登山初体験の人を連れて。僕のホームマウンテン・日向山へ|劇団EXILE・佐藤寛太の旅手引き #6
佐藤寛太
- 2022年10月04日
文◎佐藤寛太 Text by Kanta Sato
写真◎ミトグラフ Photo by mitograph
季節ごとに山の木々のいろんな表情を見ることができる、僕のホームマウンテンへ。
こんにちは、佐藤寛太です。
じつは僕には、ホームグラウンドならぬ「ホームマウンテン」と呼べるであろう山があるんです。
それは日向山です。
先日、かねてよりSNSで繋がっていたカメラマンの三戸さんと直接お会いしてすぐに意気投合し、三戸さんの「登山を始めたいんだよね」という呟きから、なにはともあれ行ってみましょう、という流れで出会ってすぐに日程を決め、山に登ることになりました(僕の人生史上対面してから最速のふたり旅でした)。
日帰りでも登れる山を探し、天候や都内からのアクセスを考え、頂上の展望が良く、なおかつ登り甲斐があり、
欲をいえば近くにお風呂なんかある山を探す。
前入りして麓でキャンプして、翌朝イチで頂上を目指せるとぜいたくコースだな……。始めての人を連れて行くならば、せめて僕自身が通い慣れた山がいいだろうな……。
なんやかんやいろいろ考えた末に日向山に決めました。
じつは何度かひとりで行ったり、人を連れて行ったりしているこの日向山頂上は真っ白な砂に覆われており、晴れている日は八ヶ岳が向かいに「ゴーーーン」と、そりゃもう、「ゴーーーン」という感じに現れ、振り返ると鞍掛山、甲斐駒ヶ岳が見えるなんとも気持ちのいい山なんです。
たとえ写真で見ていたとしても、頂上の雁ヶ原からの風景は思わず声が出てしまうほどの爽快な景色で、連れて行った友人にも大変評判のいい山。
当日は晴れ間には恵まれませんでしたが霧に包まれた幻想的な景色を、ひさびさの登山に悲鳴をあげる体を無視しながら一歩ずつ進んでゆきました。
今回が初めてだった三戸さんはというと、登山のために毎日5キロ走り、山に向かうにあたり、足りない知識を勉強してきていたらしく、体力面も歩き方も、指導の隙なく僕の前をズンズンと歩いていきます。
僕はといえば体力の違いを序盤で思い知らされたので安心してうしろから背中を見送りマイペースモード全開で疲れたら立ち止まり、気になるものがあれば立ち止まり、蜘蛛の巣があれば立ち止まり、と完全に観光登山にシフトチェンジし、森の空気を精いっぱい身体中で感じておりました。
冒頭で「ホームマウンテン」と呼ばせていただいたこの日向山、なぜ僕のなかでそんな思いが芽生えたかといいますと、じつは季節ごとに顔を変える山の木々のいろんな表情を見ることができたからです。
同じ木の季節違いなだけなのですが、なんだろう、古い友人に会いに来るような、恩師に成長度合いを見てもらうような、この木の前に来るとそんな心持ちになって必ずなにか語りかけたくなるんです。
ほかにもいくつかこの山に来たときに郷愁を感じる場所があるんですよね。僕にとってこの木は僕の友人で、この山は帰ってきたい場所。また来るねーと、お別れします。
山頂は霧により一寸先は仄かな光に包まれており、本来の展望は望めませんでした。
コーヒーを飲んで茶菓子を食べ、軽く昼寝をしていると、雨脚に急かされ出発です。
いっしょに登った三戸さんは初の登山が雨寄りの霧に包まれていたのにも関わらず終始楽しみを見つけ、感じ、
いろんなものにカメラを向けていました。どんな状況も結局受け取り方なんだなと、改めて感じました。
帰り道は晴れ間が覗き、周囲の山々が照らし出され、少しの悔しさを覚えながらも、またおいでってことなのかなーと。ちょっとプラスに捉えられる旅でした。
都内で何度会うより少ない会話で濃密な時間を山ですごすことができました。
三戸さん、ありがとうございました。
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PROFILE
劇団EXILE所属。福岡県出身で子どものころは自然が遊び場。キャンプを始めたことをきっかけに、その延長で2020年より登山を開始。主にひとりで山に登っている。初のフォトブック『NEXT BREAK』が発売され、主演映画『軍艦少年』や人気漫画を実写ドラマ化した『あけとせっけん』主演など、映画やドラマ、舞台など各方面で幅広く活動する、いま人気急上昇中の若手俳優。大の読書好き。仕事が忙しいときには山や旅にまつわる本で旅をする。