
最新シマノ・XTR、プロショップスタッフが教える「ここがいい!」|SHIMANO

Bicycle Club編集部
- 2025年07月01日
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2025年6月に発表された新型XTR(M9200シリーズ)。シマノのMTB(マウンテンバイク)用コンポーネントのフラッグシップであり、変速機のワイヤレス化をはじめ、ブレーキ、ホイールなどすべてが新しくなっている。はたして、その使い心地はどのようなものだろうか? 同社の発表会でじっくりと試乗していたサイクルショップ ライズライドの鈴木祐一さんと、カトーサイクルの伊東 光さんにその使い勝手を聞いてみた。
「本気度100%でカムバックした新型XTR」 by ライズライド 鈴木祐一さん

XTRらしい乗り味はそのままに進化、MTBにこそ電動化の恩恵は大きい
プロ選手時代からプロショップを営む現在にいたるまで、長年、MTBに慣れ親しんできた鈴木さん。新型XTRの第一印象は?
久しぶりにモデルチェンジを行い大きな変貌を遂げながらも、機材を操作した感触にはこれまでのシマノのXTRに通じるフィーリングがありました。代を重ねてもXTRらしい乗り味は健在で、それが新型となって技術的にも性能的にも進化したことを、まずはお伝えしたいです。シマノの乗り味が好きな方にはうれしい知らせだと思いますし、以前、使っていた方にもなじみやすいと思います。
電動ワイヤレス変速はどう感じましたか?
MTBの場合、搭載されているギヤはワイドレシオが多く、スプロケットのギヤ1枚1枚の直径も大きく違っています。そのため、変速のたびにチェーンを大きく上下に動かす必要がでてきます。また、走行スピードが高くないことも多くホイールの回転も遅めです。これらが「変速がもたつく」という悩みにつながるのですが、今回の新型XTRは、今までの12速のワイヤー引きと比べて変速時間が半分ぐらいに短縮されたように感じます。
歯数の差が小さいトップ側と歯数の差が大きいロー側では変速スピードが異なる気もしますが、そのあたりはどうでしょうか?
厳密にいえば多少は違います。ただ、普通に乗っているぶんには差を感じないです。むしろ、正確にしっかり変速してくれるから、ライダーにストレスがないと強く感じます。ロードバイクやグラベルバイクでDi2の変速の速さをすでに体感している方は多いと思いますが、MTBにこそ大歓迎な機能ですね。
走る上で大きなアドバンテージになる、と。
そうですね。MTBはセクションを乗り越えるとか、石を避けるとか、そういったことに自分のリソースを使う、意識を費やすことが多く、変速の重要度は2番目、3番目になってきます。とはいえ、変速がうまくできないとメンタル的に失敗した感も大きくて気持ちがへこみますので、この部分を正確で手軽なDi2が補ってくれるのはありがたいですね。
シフターのスイッチの感触はどうでしょうか?
ボタンは少しストローク量のある押し込み式で、走行中に不意に触れてしまっても誤作動を起こしにくいつくりです。シフトアップとシフトダウン用にボタンが分かれていますので変速をミスする可能性も低いです。変速が速く正確にできるから、よりライドに集中できます。
自然な指の動きでブレーキレバーを引ける
シマノユーザーが新型XTRに変えたらどう感じるでしょうか?
シマノユーザーの方が新型XTRに変えたら、ブレーキは目隠しされていてもこれまでと同じような感覚で扱えると思います。それでいて、ここが良くなったと喜んだのがブレーキレバーです。
ブレーキレバーのピボット位置を手前に移動させ、レバーはアップスイープのデザインが採用されました。
ハンドルを握りながらブレーキレバーを引くときに、指を手前にまっすぐ動かすだけで操作できるようになっています。ハンドルを握る手首や手の角度が変わることなく、指の動作だけでコントロールできるというのが新型の良さだと思います。先代のXTRも自然な感じでブレーキレバーを引けたのですが、新型XTRはより自然なフィーリングに近づいています。MTBは転倒による怪我などが隣り合わせのスポーツなので、ブレーキの扱いやすさはとても重要です。安全性を高める命綱のパーツですから、みなさんが新型XTRを試してコントロールしやすいと感じたら、採り入れることをケチってほしくないですね。
「ブレーキレバーの位置が定まらない……」、そんな違和感に悩む方にもおすすめ
ホイールは単体でも購入したい
ホイールは2種類がラインアップされています。エンデューロ用とXC用、それぞれの魅力は?
