冬山が楽しめるルートガイド12選・後編
PEAKS 編集部
- 2021年12月10日
INDEX
前半に引き続き、首都圏からアクセス良好の日帰りや1泊2日でトライできる、入門〜中級者向けの代表的な冬山ルートをご紹介。装備やルートをチェックして、今年の冬山登山を充実させよう。
>>>前編はこちら
文・写真◉編集室アルム(野村 仁) Text & Photo by ALM OFFICE
出典◉PEAKS 2019年12月号 No.121
【大遠見山(北アルプス)】
五竜・鹿島槍ヶ岳の豪快な展望。
コースタイム
6時間10分(日帰り)
総距離
7.5km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
五竜岳への冬山ルートは中級以上だが、遠見尾根だけなら比較的簡単に登れる。スキー場のゴンドラとリフトで最上部へ上がる。左に回り込んで地蔵ノ頭をエスケープし、バックカントリーの入山口から入山する。最初から急登となり、稜線上に出てルートは右に曲がる。支尾根が右から合流する一ノ背髪、二ノ背髪をすぎ、尾根が緩やかになると五竜岳と遠見尾根上部が見えてくる。小遠見山へ登ると鹿島槍ヶ岳が圧倒的な姿でそびえる。ルートは90度右折して鞍部に下り、中遠見山へ登り返す。手前の稜線は細いところがあるので、転倒しないよう慎重に。中遠見山からは広々とした雪の散歩道が大遠見山、西遠見ノ池へと続いている。ゴンドラの最終時刻を考えて引き返す地点を決めよう。通常は大遠見山付近で戻るのが適当だろう。
アクセス
JR神城駅から徒歩30分で白馬五竜スキー場、ゴンドラ8分でアルプス平(往復とも)。登りのみリフトで地蔵ノ頭直下へ上がれる。クルマの場合、長野道安曇野ICまたは上信越道長野ICから約1時間。
アドバイス
降雪後でトレースが薄い場合、ラッセルになると2~5倍の時間がかかり、それだけ日帰りできる距離も短くなる。スキー場内を徒歩で下ることは禁止されているので、ゴンドラ最終時刻に遅れないように。
【谷川岳】
豪雪の山で、本格的冬山登山の第一歩。
コースタイム
6時間10分(日帰り)
総距離
6.5km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
豪雪で有名な谷川連峰で、条件が良ければ初心者にも登れるのが天神尾根ルートだ。ロープウェイ天神平駅を出て、スキー場の右端を急登して田尻沢ノ頭付近に出る。北上してアップダウンをくり返すこと数回で熊穴沢避難小屋に着く。小屋は雪の下に埋まり、目印の赤い鉄柱だけが立っている。ここから尾根は急登し、すぐに森林限界を越えて一木一草もない純白の別世界となる。40〜50分登ると唯一の目印となる露岩があり、「天狗の休み場」「天狗の腰掛岩」などと呼ばれている。さらに1時間ほどがんばれば肩ノ広場に着く。そのまま北方向に10分ほどでトマの耳頂上だ。頂上は狭いため、肩ノ小屋周辺で休憩する人が多い。約20分のオキの耳まで足を延ばせばトマの耳の美しい姿が望める。標高もオキの耳のほうが高い。
アクセス
JR水上駅からバス23分で谷川岳ロープウェイ土合口駅、ロープウェイ15分で天神平駅(往復とも)。クルマの場合、関越道水上ICから約14㎞、およそ25分で谷川岳ロープウェイ。駐車場(有料)あり。
アドバイス
2月前半までは冬型の悪天候が続きチャンスは少ないが、2月後半から晴天の日が多くなってくる。ルート全般で基本的なアックス・クランポン技術が必要。頂上稜線の東側に発達する雪庇は要注意だ。
【唐松岳(北アルプス)】
展望がすばらしい北アルプスの初級冬山。
コースタイム
6時間30分(日帰り、または山小屋泊)
総距離
10km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
北アルプスの貴重な初級登山ルート。スタート地点の八方池山荘に泊まれば余裕をもって行動できる。雪の状態によってスノーシューかクランポンかを選ぼう。山荘の左横からひと登りで八方山ケルンに出ると、五竜岳と鹿島槍ヶ岳の迫力ある姿に圧倒される。閉鎖中のトイレの横を通り、第2ケルン、八方ケルン、第3ケルンと通過する。少しはっきりしてきた尾根筋を登り、下ノ樺のダケカンバ帯に入り、右折して尾根沿いに登ると上ノ樺を通る。右下の斜面一帯がテント適地になっている。上に見える丸いピークを目指して20~30分登ると、最後の丸山ケルンだ。ここから尾根の両側が急傾斜になり、転落・滑落への注意も必要となる。主稜線に合流する最後のピークを左に巻いて唐松岳頂上山荘の真上に出ると、剱岳の雄姿が飛び込んでくる。ここから唐松岳は標高差100mほど、約30分のがんばりで頂上に立てる。後立山連峰、剱・立山連峰はじめ、すばらしい展望が広がっている。下ノ樺から下部はルートロスト(道迷い)に注意が必要である。
アクセス
JR白馬駅からバス5分で白馬八方尾根スキー場、徒歩10分でゴンドラ八方駅、ゴンドラとリフト2基計約30分で八方池山荘前。クルマの場合、長野道安曇野ICから約80分、または上信越道長野ICから約1時間でスキー場へ。
アドバイス
初級とはいえリスクの高いルートで、アックス、クランポンを使用する区間も長い。できれば中級以上の引率者と登ったほうが安心である。天候を慎重にチェックして、悪天候が予想されるときは登らないようにしよう。
