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雪崩捜索の精度がアップした新世代ビーコン誕生|ピープス/プロIPS

スノーセーフティギアのなかでも要ともいえる、雪崩時に埋まった人を捜索するために必要なアバランチビーコン。バックカントリースキー・スノーボードにおいては、当たり前のように携行が求められるギアだが、最近は一般的な雪山登山においても、リスクが高い状況であれば携行が推奨されている。

スマホほど日進月歩のスピーディなアップデートはないものの、ビーコンは約10~20年おきに革新的モデルが登場。今年はその当たり年であり、発信、受信の精度が向上した次世代モデルが先日リリースされた。それが、スノーセーフティギア専業ブランドであるピープスの「プロIPS」である。

文◉PEAKS
写真◉熊原美惠

アバランチビーコンがこの秋、第4世代に

雪山に入る人であれば、ビーコンは雪崩に備えるための重要アイテムという認識が少なからずあるはず。だが、価格が手頃ではないのもあり、現実的には登山者で所有しているという人は少数派かもしれない。また、持っていても古いモデルを長年使用している、という人も少なくないはず。しかし、ビーコンはシステムの変化によってたびたび変革がおきており、スマホなどと同様に基本的に新しいもののほうが性能は向上している。

現在主流となっているのは、第3世代と呼ばれる。3本の捜索用アンテナを使用したもの。ここで、ビーコンの現況を理解するためにも、ビーコンの歴史を振り返ってみよう。

第1世代(1968年ころ~)
雪崩ビーコンの黎明期。当時は受信した電波の信号を処理することなく、直接、耳で聞くことができる機器であった。そして、これに適した2.275kHzの周波数が用いられていたが、機器の機能改善の過程で、現在の457kHzが開発された。

第2世代(1982年ころ~)
雪崩ビーコンで使用する周波数は2.275kHzと457kHzのふたつが共存する時期があったが、捜索時の混乱を防ぐため、1997年、457kHzが世界基準に定まった。また、受信したシグナルを変換し、デジタル表示する機器も開発された。この過程で、受信アンテナが2本に増えた。

第3世代(2003年ころ~)
2本アンテナによってすばやい捜索が可能となったが、深い埋没については正確な位置特定ができないという課題が残されていた。これに対応するため3本目の受信アンテナを内蔵する機器が開発された。そして、受信シグナルの解析プログラムの高度化によって、よりキメの細かいユーザーインターフェイスが開発され、経験の浅い人であっても、より使用しやすい機器へと進化した。

現在発売されているビーコンは第3世代であり、革新的なモデルでスノーセーフティギアをリードしてきたピープスにおいても、従来のハイエンドモデルは第3世代の「プロBT」である。

捜索範囲は最大60m、さらにスキャン機能で複数人の埋没者を感知、捜索できるなど、ハイエンドモデルとして申し分ない高い性能を誇る。

しかし、近年問題となっているスマートフォンやその他のデジタルデバイスなどによる電磁気干渉を克服するため、新世代=第4世代のビーコン「プロIPS」がこの秋リリースされた。

モデル名のIPSとは「Interference Protection System(干渉保護システム)」のこと。つまり、「電磁気干渉から守られている」というのが、最大のポイント。

このプロIPSがどのように電磁気干渉を排除し、捜索の精度が高まったのか、詳しく説明していこう。

電磁気の干渉を感知し、出力をコントロール

「電磁気干渉」と聞くと、なんとなくスマートフォンやほかのデジタルデバイスが発する「電波」が影響しているのでは……と思われるかもしれない。実際に捜索する側(受信)においてはそのとおりであるが、捜索される側(送信)においては、それよりもデジタルデバイスなどに使用されている金属そのものが大きな影響を与えている。

