「あきらめない走り」でブエルタでステージ優勝! 注目のアンヘル・マドラゾ
Bicycle Club編集部
- 2019年10月11日
プリモッシュ・ログリッジ(Primož Roglič/Jumbo-Visma)の総合優勝で幕を下ろした今年のブエルタ・エスパーニャ。表彰台に上ることは叶わなかったものの、今年のブエルタの盛り上げたサイクリストの一人が、ブルゴスBH所属のアンヘル・マドラゾ(Ángel Madrazo)選手です。ジャバランブレ(Javalambre)の登りゴールとなった第5ステージでは、先頭集団から離されるたびに驚異的な粘りで集団に復帰。最後にゴール前で一気にライバルたちを抜き去り、ステージ優勝を手にしました。
この記事では、今年のブエルタで14日間にわたり山岳賞ジャージに袖を通していたマドラゾ選手について、スペイン在住の對馬由佳理がレポートします。
今年のブエルタ・エスパーニャのステージ優勝と記者会見
マドラゾ選手の人気を不動のものにした最大のきっかけは、もちろん今年のブエルタ・エスパーニャ第5ステージでの区間優勝です。しかし、スペインで最も話題になったのは、そのステージ優勝の後に見ることができた、彼の飾らない人柄でした。
この日のステージ優勝者として、レース後に記者会見に応じたマドラソ選手。会場にいる記者からの質問に、丁寧に答えます。
「僕のいるチーム(ブルゴスBH)は小さくて、ブエルタみたいな大きなレースで勝つチャンスなんてほとんどないと思っていました。だから、今日ゴールしたとき『ほんとに自分が勝ったの?』って思ったんです。」
「自分の子供にこの仕事を通じて、『人生には苦しいこともあるけど、欲しいものがあったら全力で戦う必要があるんだ』ということを教えることができるのは、本当に幸せなことだと思っています。自転車選手として生きて行く以上、家族と一緒に入れる時間は本当に限られていて、奥さんに大きな負担をかけていることは事実です。でも、今日のステージ優勝のような機会を通じて、僕の子供たちが僕が一番伝えたいことを理解してくれたら、一人の父親として、何よりもうれしいです。」
このような話の後、彼の人気を不動のものにしたのが次の言葉でした。
「僕、テレビゲームが大好きなんです。だからずっと僕の奥さんに、『プレイステーション4買って』って頼んでいるんだけど、彼女に『だめ』って言われていまして。僕は息子と一緒になってかなり長いことお願いしているので、今回のステージ優勝のご褒美として、奥さんがプレステ4の購入を許してくれればうれしいな。」
この言葉を聞いた、会見場の報道関係者は大笑い。
そして、ブエルタの第8ステージのスタート前、マドラゾ選手にサプライズでプレイステーション4がプレゼントされます。もちろん、マドラゾ選手は大喜び。
実はブエルタの大会本部がら彼のチームに対し、この日のサプライズについて連絡があったのは前日の夜のことでした。しかし、両者だけではなく、マスコミ関係者にまでしっかりと緘口令が引かれていたため、マドラゾ選手はまったく何も知らないまま第8ステージのスタートラインに並んでいたのでした。
彼の所属するブルゴスBHにとって、ブエルタ・エスパーニャのステージ優勝はチーム史上初めてのこと。2006年の創立から13年目の念願のステージ優勝となりました。
アンヘル・マドラゾ選手の経歴
そんなマドラゾ選手は1988年スペイン北部のサンタンデール出身。彼のプロデビューは意外と早く2008年のこと。アメリカのプロチームで研修生としてデビューしました。
その翌年、スペインのチームのケース・デパーニュ(Caisse d’Epargn/2009-2010)に移籍。その後モービスター(Movistar Team/2011-2013)、カハ・ルラル・セグロス・RGA(Caja Riral Seguros RGA/2014-2016)、デルコ・マルセイユ・プロバンス・KTM(Delko Marseille Provence KTM/2017-2018)に所属したのち、現在のブルゴスBHに今年から所属しています。
この経歴を見てもわかる通り、10年以上スペインの自転車界でトップレベルの選手として走り続ける、スペインの自転車界ではおなじみの選手です。
基本的にはクライマーですが、どちらかと言うと、スペインのバスク地方にあるような距離は短く、斜度がきつい坂を得意とする選手です。そのため、マドラゾ選手は、バスク地方で開催されるプルエバ・ビリャフランカ・オルディジアコ・クラシカやシルクイート・ゲッチョというレースで表彰台に上った経験があります。
この経歴を見ると、彼が第5ステージのジャバランブレの登りで、何度も先頭集団に追いつき、最後に引き離した理由が理解できるのではないでしょうか。距離の短い登りで、瞬間的にパワーを出すことができるクライマーがマドラゾ選手なのです。
SNS時代の自転車選手
そして、多くの自転車選手同様、マドラゾ選手もファンとの交流を積極的に持っている選手の一人です。
実はこの記事を書く3日ほど前に、マドラゾ選手が自身のインスタグラムに「今日はSpinningのクラスに来ています」という写真をアップしました。それを見た筆者(對馬)が、「そのSpinningのクラスには生徒として行ってるの? それとも先生役?」とインスタグラム経由で質問したところ、「生徒として来てます、ひひひ。」とリプライを返してくれたマドラゾ選手。
日本人のファンが増えていることもすでに知っているので、インスタグラムやツイッターなどで、積極的に応援メッセージを送ってみてはいかがでしょうか。
著者紹介
對馬由佳理
スペイン在住。当地で10年以上ファンとして自転車レースを追いかけた後、ジャーナリストへ転向。スペインで開催される男子のレースはもちろん、女子のレースやパラサイクリングも取材経験あり。
Twitter: @TsushimaYukari Instagram:yukaritsushima1
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PROFILE
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