スローピッチジャークで狙う!「志摩沖、尾鷲沖 熊野灘のトンボジギング」【後編】
SALT WORLD 編集部
- 2021年10月15日
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冬場から春にかけて、志摩沖、熊野灘でキハダに変わり盛り上がりをみせるのがトンボ(ビンナガ)。前編に続き、スローピッチジャークでのトンボ狙いで多くの結果を残している小野誠さんにその釣り方、タックル等を細かく解説してもらった。
スローピッチジャークで狙う!「志摩沖、尾鷲沖 熊野灘のトンボジギング」【前編】はこちら>>>
リールのドラグ調整と使用ライン&リーダー
リールは、スタジオオーシャンマークのブルーヘブンシリーズなどのレバードラグのベイトリールがおすすめ。スピニングタックルでは巻き上げトルクと感度が劣る。また、スピニングではドラグを効かせたファイトでラインを出し入れする中で、ラインに撚れがかかってしまう。
また、ジグを投入する前にしっかりとドラグの設定を行うことも重要だ。初期設定値から、どれだけレバーを上げれば何キロの負荷がかかるのかをしっかり把握しておこう。
使用しているメインラインのPEは、YGKオッズポート3号。夏場の大型のキハダを狙うなら4号が良いが、タネトンクラスでもキハダに比べてややファイトがマイルドなトンボは、狙いのレンジでのジグの操作を優先したい。
ドラグの設定値は、初期設定ストライクポジションで3~4㎏、レバーを前に倒した最大値で6~8㎏程度にセットする。スタードラグの場合は、絞め込む時のクリック音の回数で、何クリックで10㎏になるかを事前に計測しておく。大型とのファイト中にクリック音を聞き分ける余裕があるかが問題だ。自分で設定したレバーの位置で視覚的に設定値が把握できるレバードラグは有利と言える。
100m以上の深いレンジになると、PEラインとリーダーの抵抗が大きくなってフォール時にジグの姿勢を立たせてしまう。PE、リーダーが太くなれば、その抵抗も増えるので、どちらも細いほうがジグのフォールアクションに影響が出にくい。
熊野灘は、水深50~100mのレンジを探ることが多く、ラインの太さの影響は少ない。リーダーは、PEの強度と同程度か少し太めのフロロカーボンリーダーをPRノットで6~9m結束する。透明度が高い外洋で狙うので、警戒心を与えない透明で長めのリーダーを使いたい。また、船縁での一進一退の攻防となった場合、残り5mはリーダーをリールに巻き込んだ状態で、ある程度強引にファイトしなければ浮かないことも想定している。
太めのフロロカーボンリーダーの難点は、結束が緩いと強度が出せないところだ。トリプルニットノットで完全に絞め込まなければリーダー本来の強度を出せない。ジギングだけでなく、あらゆる釣りにおいてノットの結束強度は重要である。実際に計測し、
何キロで切れるかを分かっているぐらいの人でなければ大型をキャッチすることは難しい。高性能のリールやロッドはお金さえあれば手に入るが、ノットの強度はお金で買うことはできない。アングラー本人のトライ&エラーの積み重ねによる努力が大切だ。
せっかくヒットした魚を、ファイトの末にリーダーとジグの結束部分がファイトに耐えられなかった場面を想像してみよう。本人が残念なのは当然だが、同時に同船者のチャンスを削り取ってしまう。船上のアングラー皆で技術を高め合って、ファイト時間を短縮すれば、キャッチの可能性が上がり、さらなる釣果も手にできるはずだ。
フックセレクトとセッティング
フックの選択としては、10㎏前後の小型が主体の場合には、ジグの前後にTCツインスパーク2/0を使用。小型のトンボは上げのジャークでもよくジグに反応し、上げでヒットしたからフロント、フォールでヒットしたからテールと、フッキングした時の状況とその後のファイトで、フロントとリアのどちらに掛かっているかファイト中に仮定し、キャッチして確かめるようにしたい。掛かっている所と、それがフロントとリアフックの違いで魚の引き具合の違いを経験しておくと良い。
大型に的をしぼり20㎏オーバーのタネトンクラスだけを狙うなら、リアフックのみをセットする。リアフックがカンヌキに掛かった状態でフロントフックが胸鰭に掛かってしまった場合は、浮かせる事が難しくなる。
バイトとフッキング
トンボのアタリは様々で、アングラー側でもフリーフォールを多用しながらジャークを繰り返し、なおかつタネトンの場合はフォール中のバイトが多発するので、フッキングでミスをする場合がある。フォール中にバイトし、次のジャークで引ったくられるような重さを感じた時は、そのまま魚が走ってフッキングしてしまうことも多い。
厄介なのは、フォール中にバイトがあり、アングラー側がコツンというバイトを感じ取ることができずに、ジグがトンボの口直下に垂れ下がった場合で、ジグの重みで下方向に引っ張られることに驚いて上に向かって走ることがある。トンボにとっては、走るほどにラインのウォータープレッシャーがかかって更に下方に引かれるので、余計に上方へ逃げる。アングラー側はジグの重みが無くなり何が起こったのか分からず、慌ててロッドを煽って最悪の場合はフックオフとなる。
結論としては、違和感を感じたらロッドを強く煽るよりも、とにかくリールを素早く巻くこと。引きの強い大型魚だけに、リールを巻いてラインテンションを与えてやれば、アングラーから離れる方向に走り自動的にフッキングする。
ファイトは焦らず少しずつでも寄せる
ヒット後のファイトについては、トンボが走っている時はそのままラインを出して止まるのを待つ。ヒラマサやカンパチのように根ズレすることは無いので、ドラグを強くする必要はない。とにかく落ち着いて対処したい。むしろラインを出せば抵抗が増えて魚へのプレッシャーが増加する。ラインが放出されるとスプールの直径が小さくなり、設定値が上がることも覚えておこう。走っている時はドラグに触らず耐えるのだ。
