福井健三郎GTゲームの世界【前編】
SALT WORLD 編集部
- 2021年08月23日
GTガイド船「ビッグディッパー」のキャプテンであり、自らロッドを握り、国内外を釣り歩くGTアングラーでもある福井健三郎さん。そんな2つの顔を持つ福井さんに、トカラ列島&奄美大島周辺を前提に、それぞれの立ち位置から、自らの釣りでセレクトするGTタックル、一般アングラーへ向けてのゲーム全般へのアドバイスをいただいた。【前編】では、タックルセレクト術をお送りする。
軽さを重視したロッドセレクト
ロッドを選ぶ基準として、福井さんが最優先するのは軽さだ。とかく掛けてからのファイト面に注目が集まりがちなGTゲーム。しかし、船上で圧倒的に長いのはキャスト&リトリーブの時間だ。疲れて休んでしまっては、ヒットは望めない。一日投げ続けるため、ルアーにアクションを加え続けるために、軽さは欠かすことができない最も重要な要素となる。
もちろん、軽いだけでは理想的なGTロッドの条件をクリアすることはできない。軽量でありながら、しっかりした復元力。そしてパワーを備えていることが重要だ。復元力とパワーは、ファイト時にロッドがアングラーをアシストするための条件でもある。
福井さんは、「ある程度の柔軟性」も重視する。硬く、張りがありすぎるロッドはアングラーにとってキツいロッドになる。身切れでバラすリスクもアップする。使いこなすことができれば利点もあるが、いろいろなリスクを回避してくれるのが軟らかめのロッドの特性でもある。「僕はショアからGTゲームをスタートしたこともあって、長いロッドが好きですね。飛距離を出しやすいですし、ファイト面でも、GTの場合はマグロのような長期戦にはならないので、ロッドが短いことのメリットは少ないと思います」
GTロッド程度のパワーを備えた、短く硬いロッドを十分に曲げこむのは難しい。軟らかめで長いロッドは、しっかり曲げこむことができるため誰にとっても投げやすい。飛距離も伸びる。
以上の要素すべてを考慮したうえで、福井さんが愛用しているのは、オシアプラッガーBGモンスタードライブS86MLだ。
「しっかり曲がって復元し、GTを浮かせてくれる。キャスト性能も高く、とても信頼しているロッドです」
ロッドを使いこなすことも大切だ。使いこなすことによって、細かい操作感も体得できるし、パワー面でも、性能の限界点がみえてくる。それゆえ福井さんはダイビングペンシルもポッピングポッパーも同じロッド&リールのセットで使う。キャストフィールを統一するためだ。パワーゲームでありながら、実はわずかな感覚の差が大きいのがGTゲームでもある。福井さんはオシアプラッガーBGモンスタードライブS86MLを体の一部のように使いこなしている。まさに右腕といってよい存在のロッドだ。
▲ホームグラウンド、トカラでキャッチした50kgアップ! 普通のアングラーにとっては一生モノのモンスターを、息もつかずに仕留めてしまう。凄い! のひと言。
ドラグ性能に秀でたXGモデルをセレクト
福井さんがリールセレクトにおいて、最優先するのはドラグ性能だ。
「走られてもスムーズ、かつ均等に、思い描いた通りにラインが出ていくことが大切。反対にGTを止めたいときにはしっかり負荷を掛けることが出来ることも大事」
近年のメイン機はPE6号を多用することもあり、ステラSW14000XGに10000番スプールを装着して使用する形に落ち着いている。PE8号を使用する状況ではステラSW14000XGを投入することもある。
福井さんはルアーをアクションさせるときでも、ファイト中でも、動作の結果として出たラインスラックを取るようなイメージでリーリングしている。XGモデルの巻き取りスピードの速さは必須項目であり、ステラSWのXGモデルの軽い巻き感を高く評価している。
耐久性も重視したい。毎年、3月から11月にかけてのシーズン中はほとんど毎日、ロッドとリールをセットしたままロッドホルダーに立てておく、と福井さん。直射日光と波飛沫にさらされ続ける日々の先に、大型GTとのビッグファイトが待っている。過酷な環境だ。
ステラSWには何の問題も感じない。結果としてリールにまったく気を使わなくなった、という福井さん。それは釣りの最中でも同様。ファイト中に不安を感じることがない。ストレスを感じないということは、思い切り釣りに集中できるということ。耐久性にも絶対的な信頼を置いている。
ギアの噛み合わせに違和感を感じる、いわゆる「ギアゴロ」も感じない。以前のモデルにくらべて圧倒的にメンテナンスに出す回数が減ったという。耐久性の高さの裏付けだろう。シマノ独自の設計思想「HAGANE」によって誕生したステラSWシリーズは、過酷な現場で使い続けられることでその真価を発揮しているようだ。
ベールアームを返したときの「カチッ」という音と感触。それだけで剛性感を感じることができる、という福井さん。ステラSWに対する信頼は絶大のようだ。
▲以前はトカラ列島の宝島に居を構えたこともあり。ダイビング、アングラー、フィッシングガイドとトカラ列島とは四半世紀の付き合いだ。
樹脂製ルアーの新たな可能性に注目!