エンデューロ用は剛性感の高さが魅力。ライド中にホイールに荷重や衝撃が加わってもねじれないしブレないから、切り返しやここに車輪を通したいというシーンで正確なコントロールがしやすく、どこでもしっかりと安心して走れます。
硬いという印象が強い?
そう感じる方は多いと思います。ただ、硬い=悪いと捉えてほしくないですね。乗り心地に関しては、今のMTBのフレームには結構太めのタイヤを装着できるうえに、サスペンションでクッション性も調整できます。よくできているホイールです。
続いてXC用はどうでしょうか?
Di2の話題に注目が集まるなか、このXC用ホイールにも驚きました。ペダルの踏み出しからめちゃくちゃ軽いですね。これはホイールにチタンスポークを採用した影響が大きいと思います。私はお店でホイールを手組みすることも多いのですが、ホイールを構成するリム、スポーク、ハブのうち意外と重いと感じるのはスポークなんです。1本1本は軽くても28~32本集まると結構な重量になってきます。
MTBの場合、ホイールが流れるように回転し続けるシチュエーションというのは意外と少なく、ひと踏みひと踏み加速していくケースが多い。それが何分何十分と続いたり、ときにはキツい坂も出てきます。外周部を軽く仕上げたカーボンリムホイールが一般的になってきたなかで、さらなる性能を求めてチタンスポークにチャレンジしたことが、こうした踏みの軽いホイールを生み出したのでしょう。
他にはどうでしょうか?
限界性能が高いと感じるとともに、ハンドルを切ったときの反応が素早い。最初は切れ込みすぎて驚き、走りながら調整しました。乗り慣れればメリットにしかならないので、踏みの軽さと合わせて、みなさんにも感じていただきたいです。
XC用、エンデューロ用どちらにも良さがありますね。
ですね、ホイールの注目も抜かりなく。足回りのカスタムを考える方にとって単体でも購入する価値があると思います。
ガチでもいいし、楽しみながら乗るのにもいい

新型XTRはどう使いたい?
電動ワイヤレス変速に9-45Tのリアスプロケットを組み合わせると、スプロケットの歯数の差が小さい分、変速性能の速さがより際立ちます。上りやペダリングセクションでの地形変化に対して、変速時の足への負荷も小さくなるのでラクに走れます。XCレースでタイムを縮めたいライダーにとって恩恵が大きいですね。また、エンデューロのレースでもペダリングセクションは結構多いので、そういう意味ではタイムに直結してきます。
レースから離れてみるとどうでしょうか?
ツーリングでもいろんなシチュエーションを走りますので、変速回数はロードバイクと違って圧倒的に多くなります。それがストレスなく正確に行えるのは大きな強みです。長距離を楽しみたい人はなおさらですね。
Cycle shop Rise Ride 鈴木祐一さん
元プロレーサーであり、現在は神奈川県相模原市でCycle Shop Rise Ride(サイクルショップ ライズライド)を営む
「待った甲斐があった! と自信をもって薦めたい」 by カトーサイクル 伊東 光さん

変速スピードが速く、操作にも一体感あり
新型XTRの第一印象はどうでしょう?
