NIKE/AIR RIFT(ナイキ/エア リフト)1996|ランニングシューズの礎を築いた“名作”たち
RUNNING style 編集部
- 2019年12月15日
二股に分かれたつま先で足の自然な動きを追求
どんなランニングシューズとも似ていない独創的なデザイン
“There is no finish line.”というキャッチフレーズをかつてブランドスローガンとして採用していたように、ナイキというブランドはいつの時代も、製品開発に制限や最終ゴールのようなものをあえて定めなかった気がする。この自由な開発方針からは、数多くの斬新なプロダクトが登場したが、そのなかのいくつかは、その独創性のレベルが際立っていた。
個人的にとくに印象に残っているモデルは2つある。まず挙げるのは2003年にマラソン用シューズとしてリリースされたナイキ メイフライ。ミッドソール部分にEVAやポリウレタンといった発泡素材を一切使用しないシューズであるナイキ エアマックス 360もデザインしたスイス人デザイナー、マーティン・ロッティによるこのモデルは、耐久性を犠牲にしてまでも軽量性を徹底追求。極薄のアッパーマテリアルや超軽量のモールデッドファイロンのソールユニットを使用することで、130g台のウエイトを実現した。
しかしアッパーには走行寿命の目安である100kmの文字が入れられたように、1〜2回のレースでその役目を終えてしまう。ちなみに”Mayfly”とは、日本語で昆虫の「カゲロウ」を意味し、その寿命の短さからネーミングされた。
そしてもう1つ忘れられないのが、1996年にリリースされたエア リフトである。日本の足袋のようにつま先が二分割されたデザイン、ネオプレンをはじめとした伸縮性に優れたアッパーマテリアル、シューレースレスでラバーストラップとベルクロクロージャーといった独特の意匠をミックスし、それまでにリリースされたどのランニングシューズとも似ていなかった。強いていえば、日本のマラソンランナーが一時期愛用したマラソン足袋に似ていたか……。
ケニアの長距離ランナーとの共同開発により完成した!
ナイキ エア リフトはケニア人アスリートのフィードバックを基に、足の指が推進力を発揮する重要な部位だという理解に基づいて設計されたランニングシューズ。ケニア人をはじめとしたランナーはこのシューズを履いてメジャーマラソンを走り、その優秀性を証明した。
しかしながらセールスは伸びず、販売面では決してヒット作と呼べるものではなかったが、エア リフトが本当の意味でポピュラーになったのはマラソンコースではなく、ストリートシーンだったことに異論を唱える者は少なくないはずだ。
このシューズは2000年代に入って、ロンドンのストリートシーンなどで大ヒット。1997年にルイヴィトンのアパレルコレクションのチーフデザイナーにも就任したニューヨーク出身のファッションデザイナー、マーク・ジェイコブスもブルー/イエローのエア リフトを街履きしていた。パフォーマンスシーンでは知る人ぞ知るレーシングシューズだったナイキ エア リフトは、ストリートにおいて2000年代初頭を代表するスニーカーの1つに数えられることとなったのである。
ちなみに発売当初から現在まで、英語では”AIR LIFT”とまちがえて綴られることも多いが、正解は”AIR RIFT”。これはアフリカ大陸を南北に縦断する巨大な谷、大地溝帯(Great Rift Valley)をつま先部分のデザインモチーフとしたことから命名されたという。
column
エア リフトのファーストカラーとなったブラック/グリーン/レッド。このインパクトのあるカラーコンビネーションはケニア国旗をモチーフとしている。
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