって雪山縦走で年を越したなら、特別な1年の始まりとなるに違いない。
御座石鉱泉~燕頭山~地蔵岳~観音岳~薬師岳~夜叉神峠
- ピストンではなく縦走でこそ奥深く味わえる山の魅力
- 稜線では風対策が必要だが、風を遮る樹林帯が心強い
- コースタイム:16時間
アドバイス
行動時間が長いため中級としたが、技術的な難所があるわけではない。1泊2日も可能だが、山小屋を活用した2泊3日のゆとりある日程で歩きたい。年末年始であれば雪が少なく、樹林帯も頼りになるといっても、防寒対策はぬかりなく。
<中級>北アルプス/西穂高岳
雪と岩稜が入り混じり技術の高さが問われる
西穂高岳では斜度、高度感、岩稜の混じりに対処しなければいけない。体力はもちろんのこと、確かな歩行技術が求められる。なお、西穂高岳から先、ジャンダルムを経て奥穂高岳までは別世界だ。
上級者どころかエキスパート向けといった領域。憧れつつも、一歩一歩のステップアップに励みたい。
新穂高ロープウェイ西穂高口~西穂山荘~丸山~西穂独標~西穂高岳
- 斜度があるなか岩稜も顔を出し、安定した歩行技術が必要
- 通年営業の西穂山荘を拠点に、ベストタイミングを待とう
- コースタイム:6時間
アドバイス
通年営業している西穂山荘を上手に活用したい。前泊、あるいは予備日を持って宿泊しながら、ガイドのベストな天候判断を待とう。拠点とすることで、一度の行動時間を短縮することもできる。その先で見る穂高連峰の姿には息をのむ。
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文◉編集部 Text by PEAKS
写真◉宇佐美博之、志水哲也、杉村航、矢島慎一、横地孝典
Photo by Hiroyuki Usami, Tetsuya Shimizu, Wataru Sugimura, Shinichi Yajima, Takanori Yokochi
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。