水めぐる神秘の島・屋久島。宮之浦岳縦走記~前編~【Women’s PEAKS 2022取材後記】
阿部静
- 2022年06月13日
INDEX
神秘の島・屋久島。今回私たちは初めてこの島に降り立った。目的は九州最高峰・宮之浦岳をめぐる縦走路を歩くこと。
本編は5月31日発売の『Women’s PEAKS 2022』に掲載。そちらのストーリーにこぼれた、裏話的な編集後記をご紹介。本編での写り手は鈴木千花ちゃんと編集・ライターの阿部であったが、こちらでは島の案内人・田平拓也さんとカメラマンの加戸昭太郎さんを中心にお届けしようと思う。
文◎阿部 静 Text by Shizuka Abe
写真◎鈴木千花 Photo by Chica Suzuki
モッチョムに見惚れ、翌日の登山への期待が高まる。
屋久島の山を縦走するなら、着いた初日は前泊するのがおすすめだ。飛行機を乗り継いだり、移動疲れで気が休まらないだろうし、麓の魅力も豊富にあるので併せて楽しみたい。「麓ガイド」は本編の『Women’s PEAKS 2022』で紹介しているのでここでは割愛するが、前泊する際は登山口のあるエリアの宿にすれば、当日朝のアクセスも良好。私たちは淀川登山口から入山の予定だったので、登山口から車で1時間ほどの場所に位置する「四季の宿 尾之間」に前泊することにした。
この宿からよく見えたのが、メインカットの写真のモッチョム岳。モッチョム岳はクライミングできる山と聞き、千花ちゃんも私も興味津々。しかも、モッチョムの名前の由来がまさか‶アレ″だなんて(詳細は本編にてご確認を!)。いろいろ気になってしまうモッチョム岳。しかし翌日から登る山はコレではない。「奥岳」とも呼ばれ、麓から臨むことは叶わない、隠された主峰・宮之浦岳を中心とする峰々へ向かうのだ。山旅前日からワクワクが止まらない!
田平さんの背中には、一体なにが詰まっているの……?
今回ガイドしてくれたのは屋久島の山々を知り尽くす、この道20年のベテランガイド、田平拓也さんだ。出発前、小誌編集長より「田平さんの料理は本当にすごいよ」と聞かされていて、それがどんなものなのか気になって仕方がなかった。それで現れた田平さんのこのバックパック姿。尋常じゃない。出発前に試しに背負わせてもらったけれど、「うひゃー! これで歩くの!?」といった感じ。この中身、一体なにが詰まっているのだろう。
突如神秘の小川、現る。
淀川登山口から入山し、原生林の木々に圧倒され、すでに屋久島が「本州の山とはなにかが違う」ということは感じ取っていたのだけれど、この鏡面のような小川に出逢い、歓喜と溜め息の大合唱。だってこんなに透明度の高い小川、見たことないんだもの。そして覆いかぶさる真っ赤な木々。
「これってなんの木なんでしょう?」
「ヒメシャラですね」
これが、あのヒメシャラ! こんなに赤々としていたっけ。存在感がありすぎて目を奪われる。スーパーベストコンビネーションなこの景色が、いまだに忘れられない。
ヤクシカの似合う、心和む湿原風景。
登山口から原生林の森を3時間ほど歩き続け、突然に森が開ける。ここは一体……雲ノ平?
「花之江河です」
こんな湿原風景もあるなんて。屋久島のポテンシャルがはかり知れない。遠くに真っ白なお尻をしたヤクシカの姿が見えた。今回初の目撃だ。湿原のなかを優雅に闊歩するヤクシカは、この景色にしっくりする。映画のワンシーンのような、ずっと見ていたい気持ちのいいシチュエーション。それを必死にカメラで追う私たち。
ときの流れがゆっくりと進む、のどかな景色をお茶請けに。
「ここで休憩しましょうか」と田平さん。そんな田平さんも、なんだかこの景色に似合う。
たっぷりとお湯を沸かしてくれ、田平さんが出発前に持たせてくれた「行動食セット」のなかからチゲスープをチョイス。ときたま田平さんが飛ばすドローンを見送り、時間がゆっくりと流れているように感じる、この、のどかな景色をお茶請けに。11月下旬のポカポカ陽気で気持ちのいい日向ぼっこタイム。
花之江河からシャクナゲの森へ。
花之江河から黒味岳へ目指す途中のシャクナゲ林。木のウネリ感が亜熱帯感を感じずにはいられない。このシャクナゲ、「ヤクシマシャクナゲ」という固有種らしく、もともとのルーツはヒマラヤだといわれているのでおどろきだ。一体、いつの時代にどうやって島にいきついたのだろう……? みごろは5月末~6月上旬。そのころのこの林の姿もいつか見てみたい。
それにしても、田平さんのうしろ姿にもオドロキ。
この記事の本編は『Women’s PEAKS 2022』にて掲載。こちらも併せて読めば、屋久島の魅力をたっぷり感じてもらえるはず。ぜひご高覧を!
SHARE