中上級者向け軽量ソロテントの選び方 〜テントのタイプから選ぶ〜
PEAKS 編集部
- 2021年10月11日
軽いテントがほしいといっても、ウルトラライトなものから、ある程度ハードユースにも対応してくれるものまでさまざま。軽さだけをとるならシェルターで決まりだが、北アルプスでも使うことを考えるなら、もう少し機能が欲しい。
山岳ライターが、自分用ソロテントを新調した自身の経験から選び方のポイントを解説。今回は数多あるソロテントの中からタイプによって絞り込む考え方を紹介しよう。
文・写真◉森山憲一 Text & Photo by Kenichi Moriyama
製品写真◉廣瀬友春 Product photo by Tomoharu Hirose
出典◉PEAKS 2018年10月号 No.107
軽さと使い勝手のバランスに優れるのは?
軽さと引き換えに捨てざるを得ないこと
ソロテントを選ぶ際、まず考えることは、以下の3つの要素になるだろう。
- 価格
- 軽さ
- 汎用性
これは、ほとんどの人にとって気になることだと思う。③の汎用性とは、低山から高い山まで、あるいは、夏山から冬山まで、さまざまなシチュエーションで使えるかどうかということ。自分の山行すべてをひとつのテントでまかないたいというのは、だれでも考えることであるはず。
そして、汎用性が高いということは、耐久性が高いということともほぼ同義。さまざまなシーンで使えるということは、森林限界上や雪山も想定するだけに、強度高く作られている場合がほとんどだからだ。つまり長く使えるものといっていい。
1㎏以下でそんなテントがあれば言うことはないのだが、残念ながら②と③を同時に満たすテントは存在しない。ほとんどの場合、このふたつはトレードオフの関係となる。
軽さをとれば汎用性は犠牲になるし、いろいろなシチュエーションで使いたいのであれば、ある程度の重さは覚悟しなくてはいけない。価格の高さでそのジレンマを解決しているモデルもあるが、それはあくまで例外的だし、完璧に解決できているわけでもない。だから悩ましいのである。
居住性と耐久性の高さはあきらめる
さて、価格をのぞいて、②③の要素を、テントのタイプ別におおまかにマッピングしてみたのが下の図である。
このうち、下の欄(重量が「重い」ほう)に位置するテントは、今回は完全に対象外である。私が求めるのは、夏山縦走用の軽いテントであるからだ。雪山でも使えるエアライズを持っているので、オールシーズン使えるという要素は考える必要がない。
問題は上段に位置する4つのタイプからどれを選ぶかだ。
シェルター&ツエルトは、当初は真剣に検討した。これの唯一最大の長所は軽いこと。500gを切るのも当たり前であり、エクストリームなものなら200g台も狙える。この軽さは圧倒的な魅力である。
一方で欠点は、軽量コンパクトなことと価格が安いこと以外すべて。まず、居住性が低い。内部空間が狭かったりフロアレスであったり、結露がひどかったり。次に、設営に手間がかかる。ポールを省略して張り綱で立てる構造なので、立てるのに時間がかかるうえに設営場所の自由度も低い。そして風に弱い。これらの欠点は、森林限界を越える場所でとくに問題となる。その圧倒的な軽さの魅力に、一時はチャレンジしてみたい気持ちが盛り上がったが、よくよく考えた末にそこまでは振り切れず、選択肢から外すことにした。
次に選択肢から外したのは、「ダブルウォール」。通常はここから選ぶのがスジであるし、とくに、初めてテントを購入するならば、これ以外にないともいえる。ただし私は、ダブルウォールの定番的な存在となっているエアライズやコッパースプールを持っている。同じタイプを買ってもしかたがないし、いかに軽いものを選んだとしても、大幅な軽量化は望みにくい。よって、これも基本的に考えないことにした。
候補となるタイプはふたつ
そこで残ったのが、「超軽量ダブルウォール」と「シングルウォール」。
超軽量ダブルウォールとは、具体的には、1㎏を切るダブルウォールテントをさしている。これらは、テント本体(インナーテント)にメッシュ生地を使っていたり、半自立式といわれる簡素なポール構造を採用していたりするものが多い。ダブルウォールならではの居住性は確保しながらも、強風や低温などの悪条件には少々弱い部分があるのが難点だ。