大型ともなれば初期設定から熱で弱くなったドラグは、波のアップダウンでさえラインが出る状態になる。徐々にドラグを強めていき、少しずつラインを巻き込んでいく。
大型のタネトンとなればSPJ用の華奢なロッドの僅かなポンピングだけでは浮かせることはできない。船のロールや波のアップダウンで船が下がるタイミングを見極めつつ、自分自身の上体の上下運動で10㎝ずつでも巻き込むことが大切だ。
タネトンを水面下20~30mまでリフトアップし、この時に魚体を横に倒して白い腹が見えていれば弱っており、逆に背中を見せて悠々と泳いでいれば弱り切っていないと判断できる。急に走り出す可能性が高く、注意が必要だ。レバードラグのリールであればこのような急な走りにもレバーの位置で瞬時に調整が可能だ。
ジグの位置の把握が重要
海流と風の向き次第で、ラインの入射角度が様々に変化するが、狙ったレンジにジグを送り込むためにも、入射角度によってどのぐらいラインを放出すれば良いかを覚えておく。
例えば入射角度が垂直90度ならば、そのままのラインの示す数値が狙いのレンジだが、45度だとどうだろう。三角関数で考えれば√2となるが、約1.4倍と覚えておこう。そして45度1.4倍を基準に、角度が大きければ1.4よりも多く、ラインが流されて角度が小さくなれば1.4倍より少なく出すことが大切だ。狙いのレンジにしっかりとジグを送り込まなければヒットは望めない。
また、時として狙いのレンジが150m、潮と風が逆向きで強い時には400~500gのジグを使わなければならない場面もあるので用意をしておこう。
これまでの熊野灘。今後の熊野灘
数年前に久米島や沖縄で大型のキハダをSPJで狙い始めてから、これまで全国様々な場所でキハダやトンボを狙ってきたが、ジグでマグロを狙うアングラーが増えた海域は熊野灘が一番ではないだろうか。その要因はトンボの存在が大きい。
2018年に尾鷲のディープブルー川口船長にお世話になり、釣りビジョンさんの取材でキハダをジグで狙った。この年はキハダの回遊が遅く、苦戦の末に20㎏オーバー釣らせてもらった。その頃は、浮き漁礁でジグをジャークしている人はおらず、その番組の放送がきっかけでマグロジギングと熊野灘に興味を持ったアングラーが多かったのではないだろうか。
続いてその年の冬、熊野灘は異常なほどのトンボの釣果に沸いた。そしてそこでトンボのジギングを経験したアングラーが夏になるとキハダを狙うようになってくれた。今では中京、関西のアングラーが、冬はトンボ、夏はキハダと遊漁船や釣友の釣果情報に敏感になっている。きっとこれからもトンジギが盛り上がることだろう。
だが、2020年の夏、三重県2番浮き漁礁では、カツオを狙う漁師さんと、ジギングでキハダ、メバチを狙う遊漁船、一般のプレジャーボートが多数集結することになった。ジギングで狙うアングラー、遊漁船が増えたのが主な原因だ。
さらに2019年までは三重県の管轄する浮き漁礁は2つあったが、一つが切れて流されてしまい、皆が残された2番浮き漁礁1基だけに密集することになってしまった。そして浮き漁礁で生計を立てている漁師さんから苦情が増える状況となった。
ルールとして定められている利用時間や、餌、コマセの使用禁止、船の流し方など、マナーを守らない船が増え、2021年からは厳しく取り締まりがあるかもしれない。浮き漁礁を起点としない沖を流すトンジギの場合は問題ないが、浮き漁礁においてこの先ルールを守ならければ釣りができなくなってしまいかねない。
この記事を執筆するにあたって、下記の機関にルールの確認と今後の見通しを問い合わせてみた。担当の方のお話によると昨年2020年のような先述の状況を改善するため、浮き漁礁の利用は、漁協の会員に限られ、船に対して遠距離航行に適した装備条件と審査があり、許可を得た船に限り登録番号票が配布し、船に掲示する必要があるとのこと。
また、4月1日以降は遊漁船が8時から、一般プレジャーボートは9時からの利用時間の厳守を促し、漁師さんとの船舶の距離、流し方などのルールを厳守すること。生き餌、コマセ餌の使用禁止など(漁師さんは生き餌のみ可能、コマセ禁止)を教えて頂いた。ただ今後のルールの変更や修正も考えられるので詳しく知りたい人は、下記まで問い合わせて頂きたい。※三重県浮漁礁利用調整協議会(三重県水産振興事業団事務局内/TEL 059‐228‐1291)。
また、2番浮き漁礁の水温や流向は下記の三重県のホームページで確認できる。最下段のサイトでチェックしてほしい。
三重県の浮き漁礁に関しては、2021年の3~4月に新しく4番パヤオを入れ直す計画がある。4番が復活することで、漁船、遊漁船が分散すれば昨年のような状態にはならないかもしれない。この記事が、熊野灘の浮き漁礁でキハダ&トンボを狙うアングラー、遊漁船、プレジャーボートの船長さんにとって、そしていつまでも釣りを楽しむために役立てば良いと思う。
浮き漁礁の水温や流向
https://www.mpstpc.pref.mie.lg.jp/sui/shigen/ukigyo/Hp/B/index.htm
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SALT WORLD 編集部
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
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