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高橋庄太郎×土屋智哉対談|”軽量化”は”適正化”のための手段である

さまざまな山に行き、道具に関する造詣も深いふたりが“軽くすること”について語るこの対談。まったく異なる装備で山に行くふたりだが、じつは装備に対する考え方で、共通する部分も多いことが判明。そんなふたりの対話を通じて、理想的な軽量化から適正化のカタチを探りたい。

文◉櫻井 卓 Takashi Sakura
写真◉高橋郁子 Photo by Ikuko Takahashi
出典◉PEAKSアーカイブ ソロトレッキング

髙橋庄太郎さん /山岳・アウトドアライター。テント泊をなによりも愛し、一年の3分の1近くはテントのなかの寝袋で眠る。山に関する著書も多数。著者に『トレッキング実践学』(枻出版社)などがある。

高橋庄太郎さん(以下、高橋):軽量化についてですよ。
土屋智哉さん(以下、土屋):庄ちゃん(=高橋さん)と一緒にいるとき、道具の話ってしないよね。
高橋:ましてや軽量化の話なんて全然してない(笑)。

土屋:まあ、せっかくの機会だし(笑)。
高橋:ツッチー(=土屋さん)の装備は、すごく軽そうなんだけど、僕みたいに荒々しい使い方したら、壊れちゃいそう(笑)。乱暴な使い方をしても壊れないような道具のほうが、僕には向いてる。当然、軽いにこしたことはないんだけど、そこを最優先にはしない感じ。

土屋:庄ちゃんにとっては、重さはあまりストレスじゃないんだろうね。俺は1回大きなケガしてるし、やっぱり軽さは意識する。
高橋:むしろ雑に扱えないほうがストレス。ただ、山ですれ違う大学の山岳部なんかを見ると装備や知識がほとんど昔のままだし、重そうだなあと思ったりはするね。

土屋:いまでもそうなの?
高橋:結構見かけるよ。ペグハンマーを持って来てたりする。ああいうのは不必要だなと思うけどね。
土屋:昔から、山岳部とかは「こういうものだ」というカラーなんかがあったりするからね。

高橋:ただ、それによって思考停止してしまって、不必要な物を持っていたり、軽くするための工夫だったりをしていない気がする。それはもったいない。伝統とかを否定するつもりはないけれど、それだけじゃなく、新しいものもきちんと取り入れるべきだと思う。
土屋:そういう意味で俺は……。

高橋:思考停止どころか、突き詰めちゃった形だよね。
土屋:俺の場合は〝ウルトラ〞だからね。ある意味特殊なケースだと思う。ウルトラって名乗るなら、そこまでやらないとでしょって感じだから。

高橋:ツッチーの場合は、きちんと道具を使いこなす経験値があるから、あそこまでの軽量化ができてるってのはあるだろうね。ただ最近、北アルプスなんかで見かけるんだけど、軽くしすぎてて、ちょっと危ないなと思うハイカーが結構いて、それは少し心配。厳しい気象条件に似つかわしくない華奢な装備だったり、必要なものまで省いていたりする。

土屋:俺にしても短絡的に「軽い=良い」っていう考え方は当てはまらないと思ってる。とくに山の道具に関して言えば、軽くて便利なものってない。軽いものっていうのは、絶対になにかを犠牲にしてる。その大前提を忘れてはだめ。例えば一般的な山の道具が10のうち8をやってくれるとしたら、軽くなればなるほど道具がやってくれる度合いは少なくなってくる。

高橋:道具がやってくれない部分っていうのは、自分自身で補わなければならないということだよね。だから極端な軽量化をするためには、技術や知識なんかが絶対に必要になってくる。例えば、ツエルトをきっちり張れる技術だったり、テントのポールが折れたときに補修する知識だったり。それなしで短絡的に軽量化してしまうと、事故にも繋がりやすくなると思う。

「軽い道具はなにかを犠牲にしてることを忘れてはいけない」

土屋:逆も然りだよね。あれもこれも持って行って、荷物が自分の体力では担げないほど重くなってしまったら、それもまた問題だし。
高橋:確かに。僕はどちらかというと重たいほうだとは思うけど、やっぱり軽くするところは軽くしてる。他の人の荷物を持ったり、食材を分けるつもりで多めに持って行ったりして重くなることはあるけど、体力に対して適正な重さしか持たないようにしてる。

土屋:ライトヘビーって感じ?
高橋:テント内で寛ぎたいから、座椅子を持って行くこともある。
土屋:俺ね、最近〝無駄なもの〞っていう言い方をやめるようにしてる。言葉で説明するときに〝無駄なものを持っていかなければ軽くなる〞っていうのは、とてもわかりやすいんだけど、庄ちゃんの座椅子なんかにしても無駄ってわけじゃない。

土屋智哉さん/ウルトラライトハイキングとロングトレイルをコンセプトにした、東京都三鷹市のアウトドアショップ「ハイカーズデポ」のオーナー。著書に『ウルトラライトハイキング』(山と渓谷社)がある。

