自身のスタイルに合わせて最適解を!ミドルレイヤー、タイプ別の選び方
PEAKS 編集部
- 2024年11月04日
ミドルレイヤーは、ベースレイヤー、アウターレイヤーに比べてバリエーションが多く、選びにくい。
近年はとくに製品や素材の進化が著しいウエアで、それが選択をより難しくしている。
そこでカテゴリーに分けて、それぞれのメリット・デメリットを解説しよう。
編集◉PEAKS編集部
文◉森山憲一
写真◉熊原美惠
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登山ウエアのレイヤード(重ね着)の基本は3層。素肌の上に着るベースレイヤー、いちばん外側に着るアウターレイヤー、そしてその中間に着るウエアがミドルレイヤー(ミッドレイヤー、中間着などともいう)というわけだ。
ミドルレイヤーの主な役割は保温。ベースレイヤーとアウターだけでは秋〜春の山では寒いことが多いので、その温度調整のためにミドルレイヤーが必要になる。
とはいえ暖かければよいかというと、話はそう単純ではなく、行動着としての「適度な」保温性や動きやすさも大切な要素。さまざまな特性を併せ持つことがミドルレイヤーには求められるのだ。
登山ではこのミドルレイヤーにもっぱらフリースが使われることが多かった。適度に暖かく、適度に蒸れず、適度に軽いというフリースの特性がミドルレイヤーに最適だったのだ。
ところが、10年ほど前に「アクティブインサレーション」というウエアが登場し、事情は一変。保温着として使われることが一般的だった中綿入りウエアの通気性を上げることで、行動中にも着られるようにしたのである。これはフリースより優れた点も多く、技術や素材の革新で年々進化もしている。現状どちらも一長一短。さて、どれを選べばよいのか?
①[middle layer] フリース
ミドルレイヤー永遠の定番。一着は持っておきたい。
登山ウエアとして40年以上の歴史をもつフリース。暖かさや軽さはもちろん、メンテナンスの容易さや価格の安さなども大きな利点で、登山をしている人なら一着はもっておきたいウエアといえる。ベースレイヤーに近いマイクロフリースから、毛足が長い極寒地用のものまで製品によって特性はさまざまだが、とくに薄手のものはアクティブインサレーションに勝る点が多く、利用価値が高い。
- パタゴニア/メンズ・R1サーマル・フルジップ・フーディ
- ¥30,800
- 重量:434g
- (問)パタゴニア日本支社
収納性に優れる。
ここは製品によってまちまちだが、一般にアクティブインサレーションより収納性に優れる。とくに薄手のものはコンパクトにたたむことができ、携行性が高いといえる。
ストレッチ性に優れる。
これも素材によって異なるが、一般にストレッチ性が高く、着心地がナチュラルなのもフリースの魅力。パワーストレッチなどストレッチ性に特化したものもある。
通気性が高い。
フリースは風を通しやすい。これは長所にも短所にもなり、気温が高いときは適度に熱を逃がしてくれる一方、風が強いときは寒く感じる。アウターとの併用が必須だ。
肌面はグリッド形状が主流。
グリッド形状に凹凸させたフリースは、凸面で嵩をかせぎながら、凹部分のグリッドを設けることで重量増を抑え、通気性アップにも貢献。登山ウエアとして最適なのである。
表面の仕上げが重要。
フリースは起毛素材なので、アウターを重ねたときに引っかかりやすく、動きやすさに難があることが多い。表面をスムーズに加工したものだと重ね着に有利だ。
フリースのここが◯
フリースの最大の魅力は着心地の軽さだろう。単純に軽いだけでなく、体に追従するナチュラルで動きやすい着心地がフリースのよさだといえる。際立った欠点がないので、どんな山行にも対応してくれる懐の深さも魅力。メンテナンスの容易さや入手のしやすさも見逃せないポイントだ。
フリースのここが✕
フリースの最大の欠点は風の通しやすさ。風が吹くと一気に体が冷えるので、コンディションが変わりやすい山ではアウターの脱ぎ着がどうしても増えてしまう。また、保温性の高いものは一般にアクティブインサレーションより重くかさばることが多い。保温性重視のときは不利となりがちだ。
②[BASE layer] アクティブインサレーション
ミドルレイヤーとしてもアウターとしても。活用範囲の広さが◎
