アウトドアショップの歴史といま
PEAKS 編集部
- 2021年01月25日
その先駆けとして知られるのが、米国北西部のワシントン州シアトルにある「REIフラッグシップストア」である。
’38年に欧州から高品質な登山用品を輸入する生活協同組合として立ち上がった同店は、’96年にクライミングウォール「ピナクル」を併設した超大型店舗として改装されている。登山靴を試し履きするテストトレイルはもちろん、実際にストーブを着火できたり、店内の水場で浄水器の使用感を試したりできる体験型店舗は、何時間滞在しても飽きることはない。
敷地内には、マウンテンバイクの試走ができるテストコースまで整備されている。こうした施設が人気となり、REIは全米で162店舗を展開する巨大チェーンに成長した。
REIに感銘を受けて開店したのが、新潟県内に4店舗を展開するアウトドアストア「ウエスト」だ。豊富なアイテムを揃えた「三条店」には、高さ13ⅿのクライミングウォールも設置されている。
スキーやゴルフ用品を得意としていたアルペングループの登山用品店「アルペンマウンテンズ」や「アルペンアウトドアーズ」も、過去2~3年で一気に10店舗をオープンするなど勢いを増している。
欧米でも多店舗展開の傾向は強く、ドイツ国内で17店舗を展開する「グローブトロッター」のほか、スウェーデンで34店舗を展開する「ネイチャーカンパニー」、米国東部を中心に展開する「EMS」や、カナダの「MEC」など老舗店の人気も根強い。
オンラインストアも盛況だ。かつて米国のREIからカタログを取り寄せ、ファックスを送っていた経験がある人もいるだろう。しかし、現在は米国の「バックカントリー・ドットコム」といったオンラインサイトにオーダーするのが当たり前になった。年に数回届く英語のカタログを楽しみにしていたのも良い思い出だ。
オンラインショッピングの普及によって実店舗の〝ショーウインドウ化〞といった問題も取り沙汰され、日本国内だけでなく欧米各国でも深刻さを増している。また、アウトドアブランドの直営店舗が充実するのも近年の傾向であろう。
ザ・ノース・フェイスやパタゴニア、モンベルなどは言うに及ばず、各ブランドの世界観を一堂に魅せる店づくりが盛況だ。
国内では、個人経営店の人気も復活した。東京の下北沢にある「ボーズマン」、三鷹の「ハイカーズデポ」、関西では兵庫県芦屋にある「スカイハイマウンテンワークス」を筆頭に、個性的な店主に魅了された客が集まる。
オンラインストアは安価だからと、こうした実店舗がなくなってしまったら登山用具選びのおもしろ味も半減する。贔屓の店を見つけて、信頼のおける店員との話を楽しみにするのを過去の話にしたくないと思うのは筆者だけではないだろう。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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