シューレース苦手派、繊細フィット派のためのBOA搭載シューズ6選|PONCHOギア深堀りREVIEW
PONCHO
- 2024年12月05日
INDEX
ダイヤルを回し、レースの長さを微細に調節できるBOAフィットシステム。
それはシューレースを結ぶよりも、はるかに最適なシューズのフィット感を提供する。
2018年には運動効率をアップさせる構造を採用。今回は登山での使用感をテストしてみた。
編集◉PEAKS編集部
文◉ポンチョ
写真◉後藤武久
素早いフィット調節に加えパフォーマンスアップも!
登山で使用するシューズのすぐれた性能を発揮させるには、足との一体感が不可欠だ。その一体感は、サイズが合っているだけでは生まれない。シューレースを足に合わせて締め込み、歩行によって緩みやズレが出たら、都度調節し直す必要がある。
さらに自分がフィットしていると思っているシューレースの締め込み具合は、じつは緩かったりする。反対にキツく締めすぎて、足本来の力を削いでしまっていることもある。
シューレースの締め込みと調節は、意外と繊細で難しい。時間の経過や疲労によって足の大きさは変わるうえ、アップダウンや路面状況によっても、最適なフィットが変わる。
そこで活用したいのが、ダイヤルで素早く最適なフィット調節を行なえるBOAフィットシステムだ。とくに2018年に開発されたBOAパフォームフィット・ラップ構造は、パフォーマンスアップも期待できるもの。今回集めた6足のうち4足がラップ構造を採用。とはいえ従来構造のBOAでも登山道を登る運動レベルなら、十分に機能を発揮する。
今回のテストで感じたことは、一体感の高さがもたらす、足取りの軽さだ。さらに紐靴で感じていた煩わしさを解消。じつに快適。ぜひ試してみてほしい。
今回レビューするのはこの6足
BOAフィットシステムを搭載した6足をレビュー。このうち4足は、2018年に開発されたBOAパフォームフィット・ラップ構造を搭載。
1.モンベル/マウンテンクルーザー400 BOA Men’s
■BOA搭載トレッキングシューズの大定番
日帰り登山用軽量トレッキングシューズながら、高いグリップ力にBOAのフィット感が加わることで、軽量装備ならテント泊縦走にも対応する性能を発揮。同社は2008年からBOA搭載シューズを展開。その熟成度は高く、タンに装備されたダイヤルは歩行時にじゃまにならず、甲部分のフィット感、ソールと足裏との一体感は極上だ。
- ¥23,980
- 重量:489g(25.5cm 片足)
- サイズ:24.0 ~ 29.0cm
- カラー:ネイビー
- 問)モンベル
2.マムート/アイガー スピード BOA ハイ ゴアテックス
■走りたくなるほどの軽さとクッション性
見た目に反して履き心地は非常に軽い。重量は480gで特別に軽いわけではない。おそらく搭載されたBOAパフォームフィット・ラップが機能しているのだろう。足との一体感が軽さを生んでいる。足首まで包むゲイターは小石や砂の侵入を防ぐだけでなく保温性も感じられた。ソールはクッション性が高く、下りでの疲労軽減に効果的。
- ¥67,100
- 重量:480g(UK8.5 片足)
- サイズ:UK6.5 ~ 9
- カラー:ブラック×アルミタ
- 問)マムート
3.スポルティバ/ジャッカル II BOA
■長距離移動の絶対的な選択肢
100マイル=約160kmを移動するトレランレースにも対応。昨年発売されたモデルなので、すでに多くのランナーから機能、耐久性の高さが評価されている。特筆すべきは、2ダイヤル式、しかもBOAパフォームフィット・ラップ構造で、中足部を上下で調節できる圧倒的なフィット感。反発力のあるソールは、前進力が気持ちいい。
- ¥27,500
- 重量:300g(EU42 片足)
- サイズ:EU38 ~ 48
- カラー:イエロー×ブラック
- 問)日本用品
4.スカルパ/リベレラン カリブラHT
■ガチッとした剛性感で岩場歩きも安心
ダイヤルを回して締め込むと、中足部だけでなく、履き口も絞り込まれる360ラップシステムを採用。履きはじめは足首周辺の硬さが気になるも、次第にホールド感に変わっていく。高所を走るスカイランニングに対応し、ソールを含めたシューズの剛性感が高く、トレッキングシューズ的。ドロップ4mmで、安定感のある動きが可能だ。
- ¥30,250
- 重量:310g(EU42 片足)
- サイズ:EU39~45
- カラー:オイルイエロー
- 問)ロストアロー
5.メレル/アジリティー ピーク 5 ボア ゴアテックス
■低山からUL縦走対応オールラウンダー