10年ほど前に登場した、いまいちばん進化が著しくホットなウエア。構造的には、旧来の中綿入りウエアと同じなのだが、空気が抜けやすい中綿と表面生地を新たに開発することで、行動中に着ても暑くなりすぎないウエアとして登場した。パタゴニアのナノエアとポーラテックアルファがその先駆けといえるが、現在では各社独自素材も次々に開発され、年々性能が向上した製品が登場している。
- アークテリクス/プロトンフーディ
- ¥59,400
- 重量:415g
- (問)アークテリクス
収納性はそこそこ。
中綿が入っているウエアなので、それほどコンパクトにはならない。ただし圧縮すれば、バックパックの中に入れたときに大きく場所をとるというわけでもない。
ストレッチ性は平均的。
表素材や中綿にストレッチ性の高いものを採用し、一般的な中綿入りウエアよりはストレッチ性を高めているものも多い。ただしフリースのストレッチ性には劣る。
裏地も通気性が高い。
表地同様、裏地にも通気性の高い素材が用いられる。一方で、滑りのよさも着心地向上には大事なポイント。製品によっては物理的な通気口を空けているものもある。
表面生地がキモだ。
アクティブインサレーションに使用されている表地は、あえて織りを粗くするなどして、通気性を高めている。中綿だけでなく、表地との合わせ技で通気性を実現する。
アクティブインサレーションここが〇
フリースより防風性に優れるので、アウターとしても使いやすいところが最大のメリット。風が強くなってきても体が冷えにくいので、アウターを着脱する機会が減り、止まらずに行動できる。同じ保温性ならフリースより軽くできるので、気温の低いシチュエーションではとくに有用だ。
アクティブインサレーションここが×
製品によってかなり特性が異なり、外観からだけではそれがわかりにくいので、選ぶ際に知識が必要になる。価格が高いものが多いのも難点のひとつ。また、通気性が高いとはいえ、フリースより高いわけではないので、気温が高めの低山などではオーバースペックで使いにくいこともある。
③[OUTER layer] 高通気タイプ
フリースとアクティブインサレーションのハイブリッド的な第三の選択肢。
アクティブインサレーションの通気性をより高めるために裏地を省略した製品もある。さらに表地まで省略して、もはやフリースと変わらない見た目のものまで登場している(その代表格はポーラテックアルファダイレクト)。特性としてはフリースに近いのだが、もともと通気性を重視して開発された素材だけに、通気性の高さはフリース以上。部位ごとに使用するハイブリッド型も増えている。
- ミレー/スルー ウォームハイブリッド ジャケット
- ¥24,200
- 重量:278g
- (問)ミレー
収納性はとても高い。
密度の低い保温素材を使用しているため、非常に軽く、圧縮するとかなり小さくなる。バックパックに入れて携行するときにもほとんど負担にならないのがメリット。
ストレッチ性は製品次第。
保温素材自体のストレッチ性は特別高いわけではないが、素材自体が軽いため着心地は軽い。ストレッチフリースを組み合わせて動きやすさを追求したものも多い。
通気性の高さは最高レベル。
生地を透かしてみると、隙間だらけ。通気性が高いことが見た目からもよくわかる。もちろん風を通しやすいということでもあるので、保温性は低めになる。
編みの粗い裏地。
裏地は表面よりは毛足を短くして滑りをよくしているが、織りは粗くしてあるため汗抜けがよい。このあたりの作りは製品ごと素材ごとにさまざまな工夫がされている。
毛足の長い表面。
表面は毛足を長くして嵩を稼ぎ、空気を蓄えやすくして保温性を保っている。この製品はグリッドフリースのような構造になっており、通気性の高さと軽さをさらに追求している。
高通気タイプここが〇
着心地が軽くて動きやすく、汗をかくようなシチュエーションでも体が熱くなりすぎないので、運動量の多いトレイルランニングやスピードハイクにとくに向いている。風による冷えが気になる場合は、前身頃など部分的にシェル素材を使用したハイブリッド型を選ぶのも手だ。
高通気タイプここが×
ある程度特化した性能のため、耐久性は低め。運動強度がそれほど高くない登山に使うとあまりメリットが生かされないことになるので、使う人を選ぶウエアといえる。休憩を多く取るゆったりした山行や、ストップ&ゴーの多いクライミングなどで使うと通気性の高さが逆に仇となってしまう。
※この記事はPEAKS[2024年11月号 No.168]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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