
新城幸也、果敢に攻めるも逆転ならず、サルビー圧巻のステージ3勝目|ツアー・オブ・タイランド第5ステージ

せいちゃん
- 2025年03月29日
INDEX
3月28日(金)、タイで開催中のツアー・オブ・タイランド(UCIアジアツアー2.1)は第5ステージを迎えた。サケーオ県スポーツスタジアムを発着点とする136.2kmの周回コースで行われたレースは、終盤に発生した落車による混乱もあったものの、最後は集団スプリントへ。アレクサンダー・サルビー(リーニン・スター、デンマーク)が他を寄せ付けない圧倒的なスプリント力を見せつけ、今大会ステージ3勝目を達成。さらに、ステージ優勝によるボーナスタイムを獲得し、チームメイトのシモン・ペロー(スイス)から個人総合首位の座を奪い、イエロージャージを獲得した。
序盤からアタック合戦、中間スプリントも集団で
ツアー・オブ・タイランドも残すところあと2日。第5ステージは、サケーオ県スポーツスタジアムをスタート・フィニッシュ地点とする136.2km。周回コースが設定され、比較的平坦なレイアウトから、再び集団スプリントでの決着が予想された。
ローリングスタートなしでレースが始まると、序盤からLXサイクリングなどが積極的にアタックを仕掛けるが、集団はこれを容認せず、吸収を繰り返す。37km地点に設定された1つ目の中間スプリントポイントが近づくと、ボーナスタイムを狙う動きが活発化。数名が抜け出す場面もあったが、決定的な逃げは決まらず、集団のままスプリントへ。ここではトゥラトーン・ソーサラム(タイナショナルチーム)が先着を果たした。
ペロー、新城ら有力選手含む逃げ形成、総合リーダー自ら動く

最初の中間スプリントポイントを通過した後も、アタックと吸収が繰り返される展開が続く中、レース中盤に大きな動きが発生する。個人総合リーダージャージを着るシモン・ペロー(リーニン・スター、スイス)、総合4位につける新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)といった総合上位勢を含む、十数名の強力な逃げ集団が形成された。
この逃げ集団はメイン集団に対してリードを築き始めるが、逃げ集団内でも協調体制は完全ではなく、アタックがかかるなど不安定な状況が続く。79.4km地点に設定された2つ目の中間スプリントポイントでは、なんと総合リーダーのペロー自らがスプリントを敢行。見事に先頭で通過し、ボーナスタイム3秒を獲得。総合2位以下の選手に対するリードを広げようという執念を見せた。
終盤に落車発生、リーニン・スターが完璧なコントロール
残り距離が50kmを切ると、逃げ集団内でのアタックがさらに活発化。一時はペロー、新城、そしてリュカ・ドロッシ(チャイナグローリー・メンテック、フランス)の3名が抜け出し、第1ステージの再現かと思わせる場面もあったが、集団もこれを容認せず追走。最終的にこの動きは吸収される。
レース終盤、残り20km付近で集団内で大きな落車が発生するアクシデントに見舞われる。この落車には、ポイント賞のグリーンジャージを着るトーマス・セクストン(セントジョージコンチネンタル、ニュージーランド)や、前日のステージで2位に入ったディラン・ホプキンス(ルージャイ・インシュランス、オーストラリア)といった有力選手が巻き込まれ、集団は一時混乱状態となった。
この混乱を抜け出し、テムーレン・ハドバータル(ヌサンタラ・BYC、モンゴル)が単独で先行する場面もあったが、リーダージャージを擁するリーニン・スターが冷静に集団をコントロール。完璧な組織力で集団を一つにまとめ上げ、勝負を集団スプリントへと持ち込んだ。
サルビーが他を圧倒、驚異のステージ3勝目で総合首位に浮上
フィニッシュ地点のサケーオ県スポーツスタジアムへと向かう最後の1キロは、タイトなコーナーが連続するテクニカルなレイアウト。リーニン・スターは、この難しい区間でも見事なトレインを形成し、エーススプリンターのアレクサンダー・サルビーを絶好の位置で最終ストレートへと送り出す。
最終コーナーを立ち上がると、サルビーが満を持してスプリントを開始。他の追随を許さない圧倒的な加速力で後続を一気に引き離し、余裕を持って両手を大きく広げながらフィニッシュラインを通過。今大会、驚異のステージ3勝目を飾った。
2位にはエフゲニー・ギディッチ(チャイナグローリー・メンテック、カザフスタン)、3位にはモハマド・ハリフ・サレー(トレンガヌサイクリング、マレーシア)が入った。
この結果、サルビーはステージ優勝によるボーナスタイム10秒を獲得。これにより、中間スプリントでボーナスタイムを獲得したチームメイトのペローを5秒差で逆転し、個人総合首位に浮上。最終ステージを前にイエロージャージを手中に収めた。さらに、落車に巻き込まれたセクストンに代わり、ポイント賞リーダーにも返り咲き、グリーンジャージも獲得。ジャージ2冠を達成した。
ベストアジアンライダー賞のパープルジャージは、サラウット・シリロンナチャイ(タイナショナルチーム)が引き続きキープしている。リーニン・スターにとっては、チームとして今大会4勝目となり、その強さを見せつけた。
サルビー「信じられない気分」、新城「明日は笑って終われるように」
ステージ3勝目とイエロージャージ獲得を果たしたサルビーは、レース後に「信じられない気分だ。チームが一日を通して素晴らしい仕事をしてくれた。今日はGC(個人総合)を守ることが主な目標だったが、最後はスプリントに持ち込むことができた。チームメイトからジャージを奪うのは少し複雑な気分だが、チームとしては最善の判断だったと思う」と、喜びとチームへの感謝を語った。