一方、シングルウォールは、防水透湿性のある生地を本体に使うことで、フライシートを省略したタイプ。パイネの「Gライト」が長らくこのタイプの定番的存在だったのだが、近年、Gライトよりは防水性も透湿性も落ちるが、そのぶん薄手でさらに軽く作られた「自立式シェルター」というべきモデルが増えてきている。これらは、風にも比較的強く、設営が簡単という利点がある。一方で、結露しやすく、前室がないのが、夏山縦走用としては使いにくいところ。とくに、個人的には、前室がないのは痛い。軽さとシンプルさの魅力には抗しがたいが、ここが最大の問題点だ。
さらに、近ごろ、インナーテントにメッシュを採用せずに1㎏を切るダブルウォールテントがいくつか登場している。これらは超極薄生地を使用しているので、取り扱いには気を遣うけれど、メッシュより気密性のあるインナーテントは、北アルプスなど標高の高いテント場では暖かく眠れそうでやはり安心。ダブルウォールは選択肢から外したとはいえ、この重量ならば検討に値する。
扱いにくさは使い方でカバー
ねらいどころは決まったが、これらはいずれも、1㎏以下という超軽量を実現しているだけに、それなりになにかしら設計上の無理がある。超極薄生地を使っていて破れやすかったり、ポールを簡素化しているために張り綱を張らないと自立しなかったり、有効居住空間が極度に狭いなど。
これらの問題は覚悟のうえなので、天候が悪いときは使わないなど、使い方でカバーしていくつもりだが、それでも、できるだけ問題が少ない物を選びたい。
そこで次は、現場で使ううえで問題になりそうなディテールの部分を詳しく比較検討することにした。具体的に検討した部分を、次回説明しよう。
山岳テントのタイプ
重量と汎用性を軸に、各タイプをマッピングしてみた。汎用性とは、さまざまなシチュエーションへの対応力とも言い換えられる。端的に言えば、図の右にいくほど過酷な環境にも耐えられるテントということ。逆に左側は、低山などマイルドな環境に向いているもの。
ダブルウォール
インナーテントの上にフライシートをかぶせた二重構造で、山岳テントの基本形となるタイプ。各メーカーからさまざまなモデルが発売されており、バリエーションが豊富。
シングルウォール
防水あるいは耐水加工を施した生地を使用し、フライシートを省略したテント。設営が簡単で、一般的に風にも強い。使用されている生地によっては結露しやすいところに注意。
超軽量ダブルウォールシェルター&ツエルト(メッシュインナー)
インナーテントにメッシュ生地を採用して軽量化を図ったもの。フライシートを合わせるので雨には強いが、メッシュは風を通すので保温性が低く、寒い時期の使用には向かない。
シェルター&ツエルト
トレッキングポールや張り綱を利用して設営するタイプ。一枚地でとにかく軽量コンパクトになることが利点。生地には耐水加工が施されているが、豪雨時は雨漏りの覚悟が必要。
オールシーズン
強度の高いパーツを使い、気密性の高い構造にするなどして、強風・低温にも対応するようにしたタイプ。オプションを使うことでオールシーズンに対応するモデルもある。
ツーリングテント
バイクツーリングや、定着型のテント泊登山を想定したタイプ。居住空間が広くて快適なタイプが多いが、軽量化はあまり考えられていないので、長期縦走には向いていない。
>>>使い勝手でさらに絞り込む後編につづく
森山憲一
山岳ライター。元PEAKS副編集長。登山歴は30年。テント泊に快適性はあまり求めない。ウルトラライトほど突き詰めはしないが、装備の軽量コンパクト化は好きなほう。1泊の夏山ソロ縦走なら、近ごろは40ℓのバックパックでほぼ十分。これを30ℓまでコンパクト化したいというのが、現在の課題。
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文・写真◉森山憲一 Text & Photo by Kenichi Moriyama
製品写真◉廣瀬友春 Product photo by Tomoharu Hirose
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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