登山を映像に収めるための基礎講座「YamaTube」〜編集の仕方編〜
PEAKS 編集部
- 2021年06月02日
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せっかく山に行くなら写真だけでなく映像でも撮影し、さらに仲間などともシェアできたら、さらに思い出は深くなる。でも、いざ撮って編集するとなると、なにをどうしたらいいかよくわからない……。そこで今回は、山の映像をYouTubeで公開してるハイカー=「YamaTuber」の3人にテクニックを伝授してもらった。
文◉編集部 Text by PEAKS
イラスト◉高橋未来 Illustration by Miki Takahashi
出典◉PEAKS 2020年7月号 No.128
ストーリーを想像して映像を組み立てる
せっかく山で撮影したのに、編集方法がよくわからずカメラに眠りっぱなし……という人も少なくないはず。そう、編集こそ経験値が必要なやっかいな作業であるが、難しいことを考えず、ストーリーを組み立てることから始めてみよう。
実際に映像をいじる際には便利に使えるソフト、アプリもいくつかあり、YamaTuberの方々も具体例を挙げてくれているので、チェックしてみて。
編集のポイント
【ストーリーをよく考える】
どのカットをどれくらいの長さで見せるか
映像編集で重要になるのは、どのカットをどのように並べていくかという構成。複雑に感じるかもしれないが、それは作文を書いたり、アルバムに写真を並べる作業と同じ。
たとえば、樹林帯の登り、稜線の大展望、テント場での団らん、夕焼けなど、撮影しているもの、とくに見せたいものをきちんと整理して、どれくらいの長さで見せるかなどを考えていくと。自ずと構成は決まってくるはずだ。編集の前にまずは設計図を作ろう。
【スマートフォンかパソコンか】
手軽さならスマホ、快適さならパソコン
以前は映像編集するためには性能の高いパソコンが必須だったが、いまではスマホアプリなども登場し、簡単な編集であれば移動しながら作業することすら可能。スマートフォンで撮影するのであれば、アプリをインストールして編集してみよう。
もちろんじっくり編集するのならパソコンが有利。高性能なソフトは不要だが、カットを繋げたり、無駄なシーンを削除するような簡単な編集であっても、やはり大画面の方が快適に操作できる。
【音楽をどう使うかも重要】
BGMを使うなら音楽素材サイトをチェック
音は撮ったままの状態でも悪くはないが、BGMが入ると一気に映像が本格的に感じられる。ウェブ上にはさまざまな著作権フリー、無料で曲がダウンロードできる音楽素材サイトがあるので、BGMを使ってみたいのならばまずはこのようなサイトを利用してみよう。
ただし、いいBGMでもむやみに入れると映像の雰囲気を変えてしまったり、せっかくの自然の音をじゃましてしまうことも。まずは控えめに導入しよう。
【長い映像は編集するのも大変】
まずは1~2分程度の映像を目安に
全体の長さをどれくらいにするかも重要なポイント。視聴する分には多少長くても見られるが、同じ長さの映像を自分が編集しようとすると、かなりの時間が掛かる。
慣れないうちは1 ~ 2分程度を目安に作ってみよう。なおウェブにアップするのであれば、インスタグラム、YouTubeなど、長さをプラットフォームの特性に合わせる必要があるので、事前にチェックしておこう。
【スローモーションは効果的に】
多用しすぎると逆効果
プロの映像でもよく使われているスローモーション。意外と編集は簡単で、使ってみると現実感が薄くなり、映像に艶が出るなど効果も絶大。だが、多用しすぎると退屈になってしまうので注意が必要だ。
逆に早回しという手法もあるが、これは基本的には退屈な映像を飽きさせないためのもの。早回ししたほうがいいような映像であれば、カットしたほうがいいかもしれない。
YamaTuberの場合
<イタガキ▲>
音楽は「Epidemic Sound」や「YouTubeライブラリー」を活用
音楽は無料で使える「YouTube ライブラリ」と、有料のロイヤリティフリー音源サイト「Epidemic Sound」から選んでいます。音楽は演出の一部なので、うるさくならないように音量を曲ごとに調整。
雄大な風景だとどうしてもカッコいい曲を選んでしまうのですが、それが映像のじゃまをすることもあるので、気を付けています。
プレビューを繰り返しブラッシュアップ
一度編集した映像は繰り返しプレビューして、良い編集ができているか細かくチェックします。そうすることでテンポが悪かったり、間延びしていたりする場面が見えてくるので、その部分をカット、手を加えるなどすることで、より気持ちよく見られる映像に仕上がっていきます。
作ったものをあらためて客観的に見るスタンスが重要です。
編集はプロユースのソフト
