百見は一聞にしかず。 プロに相談するテント泊デビュー!
PEAKS 編集部
- 2024年06月08日
INDEX
今年もテント泊デビューする登山者がひとり。
いろいろと情報を集めて、装備を物色しては頭を悩ませているという。
それならばプロに相談したほうが確かだと、千葉にあるヨシキスポーツを訪れた。
編集◉PEAKS編集部
文◉大堀啓太(ハタケスタジオ)
写真◉宇佐美博之
登山専門店に相談しよう!
登山でテント泊ができると、山の世界は一気に開ける。行ける山域が広がり、山のなかにより入っていくことができ、山上で一日をすごさなければ見られない景色もある。山の上では、夜空に満天の星が瞬き、朝焼けに染まる稜線は息をのむほどに美しい。衣食住のすべてを背負い、計画をしたルートを歩ききれば、とてつもない達成感を得られる。
なにかを新しく始めるときに、まずはインターネットで調べるだろう。「テント泊登山 装備」と試しに検索すると、たくさんのページがヒットして、インターネットでも必要な基礎知識は十分に得られる。しかし、内容は万人向けのものが多く、ブログなどは個人の経験則に基づいて書かれたものも少なくない。本当に必要なのは、自分にとって最適な装備だ。体力、技術、テント泊をしたい山域、装備選びで重視するポイントなどは人それぞれなのだから。
これからテント泊登山の装備を揃える登山者には、ある程度インターネットで知識を付けたら、百回もネットサーフィンするより、登山専門店に聞きに行くことをおすすめしたい。経験豊富なスタッフが、こちらの要望を聞いてくれて、それに見合ったアドバイスと装備を提案してくれる。ここで大事なのは、自分の要望をしっかり伝えることだ。また、気になっている装備も、実物を手に取ってみたほうが、持ってみた重さや質感など、情報をはるかに得られる。
「合戦小屋でスイカを食べて、燕山荘でテント泊をしたい」という三上は、テント泊装備をちょうど物色していたようす。さっそく登山専門店を連れ立って訪ねた。
【introduction】憧れの燕岳でテント泊したい!
テント泊デビューする人/三上美羽
学生時代にソフトボールで鍛えた体と精神力で、登山も仕事もこなす本誌編集部員。標高1,000m級の山々や、金峰山、八ヶ岳などで経験を積んだ登山歴2年目で、今年はテント泊デビューを目論む。
装備ベース
三上の装備のベースは、日帰り登山だ。容量20ℓほどのバックパック、ミドルカットのハイキングシューズ、ボトル、ガスバーナー、サコッシュ、レインウェアと防寒着。登山歴2年目とあって装備は多くなく、テント泊装備以外にも必要なものがありそうだ。
テント泊装備を整える
テント泊装備を選ぶときには、所有装備や登山経験といっしょに、どんな山でテント泊をしたいか、重視する機能、予算などの要望を伝えよう。気になっているアイテムも知らせることで、あなたに合ったおすすめアイテムを紹介してくれる。
STEP1 必要な装備を見究める
いま持っている装備でも、テント泊登山に使えるものもある。まずは自分の持っている装備を見直して、登山専門店スタッフにも相談してみよう。
三上の装備をみてもらったが、ガスバーナーやレインウエア、防寒着はそのままでも使えそうとのこと。アウトソールのやわらかいハイキングシューズと、容量20ℓほどのバックパックはテント泊仕様にしたほうがいいようだ。「それでも登れなくはないけど、重いバックパックに慣れていない人が、ある程度の距離を歩くのは大変で、装備も最低限にしなければパッキングできないですよね」
STEP2 テントを求める
山の上でも体を休められて、雨や風などを防げる居住空間をつくれるのがテントだ。バックパックに収納して背負う時間も多いため、重量やコンパクトさもチェックしたい。
POINT
- 軽さか快適さか。優先度を決める
- 設営のしやすさを考える
- 長く使いたいなら耐久性も大事
テントには大きく分けて2種類ある。「荷物が置ける前室を備えたダブルウォールテントは、重量はありますが、雨や風をしっかり防げて安心です。もうひとタイプのシングルウォールテントは軽くて携行しやすいですが、内壁に不快な結露が発生しやすく前室もありません」。ついつい重量で選びがちだが、特長を理解することが大事だ。また、はじめてのテントなら、ドームタイプの自立式テントが設営しやすいという。生地の厚みで耐久性もチェックしよう。
選んだのは、アライテント「エアライズ2」。お気に入りのカメラ機材をテント内に置くことを考えて、前室があるダブルウォールタイプの2人用サイズで快適さと収納重視に。山岳テントの長年の定番で、日本メーカーというポイントも大きい安心感。
STEP3 寝袋とスリーピングマットを選ぶ
快適な睡眠がとれるかどうかは、寝袋とスリーピングマット次第だ。寒さで眠れずつらい一晩をすごさないように、ベストな組み合わせを選びたい。
POINT
- 必要な保温性を考える
- 寝袋は軽さか安心感のどちらかを決める
- スリーピングマットはコンパクトさか使い勝手か
「まずは対応したい温度の基準を決めましょう」。北アルプスの稜線でテント泊をするならば、5℃前後で快適に眠れる寝袋が使いやすい。同じ対応温度の寝袋でも素材によって特長が異なり、軽量コンパクト重視ならダウン、どんな状況でも保温性がある安心感重視なら化繊を選ぼう。スリーピングマットは、バックパックに収納したいならエアマットが、バックパックに外付けでも広げるだけで使える手軽さを優先するならクローズドセルマットがおすすめだ。
寝袋は、軽さとコンパクトさでモンベル「シームレスダウンハガー800 #3」を選んだ。クローズドセルマットのニーモ「スイッチバック ボリエール レギュラー」は、色合いも好み。
STEP4 靴もバックパックもテント泊仕様に
1泊2日のテント泊装備は、水や食料を入れると総重量が10kg以上にもなる。その重さでも、安定して行動できるかは登山靴とバックパック次第。
POINT
- 登山靴には安定感を求める
- バックパックの容量は50Lくらいが目安
- 試しに背負ったり履いたりして確かめる
「登山靴はアウトソールが硬いもののほうが楽に歩けます」。重い荷物を背負った衝撃に対応でき、不安定な足場でもしっかり立てて足元が安定するためだ。「バックパックは、ショルダーハーネスやウエストハーネスがしっかりしていると、荷重を体全体に分散できて背負い心地が楽です」。気に入ったものは試してみてフィット感を確かめよう。
バックパックは、オスプレー「エーリエル55」の見た目と背負い心地の第一印象でピンときた。ローバー「ラベーナ EVO GTWs WXL」は足入れもよく、ひとめぼれ。
STEP5 快適さを高めるギアも揃える
テント内を明るく照らす軽量コンパクトなランタン、フィット感がよくズレにくい枕、トイレに行くときのサンダルなどがあると、テント泊生活がさらに快適になる。
ウォーターボトルひとつでも快適さが変わる。ハイドライパック「リーコン ツイスト&シップ」は、キャップを少し回転するだけで水分補給ができる便利なボトル。
※この記事はPEAKS[2024年7月号 No.166]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
**********
▼PEAKS最新号のご購入はAmazonをチェック
SHARE
PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。