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【コロンビア登山学校・密着レポート】白銀の立山室堂へ! スノーシューハイクの魅力

アウトドアブランド・コロンビアが主催する”コロンビア登山学校 (WIN THE SUMMIT ACADEMY)”。年間10回をとおしてさまざまな知識が得られる実践型の登山の学びの場だ。今回のテーマは雪が積もって間もない、新雪の立山室堂を満喫するスノーシューハイク。2日間の行程に密着し、そのようすをお届けしよう。

文◉阿部 静
写真◉宇佐美博之
撮影協力◉立山黒部アルペンルート

コロンビア登山学校とは?

国際山岳ガイドの近藤謙司さんを学長に、登山の学びの場として10年前よりスタートした、アウトドアブランド・コロンビアが主催する”コロンビア登山学校 (WIN THE SUMMIT ACADEMY)”。開校のきっかけは近藤謙司さんが主宰するエベレスト登山プロジェクト「WIN THE SUMMIT Project」のサポートから。コロンビアが遠征に必要な装備の開発をいっしょに行なっていたことから、サミットを目指す登山者の育成も行なうことに。当初は海外の高所登山を最終目的としてスタートしたものだった。この登山学校をきっかけに、卒業後にモンブラン、翌年にはエベレストに挑戦した受講生もいたというから、着実にスキルを積むことができる学びの場であることはたしかだろう。

10年目を迎えた現在の登山学校は少しかたちを変え、登山をこれから楽しんでいきたい人を対象に年間10回の講座を開催している。春の麓に宿泊しての日帰り登山からスタートし、夏山のテント泊や山小屋泊縦走、秋の紅葉のなかを楽しむ登山や岩稜帯を交えた“ロックトレッキング”、冬季の雪山登山など、四季折々の山を楽しみながらその時々のシーンに応じて山の学びが得られるというもの。受講の仕方は自由で、得たい知識や興味のあるものを単発で受講してもいいし、全部参加すれば登山のベースの知識をひととおり学ぶことができる。

コロンビア登山学校の公式ウェブサイトはこちら

2日間の絶景スノーシューハイクへ

2023年度の登山学校は今回7回目。2023-2024シーズン初となる雪山が今回の舞台で、スノーシューを使って雪山を散策する。参加する受講生は雪山初心者の方が多く、スノーシューハイクは全員初めて。雪山でのすごし方のポイントや、スノーシューの履き方、扱い方など、2日間の行程をとおして楽しみながら雪山の基本を学んでいく。

舞台は白銀の立山室堂

スノーシューハイクを楽しむのは積雪して間もない立山室堂だ。室堂までは立山黒部アルペンルートを利用して2,500mまで上がれるので初心者でも気軽に向かうことができる。例年10月ごろより雪が降り始め、立山黒部アルペンルートが休業に入る11月30日まで冬季の雪山を楽しめる。アルペンルートは厳しい冬の間は休業し、年が明けてゴールデンウィーク前に営業再開する。

出発する前に。雪山を歩くときに知っておきたい環境と装備の話

出発前、近藤さんより雪山に入るにあたっての基本的だけど大切な話をいくつか解説してもらった。こういった学びのシーンが逐一あるのも、登山学校の特徴だ。

高度順応するには

アルペンルートで一気に2,500mまで上がってくるので、高山病の症状が起こることも。高山病にならないためには、高度順応が大切だ。

「高度順応するには水をたくさん飲んでトイレに何度も行きましょう。トイレに行きたくなくて水を飲まない人もいますが、トイレはたくさんあるので安心してください」

「運動失調は高山病のひとつです。いつもより調子がおかしかったり、足が上がらなかったり。躓いたり滑落の原因にもなります。そんなときはゆっくり準備に時間をかけて1時間ぐらい休むといいでしょう」

さすがは海外高所登山のプロフェッショナルだ。高度順応や高山病の対処法に長けている。

雪山のレイヤリングのポイント

続いて雪山での服装の話。

「外に出てすぐは寒く感じるかもしれないけど、歩き出すとポカポカしてきます。雪山で重要なのは汗をかかないことなので汗をかく前にレイヤリングを上手に行ないましょう」

「雪やみぞれ、雨の場合は中身を脱いで、またシェルを着ることもありますが、今日のような晴天の場合はそんなことにはならないでしょう。1枚ずつ脱いでいくのがちょうどいいと思います。分厚いものを着ていると調整ができなくて、脱ぐと寒い、着ると暑いという状況になるので上手に調整できるフリースなどの薄型のウエアを組み合わせるといいでしょう」