メインで使っている編集ソフトはプロも使用する「EDIUSPro」(価格は5万円弱)。とにかくサクサク動くのが魅力で、撮影時間が長くなる山の映像編集では便利です。
あとは「Adobe After Effects」(サブスクリプションで月額¥2,480)も併用。こちらは登山ルートのグラフィックを格好良く見せたいときなどに使います。
映像制作のワンポイントアドバイス
動画は映像に目がいきがちですが、音声が良くないとストレスを感じたり、なにを言っているのかわからなかったりと残念な映像になってしまいます。とくにグループ登山などだと会話も思い出の一部になるので、少しだけでも音声に気を配るとより良い動画になりますよ。
<丹野>
長さは2~3分程度が目安
個人的には風景と音楽が主役の映像を心がけており、長くなりすぎると飽きてしまうのではと考えています。なので、長さはだいたい2 ~ 3分に収まるように調整。編集で重要だと思っているのは音楽で、まずは撮ってきた映像に合う曲を探し、その長さに合わせて、曲のミュージックビデオを作るような感覚で編集しています。
Macユーザーなら無料で使える「iMovie」
メインの編集ソフトは「Adobe Premiere Pro」(サブスクリプションで月額¥2,480)。機能が豊富で、利用者も多いので参考になるサイトや書籍も多数あります。
ただ、頻繁に使用するのでなければ割高になるので、その場合はMac 限定ですが無料で使える「iMovie」がおすすめ。機能は一通り揃っており、スマホアプリもあります。
曲は探してストックしておく
音楽の入手先としてよく利用しているのは「Artlist」というサイトです。サブスクリプションで利用でき、バリエーションに富んだクオリティの高い楽曲が揃っています。
ただ、最近利用者が多くなってきたのもあり、他の同じようなサイトも利用し、暇をみては気に入った曲を見つけてストックするようにしています。
映像制作のワンポイントアドバイス
撮影してから日数が経ってしまうと、山に行ったときの印象が薄くなり、編集に対する熱も冷めてしまうので、撮影後はなるべく早めに編集するように心がけています。仲間とシェアする場合も、そのほうが喜んでもらえますし、より思い出として残りやすくなります。
<かほ>
最初の3~6秒に力を入れる
仲間内だけでシェアするならあまり気にする必要はないかもしれないですが、ネットなどで多くの人に見てもらいたい場合には、映像のアタマの部分に力を入れるのが大事です。
具体的には最初の3 ~ 6秒くらいの映像が重要で、きれいな景色、おもしろい映像などで目を引くことができたら、全体を見てもらいやすくなると思います。
音楽は自然の音を生かしながら
登山の映像なので、作り物の音よりはやはり自然の音を聞いてもらうのが一番。そのため、余計な音は入れすぎないように注意しています。ただ、あまりに静かだと退屈になってしまうこともあり、そんな場合は効果音でメリハリを付けます。
音楽はフリーの音源サイトを使用し、山行の状況、テンションに合ったものを選んで使っています。
スマートフォンで簡単に編集できる「InShot」
編集ソフトはアップルの「Final Cut Pro」がメインです。細かい編集がしやすいですが4万円弱するソフトなので、手軽に編集をしてみたいという場合には「InShot」というスマホアプリがおすすめ。
さまざまな編集が可能ですが、無料版だとアプリのロゴが入るのがネック。有料版を購入すればロゴを消すことができます。
映像制作のワンポイントアドバイス
個人的にはYouTubeで多くの人に見てもらいたいのもあり、いかに飽きない映像に仕上げるかが重要だと思っています。そのためには、途中に写真を入れたり、BGMを使い分けたり、笑いの要素を入れたり。いろいろ試してみると作ることが楽しくなってきますよ。
We are YamaTubers
イタガキ▲さん
アクションカムを駆使したライブ感の強い映像を中心に、ミラーレス一眼のクオリティの高い映像を組み合わせて構成した動画が人気のユーチューバー。撮影機材に詳しくギアレビュー動画なども数多く投稿している。YouTubeチャンネル「ITAGAKI.TV」。
丹野直人さん
映像と音楽の組み合わせを重視したメロウなイメージの動画を展開。ミラーレス一眼にジンバルを組み合わせることで生み出される、流れるように滑らかな映像が堪能できる。YouTubeチャンネルは「ひとり登山部LOG」だが、ふたり登山が一番多い?
かほさん
日帰りや山小屋泊登山を中心に、背伸びしない等身大の山登りの記録を映像に残す最近注目の女性ユーチューバー。使用する機材はiPhone、自撮り棒のみで、映像撮影の初心者でも参考にしやすい撮影スタイル。YouTubeチャンネル「元OL登山日記byかほ」。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。