CIPOLLINI・BOND 2【ハシケンのロードバイクエクスプローラー】
ハシケン
- 2020年07月11日
走れるサイクルジャーナリスト・ハシケンによる100kmインプレッション連載。
気になる最新のフラッグシップモデル1台を徹底的に掘り下げて紹介。
今月は、完全メイド・イン・イタリーのチポッリーニから登場した「ボンド2」の
テクノロジーからライドフィールまでを徹底的に明らかにする。
スーパーマリオが手がける新型はイタリアンバイク復権の狼煙
自転車界の革命児と騒がれてから20年以上。常識を覆すテクノロジーに対して物議を醸しながら、それが革新的な技術だったこプロ通算勝利数は189勝。イタリアが生んだ稀代の名スプリンターこと、マリオ・チポッリーニは、そのパワフルなスプリント力と風貌から「ライオンキング」や「スーパーマリオ」の異名を持つ。
1990年代から大活躍し、地元のジロ・デ・イタリアで重ねた区間勝利数42は、歴代最多。ツール・ド・フランスでも区間通算12勝をあげた。そんなイタリアの国民的スターが立ち上げたバイクブランドこそ、自身の名を冠したチポッリーニだ。
2011年にブランドを興すと、彼が掲げたコンセプトはコンマを争う世界で戦ってきた彼らしく明確なものだった。どのようなシーンでもペダリングパワーをロスなく推進力に変えるバイクづくり。彼はそれを理想とした。
そして生まれた処女作がエアロダイナミクスを突き詰めたRB1000だった。そのフレームワークからは、イタリアの伊達男として注目を集めたチポッリーニらしくアグレッシブさと艶かしさがにじみ出ていた。
そして、同ブランドの最大のこだわりが、メイド・イン・イタリーだ。設計からフレーム成形、ペイント、組み付けまですべての工程をイタリア国内で完結させるこだわりをもつ。
今月は、そんなイタリアンブランドが送る最新モデル、ボンド2のインプレッションをお届けする。
TECHNOLOGY 【テクノロジー詳細】
チポッリーニの最新鋭モデルが軽量オールラウンダーとして開発されたボンド2。
完全イタリアンメイドにこだわったハイエンドレーサーに宿るテクノロジーに迫っていく
軽さと振動吸収性に磨きをかけ、最新機構を搭載する意欲作
フルモデルチェンジと呼ぶにふさしい新技術が数多く採用された。まず、カーボン原糸からフレボンド2の製造はすべてイタリア国内で行う。北部のベローナで企画・設計を行い、フレームのレイヤリングやオートクレーブ製法によるフレーム成形はフィレンツェの工場で行う。そして、ピサのペイント工場で仕上げる正真正銘のメイド・イン・イタリーだ。
新型ボンド2は、初代ボンドのオールラウンド性能を継承しつつ、最新のディスクブレーキロードのトレンドが注ぎ込まれた意欲作になっている。
ブランドに共通するペダリングパワーを逃さない高いパワー伝達性の実現を目指し、フレーム素材には東レ製のT800高弾性カーボンを採用し、剛性と軽さを追求。カーボンのレイヤリングも再構築することでディスクブレーキモデルで1020g を実現。
そして、ダウンチューブからBB、そしてチェーンステーにかけたパワーラインはエッジをきかせたマッシブなチューブ設計により、パワー伝達性を高める。また、BBには大径を特徴とするBB386エボを採用し、ペダリングパワーを最大化。
いっぽうで、シートステーには独特の弓なり形状を表現する「クロス・ボウ・ファンクション」を採用し、路面からの振動を吸収し、路面追従性を高める設計だ。
レジェンドレーサーが送る完全イタリアンバイク
レーシーなポジションを取れて安定感を生み出すヘッドチューブ
フレームと一体感を生むディスクブレーキ専用フォーク
エアフローを研究して誕生した逆三角ダウンチューブ
コンパクトなリアバックは振動吸収性も高める
標準的な28mm幅のタイヤクリアランス
オフセット量は標準15mmのほかに0mmも用意
大径BBを特徴とするBB386エボを採用
専用ボトルケージが標準装備される
GEOMETRY
100km IMPRESSION 【100km徹底乗り込みインプレッション】
より速く、より快適に! 実走派ライター・ハシケンが
チポリーニの万能レーシングロード「ボンド2」とともに100kmライドへ。
トレンドの機構を搭載したイタリアンレーサーを徹底的にインプレッション
閃光の如く路面を滑走しダイレクトな路面コンタクトが安心感を与える
情報過多な時代だが、インプレッションは前情報なくまっさらなフィールドの上へ走り出したいというのが本音だ。チポッリーニのブランドに対する前情報は、乗りこなせないレベルの剛性感……。そんなことがあるのか!?
