テント泊の準備〜装備編〜 抜かりない装備と計画が山行を成功に導く
PEAKS 編集部
- 2021年04月27日
初めてのテント泊は不安と緊張が入り交じるもの。でも必要な装備を揃えて、注意点を確認しながら抜かりなく計画を立てれば、山行は限りなく成功に近づくはずだ。装備と計画を立てる上でのポイントをひとつずつ解説する。
文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
イラスト◉高橋未来 Illustration by Miki Takahashi
出典◉PEAKS 2020年8月号 No.129
装備
憧れのテント泊には相応の体力はもちろんのこと、抜かりない装備と万全な計画が必要になる。
まず装備については、テント泊に必要なアイテムと、日帰りと山小屋泊に共通する道具をひと通り説明する。必須ではないがあると便利な小物も紹介するので、参考にしてもらいたい。ひとつずつチェックして、漏れなく準備しよう。
次に計画についてだが、今年は例年と違って気をつける点が多い。
「ルートの設定」「テント場の下調べ」「水場のチェック」「エスケープルートの確認」など基本的な項目は変わらないが、とくにテント場の下調べに注意したい。
というのも、新型コロナウイルスの影響で休業する山小屋があり、テント場が使えないことがあるからだ。その場合、水場やトイレも利用できない可能性がある。
テント場が使用可能でも予約制になっていることがあるので、状況をしっかりと調べること。予約が必要な場合は必ず連絡をして、万が一計画を変更して利用しなくなった場合は、キャンセルする旨も連絡しよう。
山小屋が休業することによる影響はほかにもあり、食料を補給できない、非常時に助けを求められないなど、いつも以上にシビアな登山を強いられる。
場合によっては行程の変更や山行の中止も念頭において、冷静に計画を立てる必要があるだろう。
「軽量化を意識したいが、必要な装備はひと通り揃えよう」
テント泊では、テントやスリーピングバッグ、バーナーなどのサイトですごすための道具と、日帰りと山小屋泊に共通するバックパックやレインウエアなどの基本アイテムが必要になる。
それぞれの用途を説明するとともに、道具によっては最近のトレンドも紹介する。テント泊は日帰りや山小屋泊と比べると荷物が重くなってしまうので軽量化を意識したいが、必要なものまでリストから外すのはNG。
ここで紹介するアイテムを参考に、まずはひと通り揃えよう。最初から超軽量モデルに手を出すのではなく、慣れてきてから徐々に軽量化を考えて、より軽いモデルの購入などを検討するのがおすすめだ。
テント泊で必要なモノ
バーナー・燃料
主に調理で使う道具だが、非常用としても常備したい。単独行ならガス缶の上に直接バーナーを取り付ける一体型が人気だが、グループ山行には安定性に優れる分離型もおすすめ。点火装置のトラブルに備えてライターやマッチも携行しよう。
スリーピングバッグ
果たす役目は掛け布団。中綿にダウンを採用したモデルが軽量コンパクトで登山では人気だが、濡れると保温力が低下してしまう弱点がある。最近は濡れに強く、ダウンに近い保温力と軽量性を備える化学繊維の保温材を使ったモデルも増えてきた。
スリーピングマット
いわば敷布団。空気で膨らませるものや、素材自体にクッション性や断熱性があるものなど、いくつか種類がある。長さもさまざまで、軽量化のために身長よりも短いサイズを選んでもいい。なかには冬山での使用を想定した高性能モデルもある。
テント
山で一晩をすごすためのマイホーム。市場にはキャンプを目的とした安価な商品もあるが、強度や耐久性に不安がある。やはり専門メーカーの登山用に作られたモデルを用意するのが安心だ。使用シーンなどに応じて理想に合うモデルを手に入れよう。
食材
朝晩の食材は必須。アルファ化米やフリーズドライが人気だが、生米や生野菜を持参して豪華な料理を作る人もいる。飲み物になるコーヒーなども用意しよう。もちろん行動食も忘れずに。なお、行動中の食事は山小屋の軽食を利用するのも手だ。
クッカー・カップ・カトラリー
火を使わず食事を済ませるという人もまれにいるが、できれば山中では温かいものが食べたい。鍋の役目を果たすのが金属のクッカーで、ちゃんと料理を作る人はふたつあると便利。さらにカップも用意すると快適である。カトラリーの種類はお好みで。
あると便利なモノ
ピロー
テント場が常に水平とは限らない。頭が下がると寝苦しいので、ピローがあると快眠できる。軽量なエアピローがおすすめだが、スタッフバッグに衣類を詰め込んで枕の代わりに使う方法もある。
ランタン
ヘッドランプでも代用できるが、緊急時に備えてバッテリーを節約できることなども考えると、あったほうが便利。最近は太陽光で充電でき、膨らませて使うソーラーランタンが人気だ。
