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八ヶ岳冬季バリエーションルート、赤岳主稜に挑戦!|#1 水野組!

八ヶ岳の冬季バリエーション人気ルートとして知られる赤岳主稜。

「あべちゃん、赤岳主稜、登ったことないの?」

赤岳主稜とは、八ヶ岳の冬季バリエーションの人気ルートとして知られていて、赤岳へ向かう一般登山道の途中から分かれ、西側の壁に沿って北峰を目指すルート「赤岳西壁主稜」を指す。その名前は何度も耳にしていたので、いつか登ってみたいと気になってはいたが、そもそも冬の赤岳は一般登山道でさえ登ったことがなかった。

「じゃあ、今度登りに行こう。連れていってあげるよ」

と、山岳ガイドの水野隆信さんが気前よくそんなことを言う。

もちろん私はふたつ返事。

「マジっすか? 行きたいです!」

赤岳鉱泉で前夜祭。

赤岳主稜に登る前に、赤岳鉱泉で前泊することに。そうすれば、翌朝早朝出発にならずに済み、余裕をもった工程で登れるとのこと。

「前泊するなら、アイスキャンディに登ってもいいですか?」

アイスキャンディとは、赤岳鉱泉の小屋の前に作られた人工氷瀑だ。この時期の風物詩といってもいいぐらい毎年の恒例で、年々知名度が上がっている。

私は数年前からアイスクライミングを始め、今年はとくにのめり込み、ついにアイスアックスとアイスクライミング用の縦爪のクランポンも購入し、いつにも増してやる気満々。そんなわけで赤岳鉱泉に泊まるなら、アイスキャンディに登らずにはいられない。

「しょうがないなあ」といいながらも付き合ってくれる水野さん。やさしいなあ。少し早めに待ち合わせ、アイスキャンディで遊ぶ余裕をつくってくれたのだった。

雲ひとつない快晴。「八ヶ岳ブルー」の空の下、薄着で登れるほどの気候。絶好のアイスクライミング日和だ。水野さんにロープを張ってもらってビレイしてもらい、モリモリと登り、腕がパンプするまで楽しんだ(翌日が本番だというのに、本当に筋肉痛になるまでやり込んでしまったのはここだけの話)。

夕食には赤岳鉱泉名物のステーキを楽しみ(じつは初めてだった)、酒盛りをし、翌朝起きれるか心配していた私をよそに、水野さんが早々に寝落ちしてしまったので前夜祭は強制終了。翌日のパフォーマンスのために睡眠時間をしっかり確保する。さすが山岳ガイドさんだ。

行者小屋を経て文三郎尾根分岐へ向かう。

翌朝も気持ちのよい快晴。風もほぼなく、陽が昇ると陽光の暖かささえ感じられる。悪天候で断念せざるをえないことだってあるという冬山登山。まずはこの好天に、お天道さまに感謝しなければならない。

赤岳鉱泉から行者小屋へ向かい、そこから先はヘルメット、クランポン、ハーネスを装着する。さらにその先、文三郎尾根の手前より、ハーネスにロープを結び、水野さんに安全確保をしてもらう。

「あべちゃんの力量を知らないから、ここからロープを繋がせてね」

当たり前なのかもしれないが、さすが安全管理を徹底している。じつは私はガイドさんとの山行は今回が初めてで、ロープを繋いでもらっての山行も初めてだ。これならどんなに切れ立ったリッジでも安心して登れそう。ロープで繋がれるというのは、それだけ安心材料になり、心の余裕にもつながるのだろうと感じた。やっぱり山岳ガイドさんって心強い!

迫るピーク、ついに西壁主稜ルートへ。

文三郎尾根の分岐地点までやってきた。ここから西壁主稜ルートに突入する。空を見上げれば、これから目指すピークが眼前に迫り、お尻の穴がきゅっと引き締まった。

水野さんが先行し、トレースを作ってくれ、そのあとを追う私。繋がれたロープが弛みすぎず、引っ張られすぎないように、ほどよい距離感を保ちながら。

岩に取り付く箇所にさしかかり、クイックドローを使ってランナーをセットしながら水野さんが先行する。1ピッチめは岩の上に雪がしっかりと被さり、アックスのピックを雪の斜面に突き刺しながら登ってゆく。水野さんがトレースを作ってくれているということもあるが、雪はしっかりと蹴り込めば不安定さはさほどなく、いまのところ怖いと感じるところもない。安定した歩みで先を進む。

ミックスクライミング、そして岩稜へ。

雪面から徐々に露出した岩稜へと突入。両手を使ってのクライミング的動作で登ってゆく。今回水野さんから教わった、アックスをバックパックのショルダーハーネスの肩と接する部分に挿しておくワザが本当に便利で、アックスを使わないシチュエーションでは肩に挿しておけば岩場で両手が自由に使え、また雪のセクションが出てきたらすばやく取り出せる。

そうして雪と岩のミックスクライミングを楽しみながら登る。

「あれ、ここが一応核心部だったんだけど、すんなり来れたねぇ」

雪の状態が良かったからか、天気が良かったからなのか、それとも水野さんのルートの取り方が上手だからか、不慣れなクランポンでの岩登りやアックスの扱いに慣れてしまえば難しいと感じるところはとくになく、断続的に表れる雪面と岩稜を登っていく工程は魅力的だった。始終笑みがこぼれていた。

そしてなにより景色が最高。うしろを振り返ると堂々たる阿弥陀岳が飛び込んでくる。こんなに晴れた日に、すばらしい景色に出逢えたことが大きなよろこびで幸せであることを登りながら噛みしめていた。

山頂の景色、やっぱり最高。

主稜ルートの終わりにさしかかると傾斜が緩まり、一般登山道と合流する。もう山頂は目前だ。冬季のあいだは閉ざされている赤岳天望荘をすぎ、見覚えのある祠が立つ頂へ。初めてこの時期に訪れた赤岳山頂。冬景色は少し目新しく、白く雪化粧した八ヶ岳の主脈はもちろん、北アルプスなど遠くの尾根までよく見えた。

最高の天気で楽しくたどり着けた赤岳。ここまで導いてくれた水野さんがいなければ、そう簡単には登れないのも事実。ルートファインディングや安全確保、技術面でのたしかさ。それらを確実にこなせなければ、自身で目指すことはかなわないだろう。まだまだ未熟な私に、こんな山の世界も見せてくれる水野さんにはやっぱり頭が上がらない。

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PROFILE

阿部静

PEAKS / 編集・ライター

阿部静

たっぷり歩くテント泊の縦走登山や雪山登山、クライミング、アイスクライミング、沢登り、テンカラ、バックカントリースキーなど、なんでもやりたい人。ライフワークは魚突きと山の湯探訪、狩猟採集にまつわる取材。

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