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奥久慈男体山・女体山 漫遊ハイク|旅して、歩いて、県北ロングトレイルを2日で堪能

昨春に続き、今春も総延長320㎞の茨城県北ロングトレイルの一部が開通する。そのハイライト区間となる約15㎞を温泉宿に泊まりながらじっくり、のんびり歩いてきた。これまでなじみのなかった関東最北端の自然や文化、風土を五感で満喫する歩き旅へ。

旅をしたのは

森山伸也
アウトドアライター。上越国境の豪雪地に居を得て、先人の知恵を学びながら暮らす。北欧のロングトレイルに精通し、著書『北緯66.6 ラップランド歩き旅』 本の雑誌社 。Twitterアカウント@moriyamashinya

知らない土地の食、暮らし、文化に触れる歩き旅は、なんと刺激的なことか。

これまで日本全国津々浦々のトレイルを歩いてきたが、茨城県でのアウトドア体験といえば、久慈川と那珂川でのカヤックツーリングくらい。そんな未知の山域、茨城県北にロングトレイルが続々と開通していると聞いて、居てもたっても居られず電車に飛び乗った。

「茨城の山といえば、日本百名山の筑波山が有名ですが、それに匹敵するくらい奥久慈男体山は県民に人気の低山です。県境が近い福島県からも雪のない岩山へと登山客が集まり、1年を通してにぎわう修行の山なんです」

情報収集のために立ち寄った水戸市のアウトドアショップ「ナムチェバザール」代表の和田幾久郎さんが、これから向かう男体山について愛情込めて教えてくれた。和田さんは茨城県北ロングトレイルの発起人であり、ボランティアを募って現在進行形でトレイル整備を進める中心人物。県北の風光明媚なポイントを集め、繋ぎ、磨き、ロングトレイルとして仕上げて、地元の魅力として発進し、また自分たちの故郷茨城に誇りを持つこと。そんな思いが、このロングトレイル誕生の発端だと言う。

奥久慈男体山と久慈川とJR水郡線

ロングトレイルとは、山頂を目指す登山とは異なり、地元の自然や歴史、風土に触れながら登山道はもとより古道や車道をつなげて旅をするように歩く長い道のことである。茨城県北ロングトレイルは、久慈川に沿って走る水郡線を跨ぎ、古道から水戸光圀公も登ったとされる名山を踏んで、築100年以上の古民家をかすり、地元民の暮らしのなかを突っ切っていた。マイカーがなくとも水戸と 郡山をつなぐ水郡線を使ってトレイル・インアウトできるのも理想的なロングトレイルのカタチである。

今回歩くセクションは、男体山と女体山 (長福山) の2座を踏むワンデイコース。入山前日、久慈川のほとりの和菓子店で行動食として揚げ饅頭を買い、ひさびさに再会した編集泥谷と宿で嗜む地酒を老舗酒蔵で入手して、旅情たっぷりの湯治宿に投宿した。

厳選した地元食材を使用した大福や団子が人気の「奥久慈屋 吉餅」
酒蔵をめぐる楽しみもある。こちらは「根本酒造」

露天風呂で出会った地元のおじさんと話が弾んだ。「新潟から男体山に登り来たと?それはうれしいな。下りたら麓の蕎麦処へ行くといい。うまいぞ」和田さんの言葉を思い出す。「なにしろ県北の人は、明るくて、人柄がいいんですよ」ロングトレイルは、この地に踏み入れた瞬間からはじまっていた。

左上)地元民に愛される湯治宿「月居温泉 滝見の湯 白木荘」へ投宿。 左下)鮎の塩焼き、刺身こんにゃくなどこの地で採れ、この地に生きる人によって料理された食事はなによりのエネルギー源となる。 右)しっとりとぬめりのある源泉で疲れをほぐす

歩くことは、その土地をよく知る最良の手段である。

清流・久慈川を眺め下ろす車窓の旅に別れを告げて、JR水郡線上小川駅から歩き出す。約1㎞道を歩いて、大子町立南中学校の裏から登山道へ。頻繁に見かけるロングトレイルの黄色いテープを目印に歩を進めた。まず目指すは、女体山とも呼ばれる標高439mの長福山だ。

左)JR水群線上小川駅から歩きはじめ、大子町立南中学校の東にある登山口からトレイルイン。右)茨城県北ロングトレイルの黄色いテープが道案内してくれる

山麓を南へ回り込むと、長福観世音堂へ続く約300段の石段が立ちはだかり胸を突く。竹林から差し込む神々しい朝日に見惚れながら息を整え、木林の尾根を登ると長福山山頂に着いた。次なる目的地となる男体山の鋭峰が青空を劈(つんざ)いていた。男体山に対して、こちら長福山は女体山と呼ばれていただけあって、たおやかでまさに対照的な山容だ。

男体神社までの下りは、今回新たに整備された区間。整備されて間もないためツルッとした斜面に足の置き場がなく、脇の低木につかまりながら慎重に下った。

左)長福山の麓にある長福観世音堂へ続く約300段の石段。右)標高496mの長福山から男体山を望む

男体神社に参拝し、長福集落を横目にアスファルトを歩く。柚とタラノメが育つ畑で薪を集めて紐でひと抱えにまとめるおばあちゃんがいた。お風呂の炊き付けにするのだろうか。豆を煮る燃料にするのだろうか。自分の知らない土地で、自然に寄り添うていねいな暮らし。歩きのスピードでしか出会えないうれしい光景だった。滝倉トンネルの手前から右手の登山道へ再び入山。朽ち果てた木製の鳥居、巨岩に祀られた石仏が、かつての修験道の場であったことを教えてくれた。

