
森田叶夢、小林あか里が全日本ロード初制覇! U23は山下歩希がV|全日本選手権ロードレース

せいちゃん
- 2025年06月21日
2025年6月21日(土)、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンターで「第93回 全日本自転車競技選手権大会 ロードレース」が開幕した。初日は午前中に男子U23、午後に女子エリート+女子U23のレースが行われ、男子U23では森田叶夢(京都産業大学)が、女子エリートでは小林あか里(MtDウィメンズエリートサイクリングチーム)がそれぞれ念願の初優勝を飾った。また、女子U23では5位に入った山下歩希(弱虫ペダルサイクリングチーム)がチャンピオンジャージを獲得した。
3年連続で修善寺が舞台に
3年連続で全日本選手権の舞台となったのは、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンター。1周8kmのコースは、時計回りに5kmサーキットと日本競輪選手養成所の敷地内道路を組み合わせたタフなレイアウトだ。
例年、金曜日に開催されていたタイムトライアルとパラサイクリングは、今年はロードレースの1週間後となる6月29日(日)に栃木県栃木市の渡良瀬遊水地で行われる。
大会初日の21日は男子U23と女子エリート+女子U23、22日にはマスターズレースと男子エリートのレースが控える。ジュニアとU17以下のレースは、6月29日に京都府南丹市美山町で開催される。
男子U23:森田叶夢がマッチスプリントを制す

午前8時にスタートした男子U23レースは、1周8kmのコースを14周する112kmで争われ、119名の若き才能が出走した。

レースは序盤から活発に動いた。1周目には柚木伸元(キナンレーシングチーム)、森本凜太郎(ヴェロリアン松山)、山﨑直人(慶應義塾大学)、竹田天飛(弱虫ペダルサイクリングチーム)、岩月諒太郎(中央大学)、そして双子コンビの生天目隼人と生天目直樹(ともにSBC Vertex Racing Team)を含む7名の逃げ集団が形成される。2周目には先頭から山﨑が脱落し6名となるも、集団とのタイム差は一時2分まで開いた。



しかし4周目、愛三工業レーシングチームがペースを上げると差は40秒まで縮小。5周目には集団からアタックした長島慧明(AX Cycling Team)が逃げに合流する一方、逃げからは生天目ブラザーズと岩月が脱落し、Jプロツアー経験者4名に絞られる。









目まぐるしく展開が変わる中、8周目に逃げは吸収。9周目には神谷啓人(京都産業大学)が飛び出し、一時は後続に1分半の差をつける。しかし、集団もこれを許さず、11周目には神谷も吸収。ここからツアー・オブ・ジャパンでも活躍を見せた橋川丈(愛三工業レーシングチーム)と森田叶夢(京都産業大学)が抜け出すと、阿部源(VC福岡)が単独で追う展開となった。

先頭2名と阿部の差は広がり、12周目には集団から追走した松井丈治(愛三工業レーシングチーム)が阿部をパス。松井はチームメイトの橋川に追いつこうと単独で先頭を追ったが、その差は詰まらない。



勝負は橋川と森田のマッチスプリントへ。残り150m、先に仕掛けたのは森田だった。橋川はこれを捉えきれず、森田が力強くフィニッシュラインを駆け抜け、初のU23全日本チャンピオンに輝いた。京都産業大学としては、2015年の中井路雅以来10年ぶりの栄冠となった。


優勝した森田は、「信じられない。想定通りではなかったが、行くべき時に行って自分で勝負しようと決めていた。しっかり勝負できてよかった」と喜びを語った。広島県出身、崇徳高等学校を経て京都産業大学2年生の20歳。昨年のU23全日本選手権6位、今季はチャレンジサイクルロードレース2位、ツアー・オブ・ジャパン富士山ステージで日本人2位の17位と好調を維持していた森田は、「ジャージを着て、周りから走りを見られるようになる。もっと積極的な、チャンピオンらしい走りができるように頑張りたい」と今後の抱負を述べた。
2位には初の全日本選手権となった橋川丈が入った。「悔しいが、自分の実力は見せられた。本当の目標はヨーロッパでワールドツアーを走ることなので、もっと強くなりたい」と前を向いた。3位には昨年と同じく松井丈治。「去年よりいい成績を取りたかった。数的有利を作りたかったが力及ばず。来年こそジャージを」と雪辱を誓った。
厳しい暑さとタフなコース設定により、完走者は22名とサバイバルなレースとなった。
女子エリート+女子U23:小林あか里が圧巻の独走V、山下歩希がU23制す

