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覚えておきたいエマージェンシー対策|ソロ登山ならではのあるあるを解決。

ソロ登山は気楽な反面、いざというときに頼れる人がいないリスクを背負う。万が一の状況に慌てないためにも起こりうるトラブルをシミュレーションしておこう。

イラスト◉永盛文生 Illustration by Fumio Nagamori
PEAKS 2020年9月号 No.130

ソロ登山の5大リスク

  • ケガや事故の対応
  • 疲労、体調不良の把握
  • 天候不良時の見極め
  • 道迷い、ペースオーバー
  • 救助要請が難しい

ソロ登山だからこそ気を付けるべきこと

ソロ登山の魅力は、なんといってもルールを守ればすべて自由であること。好きなペースで登り、ご飯を食べ、好きなタイミングでテントに潜り込む……。これは複数人の登山では決して味わえない。

ただし、得られる自由と引き替えにリスクが一番高いのもソロ登山であることを忘れてはならない。
まずは数あるリスクのなかの5大リスクを知っておこう。

これらの5大リスクから派生して、ときには死に至る場合も少なくない。まず事故やケガ、アクシデントを未然に防ぐことが重要になる。

そしてベストを尽くしていても起きた〝もしも〞に対しては、慌てず、スピーディかつ的確な処置が必要だ。
「きっとだれかが助けてくれるだろう」といったことを前提に山に入るのは絶対になし!

ひとりでも最低限対処できるようになっておくべきだし、持って行くべきものもきちんと把握しておきたい。

ケガや事故

急なトラブルはだれにでも起こりうる。とにかく慌てずに対処したい。

❶ 骨折してしまったかもしれない

骨または筋肉などの周囲に大きなケガをすると、「腫れ」「痛み」「患部の変色」などが起こる。その場合は骨折を疑い、次の手当てを行なおう。

①患部に傷がある場合は洗浄し、清潔なパッドなどをあてて感染症を防ぐ。②出血がある場合も、清潔なパッドをあてて止血を行なう。③副木になる素材を探し、患部の上下までしっかりと副木をあてる。④副木と自身の患部を、患部の上下までしっかりと固定できるようにテーピングなどで固める。

自力下山が不可能な場合は、直ちに救助隊や周りの人に助けを求めよう。

❷ 転んでちょっとひどい擦り傷ができた

擦り傷を負ったら“洗浄”が基本。患部が汚れたままだったり、異物が傷口に残ったままだったりすると化膿してしまう恐れがある。近くに水道がある場合は、患部を流水でしっかりと流す。

水道がない場合は、ペットボトルのミネラルウォーターなどで洗浄を。清潔さが保証されない川の水などでの洗浄は避けること。洗浄が終わったあとは患部を清潔な状態に保つよう心がける。

まだ出血がある場合はガーゼをあててテープで留めるなど、患部が汚れないようにする。

❸ ハチに刺された

「ハチ」にも種類があり、攻撃性が高いハチもいれば低いハチもいる。さらにハチに似たまったく違う虫で刺さないものもいるが、とっさのときにこれらを見極めるのはなかなか難しい。下手な知識で間違えて痛い目にあうよりも、すべてハチと捕らえて対応しよう。

ミツバチに刺された場合は針が残っているかを確認してから患部を水で洗い流し、清潔なガーゼなどで覆う。スズメバチの場合は、まずはポイズンリムーバーなどで傷口から毒を出し、患部を洗ってガーゼで覆う。いずれも痛みを和らげたい場合は患部を冷やすといい。

 

❹ 突然雷が鳴りだした

周囲に避雷針やその代わりになるようなものがないエリアでは、可能な限り低い姿勢をとる。周囲に高い物がある場合、その頂点から45°の角度で地面に線を引いた範囲内で、かつその物体から4 ~ 5m離れた位置に退避する。

避雷針がある山小屋の中や車の中は、安全を確保しやすい代表的な場所になる。テントや東屋などは落雷の危険があるので避けること。夏の雷は午後から夕方にかけて発生率が高くなる傾向がある。

夏の山行は13時から14時ころの、 午後のなるべく早い時間に終えられるようなプランにすることで、山行中の落雷を防げる確率が上がる。

ギアのトラブル

使えるものはなんでも使う。エマージェンシーキットの見直しも。

❶ テントの張り綱を忘れてしまった

慌てずに張り綱の代わりを探そう。普段から予備としてエマージェンシー用に2 ~ 3㎜の細引きなどを携帯するのがベストだが、ない場合に活躍するのがシューレースだ。

シューレースはシューズの穴数によっておよそ120㎝から200㎝までさまざまな長さがある。シューズ1足にシューレースは2本。一般的な山岳用テントの張り綱は130㎝程度なので、最低でも2カ所のフォローはどうにかできる。

