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軽やかに雪山を歩ける超現代的ゲイター付きブーツ|スカルパ/ファントムテックHD

一般的なシングルブーツの影に隠れて目立たないが、限られた本格登山靴メーカーによって作られている雪山用のゲイター付きブーツ。シングルブーツにはないメリットが多数あり、コアな雪山好きからは一定の支持を得ている。

スカルパの「ファントムテックHD」は、その代表モデル。そのルックスから、いかにも冬場のアルパインクライミングやアイスクライミングなどエクストリームな用途に特化したイメージが持たれるかもしれないが、じつはオールラウンドに使えるポテンシャルを備えている。その秘めたる実力を解き明かしていこう。

文◉PEAKS
写真◉熊原美惠

一般的な雪山登山でも活躍するゲイター付きブーツ

日本の雪山登山でも見かける機会が増えてきたものの、まだまだ一般的ではないゲイター付きブーツ。その先鋭的な雰囲気から、積雪期のアルパインクライミング、あるいは海外の高所登山で使用するようなイメージを持っている人は少なくないだろう。

だがゲイター付きブーツといっても想定シーンが違ういくつかのモデルがあり、「歩き」がメインの日本の雪山登山でも活躍するブーツも存在している。それがスカルパのファントムシリーズの「ファントムテックHD」(写真右)と「ファントム6000HD」(写真左)だ。

一見するとゲイターの長さが違うだけに見えるが、ファントムテックHDは内蔵されているのがシングルブーツ、ファントム6000HDはインナーが取り外せるダブルブーツという違いがある。

ファントム6000HDの方がより寒冷で、雪深く、さらに長期にわたるような山行に向いており、一般的な1~2泊程度の八ヶ岳、日本アルプスなどでの山行であれば、ほとんどの場合、ファントムテックHDの方がマッチする。

より多くの登山者がターゲットになるファントムテックHDについて、細かく解剖していこう。

ゲイター付きブーツならではの保温性

通常のブーツに比べたゲイター付きブーツの優位性としてまず挙げられるのは、雪の浸入を防ぐことができるという点。だが、メリットはそれだけではない。というか、同じ程度かそれよりも重要な恩恵として、ゲイターがあることで通常のブーツよりも保温力が高まるという利点がある。

ここで、ウィンター向けアルパインブーツの代表的なモデルである「モンブランプロGTX」(写真左)とファントムテックHDを比較してみよう。

モンブランプロGTXには、「ゴアテックス・インサレーティッド」が保温材として使用されている。対して、ファントムテックHDには「プリマロフト・マイクロパイル」(化繊中綿)を使用。種類は違えど、どちらも厳冬期の雪山に対応するための断熱材を備えている。だが、ファントムテックHDはさらにゲイターがあることで空気の層が作られるので、保温力がさらにアップするのだ。

ゲイターがブーツを隙間なく包むような構造になっており、体温で暖まった空気をとどめ、さらに冷たい空気や雪に対して空気の層が断熱効果を発揮してくれる。

もちろん通常のブーツであってもゲイターを装着すれば多少は同じような効果は得られるが、それでもカバー範囲は部分的であり、さらに空気が出入りする隙間も生じやすい。ビルトインゲイターには到底かなわないのだ。

ファントムテックHDのゲイターには防水透湿素材である3レイヤー構造の「HDry」が使用されている。そのため、防水透湿を発揮し、雪中をガシガシ歩いても、雨に降られても、中のブーツが濡れるのを防いでくれる。

ゲイター付きでも軽量だから疲れにくい

ゲイター付きブーツ=ブーツ+ゲイターなのだから通常のブーツよりも重量は重くなるのでは、と思われるかもしれないが、ファントムテックHDに限って言えば実はかなり軽量に仕上げられている。

先述のモンブランプロGTXの重量は片足で約900g。それに対して、ファントムテックHDは片足約800gと、100g程度軽い。さらに、モンブランプロGTXにゲイターを装着する場合、一例としてブラックダイヤモンドの「アルパインゲイター」であればその重量は約120gになり、さらに200g以上の重量差が出てくる。

雪山であれば、これに加えてクランポンを装着する時間が長いので、足にはかなりの負担が掛かってくる。もし200gちょっとでも軽ければ、長時間行動した際に疲労度が変わってくるのは間違いない。