電動ワイヤレスの変速スピードが速いですね。チェーンにトルクがかかっているときのシフティングが安定していますし、シフトしていないときにもチェーンがしっかりかかっている感覚があります。新型XTRの前評判において、リアディレイラーがダイレクトマウントでないことをネガティブにとらえる方もいましたが、それを払拭するほど良い出来だと思います。特に変速スピードに関しては、スラムのTタイプよりも圧倒的に速いと体感できます。
電動ワイヤレスの操作感については?
ワイヤーシフトはシフトレバーを押し込まなきゃいけない感覚がどうしてもあります。一方で、電動ワイヤレス変速は、カチッとしたクリック感のあるシフトボタンを押すだけです。リアディレイラーの動きにどれぐらい差があるかはわかりませんが、電動ワイヤレスは変速がスマートで一体感が高いです。
コントロールしやすく、レバー形状も秀逸なブレーキ
ブレーキのフィーリングも良かったそうですね。
はい。先代のXTRは、レバーの引き始めに制動力がグッと立ち上がるように感じましたが、新型XTRはもっとコントロールしやすくなっています。
レバーを引いた分だけ制動力が効く感じでしょうか?
そうですね。指先の力でブレーキのパワーを細かく調整できて、雨やスリッピーなコンディションでも自分で思うようなブレーキングが叶います。コントロールが容易だと、安定した乗車姿勢を維持しやすいですし、ひいてはライン取りがしやすいという利点にもつながります。MTBに慣れていない人ほど新型XTRのブレーキはおすすめしたいです。
レバーに抱いていた印象も変わった、とおっしゃっていましたがどうでしょうか?
ショップで新型XTRを組んでいたときに、レバーがアップスイープしたデザインを見て、この形状はいったいどういうことなのだろう? と少し悩みました。ただ、いざ走ってみるとレバーの角度が気にならないどころか、むしろ「いいな」と。
エンデューロの楽しみ方が広がる
エンデューロ系がお好きとのことですが、どんなシチュエーションで使いやすそうですか?
ブレーキのパワーが上がっていて、コントロールしやすくなっていますので、下り基調のコースはこれまで以上に楽しめます。ダウンヒル専門の方にも満足のいく高い性能があると思います。加えて、自走で登るトレイルも電動ワイヤレス変速のおかげで走りやすいですから、アップダウンのあるコースもより楽しみやすいでしょう。
リアスプロケット9-45Tについては?
先代のXTRでは多くのお客さまが10-51Tのワイドレシオを選んでいましたが、新型XTRには最小のスプロケットとして9Tが登場しました。新しくラインアップされた9-45Tのギヤなら、最低地上高を稼ぎつつトップスピードも出せます。セッティングの幅が広がったのも嬉しいですね。
メカニックとして使う上で思うこと
メカニック目線で感じたポイントは?
電動ワイヤレス変速によって配線やワイヤートラブルを考えずにすみますし、リアディレイラーのバッテリーも内部にきちんと収まり、着脱方法もよく考えられています。それと、クランクアームの取り付けボルトが1本締めから2本締めに戻ったことで、一般の方もメンテナンスしやすいと思います。
新型XTRは7年ぶりのモデルチェンジ。そのあたりは?
先代のXTRが出て4~5年ぐらいたつと、他社からワイヤレス変速が出たなどの話題もあり、「次のシマノの新型の情報は?」という声が多かったです。ですので、そうしたお客さまに「待った甲斐がありましたね」とお伝えしたいですね。今回はホイールもラインアップされていて、XC系の方にとってはカーボンホイールがフロント517g、リア740gと軽量なのも良いニュースではないでしょうか。新型XTRにはかなり多くの技術革新が詰め込まれていますので、既存のシマノユーザーの方はもちろん、他社製品を使っていた方も一度試してみる価値はある、とご紹介したいですね。
カトーサイクル 伊東 光一さん
愛知県名古屋市のKATO CYCLE(カトーサイクル)にてMTBを担当。メカニック歴10年以上のキャリアを持つプロスタッフ
問:シマノ https://bike.shimano.com/ja-JP/home.html
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