ソロ登山、ここに注意!グループ登山とはここが違う。
PEAKS 編集部
- 2021年06月05日
INDEX
グループ登山が会社員なら、ソロ登山はひとり親方の個人事業主。同じ登山をしていても、その難易度や心構えはまったく異なってくる。そのあたりの違いを軸に、ソロ登山ならではの注意点を解説してみよう。
文◉森山憲一 Text by Kenichi Moriyama
イラスト◉藤田有紀 Illustration by Yuki Fujita
出典◉PEAKS 2020年9月号 No.130
ソロはグループ登山より1.5倍くらい難しいと心得よ
難しくなる理由は主に3つ。ひとつは、進路や天候などすべて自分で判断しなくてはいけないこと。次にアクシデントがあったときにもすべて自力で解決しなくてはならないこと。最後に精神的なこと。
難所を前にしたとき、ソロのときと仲間がいるときでは、受けるプレッシャーが大違い。これらの事情により、同じ山でも難易度がまったく異なって感じられる。その差は体感1.5倍くらいあると想定しておくべきだ。
慣れないうちは人気コースかなじみの山域へ
ソロ登山初心者に無理は禁物。過去にラクに登った記憶がある山でも、ソロで登れば意外なほど大変な思いをするのはよくあること。ソロの場合、グループで登った経験はあまりあてにならないことが多い。慣れないうちは自分を過小評価するくらい慎重な計画を立てよう。
計画時はもの足りなく感じるかもしれないが、実際に登ってみればこれでよかったと思うはず。くり返しになるが、ソロのときは、グループ登山と比べて、同じ山でも1.5倍くらい難しくなることを忘れずに。
登山届は超絶重要!
ソロ登山の場合は、登山届が自身の生命線というくらい重要だ。考えてみてほしい。登山届を出さずに、そして家族に詳しい行き先を伝えもせずに出かけた先で、アクシデントで動けなくなった場合。頼れる人はだれもおらず、これで行方不明になった登山者は毎年のようにいるのだ。
このときに唯一の希望となり得るのが登山届。これを提出していて、家族や知人から捜索要請さえ出れば、いつか救助が来てくれるという望みがつながる。登山届なしでソロ登山をするのは、クライミングでフリーソロをするようなものと心得よう。
家族に行き先を必ず伝えておく
じつは登山届よりこちらのほうが重要度は高い。登山届の主目的は、なにかあったときに、救助隊がどこを探せばよいのかなどの情報を得ることにある。それは家族や知人に伝えておくだけでも目的は達せられるもので、自治体などでも必ず家族に伝えておいてほしいと推奨している。
ひとり暮らしの人は、友人や職場の仲間などでもいい。自分が帰ってこないときに気付いてくれる身近な人に必ず行き先を伝えておくこと。
山岳保険にも加入する
ソロ登山にかぎらないが、万一に備えて山岳保険に加入しておくことはとても大切。保険とは異なるが、「ココヘリ」などの捜索サービスも充実してきており、これはソロ登山者にはとくに利用価値があるものといえるだろう。
ところで、近年、注目されているのは、行方不明時の対応。行方不明では7年間も死亡保険金がおりず、遺族がたいへん苦労する。そんなことにならないように、万一の備えをしっかりしておこう。
エマージェンシーキットを普段より充実させる
応急用品やリペアキットなどの非常用具は、グループ登山なら、万一持っていなかったとしても仲間から融通してもらえる。しかしソロ登山ではそうはいかない。自分が持っていなかったら、ケガの処置もできないし、道具の故障も直せない。
山中で進退窮まることが予想されるので、いつもにもまして、エマージェンシーキットは充実させておこう。その際は量よりも品数。少量ずつでいいので、いろんなものを持っておこう。
万一に備えて目立つ服装にする
山岳救助隊によれば、ヘリコプターからいちばん見つけやすい色は赤やオレンジなどだという。逆に、圧倒的に見つけづらいのは黒や暗めのアースカラーなど。ウエアや道具の色は好みも大きい部分なので、救助時の見つけやすさだけで選ぶのも味気ない話だが、万一のときを考えれば、頭に入れておいてもいいだろう。
ソロで行くときは、グループのときよりやや明るめの服装を心がける、くらいでも役に立つことはあるはず。
道に迷ったときは、まずは腰を下ろす
ソロ登山で道に迷うと、ものすごく不安になるもの。それが日暮れが迫っている時間であればなおさらだ。こういうとき、正しい道に復帰しようと考えても、たいていその判断は間違っており、かえってキズを深くする結果に陥る。
時間の無駄に思えても、一度立ち止まり、コーヒーでも淹れて落ち着こう。30分もすれば冷静さを取り戻し、自分でも驚くくらい、焦りで視野が狭くなっていたことに気づくはずだ。
ビバーク経験もしておきたい
ソロ登山をするなら、ぜひビバークを経験しておくことをおすすめしたい。おだやかな条件を選んで、一度、ツエルトやエマージェンシーシートのみで一夜を明かしてみよう。
その経験は自分に大きな自信をもたらす。想定外の事態で日が暮れてしまったとしても落ち着いていられるようになり、登山者として確実にステージアップできるはず。コンパクトなツエルトや防寒着の重要性も身をもって理解できることと思う。
携帯電話の電池切れに注意
いまや携帯電話は登山の生命線といえる。同行者に頼れないソロ登山の場合はなおのこと重要だ。もっとも注意すべきは電池切れ。歩行中は機内モードにしてバッテリー消費を節約したり、予備のモバイルバッテリーを持つなどの対策は常識化している。
落としたり濡らしたりして故障させてしまうのも要注意。耐衝撃ケースやストラップを装着するなどして対策しておこう。充電ケーブルの予備を持つことも意外と重要。
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文◉森山憲一 Text by Kenichi Moriyama
イラスト◉藤田有紀 Illustration by Yuki Fujita
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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