テント泊の準備〜計画編〜 抜かりない装備と計画が山行を成功に導く
PEAKS 編集部
- 2021年04月29日
初めてのテント泊は不安と緊張が入り交じるもの。でも必要な装備を揃えて、注意点を確認しながら抜かりなく計画を立てれば、山行は限りなく成功に近づくはずだ。装備と計画を立てる上でのポイントをひとつずつ解説する。
文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
イラスト◉高橋未来 Illustration by Miki Takahashi
出典◉PEAKS 2020年8月号 No.129
計画
「新型コロナウイルスの影響で、今年の計画は念入りに」
日帰りや小屋泊りで経験を積んだ人でも、テント泊の装備が重く肩にのしかかり、計画通りに進めないことも十分あり得る。いつも以上に余裕を持ったコースタイムでルートを設定し、トラブルに備えてエスケープルートも必ず確認しよう。
さらに今年は新型コロナウイルスの影響で休業する山小屋もあるので、例年以上に注意が必要。テント場が使用できるかどうか、水場やトイレの状況も確認する。
宿泊予定地はもちろん、ルート上にある途中の山小屋についてもチェックしよう。計画を立てたら道具を準備して、約1週間前から天気を確認する。万全な計画がテント泊を成功させる秘訣である。
1 ルートの設定
登りたい山が決まったら、どこからスタートして、どこに泊まり、どこへ下山するかを考えて、インターネットや地図、ガイド本などで情報を集める。その上で無理のないコースタイムでルートを設定しよう。
どんなに遅くとも宿泊予定地に16時ごろまでに到着できる行程が理想的だ。注意したいのは、テント泊は荷物が重くなるということ。普段なら難なく歩ける距離がきつく感じられることも考えられる。
初めてのテント泊なら、余裕がありすぎるくらいの計画がちょいどいい。もちろん登山口までのアプローチと下山後の交通手段も調べておく。バスは季節で便の本数が変化するので注意したい。
2 テント場の下調べ
今年は例年以上に下調べが重要になる。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために山小屋が休業している場合があり、テント場はもちろん、トイレや水場も使用できないことがあるからだ。
普段ならテント場の使用に予約は不要で、到着さえすれば空いている場所にテントを張れるのだが、今年は予約制を導入している場合がある。事前に調べて、必要なら必ず予約してから利用しよう。
所定の手続きを踏んでテント場が使用可能になったら、設営スペースの地面の状況なども調べておくといい。石が多い場所だとペグが使えないことがあるので、細引きなどを多めに用意する必要がある。
3 水場のチェック
水場は地図やコースガイドで場所を調べるのが手っ取り早い。しかし記載があっても、いざ現場に到着してみると涸れていた、なんてことはよくある話。
水が汲めない状況は死活問題なので、インターネットを活用して最新情報をチェックしよう。水量は季節によって変化することがあるので、計画する時期に近い記録を検索して情報を集める。
今年に限って注意したいのは、休業している山小屋の水場だ。小屋での購入は当然できないし、ポンプによるくみ上げの場合は使えないこともあるので、使える水場で数日分の水を汲む必要があるかもしれない。有事に備えて浄水器の持参もおすすめする。
登山計画書の提出を忘れずに
計画が完成したら登山計画書を作成する。これは遭難時に役立つ大切な書類だ。必ず目的の山域を管轄する警察署に提出しよう。
登山口などに設置されている提出用ポストに投函してもいいが、どこにでもポストがあるとは限らないので、最近はインターネットを使った提出方法が一般的になりつつある。
ネット上のサービスでは「コンパス」が有名で、連携している警察署も多く、登山計画書を友人や家族と共有することもできる。
4 エスケープルートの確認
安全を考慮して入念に考えた計画でも、予期せぬ怪我や体調不良、もしくはテント泊の荷物の重さに疲労困憊してしまい、予定通り進めないなどのトラブルが考えられる。
来た道を戻るのも手だが、それとは別にエスケープルートも確認しておこう。登山道が分岐することが多い山頂や峠、山小屋などがルートを設定するポイントになる。
人里までの距離が短い登山道が理想的で、トラブルが起きたときに下ることになるので、岩場や沢の渡渉、崩れている箇所がないかなど、危険性の高い箇所が出てこないかも調べておこう。さらにエスケープルートを使った場合の下山先の交通手段まで確認する。
5 道具の準備
必要な道具を一式準備する。テント泊は装備の数が増えるので、忘れ物を防ぐためにも持ち物リストを作っておくといい。
また、信じられないかもしれないが、山の中から「テントの立て方を教えて下さい」「バーナーにどうやったら火を着けられるのか教えてほしい」という問い合わせの電話がメーカーにかかってくることがあるという。
道具は使い方をマスターしていることが大前提だ。使用方法を覚えるほかに、登山靴のソールが剥がれかけていないか、水筒には穴が開いていないか、ヘッドランプのバッテリーは十分かなど、普段から使用している道具に不備がないことも確認しておこう。
6 天気をチェック
天気は1週間くらい前から毎日確認するといい。雨が連日降っているときは地盤が緩んでいる可能性があるので、土砂崩れの危険性が高まっていると予想できるし、沢沿いのルートなら増水していることも考えられる。
場合によってはルートを変更する判断も必要だ。しばらく天候が安定していれば過度な心配は無用だが、前日はもちろん山行中でも安心せずに、最新の予報をチェックしよう。
天気予報を調べるには、気象庁や10日先の予報まで出している日本気象協会、全国の主要な山の天気がピンポイントでチェックできる「ヤマテン」や「てんきとくらす」などのサイトが便利だ。
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文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
イラスト◉高橋未来 Illustration by Miki Takahashi
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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