そのほか、手袋をバックアップとして複数持っておくことや風が吹いてきたときに顔を守るバフなどがあるといいこと、サングラスを曇らないようにする使い方など、さまざまなことを教わった。

アバランチビーコンの基本の話

受講生にはアバランチビーコンを持ってきてもらい、行動中は肌身離さず身に付けてもらう。ここでビーコンの基本の操作と、人を捜索するときの大切なルールも解説。

「ビーコンを点けたら、基本は受信モードにしておいてください。サーチは人を助けるときに使います。捜索するときは全員がサーチに切り替えます。だれかがサーチになっていなかったら捜索する人を見つけられません。サーチに切り替えたら相手に伝わらないので手を挙げましょう。全員の手が挙がったら捜索開始です」

雪山に入れば雪崩に遭ってしまう可能性もあるのでアバランチビーコンは必携だ。登山開始する前に必ず受信モードにし、受信可能かチェックをする。雪崩に巻き込まれた場合、助かる見込みがあるのは15分だといわれていて、埋没者を救助するためには現場にいる全員が速やかに行動する必要がある。

スノーシューを履いてみよう

では、用意したスノーシューを実際に履いてみよう。

「少しでも高いところにスノーシューを置き、片足ずつ履いていきます。スノーシューの上に足を置き、膝をついて履くといいでしょう。バックルの位置を確認して、うまく調整してください。また、歩いているとズレたりするので、歩きながらも調整するといいです」

実際に道具に触ってみながら初めて履いてみる。自分で調整し、うまく履けるとうれしいもの。道具の扱いに慣れる第一歩だ。

みくりが池周遊コースへ

スノーシューを履き、準備が整ったらスノーシューハイク開始! この日は昼すぎからのスタートなので、ゆったりと、みくりが池を一周して戻ってくる予定だ。

真っ青に晴れた空の下で歩く雪上ハイクは最高に気持ちが良い。実際に歩きながら、スノーシューの歩行の特性やノウハウを近藤さんに教わる。

スノーシューはバックができないこと、うしろを向きたいときはスキーといっしょで片方ずつ爪先をうしろに向けること、転んだら立ち上がるのが大変なのでトレッキングポールを使って立ち上がる方法や、スノーシューでの傾斜の登り方など。初めてのスノーシューハイクでは教わることはたくさんあるけれど、歩きながら実践していけば身体が覚えてくれるので難しくない。受講生はその場で近藤さんの言葉をすぐに吸収し、どんどん上達していくようすがうかがえる。すごい!

「室堂小屋」とも呼ばれる日本最古の山小屋、立山室堂へ。国の重要文化財に指定されている。釘や杭などがまったく使われておらず、凹凸に加工した木材同士をつなぎ合わせて建てられている。それでも雪の重みで潰れないというから、現代の建築技術に負けず劣らず昔の山小屋の建築技術はかなり発展していたのだ。

“エビのしっぽ”をみんなで眺める。エビのしっぽができる側が風上側だということを近藤さんから教わった。また、風によって雪面が削り取られ堅い雪の層が残ることでできる“シュカブラ”も、風の強さや風向きがわかるのだとか。雪の反射により表面がキラキラ光る“表面霜”についても解説してもらった。

「このキラキラしたのは表面霜といって、晴れた日の夜から朝方にかけて、放射冷却によって空気中の水蒸気などが霜になり、雪の表面に発達する。風が吹かず、これが膜状に発達しその後に大量降雪があると、この歪みの上に雪がたくさん乗ることで雪崩が起こる原因にもなります」

一見キレイだけど、そんな危険性も孕んでいる……。とても勉強になる興味深い話だ。

雪景色のなか、もくもくと噴気が上がるのは地獄谷だ。硫黄の匂いが立ち込める、温泉の源泉でもあり、温泉欲をかき立てられるが、真冬でも硫化水素が湧き立ち、ここへ落ちたら20秒ぐらいで即死してしまうというおそろしい場所でもある。そんな立山の名所をみんなで眺める。

凍ったみどりが池の上を歩き、さらにみくりが池の真横を通りすぎ(さすがに氷結具合が不安なので歩けなかった……!)、なんにも足跡のない真っ白な雪の上にダイブ! 無垢な雪面に自分の寝転がった跡を残す、ぜいたくな遊びを近藤さんから教わって、受講生のみなさんは満足気な笑顔で楽しそう。真面目なお勉強もいいけれど、こんなお茶目な遊びも教えてくれるのが、近藤先生の魅力でもあったりする。

