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ツキノワグマとミズバショウは大切なパートナー|まだ知らない尾瀬ストーリー#05

“尾瀬”と聞くと思い描く景色はどんなものでしょうか?

「湿原と山と木道」という景色を思い浮かべる方が多いかもしれません。尾瀬はその景色があまりにも有名で、その成り立ちや歴史、その周辺地域のこと、そこに関わる人々のことはほとんど知られていません。じつは尾瀬には感動的なストーリーがいくつもあるのです。

尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterの私が、尾瀬のさまざまなストーリーをお届けします!

ツキノワグマとミズバショウは大切なパートナー

「ツキノワグマがミズバショウを食べる」

こう聞くと、みなさんはどんなことを思うでしょうか?

昨年12月、山本一太群馬県知事が尾瀬国立公園の入域料の検討を発表したと書かれた記事の中に、ツキノワグマとミズバショウのことも書かれていました。その記事の中では「クマがミズバショウを食べた跡があった」とマイナスな印象として書かれていて、これを読んで、私のやっている活動もまだまだだなぁと改めて思わされました。もちろん、これを読む前からまだまだだなぁと思ってはいたのですが……。

すでにご存知の方も多いかもしれませんが、尾瀬ではツキノワグマとミズバショウはとっても大切なパートナーなのです。私はこのツキノワグマとミズバショウの関係を知ったとき、あまりにも感動して、いまでは名刺のデザインに取り入れています。

さぁ、今回はそんなクマとミズバショウの大切なストーリーをお届けしましょう!

▲ミズバショウが沢沿いに咲いているのがよくわかる。

ミズバショウが咲き誇る、初春の尾瀬。たくさんのミズバショウが私たちを楽しませてくれます。とくに水の流れがある場所に多く見られ、ミズバショウは水の流れに乗せて種子を運んできたことがよくわかります。

やがて季節が進むと、ミズバショウの印象的な白い仏炎苞は落ち、その仏炎苞に守られるようにして小さくひっそりと佇んでいた肉穂花序が、どんどん膨らんできます。周りの小さい葉っぱたちも光合成をするために大きく成長し、この肉穂花序に栄養を届けようと必死です。こうして肉穂花序の中にたくさんの種子が作られるのです。

▲ぷっくりと大きく膨らんできたミズバショウの肉穂花序。

この種子が作られるのはシーズンで気温が一番高くなる真夏のころ。この時期、ミズバショウの実が大きくなるのを心待ちにしている動物がいます。そう、ツキノワグマです。彼らにとって真夏は食べるものがもっとも少ない時期。たまにクマを見かけると痩せていたりします。

彼らは、このミズバショウが「食べごろ」になると、人のいる場所でも姿を見せるようになります。なんでもクマはとっても面倒くさがりな動物で、そこにたくさんあるものをお腹いっぱい食べておこうとする性質があるようです。尾瀬にはミズバショウがたくさんあったので、尾瀬のクマはミズバショウの実を食べるようになったのかもしれませんね。

▲「クマに注意」の看板のすぐ近くにツキノワグマのフン。まるで狙ったかのようでおもしろい。

さてさて、ミズバショウをお腹いっぱい食べたクマ。そのクマたちはとっても立派なフンをします。木道の上にしてみたり、湿原の隅っこにしてみたり、山の斜面にしてみたり……。あらゆる場所にフンを残します。

もしも真夏の尾瀬に行ったとき、大きなフンを見つけたらそのフンをよーく見てみてください。小さいツブツブが入っていることに気がつくと思います。そう、それはミズバショウの種子なのです。クマに食べられたミズバショウの種子は完全に消化されることはなく、そのままフンの中に残ります。

そして、この肥料付きの種子はクマがフンをしたあらゆる場所で発芽するのです。じつは、クマは知らぬ間にミズバショウの種子をさまざまな場所へ運ぶお手伝いをしています。だから、尾瀬に来ると水辺以外にもミズバショウが生えているのを発見したりします。

▲ほかのミズバショウ群落と離れて咲いていたミズバショウ。もしかしたらこれは……!?

え?ちょっと待って、そんな訳ない!クマの消化酵素などでやられてしまって、発芽なんて難しいでしょ!

いえいえ、ちゃんと発芽することは実験で証明されているのです!私が感動したこのクマとミズバショウのストーリーを発見した田中肇さんが、わざわざクマのフンから種子を取り出し、実験をされているのですから。

田中肇さんは大学の教授などではなく、アマチュアの研究者。私はこのことについてもとても感動しました。なぜ、アマチュアの研究者が尾瀬で研究ができたかについてはまたいつかお話しするとして……。

▲多くの人が自然を楽しむために訪れる尾瀬。でも動植物たちにとって尾瀬は貴重な棲みか。

いまや、ツキノワグマは全国でもニュースになるほど人間たちを悩ませる存在になっています。しかし、自然のなかでは、なくてはならない存在だと思っているかもしれないパートナーがいたり。私は尾瀬の活動でツキノワグマの話をするとき、いつも「こちら側の事情だけで話してはいけない」ということを意識しています。それは全国各地で被害に遭われている方々がいるからです。

でも、だからこそ、彼らが当たり前に生息できるこの貴重な自然を守り、残していくことが重要だと考えています。

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PROFILE

HagiwaraMai

ランドネ / Oze Nature Interpreter

HagiwaraMai

尾瀬高校自然環境科の卒業生であり、尾瀬のビジターセンターや山小屋、ガイド団体で働いた経歴をもつ。現在は、尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterとして尾瀬とその周辺地域の知られざるストーリーを伝える活動をしている。

HagiwaraMaiの記事一覧

尾瀬高校自然環境科の卒業生であり、尾瀬のビジターセンターや山小屋、ガイド団体で働いた経歴をもつ。現在は、尾瀬をこよなく愛するOze Nature Interpreterとして尾瀬とその周辺地域の知られざるストーリーを伝える活動をしている。

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