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シューレース苦手派、繊細フィット派のためのBOA搭載シューズ6選|PONCHOギア深堀りREVIEW

ダイヤルを回し、レースの長さを微細に調節できるBOAフィットシステム。
それはシューレースを結ぶよりも、はるかに最適なシューズのフィット感を提供する。
2018年には運動効率をアップさせる構造を採用。今回は登山での使用感をテストしてみた。

編集◉PEAKS編集部
文◉ポンチョ
写真◉後藤武久

素早いフィット調節に加えパフォーマンスアップも!

登山で使用するシューズのすぐれた性能を発揮させるには、足との一体感が不可欠だ。その一体感は、サイズが合っているだけでは生まれない。シューレースを足に合わせて締め込み、歩行によって緩みやズレが出たら、都度調節し直す必要がある。

さらに自分がフィットしていると思っているシューレースの締め込み具合は、じつは緩かったりする。反対にキツく締めすぎて、足本来の力を削いでしまっていることもある。

シューレースの締め込みと調節は、意外と繊細で難しい。時間の経過や疲労によって足の大きさは変わるうえ、アップダウンや路面状況によっても、最適なフィットが変わる。

そこで活用したいのが、ダイヤルで素早く最適なフィット調節を行なえるBOAフィットシステムだ。とくに2018年に開発されたBOAパフォームフィット・ラップ構造は、パフォーマンスアップも期待できるもの。今回集めた6足のうち4足がラップ構造を採用。とはいえ従来構造のBOAでも登山道を登る運動レベルなら、十分に機能を発揮する。

今回のテストで感じたことは、一体感の高さがもたらす、足取りの軽さだ。さらに紐靴で感じていた煩わしさを解消。じつに快適。ぜひ試してみてほしい。

今回レビューするのはこの6足

BOAフィットシステムを搭載した6足をレビュー。このうち4足は、2018年に開発されたBOAパフォームフィット・ラップ構造を搭載。

1.モンベル/マウンテンクルーザー400 BOA Men’s

■BOA搭載トレッキングシューズの大定番

日帰り登山用軽量トレッキングシューズながら、高いグリップ力にBOAのフィット感が加わることで、軽量装備ならテント泊縦走にも対応する性能を発揮。同社は2008年からBOA搭載シューズを展開。その熟成度は高く、タンに装備されたダイヤルは歩行時にじゃまにならず、甲部分のフィット感、ソールと足裏との一体感は極上だ。

  • ¥23,980
  • 重量:489g(25.5cm 片足)
  • サイズ:24.0 ~ 29.0cm
  • カラー:ネイビー
  • 問)モンベル

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2.マムート/アイガー スピード BOA ハイ ゴアテックス

■走りたくなるほどの軽さとクッション性

見た目に反して履き心地は非常に軽い。重量は480gで特別に軽いわけではない。おそらく搭載されたBOAパフォームフィット・ラップが機能しているのだろう。足との一体感が軽さを生んでいる。足首まで包むゲイターは小石や砂の侵入を防ぐだけでなく保温性も感じられた。ソールはクッション性が高く、下りでの疲労軽減に効果的。

  • ¥67,100
  • 重量:480g(UK8.5 片足)
  • サイズ:UK6.5 ~ 9
  • カラー:ブラック×アルミタ
  • 問)マムート

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3.スポルティバ/ジャッカル II BOA

■長距離移動の絶対的な選択肢

100マイル=約160kmを移動するトレランレースにも対応。昨年発売されたモデルなので、すでに多くのランナーから機能、耐久性の高さが評価されている。特筆すべきは、2ダイヤル式、しかもBOAパフォームフィット・ラップ構造で、中足部を上下で調節できる圧倒的なフィット感。反発力のあるソールは、前進力が気持ちいい。

  • ¥27,500
  • 重量:300g(EU42 片足)
  • サイズ:EU38 ~ 48
  • カラー:イエロー×ブラック
  • 問)日本用品

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4.スカルパ/リベレラン カリブラHT

■ガチッとした剛性感で岩場歩きも安心

ダイヤルを回して締め込むと、中足部だけでなく、履き口も絞り込まれる360ラップシステムを採用。履きはじめは足首周辺の硬さが気になるも、次第にホールド感に変わっていく。高所を走るスカイランニングに対応し、ソールを含めたシューズの剛性感が高く、トレッキングシューズ的。ドロップ4mmで、安定感のある動きが可能だ。

  • ¥30,250
  • 重量:310g(EU42 片足)
  • サイズ:EU39~45
  • カラー:オイルイエロー
  • 問)ロストアロー

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5.メレル/アジリティー ピーク 5 ボア ゴアテックス

■低山からUL縦走対応オールラウンダー

BOAフィットシステム、ゴアテックス、ヴィブラム・メガグリップ&トラクションラグ、ESSロックプレートなど多彩な機能を装備。しかも厚底で、長距離、長時間、あらゆる地形に対応。履き心地は厚底らしくフンワリ。ヒールはやや浅いが歩行、走行は安定感あり。ローカットながら、UL装備での縦走にも使ってみたいと思わせる。

  • ¥31,900
  • 重量:300g(27.0cm 片足)
  • サイズ:25.0~30.0cm
  • カラー:ホワイト、他1 色
  • 問)丸紅コンシューマーブランズ

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6.アルトラ/メンズ モンブラン ボア

■裸足感覚の厚底で足にやさしい

足が持つ力を引き出すシューズで、身体にこだわるULハイカー、トレイルランナーが愛用するアルトラ。足指を自由に動かせるワイド幅、中足部は2ダイヤル式のBOAパフォームフィット・ラップでホールドして、安定感のある動きを提供。厚底でハイクッションながら、ゼロドロップで足に掛かるストレスを軽減する同社らしさもある。

  • ¥30,800
  • 重量:317g(28.5cm 片足)
  • サイズ:25.0~31.0cm
  • カラー:ゴールデンアワー、他2 色
  • 問)ストライド

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3つのポイント

BOAを知るための3つのポイント。

Point 1:BOAフィットシステムとは?

シューズに装備されたダイヤルを回してレースを締め込むシステム。ダイヤル操作でフィット感を自在に、そして微細に調節可能なので手間要らず。中足部をホールドし、カカトはカップにぴったり収まり、足指を使え、パフォーマンスアップが可能。さまざまなスポーツに対応したプラットフォームがある。

Point 2:締める、緩めるがグローブを装着したままでも簡単

真夏以外、山は気温が低く、グローブを装着する機会が多い。その際、薄手のインナーグローブであっても、慣れていないと靴紐を結ぶのは難しい。でもBOAならダイヤル式なので、オーバーグローブでも締め込み、フィット調節が可能だ!

Point 3:保証制度と交換パーツが用意されている

BOAの耐久性を心配する人も多いが、シューズの耐久年数以上の耐久性を備えている。また交換パーツを使えば、簡単に自分で交換も可能。さらにライフタイム保証も備え、シューズの寿命期間の保証がされ安心だ。

PICK UP

今回紹介するシューズで使われているBOAの種類。

L6 ダイヤル

【搭載モデル:モンベル/スポルティバ/メレル/アルトラ】

軽量トレッキングシューズ、トレイルランニングシューズに多く採用される。ダイヤルを押してロック、回して締め込み、引き上げてリリース。ダイヤル操作で緩めることはできないが、不便さはない。

▲押し込む/回して締める/引き上げてリリース
▲L6 搭載モデル

Li2 ダイヤル

【搭載モデル:マムート/スカルパ】

LシリーズのBOAに、ダイヤルを締め込む方向とは逆回転させることで、レースの締め込み具合を少しずつ緩める機能を装備。軽さと操作性のよさだけでなく、より正確で微妙なフィット感がほしいシビアなシーン、ユーザーに対応する。

▲押し込む/回して締める/回して緩める/引き上げてリリース
▲Li2 搭載モデル

レビュー

5つの項目でチェック。

Check 1:履き口とフィット感を比べてみる

BOA搭載シューズと紐靴のトレッキングシューズ、トレイルランニングシューズとの大きな違いは、履き口とアッパーのフィット感だ。紐靴の場合は履き口のパッドの量や配置、タンの構造、アキレス腱周辺の形状、そして靴紐の取り回し方、靴紐を通すアイレットやフックの素材や形状によって、シューズごとにフィット感の差があった。しかしBOA搭載シューズは、どれも足とシューズの一体感がある。ヒールカップにカカトがしっかりと収まり、ローカットシューズであっても足首の安定感がある。とはいえアッパーの素材などでフィットの感覚に違いはあるので、下を参考にしてみてほしい。

■モンベル

今回唯一のミッドカット。ゆえに甲から甲の上部=足首が曲がる付近まで左右から包み込まれる。緩みがなくカチッとしている。

■マムート

ローカットに長めのゲイターを装着した仕様。BOAは複数のパネルで甲を包み、ゲイターが足首をサポート。安心感を生んでいる。

■スポルティバ

2ダイヤル式BOAの微調整できるフィット感がよく、軽やか。履き口の短いゲイターが、意外や足首をサポートしてくれている印象。

■スカルパ

BOAパフォームフィット・ラップの2本のパネルに加え、履き口のフィット感を出す仕様。足首からはじまる靴との一体感は随一。

■メレル

従来の紐靴同様にレースが配されたBOAながら、フィット感は十分。履き口のパッド量が多く、ふんわりとした履き心地がいい。

■アルトラ

2ダイヤル式BOAでフィット感の調整は自在!足先のワイドさと軽量化のための薄いアッパー素材の裸足感覚は、慣れが必要かも。

Check 2:アッパーの作りの違いでフィット感はどれくらい変わる?

紐靴のミッドカットなどのシューズは、靴紐を締めて足首を固定する仕様。でも最近はテント泊でも12〜13kg程度の装備が可能。そうなるとがっちりしたアッパー素材で固定して動きを制限するよりも、シューズと足との一体化によって安定感が出て、かつ動きやすいシューズのほうが身体の負担が軽くなると筆者は考えている。今回紹介している6足は、まさにそんなシューズだ。一体感を生むBOAは、紐靴同様にレースを配した従来型BOAと、複数本のパネルで甲を包むBOAパフォームフィット・ラップ構造がある。後者がフィット感は高いが、登山使用なら好みで選んで問題ないレベルだ。

▲左:ラップ型/右:従来型
▲左:ラップ型/右:従来型

Check 3:BOAの数は1個or2個のどちらがより快適?

BOAパフォームフィット・ラップには、ダイヤルが1個の仕様と2個の仕様とがある。2ダイヤルは、中足部に配されたベルトのフィット感を細かく変更でき、パーソナルフィットを提供する。1ダイヤルは均一な締め込み、フィット感を出せる仕様。2ダイヤルを採用するスポルティバとアルトラは、長距離のトレイルランニングレースでの快適性を求め、身体と自然のさまざまな変化に対応することを可能にしている。だから、どちらが快適かと問われれば「2ダイヤル」だ。しかし8時間、長くても15kmほどの登山で使用するのであれば、1ダイヤルの性能でも十分だろう。

▲フィット感の細かな調節ができるのは2ダイヤル。でも、より簡単で素早い装着感の調節、シューズの着脱を求めるなら1ダイヤルのほうにアドバンテージあり。

Check 4:レースの素材にも注目!

BOAは、搭載されるシューズの目的に応じて、ダイヤルやレースを数種類用意している。主にローカットシューズ向けに設計されたLシリーズ6世代目のL6、緩み調節可能なLi2があり、シビアなシーンにも対応する。またモンベルには今回唯一、CSレースという金属製のレースが採用されている。それ以外はTXレース、つまりテキスタイル=繊維素材のレースだ。その使い分けは、主にアッパーの素材によるという。

▲モンベルは剛性があり、厚みのあるアッパー素材のため、ステンレス製レースを採用。防水コーティングで錆びの心配もない!
▲軽量なアッパーには、超高分子量ポリエチレンとポリエステルを組み合わせた繊維製のレースを採用。ソフトさと強度を両立。

Check 5:登山時に求める機能の取捨選択

今回紹介しているシューズは、BOAだけがその特長ではない。難易度の高い山岳ツアーにも適したマムートは、軽量シューズながらセミワンタッチクランポン対応。アルトラはゼロドロップでワイズ広め、スカルパもドロップ低めで自然な歩行を促す。スポルティバはプレート内蔵のソール、メレルは厚底で、足取りが軽い。そして長く使えるという点でお知らせしておきたいのがモンベル。ソールの張り替えが可能で、10年以上履きたいシューズだ。

▲マムートはヒールにコバが備わり、セミワンタッチクランポン対応。高所登山にも使用できる。
▲右のアルトラはワイズが広く足指を自由に動かせるフォルム。でも甲がタイトなので半サイズ上を選ぶとよさそう。
▲メレルは厚底のローカット透湿防水シューズ。使用シーンは案外幅広い。

PONCHO&編集オダマキ 今回のお気に入り

PONCHOと編集担当のオダマキが、気に入ったシューズを2点ずつ紹介。

PONCHO

「スポルティバ/ジャッカル IIBOA」「マムート/アイガー スピード BOAハイ ゴアテックス」

今企画のきっかけとなったのが、スポルティバの2ダイヤル式BOAのシューズを履いたこと。フィット感と剛性の高さに驚き、他のBOA搭載シューズも試したくなった。マムートはアルプスなどのスピードハイクで安心して履けそうだ。

オダマキ

「スカルパ/リベレラン カリブラHT」「スポルティバ/ジャッカル II BOA」

個人的にソール硬めが好み。スカルパのソールがもっとも硬く、アッパーのフィット感と脱ぎ履きのしやすさが決め手になった。スポルティバはローカットだが足首素材がフィットして歩きやすい。ラストは評判どおり細身で慣れが必要。

 

※筆者はトレイルランニングシューズを日帰り、縦走登山でも使用していますが、山域、天候、ユーザーの体力、経験値に合わせて、使用を検討してください。
※この記事はPEAKS[2025年1月号 No.169]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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登山、ランニング、旅、島、料理、道具をテーマに執筆、撮影。低山ハイクとヨガをMixしたイベント『ちょい山CLUB』を主催する。

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