それを理解するためにも、ピープス社が独自に実験したデータをご覧いただこう。

下の図はビーコンが受信する領域の周波数分布を表したもの。ちょうど中央の波が高い部分がビーコン周波数(457khz)の信号強度を示している。ビーコンはこの信号の強弱によって埋没者までの距離を算出しているのだが、こちらの実験においてはビーコンを金属(アルミ)に触れさせているため、信号が減衰して本来(赤の点線)よりも弱くなっている。つまり、これでは正しい埋没位置がわからないのだ(捜索画面では実際よりも長い距離が表示される)。

このような状況になると、プロIPSは出力が下がったことを感知して、赤の矢印のように送信出力を上げる。

これにより本来の送信出力まで回復。捜索時に精度の高い埋没位置情報を受け取ることができる。

このようにビーコン自体が送信時の電磁気干渉を検知し、干渉の度合いに応じて送信出力を上げて正しい距離を算出できるようにするという、従来では不可能だった処理を実現している。この処理方法は約4年掛かりでピープス社が開発したもので、現在、プロIPSにのみに搭載されている。

電波の出力に影響を与える最大の因子は金属だが、雪山に持って行く、そして肌身に近いところには障害になる、金属を含むものが多数ある。

スマートフォンを筆頭に、スマートウォッチ、アルミを使用した食品の包装紙、さらにはバックパックのフレーム、ウエアのマグネットなど挙げればきりがない。もちろんビーコンに近い位置になければそれほど影響はないが、雪崩の際にどのような状態で埋没するかなどわからない。

捜索を妨げる要素を解消するというプロIPSの画期的システムは、なにものにも代えがたい恩恵をユーザーにもたらしてくれるのだ。

捜索時の精度、スピードも向上

先ほどまでは雪崩に埋まってしまった側、送信時の性能向上についてお伝えしたが、プロIPSは埋まった人を探す側、捜索時の性能も高まっている。

それを顕著に表しているのが、捜索モードのアンテナの位置だ。

ビーコンの大敵である電磁気ノイズの干渉は、アンテナをノイズの発生源から遠ざければ遠ざけるほど指数関数的に影響が低減する。ビーコンには縦方向、横方向、深さを探知するための3本のアンテナが搭載されているが、プロIPSはそのうちの1本を立ちあげる構造を採用。わずか数センチながら、身に付けている電子デバイスはもちろん、ビーコンそのものの発する微弱なノイズの影響をも徹底的に低減するための設計だ。

捜索時は、このアンテナ部分を起こすことで発信モードから捜索モードに自動的に切り替わる。一般的には電源と一体化した切り替えスイッチなどで発信、捜索を切り替えるモデルが多いが、こちらの方式であれば、急な事態でも切り替えがわかりやすく、スムーズというメリットも。

また、アンテナを起こすことで、本体の一部がくびれたような形状になり、グローブをしていてもビーコン本体を持ちやすく、落としにくくなる。

いざ捜索となると気持ちが焦って、普段ではありえないようなミスを起こしてしまう可能性があるだけに、少しでも不安要素が減るのはありがたい。

また、捜索時の性能向上のために電波の受信、処理システムについても改良が加えられている。

ビーコンの信号には雪を透過するアナログの中波が採用されている。これまでは、そのアナログ信号をデジタルプロセッサーが解析できる信号に変換するための前処理をアナログ回路で行なっていたが、プロIPSではデジタルプロセッサー内部で直接処理するデジタルフロントエンド方式に変更された。これにより同じ信号から得られる情報量が多くなり、従来より精密な解析が可能になった。また、処理速度も80倍高速になっているという。

発信時の画期的な電磁気干渉保護に加え、捜索時のアップデートも着実に果たされている。

捜索範囲は80m。さらにノイズに合わせて捜索範囲が変化

捜索範囲の広さも特筆すべきポイント。一般的なビーコンは60m程度の捜索幅のものが多いが、プロIPSは80mでありトップクラスの性能を備えている。これは、アンテナの構造を変えてノイズによる干渉を減らし、処理システムも改良したからこその恩恵でもある。

