
ポガチャルがオウデ・クワレモント激走 18km独走で2年ぶり優勝|ロンド・ファン・フラーンデレン

福光俊介
- 2025年04月07日
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“クラシックの王様”として世界中のロードレースファンから愛されるビッグレース、ロンド・ファン・フラーンデレンが開催地ベルギー時間の4月6日に行われた。同国北部のフランドル地方を舞台としたレースは268.9kmで争われ、最後の18kmを独走に持ち込んだタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG、スロベニア)が2年ぶり2度目の優勝。ともに優勝候補最右翼に挙げられていたマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)らを退け、北のクラシックでも圧倒的な強さを誇示した。
歴史と格式を誇る「モニュメント」のひとつ
今年で109回目を迎えた伝統の一戦は、歴史と格式を有する「モニュメント」と呼ばれる5つのレースの中でもとりわけその威厳を誇る。“クラシックの王様”との別名が示すように、ワンデークラシックの中でも存在感と価値が高く、開催国ベルギーでは人気ナンバーワンのレースにも挙げられる。例年270km前後の長距離で争われるが、今年も違わずに268.9kmに設定。中盤以降は、7カ所の石畳区間と16カ所の急坂が待ち受ける。
特に重要なポイントとなるのが、3回の登坂に挑むオウデ・クワレモントと、2回上るパテルベルグ。この2つの上りは連続して選手たちの前にそびえ、フィニッシュ目前の最終登坂としても待ち受ける。また、オウデ・クワレモント1回目はそこから先に連続する石畳と急坂の存在を知らせる位置関係にあり、いずれの通過時も有力選手たちの動向を測る区間と言える。
そして今年のレースも実際に、オウデ・クワレモントで大きな局面を迎えることとなる。

オウデ・クワレモントでポガチャルがライバルを圧倒
朝から大観衆が詰めかけたブルージュのスタート地点。各チーム・選手たちはプレゼンテーションに臨んだのちに、スタートラインへ。しばしのパレード走行を経てリアルスタートが切られると、早い段階で8人がレースをリードした。
メイン集団は、ポガチャル擁するUAEとマチュー率いるアルペシンが主にコントロール。レース中盤をに入り、石畳区間を迎える頃にはリドル・トレックも前方に姿を見せ、集団の動きを活性化させながら1回目のオウデ・クワレモントをクリアした。
アクシデントが起きたのはその直後。集団中ほどで10人前後のライダーが絡むクラッシュが発生。ここにマチューがアシスト陣とともに巻き込まれてしまう。集団のスピードが上がっているタイミングでのトラブルとあり、復帰までに10km近く費やすが、アシストの力も借りて前に復帰。この段階で、フィニッシュまで約110km残していたこともあり、状況を立て直して勝負どころに備えた。
依然活発なメイン集団では、モーレンベルグの上りでダヴィデ・バッレリーニ(XDSアスタナ、イタリア)の動きに乗じてティシュ・ベノート(チーム ヴィスマ・リースアバイク、ベルギー)やシュテファン・キュング(グルパマ・FDJ、スイス)らがアタック。さらに、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)らも集団から飛び出して、やがて逃げていた選手たちにジョイン。先頭グループは14人まで膨らんで、集団に対してリード拡大を図った。
ただし、この状況をUAEが容認せず、その差を1分以内にとどめながら進行。2回目のオウデ・クワレモントに入ると、絞り込みを試みる先頭グループの後ろでポガチャルが猛追。ここはワウト・ファンアールト(ベルギー)とマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ)のユンボ勢、マッズ・ビーダスン(リドル・トレック、デンマーク)が反応し、遅れてマチューも合流。続く1回目のパテルベルグでマチューがスピードを上げると、即座にチェックできたのはポガチャルのみ。上り切った後にワウトやピーダスンが追いつく格好となり、さらに数人が追いついて9人による追走グループがまとまった。

先頭グループをポガチャルらが追う構図は長くは続かず、残り45kmを切って迎えたコッペンベルグの急坂で追走メンバーが最前線へ合流。ここからポガチャルが断続的にアタックを試み、マチューとピーダスン以外を振り切る。その後ピーダスンが一度遅れるが、数カ所の登坂区間を越える間にワウトとともに先頭再合流に成功。今度はワウトが単独で先頭に立って、3回目のオウデ・クワレモントに飛び込んだ。
だが、ここで圧倒的な力を見せつけたのがポガチャルだった。労せずワウトをパスすると、唯一食らいついたマチューも引き離す。頂上に到達する頃にはその差は大きくなり、直後のパテルベルグも問題なくクリア。完全な勝ちパターンに持ち込んで、アウデナールデの街に置かれるフィニッシュラインへと向かった。

2番手グループではマチューとワウトに加え、ピーダスンとヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー)のリドル・トレック勢の4人が先頭交代のローテーションを繰り返すが、フィニッシュに近づくにつれて2位争いの牽制へ。快調に飛ばすポガチャルはライバルの追走を心配する必要がなくなり、最後の数キロはウイニングライトどいった趣きに。
最後の18kmを独走したポガチャルが、沿道の持ち上がりに応えながら歓喜のフィニッシュへ。2023年大会に続く、2年ぶり2回目のロンド制覇の瞬間を迎えた。

次戦はパリ~ルーベ
ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス2冠の“ダブル・ツール”を成し遂げた昨シーズンから、今季はワンデーレースへの注力に切り替えて走り続けるポガチャル。3月上旬のストラーデ・ビアンケで快勝し、同月のミラノ~サンレモは3位に終わったが、好調をキープしてベルギーへ。ミラノ~サンレモで後塵を拝したマチューへのリベンジとなる今回の勝利となった。
そして、次週13日には初出場となるパリ~ルーベへ。自身の周囲でも賛否があったなかで臨む大一番で、どんな走りを見せるか。ルーベ後もワンデー注力は継続し、アルデンヌクラシックまでを駆け抜ける見込みだ。

最終的に、ポガチャルから1分1秒後に2番手グループがフィニッシュへ到達し、ピーダスンがスプリントで先着し2位。マチューが3位で続き、ワウトは4位だった。
ロンド・ファン・フラーンデレン優勝 タデイ・ポガチャル コメント
「勝つことが目標だったが、さすがにこのレースを勝つのは大変だった。ところどころ不運な場面もあったが、チームはこれ以上ない方法で今日のレースをモノにすることができた。マイヨ・アルカンシエルで勝てたことが本当にうれしい。
プランとしては、オウデ・クワレモントから仕掛けていくものだった。チーム内で数人がクラッシュに巻き込まれてしまったが、計画が崩れることはなかった。チームメート全員がそれぞれの役割をまっとうし、最後まで戦い抜いたことを誇りに思っている」
ロンド・ファン・フラーンデレン2025 結果
1 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG、スロベニア)5:58:41
2 マッズ・ピーダスン(リドル・トレック、デンマーク)+1’01”
3 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク、オランダ)ST
4 ワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク、ベルギー)ST
5 ヤスペル・ストゥイヴェン(リドル・トレック、ベルギー)+1’04”
6 ティシュ・ベノート(チーム ヴィスマ・リースアバイク、ベルギー)+1’51”
7 シュテファン・キュング(グルパマ・FDJ、スイス)+1’53”
8 フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)+2’19”
9 イヴァン・ガルシア(モビスター チーム、スペイン)ST
10 ダヴィデ・バッレリーニ(XDSアスタナ、イタリア)ST
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