この日いちばんの急傾斜をがんばって登りきって、待っていたのは絶景と気持ちのいい稜線歩き。雲ひとつない真っ青な空と真っ白な山々の対比が美しい。見たこともないすばらしい景色を眺めながらのスノーシューハイクなんて、もう“最高”のひと言。こんな雪山体験したら、病みつきになってしまうことだろう。

下り坂は一列になって駆け降りる。思いきり雪と戯れて、半日にも満たないのにすでに雪と仲良しになったもよう。このころにはみんなスノーシューの扱いも随分上達していて、下り坂の駆け足もお手のもの。怖がらずにどんどん挑戦する冒険心がすばらしい!

みくりが池から室堂駅方面へ戻るころ、沈みかけの西日が雪面を輝かせ、とても美しかった。雪山はその日の天気や気候、時間帯によってさまざまな景色に変貌し、魅力が尽きない。この景色のなかに長くいるほど、きっと魅了されてしまうことだろう。最後の最後まで雪山の魅力を存分に味わって、1日目のスノーシューハイクは無事に終了した。

宿泊は室堂駅直結のホテル立山へ

立山エリアのほかの山小屋はすでに休業に入ってしまったが、ホテル立山のみ、アルペンルートが運行している11月30日まで営業していて室堂駅から直結なので、冬季の立山でも快適にすごすことができる。今回の登山学校でもホテル立山を拠点に2日間をすごすので、初めての泊まりの雪山でも安心・安全・快適に楽しめるだろう。

室堂駅直結で、屋上からすぐにフィールドに出られたりと、利便性が非常に高いホテル立山。のんびり寛ぐのに最適な5Fのロビーラウンジも居心地がいい。6月1日~10月15日の夜間はバーの営業もしており、夜の立山も満喫できそうだ。冬季は窓に雪囲いがされているが、無雪期は大きな窓から富山の夜景が望める。

夕食のあとは夜の座学講座も!

夕食後はホテルの地下の会議室に集合して夜の座学。といっても、お酒を片手に和気あいあいな雰囲気だ。だけど内容はけっこう真面目で、雪山で役に立つ話ばかり。受講生から寒さに対してどのように対処したらいいか質問が投げられた。

「体温が36℃の場合、身体のすぐ脇にできるデッドエアをなるべく36℃でキープできるように、少し大きめのベースレイヤーをもう1枚着たり、フィット感のあるミッドレイヤーを着たりすると良いです。36℃に限りなく近いところにデッドエアをたくさんつくることで効率よく温度が保てるので、うすら寒い人は体温の近くにたくさんデッドエアをつくり出すといいです」

「効率のいいレイヤリングをうまく自分のなかで探しだして、快適さを見つけられるといいと思います」

ほかにも、エベレスト遠征時に試した靴下の話や、きつい靴下を履くと血行が悪くなって冷たくなること、ふくらはぎ、腿が冷えると足先も冷たくなる話など、興味深い話が満載だ。メリノウールや最近のアクティブインサレーションなど素材の話もあり、コロンビアオリジナルテクノロジーのオムニシリーズについても、コロンビアの梶さんから紹介があり、今後商品を購入する際にためになる話だった。

2日目は室堂山へ

翌朝はホテル立山で朝食をとってから集合し、2日目のスノーシューハイクをスタート。1日目よりさらにステップアップして、標高2,668mの室堂山を目指す。この日も天気は良いが風があり、標高が上がるごとに強くなる。レイヤリングで教わったことをおさらいし、各自適切な恰好でハイクアップを楽しんだ。行程の途中で効率的なストックワークや、斜面の勾配がきつくなってきたら、スタンス(足の向き)を横にして進むフレンチステップなど、もう1ランク上の歩行技術も教わった。

山頂を目指すため、登り基調だ。1日目よりも急傾斜が続き、体力的にも技術的にも難しくなっているが、1日目に教わったヒールリフターを使いこなし、ひたすら前進する一行。ピークまでもう少しだ。

そしてひとりも欠けることなく、全員が無事にピークに到達! 空はすっきりと澄んでいて、山頂からは真っ白に雪化粧した北アルプスの山々が一望できた。

山頂にたどり着けた達成感と目の前に広がる絶景を眺めながら、みんないい笑顔。

山頂到達という最終目標があると、よろこびも大きく、また次の山を目指そうという目標と楽しみが増える。この登山学校で、近藤さんはそんな雪山の楽しみ方と魅力を教えてくれた気がする。