ファントムテックHDの軽さの秘密はアッパーにある。モンブランプロGTXは3mmという厚めのスエードが使用されており、そのぶん、耐久性は非常に高い。対してファントムテックHDのアッパーはシンセティック素材が使用されており、丈夫さに関してはレザーには譲るものの、その代わりに軽く、さらに履き下ろし段階から足になじみやすい。

さらにレザーに比べると蒸れにくく、ゲイター付きの二重構造であっても行動時にシューズ内に湿気がこもりにくいというメリットもある。

カットが低いから足首が動かしやすい

ファントムテックHDの優位性は保温力や重量だけではない。実は中のブーツは足首部分が少し低めに設定されており、足首が動かしやすくなっている。

左がモンブランプロGTXで右がファントムテックHD。比べると高さの違いが一目瞭然だ。そもそも雪山向けのブーツ自体、無雪期よりも重たい装備に耐えうるようにアッパーはハイカットのしっかりした作りが基本で、それによってブーツ内に雪が入りにくいようになっている。

だが、ファントムテックHDに関しては、そこまでの重量の荷物を背負って長時間歩くようなシーンに向けた靴ではない。軽さを生かした機動力に性能が振られており、さらにゲイターがあるのでそもそも雪が入りにくい。

そのため、雪山向けブーツ特有のゴツさ、歩きにくさは低減されていて、通常の無雪期用のブーツに近い感覚で歩くことができる。

アッパーに関しては、足首の前部分の補強をあえて一部省略することで、前方向に屈曲しやすいような作りになっている。

他のブーツにも取り入れられてている一般的な手法だが、ファントムテックHDはカット自体が低いので、よりミッドカットやローカットに近いフレキシビリティを得ることができる。

独自のシューレースのロックシステム構造

ここからはファントムテックHDの細かいディテールにフォーカスしていこう。非常に地味な部分だが、まず特筆すべき独自のシューレースのロックシステム。

足の甲から足首へと移り変わる部分にロックが掛かる樹脂パーツが付いており、甲の部分のテンションをここで保持することができる。つまり、そのまま足首部分をしっかり締めることもできるし、逆に足首から上は緩めに締めることも可能。

雪山に限らないが、登りの際は上部を緩めておけば足首が動かしやすくなるし、下りは足首までしっかり締めれば足首の無駄な動きが抑制され、雪や地面にしっかり接地しやすくなる。

構造は非常にシンプルで、足先からシューレースを締めていき、ロックパーツに掛かったらその部分をしっかり締めれば、それからは甲の部分のシューレースが緩むことがないようになっている。逆に緩める際は、水色のループを引っ張るだけだ。

シューレース自体は丸紐に近い細めの平紐で、丸紐に比べてしっかりテンションを掛けて締められるようになっている。

リベレ譲りのランドラバー&ミッドソール構造

アッパー自体は比較的ソフトなシンセティック素材が使われているが、必要な部分のみアッパーの剛性を高めるため、下部は全周にわたってランドラバーで補強されている。

これはスカルパのリベレシリーズから取り入れられたディテールで、補強と同時にランドラバーが構造材としての役割も担い、必要以上のシューズのねじれ、シューズ内での過剰な足の横ずれなどの防止効果も果たす。

またシューズの内側部分にはランドラバーと同じような補強が施されており、クランポンの爪などからアッパーを守ってくれる。

さらにリベレシリーズから継承されたディテールの意匠はミッドソールにも。ミッドソールの硬さを足の内側部分は少しやわらかく、外側はそれより硬めに設計。それにより着地時の衝撃を和らげつつ、蹴り出し時にはパワーがしっかりと伝達されるようになっている。

内側の水色部分のミッドソールの方が外側の黒色部分よりも多少やわらかくなっており、着時地の衝撃をしっかり吸収。蹴り出す際は、外側の黒い部分のミッドソールがパワーを逃さず地面へと伝える。

グローブをしていても操作しやすいファスナー

さらにアッパーの細部をチェックしていこう。ゲイターのファスナーには水を通しにくい止水ファスナーが使われており、これを開閉するためのスライダーには指が入る大きな引き手が付けられている。

