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風景を楽しむ山の必需品。【チェア&スツール比較】座り心地か、軽さ重視か?|PONCHOギア深堀りレビュー(PEAKS 2025年3月号)
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PEAKS 編集部
- 2025年01月29日
INDEX
どの山に向かうか?どんなスタイルで?なにを目的に?それぞれが目指す山によって、装備する道具は変わってくる。
今回取り上げたチェア&スツールは、風景を楽しむ山の必需品。移動だけでなく、向き合う時間を求めているハイカーの道具。そもそも一箇所に留まって風景を眺めたことがないかもしれない。
この記事を機会に、まずは低山ハイクで風景を楽しんでみてほしい。
編集◉PEAKS編集部
文◉ポンチョ
写真◉矢野悠太
日帰りもテント泊も見える風景が変わる道具!!
登山にチェアは不要。そう考えている人が大多数だろう。でも、だからこそ登山に持って行きたいと思えるチェア&スツールを集めてみた。
山の楽しさは登ったり、歩いたり、つまり移動をすることだけでないと思う。私はファストハイクやトレイルランニングといったスピードをともなう移動も好きだ。反面、空、雲、陽光、木漏れ日、行きすぎる登山者たち、さえずる小鳥たちをのんびり眺め、耳を澄ます時間も大好きだ。絵を描いたり、写真を撮ったり、詩を書いたり、山と自然の変化に静かに向き合う時間を大切にしている。
その際、山をダイレクトに感じるために、地面に直に座ることもありだ。けれども背もたれがあったり、座面の高さがあって快適で寛げる、チェア&スツールを使うことが多い。
ちなみに軽量ハンモックもその候補のひとつ。快適さを重視したら、チェア&スツールよりも上なのだけれども、ハンモックは吊り下げる木がなければ、快適さを享受できない。つまり森限定の道具だ。また日本の山のテント場は、ハンモックを吊るせる場所が少ない。その点でチェア&スツールは、木がなくても、どこでもパッと座る場所を確保できる。おだやかな天気の日、テント前でチェア&スツールに座って、刻々と移り行く夕景を見つめていると、これ以上ないぜいたくな時間をすごせる。
山の上はチェアリングを楽しむ絶好の場所
さて、自然のなかでチェアに座って、なにもせず、ただ風景を眺める時間を楽しむことを「チェアリング」と呼ぶ。山の上はそのチェアリングを楽しむ絶好の場所だ。冬から春の低山ハイクであれば、いつもより行程を短くして、このチェアリングをする時間を確保してみるのもオススメだ。頂上に限らず、景色のよい場所、陽だまり、気持ちのよい樹々のなかでゆっくりとコーヒーやお茶を淹れながら、小一時間ほどすごしてみてほしい。きっと移動していたときとは異なる山の美しさを知ることになるだろう。
そうした時間をサポートするチェア&スツールは、軽さに加えて、座り心地、使い勝手を上げるギミック満載。じつにおもしろい道具が多い。重い、デカい、逆に軽さを求めて座り心地イマイチというのは過去のものだ。今回最重量520gのニーモはリクライニング機能を備え、新進ブランドのフィールドレコードは、新しいカタチの座椅子を具現化。ギア好きであれば、山で使ってみたいと思うこと間違いなしのモノだ。
チェア&スツール比較:スペック紹介
今回レビューする7モデル
①ニーモ/ムーンライトエリートリクライニングチェア (重量520g)
■山の心地よさを感じる最上級のトレイルチェア。
アーム部のコード長を変えて背もたれの角度を調節、リクライニングできるチェア。重量520gは今回最重量だが、寛ぐことを重視するならむしろ軽い!ヘリノックス同様の吊り下げ式座面サイドを省略、アームにして軽量化。座面自体もメッシュ地で軽さとフィット感に貢献。収納袋は本体下部にセットして沈み込みを防ぐ仕様。ギミックも細かい。
・¥26,950
・サイズ:W46×D48×H59cm(収納時:10×8×32cm)
・座面高:26cm
・カラー:ブルー、他2 色
・耐荷重:113kg
・問)ロータス
②モンベル/L.W.トレールチェア26 (重量345g)
■組立時間はたったの1秒V字型三脚で軽量化も実現。
昔ながらの三脚タイプの折りたたみチェア。しかし脚部はV字に開くフレームを採用。軽量化のために脚を短くしても安定感を出せ、座面も座り心地を邪魔しない大きさを維持。コンパクトさに対して、収納サイズは長めだが、それでも35cmしかないので、サイドポケットに収めるのに問題はない。パッと開くだけで座れる簡便さは、なによりの特長だ。
・¥3,630
・W28×D24×H26cm(収納時:φ7×35cm)
・座面高:26cm
・カラー:イエロー、他3 色
・耐荷重:80kg
・問)モンベル
③ヘリノックス/チェアワン ミニ カモ (重量450g)
■定番チェアのミニサイズ軽量コンパクトさを重視。
キャンプチェアの定番「チェアワン」を2/3の大きさにして軽量化。子どもでも快適に座れるサイズ感のため、身体の大きな男性には窮屈、耐荷重も90㎏と軽め。しかし軽量コンパクトさは、山用チェアとして積極的に使いたいもの。背もたれも短めなのでゆったりできるわけではないが、しっかり腰を支えられ、作業も寛ぐ時間も、スツール以上に快適だ。
・¥13,750
・サイズ:W40×D34×H44cm(収納時:26×8×10cm)
・座面高:23cm
・カラー:マルチカム/ブラウン
・耐荷重:90kg
・問)モンベル
④グランドトランク/コンパス360 スツール (重量510g)
■座面が360度回転快適さはチェア以上。
軽さを特長とするスツールだが、これは510gとやや重め。その理由は、収納時のコンパクトさはそのままに、脚部をハブで上下に分けて座面を回転できるようにしたため。しかしその効果は絶大!なぜすべてのチェア&スツールは座面が回転することをデフォルトにしないのか? と思えるほどに快適。見つめる風景は広がり、調理もしやすい。
・¥8,250
・サイズ:W32×D32×H38cm(収納時:9×9×28cm)
・座面高:34cm
・カラー:グリーン、他2 色
・耐荷重:120kg
・問)アンプラージュインターナショナル
⑤ロゴス/エアライト 1 ポールチェアハイポジション (重量450g)
■使ってみたら意外と便利!まさかの一脚で軽さを装備。
まさかの一脚。長時間座っていることは無理かもしれない……。そんなマイナス想像をくつがえす座り心地のよさは、大きめの座面と太い1ポールが機能しているからだろう。3段階の高さ調節ができ、短時間休憩も景色をゆっくり見る場合も、座面が一番高い71cmが案外リラックスできた。登山前後の電車やバス待ちでも、こっそり使ってみたい逸品だ。
・¥8,800
・サイズ:W33×D28×H74/61/51cm(収納時:8×8×38cm)
・座面高:51 ~ 74cm
・カラー:ブラウン
・耐荷重:120kg
・問)ロゴス
⑥フィールドレコード/チェアカーボンフィールド (重量270g)
■新進国産ブランドが手掛けたU.L.チェアの新しいカタチ。
背もたれの後ろのカーボンフレームをX字に配せば安定感が増すが、軽量化のために、あえてバランスと体幹を使うV字型を採用したというアウトドア用座椅子。いっぽうで熱反射素材をライニングして冷えを抑えた座面、その座面と連結したストラップ長を調節すれば、リクライニングも可能。ただ軽いだけではなく、座り心地のよさも追求した意欲作だ。
・¥13,860
・サイズ:W43×D52×H40cm(収納時:29×21×8cm)
・座面高:地面と同じ
・カラー:ブラック
・耐荷重:未公表
・問)フィールドレコード
⑦シートゥサミット/エアチェア レギュラー (重量230g)
■スリーピングマットを座椅子に登山用チェアの大本命!
