アルファ SV ジャケット変遷史|機能と耐久性を追い求めて
PEAKS 編集部
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1998年にデビューを飾って以来、つねにアウトドアウエアの最先端を走ってきたアルファ SV ジャケット。登場時から「すでに完成の域」と注目され続けてきた、アルパインシェルの最高峰。その進化の理由と歩みをご紹介。
アルファ SV ジャケットの革新が
アウトドアシェル全体の進化を促した。
ゴアテックス・ハードシェルのようなテクニカルなアウトドアウエアのイメージが強いアークテリクスだが、クライミングハーネスの製造販売からスタートしたブランドだということはそれなりに知られた話だと思う。
ハーネスの次にバックパックが登場したのは3年後で、初のウエアが誕生したのはその4年後の1998年。じつにブランド創立から7年後のことだった。初期のアークテリクスは少ない社員の大半がプロダクトデザイナーで、北米ではその名を知られた実力者たちが集結していたという。
いわば、アウトドア製品デザイナーのドリームチーム。彼らはアイデアをスケッチに描けるに留まらず、試作品製作までをひとりでこなせる猛者揃いだった。それだけに、ブランド初のアパレル製品となった「アルファ SV ジャケット」が、最初から革新的で、完成度の高い製品だったのも無理のない話だ。
たとえば、「より快適」を目指してゴア社と共同開発したゴアテックスXCRや、業界基準よりも高密度の縫製、マイクロシームテープなど、世界初となるテクノロジーの数々を最初から採用していた。数年後に登場する止水ジッパ
ーや圧着技術なども含めて、現在のアウトドアウエアに採用されている業界基準的な技術や仕様は、このアルファ SVから始まっているものが多い。
そんなデビュー当時のアルファ SV ジャケットを見ると、これが25年前のウエアなのかと思うほどだ。仮に同じ仕様で再現したとしても、現在の高機能シェルの条件をほぼ満たしているし、ルックス的にも最新モデルと比べても遜色はない。あらためて考えてみると、これは驚きだ。繰り返すが25年、四半世紀である。
その間、素材も、パーツも、アクティビティも大きく進化を遂げているのにもかかわらず、いまも昔も、最先端のアルパインシェルであり続けている。これはプロダクトの本質を徹底して追求した当時のデザイナーたちの先進性というしかない。
アルファ SV ジャケット 四半世紀に及ぶ変遷
1998
群を抜く完成度にアウトドア業界が刮目
当時の一般的なシェルより大幅に軽く、ブランド初のアパレルとしては異例の完成度に業界中が注目。米国アウトドア用品展示会での発表から数時間後に、その年度分が完売したという衝撃的なデビューは、業界の伝説。
2001
止水ジッパーと ストームフード登場
ゴア社と共同開発したゴアテックスXCRをはじめ、テントの水漏れにヒントを得て開発した止水ジッパー、非常に完成度の高いストームフードなど、後のアウトドアウエアの定番となる新テクノロジーをふんだんに搭載。
2007
ファブリックチェンジ。 ゴアテックスプロ登場
新たに共同開発したゴアテックスプロをいち早く採用し、防水透湿性、防風性、耐久性、軽量性が向上。さらにフィットを改善した結果、10%の軽量化を実現。「強固さを維持したまま1gでも軽く」がこのころの命題。
2016
8mmシームテープ、 RSジッパースライダー
生地を高デニールに変更し、耐久性と引裂強度を向上。8㎜幅のシームテープ、RSジッパースライダー、コヒーシブコードロックなど、革新的なパーツと技術が新登場し、発売以来の大幅なモデルチェンジとなった。
2020
最強のゴアテックスへ 全面的にアップデート
2020年には3つ目の素材となるゴアテックスプロモストラギッド採用。現在のゴアテックスファブリクスのなかで最高の耐久性を誇る。また、遭難や雪崩など救急活動時に備えて、RECCOリフレクターを内蔵している。
2023
そのうえで最新モデルの話に移る。今季のアップデートは2点。ひとつはゴアテックスプロの表地を100%リサイクルナイロンに変更。これはアルファ SV ジャケットでは初めてとなる。
ここ数年、アークテリクスでは段階的にリサイクル素材への転換を進めてきた。とはいえ、テクニカルな製品のマテリアルチェンジには慎重だ。冬のアルパインクライミングという真に過酷な環境での着用を想定しているだけに、ラボやフィールドテストを数限りなく繰り返したうえで、アークテリクス基準をクリアしたときにはじめて新素材が採用される。
事実、アルファ SVの25年という長い歴史のなかで、メイン素材が変更されたのは、わずかに3回のみ(今回が4回目)。アルパインシェルのリサイクル素材採用例としては、昨年のアルファジャケットに続くもので、満を持してトップエンドのアルファ SVに到達したといっていい。
ふたつめの変更点は、裾と袖口の末端部分の処理方法だ。身頃の生地末端にタフタ素材を縫い付けて圧着していたものを、身頃と同じ生地で圧着するという新技術を開発。この新しい圧着によって、タフタという別素材が剥がれるという破損リスクが解消された。これはアークテリクス本社のアフターサービス部門とリペア部門との密なコミュニケーションにより、過去の修理実績から導き出された改良点だという。
その点に関して付け加えると、アークテリクスには、その初期のころから「Make It Last」という考え方が根付いている。直訳すると「長持ちさせよう」ということ。丈夫で、耐久性があり、壊れにくい製品を作ることに誇りを持つ。
見た目にはほとんど変わらない裾の圧着にこだわるのも、そのフィロソフィの一環だ。これは真摯にモノ作りと向き合うクラフトマンシップの話だが、同時に、サステナビリティに対するアークテリクスの姿勢と考え方を示したものでもある。
2023 アークテリクス アルファ SV ジャケット
- ¥121,000
- サイズ:XS〜XXL(XXLはメンズのみ)
- カラー:ブルーテトラ、ブラック、 ボルドー、ダークマジック (ウィメンズはブラック、エジザ)
- 重量:485g(M)
視界域の確保にこだわったヘルメット対応フード
完成度の高いフード。風雪を遮断するだけでなく、顔の動きに追随することで、フード装着時の視界をつねにクリアに保ってくれる。
ジッパーガレージを不要にしたRSジッパースライダー
ジッパーガレージなしで雨に対応する独自テクノロジー。ジッパー位置の制約がなくなり、自由度の高いデザインが可能になった。
高い圧着技術を使ったセキュリティ内ポケット
圧着加工による胸のジッパー付き内ポケット。縫製しないことで縫い目からの浸水リスクを減らし、シームテープの重量を排している。
グローブなどを収納可能な伸縮性を持つダンプポケット
ジャケット内、右側に装備されたダンプポケット。伸縮性のあるメッシュ素材を採用し、グローブなどのかさばるものを収納できる。
- BRAND :
- PEAKS
- CREDIT :
-
文◉寺倉 力 Text by Chikara Terakura
写真◉熊原美惠 Photo by Yoshie Kumahara
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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