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標高4,600mで始まるキャンプ生活、登山道のない山 【日本山岳会ヒマラヤキャンプ登山隊2023撮影記】#6

ついにベースキャンプ候補地までやってきた。ベースキャンプで生活を送りながらアタックに向けて準備を進める。ここからの登山に道標はない。自分たちの思い描く登山を探る時間が始まった。

文・写真◉石川貴大

ベースキャンプ設営

10月13日、カンバチェンから奥に伸びる谷を登り、ベースキャンプ候補地を探す。ベースキャンプはこれから約1カ月の生活の拠点だ。できるだけ快適な場所を選びたい。基準としては水が確保できるということ、そしてなるべく平坦で落石や雪崩の危険がない場所となる。さらに加えるなら砂地よりも草地のほうが良い。乾燥した土地でのほこりはなにかと煩わしい。周りの地形、氷河から注がれる小川を見ながら標高を上げていく。

標高約4,600m地点に着くと平坦で水も取れるいい場所が見つかった。近くに大岩もあり、ちょっとしたクライミングも楽しめそうだ。先日見えたジャヌーも目の前に見えている。ロケーションは抜群だ。今回はすんなりと候補地を決めることができた。一度カンバチェンに下山し翌日のベースキャンプ設営に備えた。

翌日、ゾッキョ、カッチャル部隊とともにベースキャンプ候補地へ荷物を上げ設営を開始した。今回はそれぞれの個人テントに加え、ダイニングテントとキッチンテントが設営された。ここから先は雨が降ろうが風が吹こうがテントのみだ。生活に必要なものは最低限しかないが、でもなにかが始まるワクワク感はどんどんと大きくなっていった。

▲ベース適地を探す。

 

▲ダワさんのアドバイスももらいながら。

ベースキャンプでの暮らし

少し時系列からは外れるが、ベースキャンプでの生活を紹介したいと思う。高所での登山は、順応や休養の時間を取りながら、その先に歩みを進めることになる。そのためベースキャンプでのんびりとした時間をすごすことも多くなる。

基本的に電気はない。太陽が昇りテントが暖かくなる頃に起床し、日が沈み暗くなって夕食を済ませてからは大体すぐに寝ていた。まさに太陽と共に生活している感じだ。休息日の日中は、近くの丘に散歩に出かけたり、読書をしたり思い思いの時間をすごす。次の登山に向けた装備の準備なんかもこの時間に行なう。

洗髪や洗濯は頻繁にはしない。私の場合は大体10日に1回程度。基本的に乾燥しているので、匂いが気になることはほとんどなかった。シャワーもなければないで意外と気にはならなかった。ダワさんが沸かしてくれたヤカンのお湯をかけてもらいながらする洗髪は、さっぱりして最高だった。下界で当たり前のことに制限が生まれてしまう場所ではあるのだが、それはそれで当たり前の大切さを知るいい機会になった。便利さがあるに越したことはないが、なくても大抵のことはんなんとかなる。そんな気がした。

 

▲私たちが1カ月すごしたベースキャンプ。

 

▲ベースキャンプから見える山々。

食は生活の基盤

ベースキャンプでの食事はダワさんとニマがすべて担ってくれていた。ベースキャンプに上がった日に出てきたのはなんと、わかめのお味噌汁。約2週間ぶりの日本の味はまさに身体に染み渡るという感じだ。いちばん日本食に飢えているこのタイミングで味噌汁を出してくるところは、さすが日本隊のことをよく知っているダワさんだ。

しかしダワさんのすごいところはそれだけではなかった。そこから、毎日違うご飯が出てくる。牛丼(ヤク肉)や巻き寿司、天ぷらが当たり前のように出てくるし、洋食もお手のもの。パスタやピザまで出てくる。毎日美味しいご飯が出てくるため、私たちは少々食べすぎてしまい、むくんでいるのか太ってきたのかわからなくなってしまった。

帰国して体重が増えていたことを考えると後者であることは間違いない。それだけ、ダワさんのご飯は美味しかったのだ。見知らぬ土地で食事が喉を通らないことほどしんどいことはない。そういった意味では、ダワさんのおかげで山としっかりと向き合える体づくりができたのではないかと思う。

 

▲巻き寿司。

 

▲ヤク肉の牛丼。

アタックに向けての準備

そんな快適なベースキャンプ生活に入りながらも、登山の準備は着々と進めていく。10月14日にベースキャンプを設営してからはレストを挟み高所順応を進めた。4,600mの標高では普通の動きも意識してゆっくり動かないと少し息切れを感じる。とくにかがんで立ち上がるときはそれを感じやすい。じっくりと体が慣れてくるのを待った。

16日になるとグンサで別れていた金子君と合流となった。体調は万全ではなかったもののグンサでぐったりしたときに比べるとかなり顔色も良くなっていた。この日、先行していた3人は標高5,200m地点まで偵察を進めた。日本ではあまり偵察ということはしないが、登山道も道標もない場所を私たちは進まなければならないため、偵察は必須になる。行なっていることはちょっとしたトレッキングではあるが、不安定なガレ場を通過したり、落石、滑落の危険がある場所の近くを通ったりすることもある。すべてを自分たちの目で見て判断して進まなければならない。なによりそのなかでも気にしなければいけないのは、帰れるのかどうかだ。この場所が夜間や霧のなかでも戻れるのか、それをしっかりイメージしながら進む。広く単調な地形では日本から持参したマーキング用のテープや竹の竿を使って目印を置いた。手間のかかることではあったが、自分たちの道を作ることも未踏峰登山の醍醐味だと感じられた。

 

▲大きく崩れたガレ場を進む。

 

▲標高を上げると高峰の山々が存在感を増す。

 

▲慎重に進みつつも絶景のなかの偵察。

新たなキャンプの設置と今後の計画

偵察山行では、今後の登山のためにどこにキャンプを置くのかも検討しながら進む。私たちはひとつ目のキャンプとして標高約5,100m地点にキャンプ地を設定した。氷河湖の脇で水がとれる平坦地だ。今回はその後もキャンプ地を上げる予定がありTC1(テンポラリーキャンプ)という一時的なキャンプを置くことにした。18日にTC1への荷上げを行ない、20日にそのさらに上部のキャンプ地の偵察を行ない、順応も兼ねてTC1に設置したテントに泊まった。標高5,000mを超えての初めての宿泊となり、軽い頭痛や眠気などの高山病の症状がメンバーそれぞれに少し出ていたが体調には問題はなかった。

ある程度先へ進む目処がたち一旦ベースキャンプへ下り休息をとった。今回の遠征は、花谷さんのスケジュールにリミットがあった。27日にはベースキャンプを去らなければならなかったため、それも踏まえ登山計画を練った。なんとか花谷さんがいる間に1回目のアタックができそうだということになり、22日からゴーアップを行なうことでまとまった。

ルートとしては想定していたルートではなく、前衛峰を越えて回り込むルートになった。どこまで行けるのか、標高や氷河がどう影響するのか、体調面は好調にいけるのか、不安とわくわくが入り混じった気持ちを抱えながらゴーアップの日を待った。

 

▲ベースキャンプから見た天の川。

次回は、いよいよシャルプーⅥへの最初のトライをお伝えします。すんなりとは行かせてくれない未踏峰の難しさに直面します。

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PROFILE

石川貴大

PEAKS / フォトグラファー・登山ガイド

石川貴大

日本山岳ガイド協会認定ステージⅡの登山ガイド。山岳撮影や山岳歩荷、リバーガイドなど多方面で活動。プライベートではクライミングを中心に一年を通して山を楽しんでいる。

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