今回のバイクはオールラウンドバイクとして開発されたボンド2だ。ブランドイメージをリセットさせるべくボンド2を丘陵地帯へ向けて走り出した。
踏み出しからタイムラグのない推進力に乗って路面を滑走しだす。ペダリングフィールはズッシリとした剛性感ではなく、やや乾いた軽い感覚さえあり、上質に感じられた。
そして、リズミカルにトルクを高めていくと、一瞬グッとかかりのよさを感じると同時に期待以上の伸びを生み出していく。かけたパワーに対するスピード到達点がとても高く、走り出しからワクワクさせてくれる。
ウォーミングアップもほどほどに、高負荷域や下り基調のコーナーなどシチュエーションを変えながら走り続けていく。
ボンド2は、フロントまわりの剛性がバランスよくまとまっている印象。ディスクブレーキ機構によるエンド剛性の高さも相まって路面コンタクトはダイレクト。
それはダッシュやロングスプリントをかけるシーンでより顕著に表れ、ハイスピード域での安心感は高い。この安定したステアリング性能は、タイトな高速コーナーやハードなダウンヒルで生きてくるものだ。
今回、ボンド2と同時に試乗したMCM(試乗時はホイールをマヴィックのチューブレスで統一した)と比較するとヘッド剛性の落ち着き感はボンド2のほうが上に感じられ、クセが少なく万人に受け入れられると感じた。
ひととおりライドを終えて感じることは、ハイスピード域のほうが性能を生かせる印象だが、推進力を得やすい性能を生かして、山にも積極的に走りに行きたくなる。まさにマリオ・チポッリーニが理想とするオールラウンドレーサーに仕上がっている。
確かに、ボンド2の剛性レベルは高いレベルにあり、フレームにも芯の強さを感じる。新興ブランドではあるが、その性能はすでに高いレベルに達している。ここだけの話として、同郷ブランドのトップモデル、ピナレロ・ドグマにも似た世界観を有している印象を持った。
さて、ボンド2は、機械式、電動式、無線式のあらゆるコンポーネントに対応する。
現在、最先端のディスクブレーキロードの多くは、シフトケーブルの内装化がトレンドになっているため、ボンド2のフレームがもつ圧倒的な機能美を生かすために、個人的には無線式コンポーネントとステム一体型エアロハンドルでアッセンブルさせて美しさを追求したい。
エッジをきかせつつも湾曲したフレームワークを融合した姿は、まさにイタリアンバイクそのもの。ホワイトベースのなかに、やや青みがかったクリスタルな輝きを放つペイントも高級感を演出し、ライダーの心を躍らせてくれる。所有欲も満たしてくれるイタリアンレーサーだ。
INFO
チポッリーニ/ボンドツー
フレームセット価格:41万8000円(税抜/ディスクブレーキ仕様)、39万8000円(税抜/リムブレーキ仕様)
■フレーム:T800カーボン+3K
■フォーク:T800カーボン+3K
■サイズ:XS、S、M、L、XL
■カラー:カーボン
■フレーム重量:1020g(Mサイズ・ディスクブレーキ仕様)
■試乗車参考実測重量:8.1kg(サイズM・ペダルなし)
問:ワイ・インターナショナル www.cipollini.jp
ハシケンのロードバイクエクスプローラーの記事はコチラから。
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