非常事態宣言下のアメリカで求められるもの|世界の自転車事情【#RideSolo】
Bicycle Club編集部
- 2020年04月14日
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新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大し、国家非常事態宣言が出されたアメリカの自転車事情お伝えする。
アメリカでも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は猛威をふるい感染者が既に56万人を超え、2万2000人以上もの命を奪っている(4月13日時点)。
ここではサイクリング都市としても知られるノースカロライナ州アシュビルで、サイクリストがこの感染症にどう向き合っているかをピークス・コーチング・グループの中田尚志さんが現地の情報をもとにレポートする。
早期に外出規制したアメリカ、ノースカロライナ州アシュビルでは
街のカフェは営業停止しているか、”まもなく再開します”のサインがペイントされている。
ピークス・コーチング・グループ・ジャパンのコーチ、ゲン・コグレさんに彼の住むアシュビルについて話を聞いてみた。
アシュビルはノースカロライナ州の判断より早く3月19日に外出禁止令を出しており(カリフォルニアは17日、ニューヨークが22日、そしてアシュビルのあるノースカロライナ州が出したのは23日)と比較的早い対応をとっている。ただ、アシュビルは避暑地でもあり、別荘を持つ人がニューヨークから疎開してくるため、今後感染拡大が予想される場所としてマークされている
「アシュビルは非常事態宣言が出され、スーパー、薬局、病院、レストランやファーストフードのテイクアウト以外は営業が禁止されています。あるスーパーは同時に50人以上入れないように規制して、朝の9時台は老齢者のみが入店を許可されています。運動・散歩は禁止はされていませんが、10人以下で行うこと、家族以外は2m程度離れるように指導されています」(4月5日時点)
しかし、こういった状況の中でも単独もしくは少人数でのライドは比較的安全で社会的距離(ソーシャルディスタンシング)に有効だと考えられている。アシュビルでは特にグループライドについて禁止してはいなかったが、ゲンさんによるとグループライドは自主規制するようになったという。
一度「2m離れて一緒に走ろう」という企画が持ち上がったときは、人々が反対してなくなったそうだ。
「ライドは基本的に一人か一緒に住んでいる家族やルームメイト、親しい仲間と行くことが推奨されており、大人数でのグループライドは当面中止される予定です」
※ノースカロライナ州に関する最新情報はNC Department of Health and Human ServicesのWEBサイトを参照ください
https://www.ncdhhs.gov/
ゲン・コグレ
(アメリカノースカロライナ州 コーチとして活動する傍ら地元アシュビルのサイクリング文化育成にも貢献する。現役マスターズ・ナショナルチャンピオン。一児の父)
USA自転車連盟ではWEBでセミナーなどを開催し感染対策
コロナ感染拡大に対してUSA自転車連盟(USAC)ではサイクリストがすべき対応を3つのステップに分けて発信している。
1.コロナウイルスについて理解する
コロナウイルスについて知り、驚異に対して何をすべきかの情報を得ることが出来ればパニックにならずに対策が出来る。
2.誰が助けを必要としているかを考えよう
この危機的状況のなかで助け合いの精神を発揮することが大切。
3.行動を起こそう
親切にする。声をかけるなど気にかけることが助け合うことに繋がります。メールやビデオチャットは安全な方法です。困っている近所の人の買い物を代行してあげるのも良いでしょう。
これらはサイクリストも社会を形成する一員としての役目を果たすべきという考えに基づいている。USACではプロチームをサポートしてきた医師に依頼しコロナウイルス対策のオンラインセミナー、ウェビナーを3回開催している。また地元のバイクショップやレースオーガナイザー、チームオーガナイザーをどうサポートすればいいかの指針を示している。
出典:USA自転車連盟(USAC)WEBサイト
HOW YOU CAN HELP: EACH OTHER
https://www.usacycling.org/article/how-you-can-help-each-other
アメリカではトレイルが混雑するという問題も
アメリカではソーシャルディスタンシングが推奨された直後にハイキングに行く人が続出し、トレールが大渋滞を起こしてソーシャルディスタンシングにならなかったという笑えない現象が起きている。日本でも一部の河川敷では同じような問題が起きているが、ルートを選ぶことでソーシャルディスタンシングをしつつ比較的安全に健康を保つことは可能だ。
普段はコンタクトスポーツやチームスポーツに取り組むスポーツ愛好家も、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策をしながら、自転車を使うことでトレーニングしフィットネスレベルを保つことができる。それだけに社会的に上手に自転車を活用していくことが重要だ。
サイクリストが気をつけるべきメンタルケア
日本ではどうか? 日本自転車競技連盟は4月9日に「自転車を愛するみなさまへ」と題して以下のようにコメントを出しており(以下原文参照)、積極的な外出は推奨できないが、心身の健康を保つ上での適度な運動としての自転車の有用性は認めている。もちろん今後、そして地域の状況によっては変わってくることは考えられる。
(以下、日本自転車競技連盟WEBサイトより)
自転車を愛するみなさまへ
新型コロナウィルス感染症の拡大防止のために非常事態が宣言される事となり、本連盟においても当面の間の主催競技大会を中止することとしております。
また、自転車を愛するみなさまにおかれても学校や会社に出向くことすらままならない状況で、閉塞感を感じている方も多いと推測します。
このような状況において自転車に乗ることは、心身の健康を保つために大変有効な手段であると思います。
本来、自転車は屋外で楽しむもので、このような事態の中で積極的な外出を推奨することはできませんが、適度な運動のために自転車に乗る場合は、以下の点を留意していただきたいと思います。
・身体に不調を感じている方は、自転車に乗ることは控える。
・いわゆる3密(密閉空間・密集場所・密接場所)は避ける。
・自転車の整備や交通安全に気を付け、事故を起こさないようにする。
末筆になりましたが、感染された方々の一刻も早い回復と、この事態が早期に終息することを切にお祈り申し上げます。
2020年4月9日
公益財団法人日本自転車競技連盟
会 長 佐久間 重 光
日本自転車競技連盟WEBサイト
https://jcf.or.jp/
「STAY HOME」と言われるなかでの具体的なメンタルヘルスの保ち方
では、ステイホームと言われている、制約のなかでどうメンタルヘルスを維持していくのか?