最後はスノーシューを脱ぎ、靴のまま雪の上を歩く感覚を体験し、斜面をシリセードで下山。ふかふかな新雪なので急なスピードが出ることもなく、危なくないから楽しい! みんな子ども心に還ってしまう楽しい雪山遊びをまたひとつ教わった。

“学べば山は近くなる”。初めてのスノーシューハイクを体験し、実践をとおしてたくさん雪山について学んで遊び、雪山がぐっと身近に感じられるようになったことだろう。みんな充実した笑顔で、次はどこの雪山に遊びに行こうかと、早くも考えているに違いない。

コロンビア登山学校に対する想い

コロンビア登山学校の学長を務める近藤謙司さんに登山学校に対する想いを伺った。

――どんなことに意識して登山学校を行なっていますか?

「まず、“山は楽しい”ということ知ってもらいたいですね。いつのまにか楽しい。さらにいつのまにか学習できている。そんなことを意識しています」

――通常のガイドツアーとの違いは?

「ガイドツアーは楽しんでもらうことが第一ですが、登山学校は楽しみながら学んでもらうことが目的です。登山学校では山行中にたくさん解説をするし、自分でももっと考えてもらいます」

「ツアーの場合は天候が悪ければ行かないけど、登山学校の場合は悪天候でも行きます。笑える範囲ぐらいの悪天候も体験してもらって、戻ってきます。自分のウエアはダメだったとか、この手袋はこの天候には向いていないとか。気付いたときには遅かったということにはならないように、気付いてよかったね、という範囲で体験してもらいます」

ツアーではなく“学校”なので天候による講座の中止はほぼない。悪天候も登山時の天候であり得ることだ。登山時に起こりえるシチエ―ションをその場の環境で学んでもらうことを重きにおいている。

――参加者にはどんな登山者になってもらいたいですか?

「上級の登山者になってほしいとは全く思っていません。ただ、山を嫌いになってほしくはないですね。そして、山を長く楽しめる人、だれかに山の魅力を伝えられる人になってくれたら。また、この学校の学びをとおして、遠くに感じていた山がすごく身近に感じてもらえるようになればうれしいですね。学べば山は近くなります」

▲コロンビア登山学校学長を務める国際山岳ガイドの近藤謙司さん。山岳ガイド事務所「アドベンチャーガイズ」を主宰。エベレスト登頂回数7回、ローツェ、チョ・オユー、マナスル、ガッシャブルムⅡ峰などの8,000m峰に20回以上、マッターホルンには80回以上、アイガーには30回以上の登頂経験をもつ。海外高所登山のプロフェッショナルだ。

コロンビアのPRを担当する梶恭平さんにも伺ってみた。

――コロンビアで登山学校を行なっている意義は?

「登山のなかでもいろいろなシーンや山行スタイルがありますが、より多くの方に山を楽しんでもらうために、新しい知識をいっしょに学んでいこう、という想いで開催しています。また、私たちのようなアウトドアブランドが企画することで、ガイド登山に参加するという敷居も少し下がるのではないでしょうか。登山学校をきっかけに、ガイドさんに依頼するという手段や、正しい知識を身に付けるためにはこういうものがあるんだな、ということを知ってもらうきっかけになればいいですね」

「また、コロンビアのスタッフがツアーに参加しているため、ブランドについての話やウエアの紹介やマニアックな素材の話など、購入するときに役立つ情報もお話ししたりしています。ウエアを取り扱うアウトドアブランドならではの特徴かもしれないですね」

――今後の展望は?

「いままでは決まった層の方が中心に参加されていましたが、今年のコロンビア登山学校は情報発信の方法を変更したためか、より若い世代などさまざまな方の需要があることを実感できました。コロンビアは今後も変わらずにさまざまな方々にアウトドアをより楽しんでいただけるように、発信していきたいと思っています」

「ベースは学校ですが、堅苦しい雰囲気ではなく楽しくフランクに。だけどツアーのガイド登山とも違う。通常のガイド登山の安全管理の徹底と、プロのガイドさんから教われる、役立つ山の知識が身に付く場として、今後も発展していければと思っています」

▲コロンビアスポーツウェアジャパンの梶恭平さん。ブランドPRやコロンビア登山学校を担当するブランドのホープ。自身も登山やキャンプを楽しみながらPR活動を行なっている。スノーボーダーの一面ももち、バックカントリーエリアには目がない。

 

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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