DE ROSA(デローザ)・MERAK【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2020年01月15日
スポーツバイクジャーナリスのハシケンが、今もっとも気になる最新モデルをピックアップ。
テクノロジーの詳細はもちろん、前モデルとの比較など徹底的に掘り下げて紹介。
100km走行から感じたライドフィールを明らかにする。
由緒ある風格を宿し、新たな一歩を刻んだ新生メラク
あらゆる性能が数値によって語られる風潮にある時代においても、慈愛にあふれる歴史により紡がれたブランドが色あせることはない。むしろ稀有な存在として輝きを放つときでもある。
クオーレことハートマークのブランドが誕生したのは1953年のことだ。イタリアで自転車競技が隆盛をみせていた当時、地元の英雄であるファウスト・コッピに憧れていた18歳の少年がいた。デローザ生みの親であるウーゴ・デ・ローザだ。ビルダーとして歩みだしたウーゴは、その後エディ・メルクスへフレームを供給するなど腕を磨き、世界的なブランドへと成長させていった。
現在、北イタリアのミラノ県にある体育館2つ分ほどの本社工場で、ウーゴの想いを共有した20名弱のスタッフたちが日夜バイク造りに精を出す。会社としての正式名称は、ウーゴ・デ・ローザ・エ・フィーリ。「ウーゴ・デローザと子供たち」という意味だ。まさにイタリアの自転車製造文化を家族経営によって粛々と継承する。
その情熱は、息子のクリスティアーノとダニーロ、そして孫たちへと受け継がれる。デローザ誕生66年めの、これまでの歴史を未来へ投影する「レトロ・フューチャー」の新コンセプトを体現するブランドロゴへと刷新。今回は、このメモリアルイヤーに誕生したメラクをインプレッションする。
TECHNOLOGY 【テクノロジー詳細】
デローザにとって節目の年に誕生した新型モデル「メラク」。
オールラウンダーとしての位置付けになるメラクのテクノロジーを見ていこう
トレンドを採用しつつ伝統を融合したイタリアンテクノロジーの結晶
新たなブランドロゴとともに、未来への第一歩を踏み出したデローザが送り出したニューモデル「メラク」。軽量モデルとして開発されたメラクは、生粋のオールラウンダーとなるキングやプロトス、エアロロードのSKピンニファリーナとともに新時代を牽引するモデルとして期待される。
ディスクブレーキを搭載し、ハンドル&ステムにはFSAのACRシステムを採用し、ケーブルのフルインターナル化を実現。ディスクブレーキ専用設計となり、スタイリッシュさを向上させる。
素材には30トンや46トンカーボンをブレンドし、ワールドツアーレベルに耐えうる剛性を約束しつつも、フレーム重量800gの軽量化を追求。
今シーズンよりプロコンチネンタルチームのコフィディスへのサポートが決定し、メラクは3大グランツールなどの山岳ステージでの活躍が期待される。ピンニファリーナが作り上げた新ロゴデザインはじめ、カンパニョーロ、セライタリア、エリートの地元イタリアンブランドと強固なパートナーシップを組んでいることも特徴。これらが性能と美しさを融合したコンプリートバイクとしての魅力を高めている点も忘れてはならない。
家族経営で大切な伝統を継承していく
ACRシステムを採用しケーブル完全内装化
ディスクブレーキ化により磨きがかかったフロントセクション
優美さを兼ね備えたシンプルなダウンチューブ
トレンドをくんだコンパクトなリア設計
プレスフィット式BB86で軽量化を実現
D型断面の独自のエアロシートチューブを採用
イタリアンメーカーとの強固なパートナーシップ
GEOMETRY
100km IMPRESSION 【100km徹底乗り込みインプレッション】
実走派ライター・ハシケンが、軽量オールランダーとして7年ぶりに復権を果たした
新生メラクを100km徹底インプレッション
レーシーなソリッド感と軽快さが至上の喜びに変わる万能レーサー
シャープで直線基調のフレーム設計は、軽量化を開発コンセプトに掲げたことをうかがわせる。さらに、メラクはケーブルのフル内装化とディスクブレーキ専用設計とすることで、ロードバイクのトレンドをくむことに成功した。スタイリッシュなロゴデザインを含め、それは一見すると過去との決別のようにも感じてしまうが、100kmにおよぶインプレッションを終えたとき、それは無礼な先入観であったことに気付かされた。具体的に何が違ったのか!?
まず、ファーストインプレッションとしては、ソリッドさと軽やかさの融合だ。過去のデローザに共通するピュアレーシングバイクらしい芯の強さは新型メラクにも強く感じられる。これはスルーアクスル化したことも影響している。路面を捉える感覚はダイレクトでソリッドだ。
一方で、ペダリングに対してはマイルドなフィーリングを残し、レーシングバイクながらサクサクと軽快にペダルを踏み込むめる。路面のつかみはシャープでありながら、ストレスを感じさせない剛性感がライダーのパフォーマンスを素直に引き出してくれる。それが新型メラクの印象だ。そこにはデローザらしい芯が通っており、それは高速域やハイパワー域でバイクの安定した挙動を導いてくれる。
コーナーや下りのシチュエーションでは、ヘッドまわりの剛性がしっかりと役割を果たしていることを実感できた。ステアリング性能は機敏であり、ライダー主導で操縦性を楽しめる味付けといえる。そこに軽量フレームにありがちな剛性不足や不安定性といったネガティブな印象は皆無だった。
フレーム重量800gの軽さの恩恵は登坂シーンで生かされてくる。断りを入れておくと、テストバイクのホイールは完成車スペックであるフルクラムのレーシング7のため、どちらかといえば登坂よりも巡航を得意とするモデルだ。それでも、坂道での軽快な走りは新型メラクの特筆すべきストロングポイント。
ペダルの入力に対して素直にパワーが伝達されサクサクと進んでいく印象が強く、ヒルクライムをしていて楽しくなった。さらに、スプリントで激しくもがいても、高い追従性とともに推進力を得られる万能性を確認できた。ヒルクライムレースに挑むのであれば、足まわりだけより軽量なモデルへとチェンジすることで、さらなる軽快さを約束してくれるだろう。
キビキビとした運動性能はピュアレーシングモデルそのものだが、そこにデローザらしい芯の通った安定性が加味されている新型メラク。軽さを主眼に置きつつも、エアロダイナミクス性能にも気を配っており、結果的に山岳に強い万能オールラウンダーとしての強みを獲得している。
最後に、デローザの魅力は性能だけでは語れないことも伝えたい。性能至上主義だけでなく、ブランドやモデル一つひとつにサイドストリーがある点も伝統のイタリアンレーサーの魅力だ。
それは、トレンドの最新機構を完全武装した新型メラクにも確かに宿っており、所有する喜びでオーナーの心を満たしてくれるに違いない。
INFO
デローザ/メラク
カンパニョーロ コーラスディスク12s完成車価格:67万円(税抜)
フレームセット価格:48万5000円(税抜)
■フレーム材質:カーボン(30トンT800+三菱46JB)
■コンポーネント:カンパニョーロ・コーラスディスク12s
■■ハンドル:FSA・SL-KコンパクトACR
■ステム:FSA・NS ACR
■ホイール:フルクラム・レーシング7 DB
■サイズ:43、46、48、50、52、54、56
■カラー:ブラックグロッシー、ブルーマット、ホワイトグロッシー
■完成車実測重量:7.3kg(50サイズ・ペダルなし)
IMPRESSION RIDER
ハシケン
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問:日直商会 www.derosa.jp
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