【中辺路】静寂な森と清らかな川のなかで、歴史に思いを馳せる旅|いま歩きたい熊野古道・高野参詣道
ランドネ 編集部
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熊野へ続く参詣道のなかでも平安時代から上皇や法皇の「熊野御幸」で使われた中辺路。いにしえの巡礼道をセクションハイクで楽しんだ、2日間の旅のようすをご紹介します。
旅をしたのは
新田あいさん
モデル。友人に誘われて登山の魅力を知る。現在は神戸を拠点に、女性目線で山でも街でも長く使いたくなるモノを届ける「Okara/ai nitta」のディレクターとしても活躍中。Instagram@_nittaaaa_
清らかな森を歩き、熊野本宮大社を目指す
いつか歩きたいと思うけれど、なかなか実現できない旅というものがある。いつの時代も変わらない大きな存在だからこそ、「えいっ」と気合を入れないとふみ出せない。熊野古道はそんな場所だった。そんな折に、「セクションハイク」という旅の視点を知る。ルートを区切って歩いてもいいのだと知り、壮大で遠いと思っていた熊野古道がぐっと身近に感じた。
今回の旅にお誘いしたのは、モデルの新田あいさん。以前、伊勢路を歩いたことがあり、歩き始めてすぐに雑音が消え、しっとりとした石畳の道に感動したという。ルートとして選んだのは、熊野古道のなかでも、平安時代以降に熊野詣のメインルートとして定着した中辺路。立ち寄りたいお店や泊まりたい宿など、お楽しみスポットを散りばめながら、熊野本宮大社と熊野那智大社をめぐる旅を計画した。
初日は発心門王子(ほっしんもんおうじ)から熊野本宮大社へと向かう約7㎞の道のり。発心門王子でお詣りをしてから山道へ入ると、ふわり。清らかな森の空気に包まれた。「次の王子は水呑王子(みずのみおうじ)ですね」。マップを片手に、新田さんが教えてくれた。熊野古道には熊野の神の御子神を祀った「○○王子」と呼ばれる神社や石碑があり、これらは総称して「九十九王子」と呼ばれている。巡礼者たちは、「王子」と「王子」をつなぎながら歩く。その道中でさまざまな願いが込められたお地蔵さまや、伝説が語り継がれる石や木とも出合う。
土の道や石畳の道、木の根が張った道、コンクリートの道……。熊野古道というと、苔むした石畳の道を想像していたけれど、それはほんの一面だったのだと知る。この日歩いた道はめまぐるしい変化の連続で、それぞれの感触をふみしめながら歩みを進めていく。発心門王子から水呑王子へ。伏拝王子(ふしおがみおうじ)から祓殿王子(はらいどおうじ)へ。王子と王子をつなぎながら、ついに熊野本宮大社へ到着した。たどり着いた達成感がこみ上げるとともに、社殿の古式ゆかしい雰囲気に、身も心も引き締まる。
歩いたあとの立ち寄り湯
開湯1800年の歴史ある温泉地
古くから熊野詣をする人々は、旅の途中に湯の峰温泉に立ち寄り、湯后離(ゆごり)を行なって身を清め、旅の疲れを癒したといわれる。シンボルである「つぼ湯」は参詣道の一部として世界遺産に登録されている。90℃の熱湯が自噴する湯筒で、タマゴを入れて温泉卵を作ることができるのも楽しみのひとつ。
湯の峰温泉・つぼ湯
住所:和歌山県田辺市本宮町湯峯
電話:0735-42-0074
営業時間:6:00 ~ 21:00
定休日:不定休
料金:800 円(大人)、400円(12 歳未満)
熊野の旅を色濃くするゲストハウス
この日は、翌日目指す熊野那智大社のふもとにある、紀伊勝浦駅近くのゲストハウス「Why Kumano」へ。その名のとおり、「あなたにとって熊野とはなにか」という思いが込められているそう。木がふんだんに使用されているドミトリーは、熊野古道の木立をイメージしたのだと、オーナーの後呂考哉さんに教えてもらう。今日1日の旅を思い返しながら、明日へのわくわくを抱いて眠りにつく。
旅の拠点にしたゲストハウス
熊野の日常と旅人をつなぐ宿
宿泊のみのシンプルなスタイルで、食事やお風呂は町をめぐることで、熊野の日常を知ってほしいという思いが込められている。ラウンジにはカフェ&バーが併設され、地元の方や宿泊者と交流が可能。
WhyKumano
住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町築地5丁目1-3-2F