高橋:無駄かどうかは、持っていく人が決めることだからね。
土屋:そうそう。〝無駄なもの〞じゃなくて、〝必要のないもの〞を削って、軽くするのが正しいと思うんだよね。

高橋:あとは僕が思うのは、ウルトラライト系の人たちっていうのは、歩くという行為に楽しみの重点を置いているんじゃないかな。だけど、僕の場合は、歩き終わったときのことを重視してる。
土屋:うまいこと言うねえ。

高橋:テント場での時間を快適に過ごしたいから、調理のときにストレスがないように、ひとつでも事足りる鍋をふたつ持つし、食材もたっぷり。そこを省いてまで快適に歩きたいと思わないんだよ。もちろん歩くのも楽しいけど、なによりテント生活を楽しみたい。

土屋:人それぞれ、山での楽しみ方や目的が違うから、装備もおのずと変わってくる。
高橋:僕はそういうものだと思ってるんだよな。軽量化にしても山を快適にするための工夫なわけでしょ? 僕の場合はそれがあまり軽量化には向いてなくて、ものを持って行くことで快適度を上げるっていう考え方なんだよね。
土屋:なるほど。

「軽量化をするためにはそれを補う技術や知識が必要になってくる」

高橋:もちろん、行くエリアにもよる。例えば槍ヶ岳の北鎌尾根(※難度の高いバリエーションルート)に行ったときは、かなり軽量コンパクトな装備にした。自分の個性というか山での楽しみ方と、行くエリア、山行の目的などが絡まり合って、装備というのができあがってくる。

土屋:俺の場合は、単純にシンプルな道具で山に行くのが楽しい。よく子どもがナイフ1本でサバイバルみたいなものに憧れるじゃない? あの感覚と近いかな。
高橋:やっぱり、自分にとっての山の楽しみ方ありきの装備ってことだよね。あとはどんな道具が好みなのかも大事。僕の場合、それは〝質実剛健〞なんだよね。ツッチーの場合は〝軽薄短小〞みたいな?(笑)。

土屋:その言葉、ものすごく嫌だなあ。〝薄軽細小〞くらいにしておこうよ(笑)。俺は、もちろん軽さは重視してるけど、ただ単純に軽くなれば良いっていうのではなくて、シンプルにしていった結果、軽くなる。そういうのが好み。
高橋:なるほど。

土屋:ところで、アライテントのサイトに「10㎏以下の重量で行く2泊3日のテント山行の装備リスト」が掲載されてるの知ってる?
高橋:見たことある。
土屋:もちろん共同装備とかは含まれているんだけど、持って行っているギアの品数が本当に少ない。でもそれを見ると、本当に必要なものが一目瞭然。

高橋:最低限、持って行かなくてはならないものを一度きちんと把握するのは確かに大事。もしそれで体力的に余裕がありそうだったら、快適度を上げる道具を増やしていけば良いんだよね。
土屋:逆に必要最低限なものだけで行くんだったら、普通の道具で10㎏未満に抑えられるワケでしょ? そうなると、別にウルトラライトの道具を買う必要なんてないんだよね。ぶっちゃけると、ウルトラまで軽くする必要はない。

高橋:ツッチーがそれ言ったらマズいんじゃない?(笑)。
土屋:俺みたいに極端にやってる例があればさ、それを見てお客さんは「俺はここまででいいかな」みたいな判断基準にもなるじゃない? 俺個人としては道具自体を軽くする前に、さっきのアライテントの話みたいに、道具立てをシンプルにしてみるというのが良いと思う。それだけで結構軽くなる。

高橋:僕が思うにさ、ふたりとも自分がストレスのない道具で山に行ってるってことじゃないかな。
土屋:それは同感。だから全然、装備が違うのに、一緒に行っても違和感がないのかも。
高橋:よく「重い荷物担いでストイックですねえ」なんて言われることがあるんだけど、逆なんだよね。ストイックじゃないから荷物を担いでる。テント場で快適に過ごしたいから。ツッチーのほうがよっぽどストイックだよ(笑)。

土屋:そもそもウルトラライトって「楽をしたいから、軽くしよう」っていうものじゃないからね。山を楽しむためのアプローチのひとつであって、それが俺の場合はシンプルな道具を使いこなすことだったりするわけで。さっきも言ったけど、軽い道具というのは、なにかを犠牲にしていることが多い。でも逆に言えば、それを自分の知識と経験で補うっていう楽しみが広がっているということでもある。

高橋:装備って、結局、すごくパーソナルなものなんだよね。行く場所、やりたいこと、自分の体力、さらには好みのデザインとか。〝自分のしたい山登り〞というものを総合的に考えて〝適正化〞していくものなんじゃないかな。それを踏まえたうえで、軽くできるものは軽くしていくっていうのが、僕はいちばん良いと思うな。

土屋:そうだね。装備の適正化っていう言い方は良いね。その適正化の中の一手段として、軽量化という手法もあるんだという考え方がバランス良いと思う。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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