そのほかにもクッカーやスタッフサックの紐も数本をしっかりとつなげれば辺の部分の張り綱として一時使用に耐えうる。

❷ テントのポールが割れてしまった

割れた部分になにかを当てて補強・補修すればいい。予備パーツ、補修パーツを持ち合わせていない場合は、ペグ(または木の枝)を活用しよう。断面がL字なら2本で破損部を挟み込み、テープで巻いて固定する。

ピンペグや木の枝の場合は数本をいっしょにテープで巻き込む。補修した部分の強度は低くなってしまうので、一度ポールをバラし、補修した部分をいちばん負荷がかからない(曲がりが少ない)場所へ位置を変えて使う。

❸ シューレースが切れてしまった

代替できる細引きなどがない場合は、シューレースの切れた部分を結び合わせる。多くの場合は「本結び」をすれば切れたシューレース同士が引っ張られてもほどけることはない。

シューレースの長さが短くて足首のフックまでしっかりとかけられない場合は、つま先部分をひとつ飛ばしてシューレースをとおす。その際に登山靴の中でつま先部分に変な遊びが出ないようにしっかりと締め上げ、足首まで保護できるようにする。(締めすぎにも注意)

本結びの手順

❹ バックパックのバックルが壊れてしまった

ベルトを活かして補修

チェストストラップもウエストハーネスも、サイズは違うが同じ構造の「サイドリリースバックル」を使っている場合が多いので、基本的に補修方法は同じ。

サイドリリースバックルを使った場所はサイズ調整が必要なため、ナイロンベルトが長めに設定されている。これを活用するのが手っ取り早い。バックルを外したナイロンベルト同士を、自分の好みの締め具合で結んでしまえばいい。

ナイロンベルトの長さが足りない場合は細引きが有効だ。①折り返しがない側のナイロンベルトをバックルを外して結び、ループを作る。②両方のナイロンベルトに1本の細引きを通す。③ ちょうどいい締め具合で細引きを結ぶ。

細引きで補修

❺ シングルバーナーの火力が弱くてお湯が沸かせない

外気温が低かったり、ガス缶の接地面が雪や氷など冷たい地面の場合はガス缶がすぐに冷やされてしまうために火力が弱くなる。対策として地面とガス缶の間になにかを挟むことで大幅に地面からの冷気を防ぐことができる。

このとき、熱伝導率が高い金属ではなく木の板などを使うのがコツ。原始的だが両手でガス缶を包むことでジワジワと缶が温められるので効果がある。ぬるめのお湯を入れた浅いクッカーにガス缶を浸けて温めるのも手だ。

❻ ヘッドランプが点灯しない

充電、電池切れ以外の原因としては、電池と電池との接点(通電部分)が曲がるケースも少なくないので、一度電池を外し、マルチツールのマイナスドライバーやナイフなどで接点を少し起こしてみよう。

電池の液漏れによる接触不良の場合は、まず漏れた液体に直接触れないようきれいに拭き取り、電池の接点に液体が固着している場合は、ナイフなどでしっかりと削り落としてみよう。

この処置で復活しなかった場合は、フィールドで復活する可能性はかなり低い。暗がりでの行動は中止しよう。

セルフレスキュー

ソロではつい無理をしてしまいがち異変にはいつも以上に敏感になろう。

❶ 汗をかいて、雨に降られて寒い

山行中に一度体の深部が冷えてしまうと、再度温めるのはなかなか難しい。場合によっては低体温症になる可能性もあるため、できるだけ早く体温を上げる手段をとろう。

ポイントは「乾燥した服」「外からの保温」「中からの保温」の3つ。濡れた服はすべて乾いた服に替え、髪の毛などもしっかりと水分を取ろう。可能な限り保温できるように温かい服を着込む。テントの中なら寝袋に入ってもいい。

また、温かい飲み物や食べ物を摂取して体の中から温める方法も有効だ。体が熱をつくるエネルギーを補給しよう。

❷ 熱中症になったかも……

体がだるい、頭痛、目まい、吐き気、異常な発汗、筋肉の痙攣などの症状を感じたら熱中症を疑おう。まずは体を締め付けている服のベルトなどすべてをゆるめ、リラックスできる体勢になったうえで次の行動をとる。

①直射日光が当たらない風通しが良い日陰で体を休める。②水で濡らした手ぬぐいなどの気化熱を利用して、首筋や脇の下などを冷やす。逆に体が冷たい場合は、いまある防寒着などをすべて使って保温する。③水分補給を行なう。それでも体調が戻らない場合は救助要請を出すようにしよう。