BOAフィットシステム、ゴアテックス、ヴィブラム・メガグリップ&トラクションラグ、ESSロックプレートなど多彩な機能を装備。しかも厚底で、長距離、長時間、あらゆる地形に対応。履き心地は厚底らしくフンワリ。ヒールはやや浅いが歩行、走行は安定感あり。ローカットながら、UL装備での縦走にも使ってみたいと思わせる。
- ¥31,900
- 重量:300g(27.0cm 片足)
- サイズ:25.0~30.0cm
- カラー:ホワイト、他1 色
- 問)丸紅コンシューマーブランズ
6.アルトラ/メンズ モンブラン ボア
■裸足感覚の厚底で足にやさしい
足が持つ力を引き出すシューズで、身体にこだわるULハイカー、トレイルランナーが愛用するアルトラ。足指を自由に動かせるワイド幅、中足部は2ダイヤル式のBOAパフォームフィット・ラップでホールドして、安定感のある動きを提供。厚底でハイクッションながら、ゼロドロップで足に掛かるストレスを軽減する同社らしさもある。
- ¥30,800
- 重量:317g(28.5cm 片足)
- サイズ:25.0~31.0cm
- カラー:ゴールデンアワー、他2 色
- 問)ストライド
3つのポイント
BOAを知るための3つのポイント。
Point 1:BOAフィットシステムとは?
シューズに装備されたダイヤルを回してレースを締め込むシステム。ダイヤル操作でフィット感を自在に、そして微細に調節可能なので手間要らず。中足部をホールドし、カカトはカップにぴったり収まり、足指を使え、パフォーマンスアップが可能。さまざまなスポーツに対応したプラットフォームがある。
Point 2:締める、緩めるがグローブを装着したままでも簡単
真夏以外、山は気温が低く、グローブを装着する機会が多い。その際、薄手のインナーグローブであっても、慣れていないと靴紐を結ぶのは難しい。でもBOAならダイヤル式なので、オーバーグローブでも締め込み、フィット調節が可能だ!
Point 3:保証制度と交換パーツが用意されている
BOAの耐久性を心配する人も多いが、シューズの耐久年数以上の耐久性を備えている。また交換パーツを使えば、簡単に自分で交換も可能。さらにライフタイム保証も備え、シューズの寿命期間の保証がされ安心だ。
PICK UP
今回紹介するシューズで使われているBOAの種類。
L6 ダイヤル
【搭載モデル:モンベル/スポルティバ/メレル/アルトラ】
軽量トレッキングシューズ、トレイルランニングシューズに多く採用される。ダイヤルを押してロック、回して締め込み、引き上げてリリース。ダイヤル操作で緩めることはできないが、不便さはない。
Li2 ダイヤル
【搭載モデル:マムート/スカルパ】
LシリーズのBOAに、ダイヤルを締め込む方向とは逆回転させることで、レースの締め込み具合を少しずつ緩める機能を装備。軽さと操作性のよさだけでなく、より正確で微妙なフィット感がほしいシビアなシーン、ユーザーに対応する。
レビュー
5つの項目でチェック。
Check 1:履き口とフィット感を比べてみる
BOA搭載シューズと紐靴のトレッキングシューズ、トレイルランニングシューズとの大きな違いは、履き口とアッパーのフィット感だ。紐靴の場合は履き口のパッドの量や配置、タンの構造、アキレス腱周辺の形状、そして靴紐の取り回し方、靴紐を通すアイレットやフックの素材や形状によって、シューズごとにフィット感の差があった。しかしBOA搭載シューズは、どれも足とシューズの一体感がある。ヒールカップにカカトがしっかりと収まり、ローカットシューズであっても足首の安定感がある。とはいえアッパーの素材などでフィットの感覚に違いはあるので、下を参考にしてみてほしい。
■モンベル
今回唯一のミッドカット。ゆえに甲から甲の上部=足首が曲がる付近まで左右から包み込まれる。緩みがなくカチッとしている。
■マムート
ローカットに長めのゲイターを装着した仕様。BOAは複数のパネルで甲を包み、ゲイターが足首をサポート。安心感を生んでいる。
■スポルティバ
2ダイヤル式BOAの微調整できるフィット感がよく、軽やか。履き口の短いゲイターが、意外や足首をサポートしてくれている印象。
■スカルパ
BOAパフォームフィット・ラップの2本のパネルに加え、履き口のフィット感を出す仕様。足首からはじまる靴との一体感は随一。
■メレル
従来の紐靴同様にレースが配されたBOAながら、フィット感は十分。履き口のパッド量が多く、ふんわりとした履き心地がいい。
■アルトラ
2ダイヤル式BOAでフィット感の調整は自在!足先のワイドさと軽量化のための薄いアッパー素材の裸足感覚は、慣れが必要かも。
Check 2:アッパーの作りの違いでフィット感はどれくらい変わる?