捜索モードに切り替えるとディスプレイにこのように現状の捜索幅が表示され、この範囲を目安に捜索するように指示が出る。その後、捜索中に埋没している人(電波)を探知すると、その方向と距離に表示が切り替わる(複数人いる場合は、その数も表示される)。

ただし捜索側でなんらかのノイズが干渉していると、電波の処理に影響が出てしまい、実際の埋没者との距離が正しく分析、表示されない。それを防ぐために、ノイズを感知すると捜索範囲を狭めるように表示される。これにより、埋没者を探知した際により精度の高い情報が出るようになるのだ。

プロIPSは80m、60m、40m、20mと20m単位で捜索範囲を変えるように指示が出るようになっている。他の多くのビーコンでも同様のシステムが備わっているが、一般的なモデルでは捜索範囲を狭める場合も20~30m程度に変わるのみで、ここまで細かい指定は行われない。プロIPSが優れた処理能力を備えているからこそ、捜索時に細かな指示を出せるのだ。

ノイズを低減するためのセグメントディスプレイ

捜索に影響を与えるノイズ源は電子機器だけではない。実はビーコン自体のディスプレイからも「スイッチングノイズ」と呼ばれる、ディスプレイデバイス特有のノイズが発生している。このスイッチングノイズを低減させるために、ピープスのビーコンには「セグメントディスプレイ」という表示できる文字や数字が限られたものが使用されている。

一見、昔の機種のように見えるが、これによってノイズ発生が極力抑えられている。数字、矢印、モードなど、操作において重要な情報は固定された位置に表示されるので、見慣れると情報を把握しやすいというメリットも。

価格と見合わないように感じられるアナログ風情なディスプレイにも、実は深い意味があるのだ。

専用アプリで細かな設定やアップデートが可能

ソフトウェア開発に力を入れているピープスでは、ピープスやブラックダイヤモンドのビーコン、さらにはプローブ、エアバッグと連携して使えるスマホアプリを提供している。ブルートゥースでビーコンとスマートフォンをつなげば、ビーコンの細かい設定やデバイスチェック、さらにはソフトウェアのアップデートなども簡単にできる。

通常、デバイスチェックやソフトウェアアップデートなどの作業はメーカーで対応してもらうケースが多いが、アプリを使えばビーコンを送る手間がなく、さらに「預けているから持っていけない……」という事態も防げる。

アプリは日本語に対応しており、接続や操作も簡単だ。

捜索されるときも、するときもメリットが大きい第4世代ビーコン

このように、プロIPSはビーコンの新しいフェーズを拓いた革新的モデルであり、従来モデルに比べ、捜索時、そして探索時も優れた性能を発揮してくれる。ビーコン自体は使用頻度が高いものではないが、実際に使用するのは雪崩に見舞われ、この上なく切迫した状況。そんな危機的な状況で、高いパフォーマンスを発揮し、少しでも発見の可能性を高めてくれるビーコンには、唯一無二の価値がある。

価格的に気軽に購入できるものではないが、現状、古いビーコンを使っているが買い替えたい、あるいはビーコンをこれから買いたいという人にとって、真っ先に選択肢に入れるべき最注目モデルだ。

物を大事することは悪いことではないが、ビーコンにおいては少しでも性能が優れたものを使うに越したことはない。

ピープス/プロIPS

  • 価格:¥74,800
  • サイズ:D24×W75×H120mm
  • 使用電池:単4乾電池×3本(アルカリ、リチウム)
  • 電池寿命:400時間(送信モード、アルカリ電池使用時)、600時間(送信モード、リチウム電池使用時)
  • アンテナ数:3本
  • 周波数:457kHz(EN300718)
  • 捜索帯域幅:80m
  • 重量:212g(電池込み)

「プロIPS」はこちらでチェック

 

企画協力◉ロストアロー www.lostarrow.co.jp/store/

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PEAKS 編集部

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