冬場にロード選手も使うフィクスドギヤの魅力【革命を起こしたいと君は言う……】
Bicycle Club編集部
- 2021年01月30日
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美しいペダリング
私が競技に取り組んでいた80〜90年代ごろ、ロード選手の冬場トレーニングの定番はフィクスドギヤでした。
エンドは現在主流のストレートエンドではなく多少のチェーンテンションがとれる構造でハブを多少改造すれば簡単にフィクスド仕様に改造できた。
それで冬はひたすらLSD(ロングスローディスタンス)トレーニングを行うのが一般的だった。ペダリングがもっともきれいなツール勝者といわれるジャック・アンクティルは、シーズンオフにはペダリング矯正のためにフィクスドギヤで練習していたという。
その流れもあり欧州のジュニアレースは、ほとんどの場合がフィクスドギヤで行われる。幼少期からキレイなペダリングをマスターする意味が込められている。また上限ギヤも制限されており、ジュニアのヒザを守る風習も根付いている。「伝達ロスの少なさ」もフィクスドギヤの魅力だ。あらゆる面でムダな力を使わずにペダルを回せるペダリング効率のよさがある。
私が思うにフリーの利点は「変速が可能なこと」「下りやコーナーでペダルが止められる」ことだ。それ以外で考えればフィクスドギアの方がほとんどにおいて勝っている。
その証拠に変速機が発明された以後でも公道の平地TTなどではフィクスドギヤの記録が多く目立つ。現在トラック競技ではフィクスドギヤ使用がルールとなっているが、規制前でもギヤ付きのフリーでトラック競技に出る選手はいないはず。
大ギアでのゼロ発進という致命的なタイムロスがあってでもフィクスドギヤが最速だ。
ピストブーム
2000年代初頭、英国のメッセンジャーが火種となりNYを経由し遅れて東京にブームが到来した。ノーブレーキなる違法行為が多かったことなどからマスコミも多く取り上げ、2013年には道路交通法も改正されるまでに至った。そしてブームは去った。
しかし法を守り純粋にペダルをこぐことに夢中になり、まじめに自転車と接する若者も多くいた。今まで接点のなかったタイプの異なる若者が自転車界に加わり、新たな風が吹き込まれた時期なのかもしれない。
ブームが終わって
当時都内に多くあったピストショップは今はほとんどなくなった。ブームは終息したが彼らはどこへ行ったのか。
先日バイクロアというイベントに行ってきた。そこに彼らがいた。ブームのときは、自転車界の右も左も分からずに、がむしゃらにフィクスドギアをこいでいた人たちだ。
いまではイベントの開催&運営をしている。つまり自転車の伝道師だ。今でも立派にショップ運営を続け影響力があるまでになった人物もいた。
あのブームで自転車に乗り、競輪選手になったり、ビルダーへ成長した者もいる。去った者も多くいるが、残った者が立派な足跡を残していることを肌で感じた一日だった。
フィクスドギヤの魅力
端的にいえば自転車の魅力は「ペダルをこぎ前へ進む」こと。それをもっともダイレクトに感じられるのがフィクスドギヤだ。ほかでは味わえない。
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PROFILE
Bicycle Club編集部
ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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