紐靴のミッドカットなどのシューズは、靴紐を締めて足首を固定する仕様。でも最近はテント泊でも12〜13kg程度の装備が可能。そうなるとがっちりしたアッパー素材で固定して動きを制限するよりも、シューズと足との一体化によって安定感が出て、かつ動きやすいシューズのほうが身体の負担が軽くなると筆者は考えている。今回紹介している6足は、まさにそんなシューズだ。一体感を生むBOAは、紐靴同様にレースを配した従来型BOAと、複数本のパネルで甲を包むBOAパフォームフィット・ラップ構造がある。後者がフィット感は高いが、登山使用なら好みで選んで問題ないレベルだ。
Check 3:BOAの数は1個or2個のどちらがより快適?
BOAパフォームフィット・ラップには、ダイヤルが1個の仕様と2個の仕様とがある。2ダイヤルは、中足部に配されたベルトのフィット感を細かく変更でき、パーソナルフィットを提供する。1ダイヤルは均一な締め込み、フィット感を出せる仕様。2ダイヤルを採用するスポルティバとアルトラは、長距離のトレイルランニングレースでの快適性を求め、身体と自然のさまざまな変化に対応することを可能にしている。だから、どちらが快適かと問われれば「2ダイヤル」だ。しかし8時間、長くても15kmほどの登山で使用するのであれば、1ダイヤルの性能でも十分だろう。
Check 4:レースの素材にも注目!
BOAは、搭載されるシューズの目的に応じて、ダイヤルやレースを数種類用意している。主にローカットシューズ向けに設計されたLシリーズ6世代目のL6、緩み調節可能なLi2があり、シビアなシーンにも対応する。またモンベルには今回唯一、CSレースという金属製のレースが採用されている。それ以外はTXレース、つまりテキスタイル=繊維素材のレースだ。その使い分けは、主にアッパーの素材によるという。
Check 5:登山時に求める機能の取捨選択
今回紹介しているシューズは、BOAだけがその特長ではない。難易度の高い山岳ツアーにも適したマムートは、軽量シューズながらセミワンタッチクランポン対応。アルトラはゼロドロップでワイズ広め、スカルパもドロップ低めで自然な歩行を促す。スポルティバはプレート内蔵のソール、メレルは厚底で、足取りが軽い。そして長く使えるという点でお知らせしておきたいのがモンベル。ソールの張り替えが可能で、10年以上履きたいシューズだ。
PONCHO&編集オダマキ 今回のお気に入り
PONCHOと編集担当のオダマキが、気に入ったシューズを2点ずつ紹介。
PONCHO
「スポルティバ/ジャッカル IIBOA」「マムート/アイガー スピード BOAハイ ゴアテックス」
今企画のきっかけとなったのが、スポルティバの2ダイヤル式BOAのシューズを履いたこと。フィット感と剛性の高さに驚き、他のBOA搭載シューズも試したくなった。マムートはアルプスなどのスピードハイクで安心して履けそうだ。
オダマキ
「スカルパ/リベレラン カリブラHT」「スポルティバ/ジャッカル II BOA」
個人的にソール硬めが好み。スカルパのソールがもっとも硬く、アッパーのフィット感と脱ぎ履きのしやすさが決め手になった。スポルティバはローカットだが足首素材がフィットして歩きやすい。ラストは評判どおり細身で慣れが必要。
※筆者はトレイルランニングシューズを日帰り、縦走登山でも使用していますが、山域、天候、ユーザーの体力、経験値に合わせて、使用を検討してください。
※この記事はPEAKS[2025年1月号 No.169]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PROFILE
登山、ランニング、旅、島、料理、道具をテーマに執筆、撮影。低山ハイクとヨガをMixしたイベント『ちょい山CLUB』を主催する。