北村秀行が解説! 好敵手ブリの行動理論【Part 1】
SALT WORLD 編集部
- 2021年12月08日
魚はそれぞれに生態、性格が異なる。そしてその魚を知ることで、攻略の幅が広がる。常に魚のことを研究し、得た知識を基にして何がベストかを考え長きにわたり様々な魚と対峙してきた、ジギングの超エキスパート・北村秀行氏。今回、そんな北村氏にブリについて書き綴ってもらい、全3回に渡ってお送りする。まずはじっくりとブリを勉強し、ぜひ釣行に役立ててほしい。
ブリの生息域と、ブリと呼べるサイズ
ブリは日本の固有種だ。スズキ目アジ科ブリ属、全9種中、日本周辺海域にブリ、ヒラマサ、カンパチ、ヒレナガカンパチの4種が生息する。【ブリ(鰤)】学名:Seriola quinqueradiata/英名:Japanese amberjack。
全世界の亜熱帯から温帯海域にヒラマサは生息しているが、ブリは日本周辺の温帯域にしか生息せず、ヒラマサとブリが生息しているのは日本周辺だけだ。ハワイ諸島やアリューシャン列島、八丈島でもワラサが釣れることがあり、これは偶然に移動回遊した魚で、遇来種だ。
日本海側は、夏の暖水時に季節回遊し、遇来種とは言わない。北海道・宗谷岬や知床半島、ロシア・ウラジオストックにも回遊があり、夏にはジグやプラグで釣れている。
ブリと呼べるサイズを釣りたいと多くのアングラーがトライするが、3歳魚の5~6kgは多く釣れるが、5歳魚の10kg以上となると簡単には釣れない。
寒ブリで有名な富山県の氷見漁協は、10kg前後のブリの水揚げが年々減少するのに悩み、2013年から6kg以上を寒ブリと呼ぶとした。このサイズでブリと呼ぶには抵抗がある。
▲富山県氷見港の定置網で捕獲された21.2㎏の寒ブリ。20万円の値が付いた。このような大型ブリは、年々減っている。
昔は3貫目前後をブリと呼び、それ以下は小ブリ、4貫目以上を大ブリと呼んだ。1貫目は3・75kgなので11・25kg前後がブリで、大ブリは15kg以上になり、釣るのはかなり難しい。
10kg以上のブリは、ワラサの群れから少し離れていることがあり、ジグを船上から次々に投げ込むと移動してしまうことも多い。また、ワラサがバイトして異常行動すると少し離れていても、異常行動の振動をキャッチし、大型は移動してしまう。小型のワラサ釣りのように、ラフに考えているとブリを釣るは難しい。
釣りたいのであれば、大型が回遊する時期や場所を調べることが大事で、ブリの群れが来た情報をもらったら、直ぐ行動することが釣果に繋がる。
ブリとヒラマサ。似ているがどう違う?
学者はヒラマサからブリへと進化したと解析。ヒラマサは稚魚の時に共食い現象が強く、この時に共食いされるのを嫌い、群れから離れ、外洋のサメやマグロの捕食からも逃げ、濁ったエリアに入って身を隠し、環境対応ができるように進化をしたのがブリであるとしている。だがその反対、日本近海に生息していたブリが外洋に進出し、ヒラマサへ進化したシナリオはないのだろうか? ミトコンドリアDNA解析をして、解明してほしいと思う。
魚にはリーダーと呼ぶ、群れボスはいないが、最初に異常行動をした個体を追従し、釣り落としたりバラしたりすると、その場から逃げる異常行動をする。それに追従して群れが散る。
ブリは周年、釣りや漁業で狙われ、漁獲圧(魚を獲る行動から逃げる)が高く、大型に成長すればするほど警戒心が強くなり、臆病な性格も強くなる。
ワラサクラスは岸寄りの少し濁りがある潮目を好み、大型は、少し透明度のある、外洋側の潮目にいて、ベイトを捕食できるタイミングを待っている。狙うときは警戒心が芽生える前の最初の1投目が大事で、それがバイトさせるチャンスだ。
捕食行動の基本は、小さくても食べやすいものを多く食べるか、ベイトになる生き物を追って食べるかのどちらかで、例えて言うなら「象はピーナッツを食べるけど、探しに行かないが、沢山食べられるアカシアは探しに行く」ということ。要するに「マッチ・ザ・ベイト」にするか、「ビッグ・ベイト・ビッグ・フィッシュ」で攻めるかである。
12~2月の寒ブリと呼ばれる大型魚は、南方での産卵を控え、丸々と太り、脂が乗り、味に旨味があるため大人気魚だ。大型になればなるほど、旨味が濃く、魚価も高騰する。季節により、これほど、味、旨味、そして魚価に大差がある魚は珍しい。
夏季の北海道産も脂が乗り、美味しいが、気温が高く、身肉の色変わりが早く、身持ちも悪い。鮭文化の強い、北海道の市場では人気がない。
ブリの成長と回遊パターン(定置網で捕獲された魚の平均体重)
●寿命は8年(満7歳)前後であり、最低生活水温は9℃。
【回遊パターンは数通りある】
●産卵を意識して南下する産卵回遊は、性成熟する3年魚の一部と4年以上に多い。
●北部往復型‥‥日本海の北海道と東シナ海を回遊。
●中・西部往復型‥‥日本海、能登半島付近と東シナ海を回遊。
●太平洋‥‥熊野灘、遠州灘、四国沖、薩南の間を回遊。
●回遊しないで滞留‥‥北部は1~2年が多く、南部は2~3年魚が多い。
【この記事は2019年10月現在の情報です】
北村秀行が解説! 好敵手ブリの行動理論【Part 2】はこちら>>>
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SALT WORLD 編集部
近海から夢の遠征まで、初心者からベテランまで楽しめるソルトルアーフィッシングの専門誌。ジギングやキャスティング、ライトゲームなどを中心に、全国各地の魅力あるソルトゲームを紹介しています。
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