テント泊で必携のスリーピングマットをセットして座椅子にするキット。他ブランドでは90年代前半からあるが、エアチェアのよさはマットセットの簡単さ。フルサイズのマットを折り曲げて座面端のパネルに入れ、中央のストラップで止めればズレることがない。アーム部のストラップで角度調節ができて、好きな角度で座れば本当に極楽!
・¥7,150(マットは別売)
・サイズ:W53×D45×H45cm(収納時:8×8×45cm)
・座面高:地面と同じ
・カラー:ブラック
・耐荷重:未公表
・問)ロストアロー
【チェック1】チェアのもっとも大事なポイント、座り心地を比較
登山にも携行できる軽量コンパクトなつくりなので、快適さに限度はあるだろう。そう思っていたが、背もたれが高く、角度調節もできるフィールドレコードとシートゥサミットの座椅子タイプは、長時間座っていても快適だった。同様にリラクライニングできるニーモもキャンプチェアレベルの座り心地を実現。いっぽう背もたれのないグランドトランクは、座面が360度回転できることでストレスがない。一脚のロゴスは、体幹を使う座りになって人によっては不安定になるが、膝の曲がりが少ない高い座面位置で座ると、バランスを取りやすくなった。
①ニーモ/ムーンライトエリートリクライニングチェア
「はぁ~、どっこいしょ」と思わず口にしてしまう、身体を預けられる背もたれの角度。体型、座り心地に合わせられるのがなによりのよさ。
②モンベル/L.W.トレールチェア26
脚を短くして軽量コンパクト化を図った分、座面は小さめ。身体の大きな人は、重さは増えるが同モデルの大きめサイズを携行するのも一案だ。
③ヘリノックス/チェアワン ミニ カモ
173㎝、69㎏の普通体型の私に座面、背もたれがジャストフィット。低めの背もたれが腰を支えてくれ、本家チェアワン同様に、座ると立ちたくなくなる。
④グランドトランク/コンパス360 スツール
座面が回転するスウィベルタイプ。座面が固定されないので、足の位置や上半身を自由に動かせて、なんとも心地がいい。だから長く座っていられ、快適だ!
⑤ロゴス/エアライト 1 ポールチェアハイポジション
一脚だが、2本の足と合わせて三脚となり、想像以上に安定感がある。しかし体幹が弱いとバランスを取りにくい。大きな座面は、小柄な人には違和感があるようだ。
⑥フィールドレコード/チェアカーボンフィールド
背もたれは寄りかかるというよりも腰の上部をサポートされている感覚で、安定感もある。それよりも背もたれが倒れないように座りこむのに、コツと慣れが必要。
⑦シートゥサミット/エアチェア レギュラー
このタイプのアウトドア用座椅子は、自分好みの背もたれの角度を選べ、座り心地のよさは今回のベスト。ただ、セットするマットによって、感覚は多少異なる。
【チェック2】道中の休憩時や調理時、使い勝手がよいのはどれか?