【木曽駒ヶ岳(中央アルプス)】
もっとも容易に登れる3,000m級冬山。
コースタイム
4時間30分(日帰り)
総距離
4.5km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
千畳敷の底から木曽駒ヶ岳まで高 千 低差350mほど。もっとも楽に登れる3,000m級の冬山といえる。ロープウェイ駅舎前のベンチでクランポンを装着する。建物の前を右へ進み、一度カール底まで下りて、そこから乗越浄土へまっすぐに登る。この区間は雪崩の危険箇所なので途中休憩はNG。苦しくても立ち休みでしのごう。乗越浄土に出て左折すると、目の前に宝剣山荘が建っている。その裏手へ回り、右折して中岳へ向かう。広い雪原から緩やかに登っていくと祠のある中岳頂上に着く。ほぼ直角に左折して頂上山荘(閉鎖中)のある鞍部へ下り、高低差100mほど登り返すと木曽駒ヶ岳頂上だ。御嶽・乗鞍、北・南アルプス、富士山など雄大な展望が広がる。下山は中岳付近での道迷いと、乗越浄土からの急斜面での滑落に注意が必要だ。
アクセス
JR駒ヶ根駅からバス42分でしらび平、ロープウェイ8分で千畳敷へ。クルマの場合、中央道駒ヶ根ICから約2㎞、およそ3分で菅ノ台バスセンター大駐車場(有料)。バスに乗り換え約30分でしらび平へ。
アドバイス
千畳敷〜乗越浄土間は雪崩が発生するので、危険性を判断すること。少しでも危険なときは入山してはいけない。滑落注意箇所は乗越浄土直下の急斜面、中岳の南東側斜面。中岳は道迷い遭難もある。
【赤岳(八ヶ岳)】
アイスアックス&クランポンで登る代表的ルート。
コースタイム
10時間(山小屋泊)
総距離
18.5km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
美濃戸口から入山し、1日目は赤岳鉱泉に泊まる。2日目は行者小屋前でクランポンを装着し、道標を確認して地蔵尾根ルートへ。森林限界から多数のハシゴとクサリが設置されているが、クランポンをしっかり効かせて自分の足で歩くことが大切。稜線に出るといったん傾斜が緩む。天望荘の先から正面に迫る赤岳の斜面に取り付き、岩でクランポンをガリガリ鳴らしつつ一気に登る。北峰から稜線を30mほど進んで最高点の南峰に着く。見渡す限りの大展望を十分に楽しんだら、気持ちを入れ直して下りにかかろう。岩稜を南へたどり、浅いルンゼ状の岩壁に出て急下降する。40〜50mほど下って右へトラバースし、中岳へ続く主稜線上へ抜けると難所は終わる。中岳分岐で右折して小さな尾根を下るとやがて樹林帯となり行者小屋に戻る。
アクセス
JR茅野駅からバス40分で美濃戸口へ(往復とも)。クルマの場合、中央道諏訪南ICから約10㎞、およそ20分で美濃戸口へ。駐車場(有料)あり。雪道対策をした車高の高い車なら美濃戸まで入れる。
アドバイス
ガイドレスで登るためには、基本的なアックス・クランポン技術を身につけていることが条件になる。しっかり学んで練習してほしい。また、最近は多くの人がヘルメットを被るようになっている。
【赤岳〜横岳(八ヶ岳)】
個性的な3峰を結んだミニ縦走。
コースタイム
12時間(山小屋泊)
総距離
22.5km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
赤岳や阿弥陀岳に登れたら、次に挑戦したいルート。一日目は赤岳鉱泉に泊まり、2日目はできるだけ早い時刻に出発する。まず文三郎道から赤岳に登るが、ここまでで危なっかしいメンバーがいた場合は地蔵尾根で下山しよう。横岳南端の二十三夜峰はリッジ沿いを登り、途中から右側を巻く。続く日ノ岳も右側を大きく巻き、鉾岳との間の雪のルンゼを直上して稜線に戻る。振り返ると赤岳が美しい姿で望まれる。稜線の左(西)側へクサリ場を下りて鉾岳西面の長いトラバースになるが、足元が切れ落ちていて緊張するところだ。稜線に戻って石尊峰、三叉峰は問題なく最高点の奥ノ院に着く。ここから最後の難所になる。高度感のある細い雪稜を下り、ハシゴで稜線の右側へ下りたらバンドからギャップを左側へ越え、クサリ場のバンドを伝って右側へ抜ける。横岳の領域後は山容が一変して穏やかになり、台座ノ頭、大ダルミ、硫黄岳へと気持ちよく歩く。硫黄岳で左折して主稜線から分かれ、赤岩ノ頭の手前で左折して雪面を下る。まもなく樹林帯に入って赤岳鉱泉に下りる。
アクセス
JR茅野駅からバス40分で美濃戸口へ(往復とも)。クルマの場合、中央道諏訪南ICから約10㎞、およそ20分で美濃戸口へ。雪道対策をした車高の高い車なら美濃戸まで入ることも可能。美濃戸口、美濃戸とも有料駐車場がある。
アドバイス
積雪状況によって難しさが変わり、雪が多いほど難しい。とくに降雪直後でトレースがない場合は、中級者でも困難だろう。降雪後は無理をせず、トレースが落ち着くまで待つことをすすめる。好天で条件のよいときに挑戦しよう。
※この記事はPEAKS 2019年12月号 No.121からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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