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日帰りで行ける雪山登山4選〜九州編〜

アックス装備が前提ではない、九州エリアの日帰り可能な雪山を紹介しよう。ただし、積雪や天候により歩行時間は変わるので、無理のない登山計画ででかけてほしい。

文◉岩永正朗、河野綾子、栗山ちほ、根岸真理
Text by Masaaki Iwanaga, Ayako Kawano, Chiho Kuriyama, Mari Negishi
出典◉PEAKS 2020年2月号 No.123

九州エリア

 

福岡市近郊に驚きの光景。圧巻の氷瀑。

福岡県/宝満山・難所ヶ滝

登山適期1月~2月 歩行時間約5時間 総距離約7.5㎞

「氷瀑の難所ヶ滝」。福岡県でもっとも登山者が多いといわれる宝満・三郡山系の冬の名所は、週末ともなるとかなりのにぎわいとなる。渓谷沿いの道を登るため、日中でも気温が上がらず、九州の低山といえど雪は残りやすい。

クランポンは必須だが、ガレた場所も多く、積雪が薄い場合は着脱する機会が多いルートでもある。着脱が簡単で刃先の短いチェーンタイプが便利だろう。登山口から約2時間で難所ヶ滝へ。

高さ20mはある岩崖一面が、巨大な氷で覆われるさまは圧巻のひと言。九州一の大都市からさほど遠くない場所にこれほどみごとな氷の造形ができるのは驚きだ。難所ヶ滝から仏頂山を経て宝満山へは1時間程度。

山頂からは福岡市を一望でき、空気が澄みわたる冬は、雲仙普賢岳や英彦山、くじゅう連山と、九州の山々を見渡す大展望を楽しめる。避難小屋とバイオトイレが整備されている山頂直下のキャンプセンターは格好の憩いの場。ここでゆっくり調理して、温かい山メシを楽しむ人も多い。

アクセス

登山口の一本松公園までは、福岡市街から宇美町方面に向い車で約1時間。公共交通機関利用の場合は、西鉄バス障子岳バス停から徒歩約20分。

アドバイス

氷瀑の真下は気温が上昇すると氷の塊が落ちてくるため注意を。足元の岩場も凍結のため非常に滑りやすくなっている。宝満山山頂直下は、直登するとクサリ場を通過することになる。凍結時は無理せずにクサリ場のない迂回路を利用して山頂に登ろう。

ラリーグラス代表/浦 周平さん

福岡で40年以上続く登山・スキーの専門店を経営。北海道にいたころに始めたテレマークスキーにあまり行けず、最近はとにかく雪乞いをしている日々だとか。

美しい自然と豊富な温泉。雲仙三峰をめぐる。

長崎県/雲仙・普賢岳

登山適期1月~2月 歩行時間約4時間30分 総距離約5㎞

冬の長崎でいち押しのルートは? と聞かれれば、迷わず雲仙普賢岳をおすすめしたい。仁田峠駐車場から雲仙ロープウェイ駅の横を通過し、40分ほど急斜面を登る。妙見神社から先は普賢岳の外輪山をめぐるアップダウンの少ない道。

寒波の到来と上手くタイミングを合わせれば、霧氷のトンネルを鑑賞しながらのんびり歩くことができる。国見岳への登り、鬼人谷口への下りは岩場もある急な道。クランポンをしっかり効かせて慎重に歩こう。

その先は鳩穴分れを経由して霧氷沢へ。霧氷沢は、その名のとおり雲仙普賢岳では最高の霧氷エリア。絶好の景色が登山者を迎えてくれる。普賢岳山頂からは平成新山を望む。

いまなお続く火山活動のため、まだその頂に立つことはできないが、いにしえの時代から噴火を繰り返してきた雲仙の息吹を間近に感じることができるだろう。帰りは紅葉茶屋から薊谷(あざみだに)を経由して仁田峠に戻る。下山後は麓の雲仙温泉へ。登山後の温泉も、冬山の醍醐味だ。

アクセス

雲仙温泉から仁田峠まで車で約20分。ただし、アクセスの道路は夜間通行止めとなる(8時開門)。なお、悪天候及び路面凍結などの場合は終日通行不可。その際は、池の原園地の駐車場に車を停め、仁田峠まで遊歩道を登る(約30分)。

アドバイス

仁田峠は観光客も利用する広い駐車場。売店、トイレなどしっかり整備されている。仁田峠から妙見岳までは登山口からいきなりの急登。体を慣らしながらゆっくりと登ろう。鬼人谷口~鳩穴分れ~霧氷沢分かれまでは一方通行である。

