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知識の習得【革命を起こしたいと君は言う……】

ロウ付けで大切なこと

同じパイプと寸法でフレームを製作した場合、違いを生み出すキモはパイプの接合方法となる。

接合方法はTIG、ロウ付け、接着、圧着などさまざまな方法があるが、スチールフレームの場合ロウ付けがもっとも歴史のある接合方法だ。

われわれの得意とするロウ付けでも多くの方法が存在し、それにより乗り味も変わる。炙る範囲や時間によっても材料に与える影響は変わってくる。どの順番でロウ付けするか。炎の強さや種類などによっても変わる。

もっとも大事にしていることは、どの製品も偏らない方法だ。時間も測り、最善と思われる方法でコンスタントにロウ付けをすることを目標としている。

そのうえでパイプ、寸法の性能だけでクリアに話せる環境作りが、いいフレームへの近道だ。

銀ロウ付け

その工程で大きく悩んだことがある。長年使っていたロウ材の変更を考えたときだ。

ロウは大きく分けて真しんちゅう鍮ロウと銀ロウの2択となる。当時日本のフレームビルダーのほとんどは真鍮ロウ材を使っていた。イタリアやフランスは真鍮がメインで、それが日本ビルダーのお手本となっているので当然だ。

アメリカビルダーの多くは銀ロウを使うケースが多い。不思議に思っていろいろ調べるうちに多くのメリットに気付かされた。

単純な利点は、溶接温度が格段に低く素材を傷めず、パイプの歪みがほとんど発生しないことだ。数値的には強度も強い。

しかし値段はべらぼうに高く、長年培ってきた技術とも異なるので導入は一筋縄にはいかない。しかし、いい物を作りたい欲求を抑えられず、銀ロウにシフトしよう!と意気込んだ。

強度や硬さ、もちろん性能も変わるので心配はつきない。いろいろなロウ材を買い集め試しては試験をし、さまざまな条件を試した。サンプルを作り強度試験に出したり、社内で実験をしたりとありとあらゆることをしたが、心配はつきない。性能はともかく、破断の心配などもつきまとう。

当時、自転車の格闘技といわれるサイクルサッカー車も多く作っており、強度実験も兼ね、ナショナルチーム協力のもと、銀ロウかつロウも少なめで製作したフレームをいくつか提供した。結果はどれも壊れず、真鍮ロウと同じだった。サイクルサッカーで通用すればまずはクリアだ。

ロウ材の種類、量、時間などあらゆる条件での強度実験。TCDで1000件のデータが蓄積

第一人者

あとは各素材と相性のいい物を見つけなければならない。各パイプの成分に最適な銀ロウを求め、多くのロウ材メーカーに話を聞いたり、溶接組合や試験場に問い合わせをした。しかし、満足のいく答えはもらえず、悶々していた。

そんなとき、金属素材の研究をしている大学教授が来店したので、思いをぶつけてみると、その教授は「そうなってくると今野さんがその分野の第一人者なのではと思います」と言った。

たしかに。そこで私の悩みもふっきれた。自転車という特殊な形態で世界中のパイプで試験し特異な環境下で実験を繰り返し、使ったロウ材も数え切れず。

ここまでやっている人間が居なくて悩んでいただけで、すでに私がいて、そうこうやって専門分野での知識を習得していた。

知識を得たいとき、自分と同じ境遇の人がいないか確認する。

いれば勉強させてもらえればいいのだが、なかなかいないしそう簡単には教えてくれない場合も多い。また教えてもらった技術をくりかえすことは、その枠を超えられないことにつながる。

自身で必要な情報は、楽をせずに、自分で研究する姿勢が最も大事だ。すぐに答えが出る技術は誰でも知っていることで肥やしにはならない。経験と姿勢こそが財産なのかもしれない。

TCDカリキュラム

この経験を自転車専門学校にも取り入れた。時間など、細かく学生に材料や条件を指定し、レポートを提出してもらう。実験をした学生にとっては、かけがえのない体験にもなっている。毎年やっているが、いろいろな結果に驚くこともあり、私もさらにロウについての知識を深めている。

日本ではほとんどのビルダーが使ってなかった銀ロウに興味を持ち、右も左もわからず、調べて来た。今のように海外の情報が簡単に手に入る時代ではなかった。

今は大きな声で言える。「自転車フレームの銀ロウ付けなら、私がなんでもお答えします!」と。

JISの強度試験などを校内で再現出来る環境を作り、学生らが意欲的に実験に取り組む

Cherubim Master Builder
今野真一

東京・町田にある工房「今野製作所」のマスタービルダー。ハンドメイドの人気ブランド「ケルビム」を率いるカリスマ。北米ハンドメイド自転車ショーなどで数々のグランプリを獲得。人気を不動のものにしている
今野製作所(CHERUBIM)

 

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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