ここではUSA自転車連盟(USAC)WEBサイトでも紹介されている内容や、クリスティン・ディフェンバックコーチ(ウエストバージニア大学准教授 メンタルトレーナー PCGコーチ USACスタッフ)、そして、私、中田尚志やハンター・アレンがピークスコーチンググループで教えている情報を紹介していく。
アシュビルでは家族単位でのサイクリングは可能だ。可能ならばこうした人のいないとろでの安全なライドがメンタルヘルスに大切だ
人と繋がる
人と関係を持つことはオキシトシンという鎮痛・共感・不安の軽減・安心感といった感情をもたらすホルモンを分泌させます。さらにオキシトシンには免疫力を上げる効果もあると言われています。
グループライドができない今、仲間に連絡を取ったりバーチャルであってもズイフトでグループライドを行って人との繋がりをキープすることはメンタルヘルスとモチベーションの維持に役立ちます。
出典:USAC
適応する時間を取る
目標としていたサイクリングイベントが突然中止になるのはサイクリストにとって大きな喪失感を伴います。
まずは気持ちを整理する時間を取り、今あるリソースで何ができるかを考え、新たな目標に向かいましょう。
出典:クリスティン・ディフェンバック
(ウエストバージニア大学准教授 メンタルトレーナー PCGコーチ USACスタッフ)
メンタルヘルスを保つ
感染の恐怖、経済損失、将来への不安など気が滅入ることが多くメンタルヘルスを失いやすい状況です。
Stay home(家にいよう)といっても、部屋に閉じこもっていなければならないわけではありません。それではかえって心身の健康を害してしまいます。
太陽光を浴びビタミンDを補給することは心身の健康の為に必要です。許される環境ならば人やクルマの少ないコースを見つけて外にライドに出かけましょう。もし、無理ならば部屋の中でも日光が当たる場所にホームトレーナーを置くのも一案です。
スポーツに取り組むことでストレスを解消したり達成感を味あうことはメンタルを保つのに役立ちます。自身が「走って良かった」と思えるライドをしましょう。
出典:クリスティン・ディフェンバック
(ウエストバージニア大学准教授 メンタルトレーナー PCGコーチ USACスタッフ)
バイクをメンテンナスする
アシュビルではクルマの修理工場やバイクショップは人々の生活の維持のために営業停止になっていません。
コロナウイルス影響下でも運動を維持するためにちょっとしたメンテナンスなどは今しておきましょう。バイクを整備しておくことはコロナ影響下でも運動を継続するために必要です。
またバーテープ・チェーン・ブレーキシュー・各オイルなどの消耗品の予備がなければ今のうちに入手しておきましょう。買い占めすることは避けなければなりませんが、1−2ヶ月はライドを継続できる程度は必要だと思います。
身体のケア
適度なトレーニングは免疫力を上げ、激し過ぎるトレーニングは免疫力を下げます。トレーニング量を調整すると共にストレッチ・マッサージを行い、栄養摂取や睡眠に気をつけてオーバートレーニングならないようにしましょう。心身の疲れを回復させる一番の方法は睡眠です。 もし在宅勤務に切り替わったのなら通勤時間が減った分、睡眠時間を延ばすことが可能なはずです。
ニュートリションを勉強して、自炊のバリエーションを増やすのもいいでしょう。
学習する
レースや自転車イベントが無い今、週末は時間に余裕が出来ると思います。この時間を利用してトレーニングや栄養の本を読みましょう。
この難局を乗り越える手助けになれば嬉しいです。
Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志
www.peakscoachinggroup.jp/
編集部では“RideSolo”(ライドソロ)をお薦めします
世界中で「ロックアウト(都市封鎖)していない自転車に乗れる国や地域」では、社会的距離をとるために「一人で走る“#RideSolo”(ライドソロ)」が、感染拡大を防ぎつつ健康的に欠かせない運動として自転車に乗る上でキーワードとなる。
もはやいまの日本のように表を走れることは奇跡的な状況といえる。シンガポールでは間隔20mがルール化という厳しい事態にまで追い込まれているが、もちろんこうした強制は望ましい状況ではないし、避けないといけない。
この先、各国、地域ごとの事情。そして刻一刻と変化すると状況は変化する。さらにそれぞれ置かれた立場が異なるのでこの“ライドソロ”がいつまでベターな方法かはわからない。今現在(4月13日)、編集部では感染が広がりつつつある地域でできることは、集団ではなく、一人で安全に自転車に乗ることだと考えている。
ただし、これは自主的なもので、決して他人に強要したり非難するものではない。あくまでも安全で、健康的に自分たちが走り続けられる環境を維持するために、自分たちができる行動をしようというものだ。
最後に、基本は健康で安全であること。住んでいる国や地域の自治体からの要請、指示に従うことが前提であることをあらかじめ付け加えさせていただきたい。編集部でもひきつづき#RideSoloをキーワードにヒントとなる情報をアップデートしていく。
※新型コロナウイルス(COVID-19)に関する最新情報は 厚生労働省 や 首相官邸、お住まいの各自治体など公的機関の情報でお確かめください。
参照
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html
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