❸ 料理中にヤケドをしてしまった

ヤケドの対処は「患部の感染症を防ぐ」ことと「組織の損傷を軽減させる」ことのふたつが重要だ。感染症と組織の損傷は後遺症や人命に関わることにつながることさえあるため、これをいかに早く確実に防ぐかがポイントになる。

大まかな手当方法は、①火傷の周りのアクセサリー類を外す(患部の圧迫を軽減するため)。②迅速に冷やす(軽度の場合は清潔な流水で20分程度冷やすようにする)。③水ぶくれが破けた、またはそれ以上に皮下が見えてしまっている状態の場合は、迅速に清潔なガーゼ保護パットなどで患部を覆う。

下山後に医師の診断を受けて適切な処置を受けるようにしよう。

❹ 登山中に飲み水が切れてしまった

山における必要な水分量には簡単な算出方法がある。必要水分量(㎖)=体重(㎏)×行動時間(h)×5(㎖)が標準的な計算式。たとえば、体重50㎏の人が7時間の行動をするとなると、50㎏×7h×5㎖=1,750㎖が必要になる(山行前の飲食の水分量も含む)。

ただしこれは、気温が高い、運動量が多いなどの要素を考慮して水分量の調節が必要になる。また実際に持っていく水は傷の洗浄や予備水として500 ㎖プラスしておきたい。万が一の場合は天然の水を摂取する必要も出てくる(安全表記があっても天然の水は自己責任)ので、浄水器を持ち歩くのもひとつの手だ。

❺ 脱水症になったかも

足がつる、いつもよりもおしっこの量、回数が少ない、体がだるい、そういえば今日これしか水分を摂取していないな……と思ったら脱水症を疑おう。

水分と塩・油・砂糖(人工甘味料不可)を少しずつ摂取する、涼しい場所で体を横にして休むなどの対処をしながら30分程度経っても回復が見られない場合は、すみやかに下山する。

意識がもうろうとしはじめたらもうアウトだと思ってほしい。救助を呼び、可能な限り早く医師の手に任せるようにすること。

救助要請

困ったときはすぐに助けを求めること。恥を捨てなけれは命は救えない。

❶ 予定よりも時間がかかって山行中に暗くなってしまった

想定よりも悪天候になった、予定よりポイントまで時間がかかっているなど、イレギュラーな事態が起きたら無理をせずに撤退の判断をすること。最善を尽くしても暗くなってきてしまったら、実際の景色、地形図、GPSなどから素早く現在地を確認しよう。

また自分の周りがどのような状態なのか、なるべく多くの情報を得ることが大切だ。主に重要な情報は以下の3つになる。①暗くなってしまっても、いまいる場所は安全か? ②近くに避難小屋はあるか? (あれば避難小屋へ移動する) ③ビバーク可能な環境か? 全装備の確認もしておこう。

❷ ビバークが必要になったらどうしたらいい?

いざツエルトを張るとなると、じつは練習が必要になるくらいテクニックが必要だ。よく目にする「被る」「くるまる」などの方法ももちろん正解だが、横になれるスペースを確保できたほうが圧倒的に快適になる。

ツエルトを張る際の基本を知り、実際に宿泊までしてみることを強くおすすめする。実際にビバークすると、不安な気持ちと相まって、時間も永遠に感じられるほど長くしんどい。

またエネルギーがなくなると、体温維持や安定した思考、精神面も上がらなくなってしまうので、砂糖、塩、油が効率的に摂取できる非常食を持っていると安心だ。

❸ 動けなくなってしまった! しかも電波は圏外!

携帯電話文化が浸透した昨今、もしもソロ山行中に電波圏外で救助要請をしようと思ったら近くを通る登山者、もしくはホイッスルなどで気付いてもらい、その人に救助要請をしてもらうしか方法はない。

それを避けるためにも、日々のトレーニング、知識や技術の習得、安全登山を心がけるようにしよう。また、電波圏外でも対応できるように、携帯GPSや救助要請発信器、アマチュア無線など携帯電話以外の機器も携帯しておくようにしよう。

❹ ヘリで救助要請したらいくらくらいかかる?

国内でのヘリコプターレスキューは、大きく分けると警察や消防などの公的機関と民間の2種類がある。公的機関については救助費用がかからないが、民間による救助は、遭難場所がわかる場合でヘリコプターの出発地から短時間で救助可能な場合は50 ~ 80万円といわれている。

しかし遭難者は公的機関か民間かを選べない。つまり、高額な金額がかかることを覚悟しておこう。それを防ぐためにも、保険に加入することを検討したい。

教えてくれた人/長谷部雅一さん

アウトドアに関するイベント企画、幼児の教育機関でアドバイザーも行なっている野外活動のプロフェッショナル。メディックファーストエイドの講師も務める。

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