12時30分にスタートした女子エリート+女子U23レースは、暑さを考慮し当初予定の11周88kmから8周64kmに短縮。エリート26名、U23が8名の計34名が出走した。


2周目から集団は絞られ始め、元オムニアム世界チャンピオンの梶原悠未(TEAM Yumi)もここで脱落する波乱があった。


レースが大きく動いたのは3周目。河田朱里(Infinity Style)、石井嘉子(honeyB BIKEBAJU)、小林あか里(MtDウィメンズエリートサイクリングチーム)、石田唯(TRKWorks)、阿部花梨(イナーメ信濃山形)、そしてU23の山下歩希(弱虫ペダルサイクリングチーム)の6名が先頭集団を形成する。





そして4周目、今シーズンオランダを拠点に活動する小林が飛び出す。独走態勢に入ると、後続との差をみるみる広げていく。追走集団も5周目には石田と山下が遅れた。

小林は力強い走りで独走を続け、最終周回ではややペースを落としたものの、後続に1分16秒の大差をつけてフィニッシュ。MTBクロスカントリー、シクロクロスに続く、自身4種目目となるエリートカテゴリーの全日本チャンピオンジャージを獲得した。

優勝した小林は、「本当にこのタイトルを獲りたかった。オランダでワールドツアーの選手たちに揉まれ、スピードと力をつけてこられた。自信を持ってスタートできた」と笑顔を見せた。長野県安曇野市出身の24歳。アトランタ五輪MTB女子代表の母を持つサラブレッドは、今シーズンロードレース1本に絞り、本場ヨーロッパで実力を磨いてきた。「ここからもっと強くなれるように頑張りたい」とさらなる飛躍を誓った。
2位には河田朱里。「開始200mでチェーン落ちし、終わったと思ったが、なんとか復帰できて本当に嬉しい」と安堵の表情。3位には石井嘉子。「すごくきつかったが、この順位でゴールできて嬉しい。声援が聞こえていました」と感謝を述べた。


女子U23は、総合5位でフィニッシュし、カテゴリー唯一の完走者となった山下歩希が優勝。「つらいコースだったが、補給と氷で走り切れた。まだまだなので、もっと強くなりたい」とコメントした。
女子レースは17名の選手がフィニッシュラインを越えたが、タイムアウト基準(108%)により、10位の安藤沙弥(Team SHIDO)までの10名が完走となった。
リザルト
男子U23(112km)
1位 森田叶夢(京都産業大学) 3時間20分55秒
2位 橋川丈(愛三工業レーシングチーム) +0秒
3位 松井丈治(愛三工業レーシングチーム) +1分12秒
4位 阿部源(VC福岡) +1分18秒
5位 永井健太(ヴィクトワール広島) +2分32秒
6位 奥田和人(VC福岡) +2分34秒
7位 梅澤幹太(チームブリヂストンサイクリング) +2分34秒
8位 渡辺一気(京都産業大学) +2分34秒
9位 末吉陽生(京都産業大学) +2分45秒
10位 菅野蒼羅(宇都宮ブリッツェン) +3分7秒
女子エリート+女子U23(64km)
1位 小林あか里(MtDウィメンズエリートサイクリングチーム) 2時間15分18秒
2位 河田朱里(Infinity Style) +1分16秒
3位 石井嘉子(honeyB BIKEBAJU) +2分30秒
4位 阿部花梨(イナーメ信濃山形) +3分9秒
5位 山下歩希(弱虫ペダルサイクリングチーム、女子U23 1位) +4分8秒
6位 石田唯(TRKWorks) +6分40秒
7位 大堀博美(イナーメ信濃山形) +10分12秒
8位 竹内清子(VELONUTS RACING TEAM) +10分29秒
9位 佐藤恵美 +10分40秒
10位 安藤沙弥(Team SHIDO) +10分41秒
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PROFILE

稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている