バックカントリーの魅力と安全対策のための必携装備
宮上 晃一
- 2025年01月20日
INDEX
バックカントリースキー&スノーボードは、未踏の雪原を自由に滑走できる醍醐味があり、多くの愛好家を魅了している。もちろん、私も大好物!
しかし、その魅力的な体験には適切な装備と十分な準備が不可欠だ。本記事では、魅惑のバックカントリーに安全に踏み出すための、必要な装備について詳しく解説するとともに、参考までに個人装備を紹介する。
文◉宮上晃一(PEAKS編集部)
トップ写真◉杉村 航
“バックカントリー”本来の意味
バックカントリーとは、スキー場外の自然のままの雪山を指し、新雪や深雪で自由な滑走スタイルが楽しめるエリアのこと。バックカントリースキー&スノーボードでは大自然を駆けめぐる爽快感を味わえる一方で、雪崩や遭難といったリスクも伴なうため、適切なスキルの習得と装備の用意が必須となる。雪山登山のバリエーションの一種とも言え、管理されたスキー場とは異なりパトロールや救助体制が整っていない。不慣れな人はエキスパートと行動するかガイドツアーで楽しむようにしよう。バックカントリーで遊ぶためには、雪山登山同様の安全判断・準備・スキル等が求められる。
バックカントリーのリスク
バックカントリーでは以下のようなリスクが存在する。
1.雪崩
2.天候の急変
3.遭難
4.低体温症
5.怪我
6.装備の故障
これらのリスクを最小限に抑えるためには、適切な装備と知識、そして経験が必要不可欠だ。
バックカントリー装備一覧
以下に日帰りでのバックカントリーで必要な主要装備をまとめてみた。
■滑走用具
・スキー/スノーボード:パウダースノーでは浮力が重要となるため適したモデルがおすすめ。シール(クライミングスキン)も専用を用意する。
・ブーツ:スキーではウォークモードの付いたバックカントリー用軽量モデルが望ましい。スノーボードの場合はスキー場で使用するモデルと兼用可。
・ビンディング:スキーではツアーモード機能付きの軽量モデルが便利。スプリットボードでは専用モデルが必要。ソリッドボードではスキー場で使用しているものをそのまま使える。
・ポール:スキーではスイングバランスのいいものを。スノーボードでもスプリット・ソリッドともに歩行時に使用(ソリッドボードではスノーシューも必要)。
■アバランチセーフティギア
・アバランチビーコン:雪崩時の埋没者位置特定に必須
・プローブ:埋没者の探索に使用
・ショベル:救助活動に不可欠
■ウエア
・ベースレイヤー:吸汗速乾性の高い素材。
・ミッドレイヤー:保温性のあるものを。
・アウターウェア:防水透湿性の高いシェル。
■その他
・バックパック:装備収納用(30-40L程度)。スキーやスノーボードが取り付けられるものを。
・地図、コンパス:ナビゲーション用
・ファーストエイドキット:応急処置用
・ヘッドランプ:暮れたあとに行動することになった際に備えて。
・スマートフォン:緊急時の連絡やナビゲーション用。
・食料、水:エネルギー補給用。
・ホイッスル:雪山は音が響きにくい。緊急時やグループ内の合図のため用意。
・ツエルト:非常時用。
・ヘルメット:木や岩との衝突時や転倒時の頭部保護のため。
・ゴーグル:曇りにくいものがおすすめ。雪まみれになった際や悪天用に予備もあるといい。歩行中はサングラスを使用するのもアリ
・保温着:停滞時や休憩時に体を冷やさないために備える。
・リペアキット等:滑走用具の故障対策。スペアパーツやマルチツール、スキーバンドなどを。
・日焼け止め:時期に応じて。晴天時や春では意外と紫外線の影響が大きい。
・トイレットペーパー:緊急時用。
ざっと羅列したが、登山時の装備とほぼ変わりない。
とくに重要な装備の解説と一例
表だけではわかりづらいので、個人装備を例に各アイテムの説明と選び方を解説する。
アバランチセーフティギア
ビーコン、プローブ、ショベルは「雪崩三点セット」と呼ばれ、バックカントリーでは必携だ。使用方法を十分に練習しておくことが重要だが、埋没者捜索やそもそも雪崩の危険性察知などは特殊なスキルを要するので、テキストや動画だけでなく、かならず講習会などにも参加してほしい。使用している人は稀だが、雪崩に巻き込まれた際の生存率を高める装備としてエアバッグも注目されている。
スキー/スノーボード
バックカントリー用の板は、パウダースノーでの浮力を確保するため、通常のゲレンデ用よりも幅広のモデルが適している。フィールドの特性や自身の技量に合わせて選択することが重要。
ブーツ
バックカントリーでは、登り下りの両方に対応できる軽量で歩きやすいブーツが理想的。ただし、滑走時の安定性も重要なので、バランスを見てチョイスしたい。
ビンディング
スキーの場合、ツアーモード機能付きのビンディングを使用すると、登行時にカカトが上がり歩きやすくなる。スノーボードの場合は、スプリットボードを使用するか、ソリッドボードではスノーシューを併用する。
ウエア
登山同様にレイヤリングし、状況に応じて調整できるようにしよう。ベースレイヤーは吸汗速乾性の高い素材、ミッドレイヤーは保温性のあるフリースやインサレーション、アウターは防水透湿性の高いシェルジャケットが基本となる。
バックパック
30〜40L程度の容量があれば、日帰りのバックカントリーには十分だ。スキーやスノーボードの取り付けが可能で、アバランチセーフティギアを収納できる専用ポケットがあるものが便利。
その他
登山と同じで活動中に必要なものはさまざまある。
まとめ
バックカントリースキー・スノーボードは、大自然のなかで自由に滑走できる魅力的なアクティビティ。しかし、その魅力と裏腹に多くのリスクも存在する。適切な装備を揃え、正しい知識と技術を身につけて、安全に楽しみたい。
装備の選択は、自身の技量や目的地の特性、予算などを考慮して行なおう。また、単に装備を揃えるだけでなく、その使用方法に習熟しておくことも重要だ。とくにアバランチセーフティギアについては、実際の緊急時にすぐに使えるよう、講習会への参加や練習を重ねておく必要がある。
バックカントリーの装備は、命を守るための投資と言っても過言ではない。質の高い装備を選び、適切にメンテナンスすることで、長期間にわたって安全に雪山を楽しむことができる。自然のなかでの自由な滑走を心から楽しむためにも、装備選びには十分な注意を払いたい。
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PROFILE
PEAKS / PEAKS編集長
宮上 晃一
山中では「食」の軽量化をいっさい考慮しないスタイルを好み、アルファ化米では肌が荒れがちなお年頃男子。下山後の食事は約7割が焼き肉になってしまうため、家に戻ると出発前より体重が増えていることも……(登山口近辺の焼き肉店情報求む!)。カブトムシすら触れない大の虫嫌い。
山中では「食」の軽量化をいっさい考慮しないスタイルを好み、アルファ化米では肌が荒れがちなお年頃男子。下山後の食事は約7割が焼き肉になってしまうため、家に戻ると出発前より体重が増えていることも……(登山口近辺の焼き肉店情報求む!)。カブトムシすら触れない大の虫嫌い。