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ビッグデータを駆使した最新施策も。日進月歩する遭難対策の在り方に注目

1964(昭和39)年から毎年開催されている「全国山岳遭難対策協議会」。
コロナ禍のなか、令和4年度の協議会が霞ヶ関の文部科学省にて去る7月15日に開かれた。

オンライン参加を含め、およそ700名の関係者が参加

「登山における遭難事故を防止するため、山岳関係者や山岳遭難対策関係者の参加を求め、山岳遭難の原因等について研究協議し、今後の遭難対策の具体的施策に役立てる」

上記を趣旨としたスポーツ庁主催の協議会が本年度も開催され、警察官、消防士・山岳警備隊、さらにはオンライン参加を含めた山岳団体やさまざまな山岳関係者が一堂に集い、最先端の遭難対策に関する情報を共有した。

本年度協議会のコーディネーターを務めたのは、静岡大学教育学部教授の村越真氏。山岳・アウトドア業界では“ナヴィゲーションのファンタジスタ”として知られ、かつ“山岳遭難・リスク学の第一人者”である。読図・ナヴィゲーションや山岳遭難に関する著書・論文多数。積み重ねた貴重なデータと緻密な分析による氏の研究は、山岳・アウトドアのさまざまなシーンで活用され、その活動をサポートしている。

本年度は、そんな村越氏ならではコーディネイトが色濃く反映され、従来の堅牢かつ地道な対策はもちろん、最新データを駆使した最先端の内容が次々に発表報告された。

コーディネーターを務める村越真氏。おもにコロナ前後でのデータの違いの特徴が、村越氏から報告された
村越真氏の近著。『遭難からあなたを守る12の思考』(ヤマケイ新書/1,000円+税)と『山岳ナビゲーション 新装版』(発行:ピークス/発売:マイナビ出版/1,700円+税)

WithコロナからAfterコロナへ。ここ数年の山岳遭難の変化と特徴

コロナ禍が収束しきっていない現況を踏まえ、協議会ではまず、村越氏、警察庁、消防庁、さらには日本山岳・スポーツクライミング協会の青山千彰氏より、最新データの考察と現場から観た近況報告等がなされた。

年齢層別、態様別の遭難者数の構成比は、令和3年度も従来とほぼ同様。60歳台以上の遭難者数が全体の約50%を占めているが、60歳台以上の登山者数と登山回数の多さも考慮する必要がある。また、態様別では依然「道迷い」が群を抜いている。海外のデータ等と比較して、この数字は日本の登山道の状況や地形的な要素が大きく影響関連している、と村越氏は推測する。

一方、コロナ禍という状況に大きな影響を受けたと考えられるデータも発表された。

緊急事態宣言等の影響により外出する人の数が圧倒的に減り、登山者数もその例にもれなかった。入山者数が減り、遭難者数も自ずと減少した。こと令和2年度の遭難発生件数・遭難者数といった山岳遭難関連の数値は軒並み減っている。また、出先地としては、「遠方ではなく近場」「人がさほど集まらないエリア」へという傾向が大いにうかがえた。下記データを観れば、こうした状況は一目瞭然である。

増加傾向にある遭難関連の数値は、令和2年度に大きく減少した。資料:警察庁生活安全局 生活安全企画課地域警察指導室
コロナ禍においては、日本アルプスを有する長野・富山・静岡・山梨の遭難数が減少し、東京・埼玉など都市近郊での数値が上昇した。資料:静岡大学 村越真教授
令和3年、富士山、北岳(南アルプス)、穂高連峰(北アルプス)といった人気の山岳エリアでは遭難数が減少、秩父山系や高尾山、里山エリアの数値は増加した。資料:警察庁生活安全局 生活安全企画課地域警察指導室

最新のビッグデータを活用した画期的な遭難対策

今年度の発表報告のなかでもとくに目を引いたものは、山岳関連企業のビッグデータを利活用した遭難対策だった。以下、その例の一部を紹介しよう。

まず、下図「金剛山登山道の現状」を見てほしい。大阪府と奈良県にまたがる金剛山は、関西屈指の人気低山。登山者のみならず、観光登山的な人も含め、多くの人が訪れるエリアだという。図内のオレンジ色部分は、「ヤマレコ」によるGPSデータの測地点。国土地理院地形図に掲載されている登山道以外の地を多くの人が歩いていることがよくわかる。

「日本山岳・スポーツクライミング協会」をはじめ、「大阪府南河内農と緑の総合事務所 みどり環境課」では、こうしたデータと遭難場所のデータを組み合わせ、より効率的な登山道の整備や道標の設置に活用している。

国土地理院地形図で登山道として記されていないエリアに「踏み分け道」が多数ある。資料:青山千影、登山医学学会

次に、以下の写真と図を見てほしい。こちらの写真とデータは、いずれも「ヤマップ」によるもの。「ヤマップ」利用者のGPSデータから「道迷い」の多発地点を絞り込み、適切な対策をしたことにより道迷いがゼロになった非常にわかりやすい例だ。

左の写真は、道標設置前。右へ曲がるのが本来のルートだが、前方が尾根という形状による影響からか多くの登山者が直進していた。そのデータが、写真下の図内×印の部分に示されている。このデータを根拠として、「ヤマップ」が行政に働きかけ、写真右のように道標が設置された。道標設置後のデータが、右写真下。直進する登山者がみごとゼロになっている。

こうした最先端のビッグデータを活用することで、より効率的な遭難対策を実施することができ、ひいては遭難者数をゼロに近づけるための大きな力となる。「道迷い」多発地帯を絞り込むといった本例に限らず、今後さらにさまざまな状況に対応するデータ活用が期待される。実際、各企業各分野で、こうした活動が日々検証・実施されている。

神奈川と山梨の県境に位置する大会木山(だいかいぎやま)。かつての「道迷い」多発地点が、発生ゼロに。資料:ヤマップ

遭難を限りなくゼロに近づけるために

1日かけて行なわれた令和4年度の「全国山岳遭難対策協議会」は、地道な現場の尽力と最先端データの利活用の有用性を改めて実感できる、濃厚かつ貴重な場であった。会場に訪れた現役の警察官や消防士・山岳警備隊の方々と講師陣による熱心な質疑応答からも山岳遭難をいかに減らすかということに力を注いでいるエネルギーを感じた。

遭難をゼロにすることは難しい。だが、各方面の関係各位がそこを目指し、日々邁進している。山・自然というフィールドには不確定要素があり、さまざまなリスクが内在する。人の活動・行動も然り。だからこそ登山者としては、的確な計画を立て充分な準備をしたうえで、力量に合った登山を楽しむ。そして、なによりも無事に下山することを常に心がけたい。

今回の協議会では、警察庁や消防庁、山岳関連組織・協会の関係各位より、報告・講演がなされた。講演の講師は、写真右端から日本山岳救助機構研究主任の久保田賢次氏、群馬県警察本部地域課警部・群馬県警察山岳捜索救助隊長の平林徹也氏、ヤマップ 執行役員・マーケティング戦略本部長の小野寺洋氏

全国山岳遭難対策協議会

主催:スポーツ庁
共催:警察庁/環境省/気象庁/消防庁/公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会/独立行政法人日本スポーツ振興センター国立登山研修所/山岳遭難対策中央協議会
会場:中央合同庁舎第7号館東館3階講堂 及び オンライン開催
期日:令和4年7月15日(金)

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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