起毛フリースに代わる、環境性能重視のミドルレイヤー生地。|POLARTEC×HOUDINI INTERVIEWS #2
PEAKS 編集部
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機能性と同じくらい環境性能を重視する。だからこそフーディニではリサイクル素材を多用し、リサイクルしやすい素材構成で製品をつくり、使い終わった製品は回収してリサイクルにまわそうとしている。彼らが「サーキュラー」と呼ぶ素材循環を目指しながら、環境へのインパクトを最小化するために開発されたのがパワーエアだ。登場いただくのは、フーディニのチーフデザイナーであるジェスパー・ダニエルソンさん。いまや環境への配慮は、製品づくりの舵取り役となるデザイナーが真正面から取り組むべき事柄なのだ。
編集◉PEAKS編集部
文◉林 拓郎
写真◉熊原美惠
取材協力◉フルマークス
環境への負荷を優先して新たな素材を開発する
「そもそも私たちの身の回りにあるものは素材や原料まで含めて、すべて地球上のどこかから持ってきたものであり、自然から借りてきたものだと思っています」
フーディニのチーフデザイナーであるジェスパーさんが話してくれたのは、同社で製品をデザインしていくうえでの基本的な考え方についてだ。
「だからそうしたものは最終的にすべて正しい形で自然に返すべきだと考えていますし、その過程で生じる環境へのインパクトはできるだけ小さくするべきだと思っています」
しかし、こうした理念を形にするためには、ユーザーをはじめとした多くの個人や、さまざまな企業の協力が必要だという。
「その典型的な例がマイクロプラスチックの問題です。海に流れ出しているマイクロプラスチックの多くは衣類を家庭で洗濯することから排出されていました。つまり、私たちのつくる製品こそが問題の根本だったんです。となると、責任は衣類を作っている私たちにもあります。しかし問題を解決するためには衣類のつくり方や素材から考え直す必要があり、一企業の努力だけでは遠く及びません。
幸い、フーディニはポーラテックと長くパートナー関係にあり、ポーラテックにはゼロインパクトで最大限の機能性を創造するというビジョンがあります。そこで、どうすればマイクロプラスチックの排出を抑えることができるのか、そのうえでできるだけリサイクル可能な素材を使いながら製品自体の機能性を高めていくためにはどうすればいいのか、というテーマを掲げて何年もミーティングを繰り返してきました」
繊維の抜け落ちを防いで効率よく空気をためこむ
こうした背景のなか、ポーラテックが打ち出した解決策がパワーエアだったのだ。
「ポーラテックから提案されたのは、フリースに代わる新しいミッドレイヤー生地でした。フリースはその表面を細かく毛羽立たせることで空気を溜め込んで、快適な保温性を発揮します。しかしこの毛羽立ちが繊維の抜け落ちにつながり、マイクロプラスチック問題の一因になっていたのです。それなら毛羽立たせることなく、空気だけを閉じ込めることを考えたい。
そうした発想からポーラテックは、表裏2枚の生地の間に梱包用エアクッションのような小さな気室を連続的につくるという構造を実現しました」
しかも生地には透湿性を持たせることでムレを防止。これまでよりも耐摩耗性に富み、毛玉ができにくい特性を備えることで繊維の抜け落ちも少なくした。加えて気室の内部に丸めた糸を封入することでロフトを確保し、適度な保温性を実現したのだ。
「言葉で言えば簡単ですが、納得のいく生地に仕上がるまでには数えきれないトライが必要でした」
こうしてフリースのような柔らかさと優しい生地感を保ったまま、マイクロプラスチックの問題に対処する手段が確立されたのだ。
「結果的にパワーエアは標準的なフリースと比べて80%以上もマイクロプラスチックの排出を抑えることに成功しています。パワーエアを使った製品は生地の強度が上がったことで製品寿命が長くなりました。さらに肌触りの良い生地感は製品満足度を上げ、シンプルなデザインにすることでミニマルな美しさも備えました」
アウトドアウエアは機能が重視されるアイテムだ。パフォーマンスの追求は当たり前のように行なわれている。その一方で、同じくらいの情熱をもって環境負荷のことを考え、製造者としての在るべき責任を貫こうとしている人たちがいる。損得やトレンドで語るのではなく、成すべき役割に重きを置く。こうした成熟した態度こそ、これからの時代に求められる企業姿勢なのかもしれない。
フーディニ / ムーンウォークフーディ[HOUDINI / Moonwalk Houdi]
高山や低温下で、心拍数が上がるアクティビティに合わせてデザインされた高機能多目的フーディ。軽さや適度な暖かさ、汗ぬけの良さに加えて、優れたストレッチ性と肌触りの良さを備えた。(ウィメンズあり)
- ¥38,500
- サイズ:XS~XXL
- カラー:グレイシャーグレイ、トゥルーブラック 他全4色
- 重量:580g(L)
Pick Up Material
Polartec® Power Air®[ポーラテック / パワーエア]
マイクロプラスチック問題の解決に大きな指針を示す、新たなミッドレイヤー素材。規則的に並んだ気室の中に空気を閉じ込めることで、軽さと暖かさを両立。通気性にも優れており、快適な着用感を約束する。
From POLARTEC
Director of Product Management Karen Beattie(カレン・ビーティ)
パワーエア開発のきっかけは家庭での洗濯における繊維の脱落問題に対処するためです。私たちの調査ではこの問題に大きく関わっているのは、表面を毛羽立たせたフリースだったんです。あのフワフワの起毛が抜け落ちて、マイクロプラスチック問題の一因になっていたわけです。そこで、フリース以外の選択肢となるものを開発しようと考えたのが2016年ころでした。
開発にあたっては表面加工や起毛加工を施さない生地を使いながら、フリースのような保温性を確保することを目指しました。そこで繊維が細かく分断されることがないよう、長い糸を丸めて小さな気室の中に閉じ込め、それを表地と裏地で挟み込むという構造を採用したのです。
開発のなかでフーディニにフィールドテストを依頼し、耐久性や耐摩耗性などをチェックしてもらいました。実際のところテストは厳しく、いくつかの問題が見つかってがっかりしたこともありました。けれど、悪いところがハッキリすれば、やるべきことが明確になります。フーディニというパートナーのおかげで、パワーエアの品質は想像した以上のものになったと思っています。
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ポーラテックの最新ウエアをアウトドア専門店でチェック!
東京・神保町の「さかいやスポーツウェア館」にてポーラテック素材採用のウエアを特別に展示販売中。期間中、同上の商品購入者にはポーラテック特別製のノベルティが先着20名に進呈されます!(フーディニ・ムーンウォークフーディは今秋からの販売予定)
- さかいやスポーツウェア館
- 東京都千代田区神保町2-48
- 営業時間:11:00 ~ 20:00
- TEL.03-3626-0432
企画協力◉エスティーシージャパン
TEL.03-5436-6380
http://www.challenge-21c.co.jp/
※この記事はPEAKS[2024年11月号 No.168]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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