福井さんが主に使用するのはダイビングペンシル、ポッピングポッパー、シンキングペンシルの3種類。なかでも圧倒的な使用率の高さを誇るのがダイビングペンシルだ。なかでも「オシア・ワイルドレスポンス240F」が、お気に入りだ。オシア・ワイルドレスポンス240Fは、スピニングタックルでのキャストのしやすさと、高いアピール力を狙ったビッグシルエットを両立できる240mm、137gのフローティングペンシルである。
引き抵抗が少なく、緩やかなスラローム&ダイブアクション、キレのある泳ぎが身上。スリムボディながら、しっかりと水を押し、強いフラッシングを生み出す高めの体高、側面積を確保したペンシルだ。
「別注ヒラマサ220Fより全体的にサイズ、ウエイトが増していて使いやすいですよ。よく飛ぶし、少ない入力でよく動く。ロッドを下げるだけでよく泳ぐくらい。トカラやフィジーなどでもけっこう釣っていますが、樹脂製なら何本か釣っても泳ぎ、動きが変わらない。この耐久性も利点のひとつですね」
ポッピングポッパーでも福井さんが注目しているルアーがある。「オシア・スポウター190F」だ。
「オフショアではペンシルが僕のメインルアーですが、磯ではポッパーもよく使います。磯からのショアゲームではルアーチェンジが頻繁。ペンシルから使い始めてポッパーにチェンジしていくと、ヒットすることも多い。シルエットが小さいのでフッキング性能も高くて、追い食いしてくることも多いんですよね」
長くカーペンター製の、高性能ウッドルアーも愛用している福井さんだが、近年の樹脂製ルアーの進化には驚きを隠さない。今後は樹脂製ルアーならではの活躍の場も増えていきそうだ。
▲ジャーク&ジャーク、もしくはジャーク&ポーズが基本的なロッドワーク。福井さんのそれはかなりのスピードで行われる。
福井健三郎セレクトタックルデータ
ロッド:オシアプラッガーBG モンスタードライブS86ML
リール:ステラSW14000XG(10000番のスプールを装着するときもあり)
ライン:オシアEX8 PE6 号(ショアの場合のみ8号を使う場合もあり)
リーダー:ナイロンリーダー100lb
ルアー:オシア ワイルドレスポンス240F、オシア スポウター190F、別注ヒラマサ220F(以上、シマノ製)。ガンマ、ブルーフィッシュ、パンドラ各サイズ(以上、カーペンター製)
ラインシステムについて
福井さんのラインシステムは、20年以上変わっていない。ビミニツイストでダブルラインを作り、改良したフィギュアエイトノット、つまり8の字結びにダブルラインを3回絡げ、その先の部分で編み込みを上下で1回と数えて7回、計14回施し、最後にエンドノットを施してライターで焼き留める、というシステムを愛用している。「ほかの人には勧めないですね。フルロックすると抜けてしまうから(笑)。自分ではGTが弱ってから締め込むし、フルロックすることはないので問題ないですけど。ただ、ダブルラインの部分に指をかけて投げているので、リーダーをスプールに巻き込まないのは大きな利点だと思います。キャスティング時の抜けはいいと思いますよ」強度と使い勝手。トータルでベストと判断しているようだ。近年ではリーダーもほとんど100lbしか使わない。先端には口切れ防止用に、中芯を抜いたケプラーノット、約10cmを結節している。リーダーをケプラーノットの中に差し込んでから8の字結びで留めている。
▲ケプラーノット、サルカン、スプリットリング。経験に裏打ちされた、福井さんのベーシックな接続法だ。
▲ラインはPE6号、リーダーはナイロン製100lb。ダブルラインを作って結節。
【この記事は2017年2月現在の情報です】
福井健三郎GTゲームの世界【後編】はこちら>>>
SHARE
PROFILE
SALT WORLD 編集部
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。