HOKA ONE ONE /MAFATE(ホカ オネ オネ/マファテ)2010|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年02月06日
下りを快適に駆け下りるためのギアとして誕生
極厚ミッドソールが独特の浮遊感を生んだ!
2017年5月6日、イタリアのモンツァでナイキが開催した、フルマラソン2時間切りを目指したイベント“BREAKING 2”。結果は残念ながら2時間25秒で、前人未到の2時間切りはならなかった。コース設定、ペーサーが交代で何度も走る、給水方法などなど、現在のルールでは認められていない手法が採用されたとはいえ、人類がここまで速く走れるという可能性を証明しただけでも開催した意義があったといえよう。
そんな“BREAKING 2”で、ランナーやペーサーたちは従来のレーシングシューズとは似ても似つかぬ厚底のシューズを履いていた。それがナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリートであるが、このシューズのシルエットは、多くのランナーにナイキ以外のあるブランドのことを想起させたことだろう。そのブランドとは2009年にフランスのアネシーで創業したホカ オネ オネである。
その独自の極厚ミッドソールは、ランナーに経験したことのないマシュマロのようなクッション性を与えたが、友人のニコラ・マーモッドとともに同社を創業したジャン・リュック・ディアードに昨年末インタビューした際、彼は「私たちは厚底シューズを作ろうとしたのではなく、安全かつ効率的に下りを走ることのできるギアの開発を目指した結果が極厚ミッドソールだったのです。つねづねテニスやスキーといった業界と比較して、スポーツシューズの世界は進化が遅いと思っていました。そして何度も試行錯誤を繰り返したのちに最初のプロトタイプが完成しました」とコメント。
ゆりかご形状で極厚のソールユニットは、比類なき衝撃吸収性をランナーに与えると同時に、着地から蹴り出しまでのスムーズな体重移動も提供。さらにミッドソールが上方に巻き上げられているので、シューズ内部で足がバケットシートのように包まれ、安定性が高まるという効果も確保されていた。これらの機能性を結集したことにより、従来のシューズでは体感できない走行感をランナーに与えた。
抜群の衝撃吸収性で日本のトレイル界でも着用者が急増
2010年10月10日〜11日に開催された第18回ハセツネCUPにおいて、男子優勝のルドビック・ポメレ選手が履いていたのは、ホカ オネ オネの創業モデルとなったトレイルランニングシューズのマファテだった。その独特のフォルムに衝撃を受けたトレイルランニング関係者は少なくなかった。「あんな厚底で安定性はあるのか?」「ずいぶん重そうなシューズだなぁ……」といった意見もあったが、しばらくすると、その抜群の衝撃吸収性とゆりかご形状のソールによるスムースな体重移動を武器に、日本のトレイル界でも、このブランドの着用者は急速に増えていった。
そんなホカ オネ オネだが、2013年4月に、さらなる飛躍を目指し、UGGやTEVA、SANUKといったブランドを展開するフットウエア業界の一大勢力であるデッカーズグループの企業となる選択を行った。そして現在では代名詞となったクッション性に優れたランニングシューズから、トラック&フィールド競技用のスパイクシューズ、疲れた足をリラックスさせるリカバリーサンダルまでラインナップするランニングカテゴリーの総合ブランドへと成長している。
column
創業モデルのマファテあたりと比較すると、それほどミッドソールの厚くないランニングシューズも増えている。写真は2017年秋モデルのスピードゴート 2。
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ランニング初心者から、サブ4を目指す中級者まで楽しめるランニング専門マガジン。トレーニングやアイテムの紹介、トレイルラン、イベントまでさまざまな情報をお届けする。
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