電話:0735-30-0921
チェックイン:16:00 ~ 22:00、チェックアウト:10:00
定休日:なし
歴史をつなぐ道を一歩一歩踏みしめ、那智の滝へ
2日目のルートは、那智駅から大門坂を歩き、那智の滝を目指す約7.4㎞の道のり。那智駅を出発し、少しずつ熊野古道の象徴である大門坂に近づく。「朝の柔らかい光が気持ちいいですね。奥まで続く石畳の道が美しくて、昨日とは木の表情が違って見えます」と新田さん。左右を見渡せば、苔やスギが朝日に照らされて輝いている。
大門坂をすぎ、階段を上っていくと熊野那智大社が目の前に。はやる気持ちを抑えながら境内に入り、社殿の前に立つ。どっしりと構えるその姿は荘厳で美しい。お詣りをしたら、熊野那智大社の別宮・飛瀧神社の御神体である那智の滝へ。
133mという落差を誇り、毎秒1トンもの水が落下している那智の滝。那智山青岸渡寺の三重塔からは、壮大な滝と奥深い紀伊山地を一望できる。古くから上皇や貴族、庶民までが問わず熊野を目指したのも、この雄大な自然に魅せられたからではないだろうか。
「いにしえの人々に思いを馳せながら、陽の光の心地よさや耳に入ってくる自然の音、ふわりとした風に触れて、自然と一体化する時間をすごせました」と新田さん。年齢や性別、思想も身分も問わず、すべての人を受け入れる熊野の懐の深さにどっぷりと浸かった2日間。山道を一歩一歩ふみ締めながら、自然の壮大さを感じ、自分と向き合う。時代が変わっても、その喜びはきっと変わらないのだろう。
Day1
約2時間
発心門王子
↓30分
水吞王子
↓30分
伏拝王子
↓20分
三軒茶屋跡
↓40分
熊野本宮大社
Day2
約2時間20分
那智駅
↓1時間30分
大門坂入口
↓30分
熊野那智大社・那智山青岸渡寺
↓15分
那智の滝
↓5分
那智の滝前バス停
access
1 日目:紀伊田辺駅から発心門王子まで龍神バスで約2時間20分。湯の峰温泉から紀伊勝浦駅までは、熊野御坊南海バスで約1時間の新宮駅まで行き、JR 紀勢本線で約25 分。2日目:紀伊勝浦駅からJR 紀勢本線で那智駅まで約5分。バスもあり(熊野御坊南海バス・約10 分)
周辺のお立ち寄りスポット
熊野の食材がたっぷりいただける
地元・熊野の食材を知ってほしいという思いで、2023 年にオープン。おすすめは、勝浦漁港で水揚げされた生まぐろの食べ比べができるまぐろ定食(1,870 円)。和歌山の日本酒もずらりと並ぶ夜は、利酒師のオーナーにおすすめを聞くのが◎。
熊野のめざめ
住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字朝日3-34
電話:070-8912-1367
営業時間11:00~14:00、17:00~21:00
定休日:月・火曜
地元で昔から愛される共同浴場
創業67年の歴史と風情を感じる銭湯。源泉温度は45℃と高めで、含硫黄・ナトリウム・カルシウム・塩化物泉。筋肉痛や疲労回復に効能があるので、山歩きや旅の疲れをほぐすのにぴったり。地元の方とのおしゃべりも楽しめる。
天然温泉公衆浴場はまゆ
住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝浦970
電話:090-8847-7582
営業時間:17:00 ~ 21:00
定休日:火・日曜
料金:490 円(大人)、170 円(子ども)
2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録された熊野古道・高野参詣道。その道に一歩ふみ入れると、人々の祈りが息づいた道や自然の壮大さに魅了されます。
ご紹介した道以外にも、熊野古道・高野参詣道には魅力的な道がもりだくさん。詳しくはこちらから▽
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PROFILE
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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