大きなビニール袋
天気の急変は山では当たり前。予想外の雨に降られて翌朝テントがビチョビチョなんてこともあり得る。そんな事態に大きなビニール袋があると非常に役立つ。意外と見落としがちな便利アイテムだ。
サンダル
水汲みやトイレなど、テントからちょっと外に出たいとき、すばやく履くことができるサンダルが役に立つ。履き心地やデザインも気になるが、持ち運びを考えると軽くてかさ張らないものが理想的。
日帰り・山小屋泊共通のモノ
着替え
雨でウエアを濡らしてしまった場合に備えて下着やシャツを用意する。とくに靴下は汗で濡れることもあるので、日数に応じて数枚準備してもいいだろう。それとは別に、山小屋に到着したあとや入浴後など、やはり綺麗な衣服に着替えると気持ちがいい。
レインウエア
防水性があるのは当たり前だが、必ず透湿性もあるモデルを選ぶこと。雨を防ぐことが目的だが、風が強い日にはウインドジャケットとしても使える。なお、森林限界以下の厳しくない場所ならポンチョという選択肢もあるが、稜線歩きなどには適さない。
保温着
標高が上がるほど気温は下がるので、夏でも保温着は用意しよう。ちなみに標高が100m上がるごとに気温は0.6℃下がるといわれている。以前はフリースが主流だったが、近年は軽量コンパクトになるダウンや化繊綿を使ったモデルがよく選ばれている。
バックパック
日帰りなら25ℓ、小屋泊なら35ℓ前後。これがテント泊になると40ℓ以上が必要になる。背負い心地の悪さは疲労に繋がるので、できるだけ店頭で試してから購入したい。メーカーによっては男性用と女性用があり、作りを変えているモデルもある。
ファーストエイドキット・エマージェンシーキット
体調不良に備えて、痛み止めや胃薬、風邪薬などの常備薬を用意する。外傷に対しては絆創膏や包帯などで対応。ナイフやハサミもセットしておこう。山中では装備が故障することも多く、ダクトテープや安全ピン、結束バンドなどが活躍する。
マップ・コンパス
最近はスマートフォンの地図アプリが普及してきたが、バッテリー切れや故障などのトラブルを考えると、やはり紙地図も欠かせない。読図用にコンパスがあるとなおよい。地形をより細かく把握できる2万5千分の1地形図まで準備すれば完璧だ。
ヘッドランプ
夜間行動の必需品。明るさは50 ~ 100ルーメン程度あれば十分。山小屋で使う人は、眩しさを抑えられる赤色灯モードを搭載するモデルを選ぶといいだろう。充電式はモバイルバッテリーから給電できるので、バッテリー切れの心配が少ない。
ウォーターキャリー
水分は生きる上での生命線。トラブルに備えてふたつ準備するのがおすすめだ。ソフトボトルは軽くてコンパクトだが、若干水を汲みづらい。また、ハードボトルは水を汲みやすいが、かさ張ってしまう。チューブで水を飲めるハイドレーションもある。
サングラス
標高が高くなればなるほど紫外線の影響は強くなる。紫外線によるダメージは蓄積されて、のちに白内障や緑内障の原因になることも。できるだけサングラスを着用して、紫外線の影響から目を守ろう。
トイレットペーパー
山小屋のトイレに紙がない場合に使ったり、食後の食器を拭いたり、使いみちはさまざま。もちろん1ロールを持ってくる必要なく、適量を持参する。使った紙は捨てずにゴミ袋にまとめて持ち帰ろう。
モバイルバッテリー
緊急時の連絡や地図アプリで現在地などを把握するツールである携帯電話を充電するために、いまやモバイルバッテリーは必須といえる。ほかに充電式のヘッドランプや小型カメラなども充電できる。
身だしなみグッズ
汗でベタつく体は不快だし、臭いも気になるもの。そんなとき、身体を拭けるフェイスシートやボディシートがあると快適。水場が近くにあれば、吸水速乾性に優れるタオルを濡らして顔や体を拭いてもいい。
あると便利なモノ
傘
たとえレインウエアを持っていても、雨の日は傘があったほうが全身を濡らさずに済むので快適だ。日傘にもなる。
トレッキングポール
登りはもちろん下山時にあるとバランスがとりやすい。ダブルストックが基本だが一本だけでも効果を実感できる。
クッション
軽量コンパクトに持ち運べる座布団が市販されている。木や岩に直接座るよりお尻が冷たくならないので、あると快適。
虫よけ剤
蚊やブヨなどといった吸血生物から身を守れる。山域によってはヒル避けスプレーを用意したほうがいいことも。
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文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
イラスト◉高橋未来 Illustration by Miki Takahashi
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。