冬季登山であればグローブをしていることが多いが、もちろん厳冬期対応のグローブを装着したままでも指を通すことができるため、開閉はスムーズだ。

じつはこれには、ファスナーの破損を防止するという大事な役割も含まれている。ゲイター付きブーツで一番多いアクシデントが行動中にファスナーが途中から開いてしまい、雪が入り込むなどのトラブル。これはおもに、ファスナーを閉じる際にスライダーをファスナーに沿うように引かなかった場合に発生する。ファスナーの噛み合わせが甘くなってしまい、途中で開いてしまうのだ。

スライダーに大きな引き手を付けることで、スライダーをファスナー方向に引きやすくなり、結果的に行動中のトラブルを防ぐことができる。

さらにファスナーの先端部分には、ゲイターやシェルパンツのインナーゲイターのフックを通すための小さなループが取り付けられている。

ゲイター付きブーツであっても、厳しく長いラッセルが続く場合などは、単体のゲイターやパンツのインナーゲイターを装着することで雪の浸入や濡れをより防ぐことが可能で、そのような使い方をするときに役立つ。

また、ゲイター上部には雪が入るのを防ぐためのショックコードとコードストッパーが取り付けられている。

これは雪の浸入だけでなく、冷気が入ってきたり、暖まった空気が逃げるのを防ぐ効果も発揮してくれる。

買い替えるなら選択肢に入れたいファントムテックHD

十分な保温性があり、一般的な雪山用ブーツよりも軽量、さらにトレッキングブーツに近い感覚で軽やかに歩けるという、メリットだらけのファントムテックHD。雪山を席巻してもおかしくないポテンシャルを持ったシューズだが、ひとつ弱点がある――それは価格だ。

これだけスカルパのテクノロジーを集結させ、さらに素材も良いものを使っているだけに致し方ないが、10万円オーバー、税込116,600円となると、雪山登山のファーストチョイスとしては選びにくいかもしれない。

だが、雪上やクランポン歩行がメインのウィンターブーツ全般の特長としてソールが減りにくく、一般的な使い方、使用頻度であればトレッキングシューズよりも長く使えるという大きなメリットがあり、使用期間を考えたら決して過大な投資ではないはず。

雪山での自分の遊び方が見えてきて、これからもずっと楽しむつもり、という人であれば選択肢に加えるだけの価値がある。

手持ちのブーツが少しくたびれてきたかも……と思ったら、そのときはぜひショップで試してみてほしい。きっと雪山用アルパインブーツの概念が変わるはずだ。

スカルパ/ファントムテックHD

  • 価格:¥116,600
  • サイズ:EU37~48
  • カラー:ブラック×ブライトオレンジ
  • 重量:800g(EU42/片足)

「ファントムテックHD」はこちらでチェック

厳冬期の長期縦走などハードユースに向く「ファントム6000HD」

ファントムテックHDがファントムシリーズの弟としたら、その兄にあたるのが「ファントム6000HD」。前述したようにシューズ自体がスキーブーツのようなダブル構造になっているのが大きな特長で、これによりインナーを取り外して幕営地でテントブーツのように使用したり、乾かしたりすることができる。

インナー上部はプリマロフトの糸で編まれたソックスのようなニット構造になっている。適度な保温性は備えるが薄手なのでブーツとのずれが少なく、シングルブーツのような一体感が得られる。ふさわしい使用シーンとしては、雪深い場所での長い山行、たとえば北アルプスの長期縦走などが挙げられる。

スカルパ/ファントム6000HD

  • 価格:¥156,200
  • サイズ:EU37~48
  • カラー:ブラック×オレンジ
  • 重量:1,050g(EU42/片足)

「ファントム6000HD」はこちらでチェック

ヒマラヤなど海外の高所登山向けの「ファントム8000 THERMIC HD」

ファントムシリーズの長兄ともいうべき存在が「ファントム8000 THERMIC HD」。こちらは日本国内の雪山というよりはヒマラヤなど高所の雪山登山に向けたモデルで、ゲイターに内蔵されたバッテリー(交換可能)を駆動させることでインソールを発熱させることができる。もし冬季の海外登山の予定がある人はスカルパの正規取扱店や、国内総代理店であるロストアローのカスタマーサポートまで問い合わせを。

スカルパ/ファントム8000 THERMIC HD

  • 価格:¥225,500
  • サイズ:EU38~48
  • カラー:ブラック×ブライトオレンジ
  • 重量:1,450g(EU42/片足)

「ファントム8000 THERMIC HD」はこちらでチェック

 

企画協力◉ロストアロー www.lostarrow.co.jp/store/

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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