休憩時の使用は、短時間の組み立てができるか否かがポイントになる。収納袋から取り出し、脚を広げるだけのモンベルは、まさに休憩にぴったりだ。またグランドトランク、ロゴスのスツールタイプも組み立ては短時間ですみ、休憩で使いたくなる。調理用としては、コンパクトなテーブル上の作業、または地面に置いたバーナーを操作するので、座面が低いものが有利。フィールドレコード、シートゥサミットの座椅子タイプがそれ。また背もたれがないモンベル、グランドトランクは、座面に真っ直ぐ座れて前傾がしやすく、調理がラクに行なえた。
①ニーモ/ムーンライトエリートリクライニングチェア
座面高は実測26cmながら、吊り下げ式で膝側に高さがあるため、前傾はキツい。組み立ては難しくないが、多少時間が掛かるので、寛ぐ用だ。
②モンベル/L.W.トレールチェア26
座面高が26cmと低いので、調理などの低い位置での作業はしやすい。広げるだけで座れるので、山行中の短時間休憩にも積極的に活用したい。
③ヘリノックス/チェアワン ミニ カモ
座椅子タイプ以外でもっとも低い座面高。ただ座面が狭めなので、前傾時にやや足を広げにくい。また組み立てに少し時間が必要なので、じっくり座りたいとき用。
④グランドトランク/コンパス360 スツール
座面が動くと身体をスムーズに前傾できる。だから34cmと座面が高くても調理はしやすい。座面が大きくないぶん組み立てもしやすく、シーンを選ばず座りたい。
⑤ロゴス/エアライト 1 ポールチェアハイポジション
低い位置での作業は、普通に座るよりもバランス維持が難しい。が、体幹の強い私はとくに問題なし。組み立ても簡単。座りたいときにサッと取り出して使いたい。
⑥フィールドレコード/チェアカーボンフィールド
あぐらをかいて座ることに慣れていれば、調理は簡単。組み立てもコード入りのフレームを伸ばして背もたれ裏のスリットにセットするだけ。休憩用にもいい。
⑦シートゥサミット/エアチェア レギュラー
低い位置での作業は、あぐらをかければ問題ない。休憩用としては、マットのセットが面倒……なのだが、チェック4で紹介するようなシートマットを使えば解決。
【チェック3】こんなギミックがあるからほしくなる
ムダを削ぎ落した道具の多くは、使い手のアイデアや経験値によって、使いやすさを補完する仕様になる。それが山道具を使う楽しさでもあるが、最近はつくり手がシンプルさのなかにアイデアを盛り込んだモノを生み出してくれる。座る道具として今回もっとも楽しかったのは、ロゴスの一脚だ。平均的身長の男性がちょっと腰掛けるのにちょうどいい74cmという通常のチェアの倍以上ある座面高に、安定感と驚きを感じた。フィールドレコードの座椅子も、通常は背もたれ内にあるフレームを外に出して、角度調節も可能にするギミックに感心した。
ニーモ/ムーンライトエリートリクライニングチェア
ニーモは、リクライニングを可能にするアーム部に高強度のダイニーマコードとクライミングのビレイデバイスにヒントを得たロック機構を採用。カッコいい!
フィールドレコード/チェアカーボンフィールド
フィールドレコードは、かさ張るクッション入りの座面に折り目を付けて収納時のコンパクト化を実現。背後のストラップとフレームを連結させ紛失も防止!
グランドトランク/コンパス360 スツール
グランドトランクの座面を回転できる機能はこのままでも十分快適だが、回転させて高さ調節ができるとさらに最高!座面裏にメッシュポケットも装備。
モンベル/L.W.トレールチェア26
モンベルは脚先のカバーにボリュームを持たせ、さらに凹凸の滑り止めを施し、地面への沈み込みや径の小さなチェアにありがちな、転倒を防ぐ細かい配慮あり。
ロゴス/エアライト 1 ポールチェアハイポジション
ロゴスは、旧モデルが座面の高さ2段階、51cmまでだったのを、3段階、74cmまでにアップ。ちょっと座るだけなら高く、作業時は低くすることで、使い勝手アップ。
【チェック4】いろいろセットできるチェアキット
スリーピングマットをセットする座椅子。シートゥサミットの重量は230g。エアマットのレギュラーサイズだと400gをプラスして合計600gをオーバー。でも幅55cmまでのマットならセット可能なので、クローズドセルマットや座面だけになるがシートマットにすれば50~100g程度のプラスですむ。ぜひ使い分けを!
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今回のお気に入り
■PONCHO
座り心地の自由さ、軽量コンパクトなグランドトランクは、登山だけでなくキャンプでも使いたい。フィールドレコードは、モノづくりを楽しんでいるつくり手に共感!さらなる快適な使い方を研究したい。
■オダマキ
グランドトランクの座面回転の心地よさは試す価値あり!座椅子キットは面倒な印象だったので敬遠していたものの、シートゥサミットの作りはセッティングのストレスが最小限で、非エアマット派でも使えるのが◎
※この記事はPEAKS[2025年3月号 No.170]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PROFILE
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。