全九州アルパイン・ガイドクラブ登山ガイド/峯 博之さん

九州の最西端、長崎に居をかまえ、登山ガイド・ツアーリーダーとして活躍。九州の山々はもとより、日本アルプスなども得意。豊富な経験を活かし、山旅の思い出づくりをサポートしている。

霧氷と光り輝く御池。くじゅうの白き世界へ。

大分県/九重天狗ヶ城・中岳

登山適期12月中旬~2月中旬ごろ 歩行時間約5時間20分 総距離約10㎞

くじゅうの四季を色で表現すると「冬は白」。ここは、九州か? と思うほど寒くなり、条件が揃えば雪、霧氷が楽しめる。また、中岳直下の御池が凍った光景は、登った者だけが見ることができるご褒美だ。

牧の戸峠から中岳を目指すコースは冬も人気のコース。展望台への舗装路がとくに凍結しているからクランポンを装着して出発だ。沓掛山から先は景色を楽しみながら扇ヶ鼻分岐を目指す。分岐から西千里ヶ浜を行けばどっしりとした久住山が姿を現す。

久住分れの避難小屋で温かいものを摂りエネルギーチャージ。中岳方面へ進み天狗ヶ城へ。登りながら眼下に見える凍結した御池がキラキラと光り美しい。天狗ヶ城から九州本土最高峰中岳へ。

岩場に注意して下って登れば、山頂ではくじゅうの山々、阿蘇山、由布岳など360°の大パノラマが待っている。そしてお楽しみの御池へ。凍結しているからといって、近付きすぎないように。その後、溶けてできた足元のぬかるみに注意しつつ往路を戻る。

アクセス

九州自動車道九重ICで下車。飯田高原中村線県道40 号、621 号、長者原を右折して11号やまなみハイウェイにて牧ノ戸峠へ。約40分。

アドバイス

登山口までスタッドレスタイヤかチェーン必要。クランポン、ゲイター、防寒具、グローブ、ネックゲイター、温かい飲み物食べ物はお忘れなく。扇ヶ鼻分岐から先は、遮るものがない。

しっかりとした装備と天候判断をしよう。久住分れのトイレは冬季閉鎖で使用不可。下山後いろいろな温泉があるのでゆっくり浸かって体を温めて帰ろう。

九重町飯田・地域おこし協力隊/河野綾子さん

九重連山が好きで九重町(ここのえまち)に移住。地域おこし協力隊として活動し、九重連山の旬な情報発信中。2020 年全国山の日大会のWGメンバー。「九重町飯田 地域おこし協力隊」をチェック!

見どころは樹氷とシモバシラ。球磨の名峰を歩く。

熊本県/白髪岳

登山適期12月末~2月 歩行時間約4時間 総距離約7㎞

麓の人吉盆地から眺め、山頂一帯が白く輝いていれば、山が樹氷に覆われた証拠。このときが白髪岳に登るタイミングだ。麓から登山口までは、林道を車で約1時間。登山口から山頂まではなだらかなアップダウンを繰り返しながら、ゆったりと歩ける尾根道が続く。

周囲は「伐られたことがない」といわれるほどの豊かな自然林。樹氷のドレスをまとったモミやツガ。白銀の雪原に立つブナの大木など。雪山初心者でも安心して冬の景色を楽しめる道だ。

雨の神様を祀る三池神社までくれば山頂はもう一息。最後の斜面を登れば、徐々に樹林が薄くなり、開けた山頂に出る。山頂からの展望は抜群で、市房山や霧島連山など、九州南部の山々を一望できる。

また、白髪岳は冬になると根元に花びらのような薄い氷を作る植物、シソ科の多年草「シモバシラ」が多いことでも有名な山。シモバシラは「登山口まで3.0キロ地点」の看板から登山口までの林道沿いでよく見られる。

アクセス

登山口まではマイカー利用。九州自動車道人吉ICから国道219号線、県道43号線を経由して、あさぎり町方面へ。県道沿いの白髪岳登山口の看板を右折後、約10㎞で登山口に着く。林道は除雪されていないため、タイヤチェーンは必須。

アドバイス

ルート上に目立つ危険箇所はなく、雪山初心者におすすめの山。山頂は開けているため、風が強い場合はゆっくり休憩することは難しい。その場合は三池神社周辺がおすすめ。くぼ地で風を避けられる地形になっている。

山歩舎代表/岩永正朗さん

福岡を拠点に登山ガイドオフィス「山歩舎」を運営。ガイド業のみならず、自然写真撮影、登山記事の執筆・編集、自然体験活動の主催など、幅広く活動している。

出典

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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