しばらくすると大円地からの健脚コースと合流し、ほかの登山者の姿が見えた。ここから山頂まで標高差300mあまりクサリ場が続く。 足元の岩は脆い。太陽の位置が高くなると凍った地面が緩み、あちこちで小さな落石がした。落石を起こさぬよう慎重に足を置く。クサリに頼ることなく、三点支持を意識してゆっくりと。

男体山の健脚コースはクサリ場の連続。さすが修験の舞台である

山頂の肩に乗ると南へ視界が開け、太平洋から水戸市街、雪を被った那須連山まで一望できた。「空気が澄んだ日は、ここから富士山まで見えるんだよ」水戸黄門のような白い髭を蓄えたおじいさんが教えてくれた。かの徳川光圀公もこの頂を踏んだという。山頂には南岸低気圧が置いていった雪がまだ残っていたが、多くの登山客でにぎわっていた。男体神社奥社が岩壁の上に建ち、麓の村々を守っていた。

左)足元が切れ落ちる男体山山頂には男体神社奥社が建立されている。右上)視界が開けると雪をかぶった筑波山や那須連山が見渡せた。右下)男体山からの360度大展望は茨城百景
垂壁がそそりたつ男体山の南壁。その勇姿はバッジにも650円。

大円地越までの雑木林に目を奪われた。ブナ、ミズナラ、ゴヨウツツジ、ネズミサシ、ケヤキ……。樹種が豊富で、一本一本が太く立派な枝ぶりであった。温暖な関東の森に東北の植生が入り混じった明るい疎林。葉が落ちた冬は視界が 開けて気持ちがいいけれど、吹きの春や紅葉の秋もまた違った顔でハイカーを迎えてくれるだろう。奇岩との新緑、紅葉との組み合わせも見てみたい。また来よう。

左)トレイルは男体山から南へと進路を変えて篭岩、亀ヶ淵と続く。 陽に輝く太平洋と水戸市街を一望。右)日当たりのいい尾根では樹種の多さに圧倒された。 吹いた春に歩きたい!

大円地超から沢沿いに標高を落とし、石組みの土台に瓦屋根の古民家が数軒建ち並ぶ大円地集落へ下山。軒下の煙突から薪ストーブの煙が流れ出る大円地山荘に立ち寄って、名物の手打ち蕎麦を陽だまりの縁側で啜った。素材の味を活かした上品な味付けが、吸収力ビンビンの疲れた体に染み渡る。お店を切り盛りする大森夫妻にお願いしてお庭で記念撮影。「わたしたちはいいから、お山の写真を撮ってよー」マスクの下に隠れていた笑顔は、眩しいほど明るかった。

左)石組みと瓦屋根の古民家が旅情を誘う大円地の集落へ下山。右上)大円地山荘の縁側で名物の蕎麦をいただいた。右下)春菊など季節の野菜を揚げた天ざる蕎麦が一番人気。険しい男体山登山のリカバリーにおすすめ

たった1日歩いただけなのに、なじみのなかった茨城県北の自然や文化、歴史が一気に身近に感じられるようになった。と同時に、歩行欲がどんどん高まっていく。さらなる出会い、トレイルの開通が待ち遠しい。やはり、その土地を知るには、歩くことが最良の手段である。

ACCESS

JR水郡線上小川駅を拠点とした周回ルート、もしくは大円地山荘から西金駅へ下るルートがおすすめ。車の場合、上小川駅前の駐車場が利用可。長福山や男体山に登るだけであれば、男体神社、大円地、古分屋敷、持方などの駐車 場を利用するのが便利。

ADVICE

トレイルの要所にはロングトレイルの黄色いテープが木々に巻かれているのでそれを頼りに歩けば 迷うことはないだろう。長福山から男体神社への下山道はかなり急でスリッピー。男体山南面の急登は後続者への配慮を忘れず、落石に注意してゆっくり登ろう

おすすめ立ち寄りスポット

根本酒造

日本酒「久慈の山」で知られる慶長8年(1603年)創業の老舗酒造。写真右の「カミマル純米大吟醸 40」は全日空のファーストクラスで提供される知る人ぞ知る銘酒だ

  • 茨城県常陸大宮市山方630
  • TEL:0295-57-2211
  • 営業時間 :10:00 〜16:00
  • 定休日:不定休
  • www.kujinoyama.com

奥久慈屋吉餅

茨城県オリジナル品種の豆「常陸大黒」を大子産コシヒカリで包み込んだ大福や団子が愛される和菓子店。トレイルフードには形崩れしない揚げ饅頭がグッド!

月居温泉 滝見の湯 白木荘

地元有志によって営まれ、地元民に愛される温泉宿。旅人に優しいスタッフのおもてなしと天然温泉で、心も体もポカポカ。リーズナブルな価格設定もありがたい。日帰り入浴可

  • 茨城県久慈郡大子町小生瀬2879-4
  • TEL:0295-76-0373
  • 料金:1泊2食  ¥6,650、素泊まり ¥4,150
  • https://shirokisou.com

大円地山荘

笑顔が素敵な夫婦、大森茂さんと洋子さんが、築100年以上の古民家で営むそば処。大円地駐車場から男体山へ続く登山道沿いにあり、晴れた日はハイカーで賑わう登山拠点だ

  • 茨城県久慈郡大子町頃藤2211
  • TEL:0295-74-0370
  • 営業時間:11:00~15:00
  • 定休日:月曜日、火曜日

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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