一方、この日も積極的に動き、総合逆転を狙った新城幸也は、「今日は逃げ遅れないようにほぼ全てのアタックに反応した。総合をひっくり返すには、ボーナスタイムを取るか、もう一度逃げ切るしかない。総合上位揃って逃げられれば良いのだが、そういうわけには行かないのがロードレース」と、レースを振り返った。
中盤の逃げについては、「リーダージャージと数名の総合上位勢15人ぐらいで一度抜け出したのだが、唯一総合5位にいたチーム(セントジョージ)が逃げに乗り遅れていて、追いかけられてしまった。そこまでスタートから2時間弱、全力疾走していたので一度集団に戻って回復につとめた」と説明。
終盤の動きとスプリントについては、「(アルノー・ティシエールが先行する展開の後)カウンターで飛び出してみたら、リーダーと3人抜け出すことに成功。第1ステージの再来か!?と全力で逃げたが、流石に逃がしてくれなかった。ゴールスプリントはロレンツォ(クアルトゥッチ)がやると言うことになっていたので、位置取りしていたが残り1kmでロレンツォははぐれてしまったみたいで、スプリント出来ず。ステージ3位以内でボーナスタイム稼げるが、今日の収穫はなかった。逆に総合2位選手(当時)がステージ優勝したので、タイム差を広げられてしまった」と、悔しさを滲ませた。
そして最終日に向けて、「明日は最終日。チーム総合1位もかかっているし、ポイント獲得という目標もあるので、個人総合順位も守らなければならないし、明日も大変な1日になる。笑って終われるように頑張りたいと思います」と意気込みを語った。
最終ステージは集団スプリント濃厚、総合争いの行方は
いよいよ最終日を迎えるツアー・オブ・タイランド。最終第6ステージは、ワッタナーナコーンからアランヤプラテートまでの144.4kmで争われる。コースは平坦基調であり、再び集団スプリントでの決着が濃厚とみられる。
個人総合首位に立ち、ポイント賞ジャージも獲得したアレクサンダー・サルビー擁するリーニン・スターが、盤石のチーム力で最終日をコントロールし、総合優勝を飾るのか。それとも、総合3位、4位につけるソリューションテック・ヴィーニファンティーニのロレンツォ・クアルトゥッチと新城幸也が、中間スプリントやゴールスプリントでのボーナスタイムを狙い、最後の逆転劇を見せるのか。最後まで目の離せない戦いが予想される。
第5ステージ リザルト
1位 アレクサンダー・サルビー(リーニン・スター、デンマーク) 2h48m50s
2位 エフゲニー・ギディッチ(チャイナグローリー・メンテック、カザフスタン)
3位 モハマド・ハリフ・サレー(トレンガヌサイクリング、マレーシア)
4位 マーリス・ボグダノヴィチス(FNIX・SCOM・ハンシャン、ラトビア)
5位 ワン・アブドゥル・ラーマン・ハムダン(トレンガヌサイクリング、マレーシア)
6位 ジュリアン・アビ・マニュ(インドネシアナショナルチーム)
7位 ディラン・ホプキンス(ルージャイ・インシュランス、オーストラリア)
8位 ロイ・エーフティング(FNIX・SCOM・ハンシャン、オランダ)
9位 タナワット・セーンタ(ルージャイ・インシュランス、タイ)
10位 シェルハン・ムハンマド・ヌラフマット(インドネシアナショナルチーム)
個人総合成績(第5ステージ終了時点)
1位 アレクサンダー・サルビー(リーニン・スター、デンマーク) 14h08m11s
2位 シモン・ペロー(リーニン・スター、スイス) +05s
3位 ロレンツォ・クアルトゥッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ、イタリア) +12s
4位 新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)
5位 ディラン・ホプキンス(ルージャイ・インシュランス) +23s
6位 エフゲニー・ギディッチ(チャイナグローリー・メンテック、カザフスタン) +24s
7位 トム・セクストン(セントジョージコンチネンタル、ニュージーランド)
8位 ニキータ・ツヴェトコフ (ウズベキスタンナショナルチーム) +29s
9位 クリスティアン・ライレアヌ(リーニン・スター、ルーマニア)
10位 マーリス・ボグダノヴィチス(FNIX・SCOM・ハンシャン、ラトビア) +31s
各賞リーダージャージ
ポイント賞:アレクサンダー・サルビー(リーニン・スター、デンマーク)
ベストアセアンライダー賞:サラウット・シリロンナチャイ(タイナショナルチーム)
チーム総合成績首位
ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ
- CATEGORY :
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 編集:バイシクルクラブ編集部 文:相原晴一朗 写真:Tour of Thailand、Thailand cycling Association、新城美和
SHARE
PROFILE

稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている