これはたしかに、いままでになかったウエアだ!【ケンロウP.S.アノラック】
PEAKS 編集部
- 2024年03月22日
INDEX
PEAKSが独自開発したウエアやギアを実際にフィールドでテストしてみるこの企画。
第1回は、最新ポーラテック・パワーシールドを使用した意欲作、この一品だ。
編集◉PEAKS編集部
文・写真◉森山憲一
今回テストしたのはコレ!ケンロウP.S.アノラック
クライマーの中島健郎さんとPEAKSがコラボして開発したアノラック。素材にポーラテック・パワーシールドを使い、ジャージのような着心地のよさと防風性・耐水性の高さを両立している一着。今回テストした森山は身長172㎝/体重68㎏。サイズはMでちょうどよかった。
- マウンテンギアラボラトリー/ケンロウP.S.アノラック
- ¥35,200
- サイズ:XS ~ L
- カラー:ブラック
- 重量:290g(M)
PEAKSがほかのウエアメーカーと同じようなものを作っても意味がない
「PEAKS、ずいぶん振り切ったな!」というのが、ケンロウPSアノラックを手に取ったときの第一印象である。
売れないといわれるプルオーバースタイル。胸ポケットひとつしかないシンプル機能。商品としては、もう少しなにか足したくなるのが普通だ。
しかしこれはクライマーの中島健郎コラボモデル。中島さんの豊富な登山経験から必要と思うことと必要でないと思うことを、ウエアの形に落とし込んでいったもの。売れないとされるプルオーバーだが、登山経験が深い人ほどこれを好む。ハンドウォーマーポケットも袖口のベルクロフラップもなくていい。全部私も同意である。ところが、こういうものは市場にあまりない。シンプルすぎて売りにくいからだろう。でもだからこそ価値がある。PEAKSがほかのウエアメーカーと同じようなものを作っても意味がない。だからこれでいいのだ。
実際にこれで山を歩いてみると、シャツを着ている感覚である。防水透湿素材特有のシャリ感がわずかにあるものの、非常にしなやかなので動いても違和感はない。ほかにあまりない着心地であるが、強いていえば薄手のソフトシェルに近いだろうか。
本体素材はポーラテック・パワーシールド。ソフトシェルやレインウエアなどによく使われる素材だが、ケンロウPSアノラックに使われているのは、昨年リニューアルした最新型のパワーシールド。旧来のパワーシールドがもっていた防風性に加え、耐水圧やストレッチ性が大きく向上しているという。たしかに、この着心地のナチュラルさには、ストレッチ性の高さが大きく寄与しているように感じる。
歩き出しは少し寒かったのだが、登りに入ると体が温まってきて、わずかに汗がこもる感じがする。だが脱ぎたくなるほどではない。絶妙なところを保ちつつ稜線へ。
周囲が開けると冷たい風が体に当たる。フリースなら一気に冷えるところだが、ここにきてパワーシールドの本領発揮。少しスースーするくらいだ。休憩で腰を下ろしても10分くらいなら防寒着は不要。そのまま歩き出していける。
結局、下山までケンロウPSアノラックはずっと着たままだった。「動きやすいジャージのようなウエア」。中島さんが想定していたコンセプトは、こういうことだったのかと納得した。
これは雪山登山のミドルレイヤーとして使っても具合がいいだろうし、秋から春にかけての時期にシャツ代わりとしてもいい。かなり尖った仕様のウエアではあるが、活用範囲はけっこう広いと感じた。
ケンロウP.S.アノラックのディテールをチェック
本体素材は最新型のポーラテック・パワーシールド。耐水圧20,000㎜、透湿性20,000g/m²/hとレインウエア並みのスペック。防風性も高い。
ケンロウP.S.アノラックの大きな特徴がこれ。立てた襟をホックで止めることができるので、スタンドカラーの状態で着ることもできる。
前身頃と背面腰上には裏地が起毛した生地を使用。生地自体もやや厚手でしっかり感があり、冷えが気になる部分を適度に保温してくれる。
背中から袖、体側部分には裏地がスムースで薄手の生地を使用。汗ヌケがよく、バックパックを背負ったときでもモタつくことがない。
全体にストレッチ性の高い生地が使われているが、脇下部分にはとくにストレッチ性の高い生地を配置。これが動きやすさに貢献している。
縫い目にシームテープを貼ると着心地が硬くなるため、あえて省略している。これによって、シャツのような着心地の軽さを実現している。
袖口はベルクロ止めなどではなく、伸縮性のあるパイピング仕様。非常にシンプルなので、手先を使うようなときにもわずらわしさがない。
左胸にポケットがひとつ。容量は十分でスマホなども入れられる。内側はメッシュになっており、簡易的なベンチレーターとしても使える。
テスター森山の「ケンロウP.S.アノラック」総評
かなり尖ったウエアで、こういうものは個人的には好み。クライミングに最適だけど、夏を除けば登山でもかなり使えると思う。冬の低山などにも最適じゃないだろうか。難点は価格で、できれば2万円台であってほしい。それから、袖に比較的ゆとりがあるけれど、こういうウエアならもう少しすっきり細めでもいいように感じた。
※この記事はPEAKS[2024年5月号 No.165]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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