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元プロ選手の自転車人生とともにある国士峠|おすすめヒルクライムスポット

著名サイクリストがお気に入りの峠を紹介。「いったいなぜ自分がその峠を好きなのか」を存分に語ってもらった。今回は静岡県にある「国士峠」の魅力を、元プロロード選手の平塚吉光さんに聞いてみた。

23年間走ってきたマイナー峠

僕のおすすめの峠は伊豆市にある国士峠です。旧中伊豆町〜旧天城湯ヶ島町に位置し、標高は約500m。山岳の多いこのエリアで一番ゆるめの峠といえるでしょう。全国的にはとてもマイナーですが、地元のサイクリストにはそのゆるさでわりと有名です。

さて、国士峠はほかの人が紹介する峠とはちょっとお薦めする理由が異なると思います。というのはこの峠にはすばらしい景色や、大きな獲得標高があるわけではありません。雨のあとは道に枝や葉っぱが残るような峠で、頂上にも看板があるだけ。見晴らしもさほどよくありません。

それでもごく個人的なお薦め峠として推せるのは、自分が小学校4年生から走っている峠であり、もはや人生で何回上っているかわからないほど慣れ親しんだ峠だから。おそらく軽く500回は超えているのではないでしょうか?

僕の自転車人生と国士峠のつきあいはほんとうに長く、だいたい23年間くらい(笑)。ただ人生のそのときどきによって峠との付き合い方や感じ方は変わってきていますね。子ども〜高校生のころは単に走って楽しむ場所として近所にあり、平坦路から少し上るような「流せるルート」として組み込んでいました。

2015年以降のプロ選手時代は、ロード選手としてあらためて走る場所を真剣に考え始めていて、とくに気温や日なた・日陰に注目した結果「国士峠は夏も日陰が多く涼しいし、冬は吹き付ける強風を林が遮って寒さも感じにくい。アウターで上れるような3〜4級山岳なのに勾配の変化があり、さまざまな走り方の練習もできるぞ」と気づき、活用の幅が一気に広がりました! 選手生活ラスト3年間で100回近くは上っていますね。

選手時代にいつでも走れる場所として、国士峠を上り続けてきた平塚さん。薄暗い林のなかだからこそ、夏でも冬でも快適に走れる。クルマも非常に少なく走りに集中できる

そして選手をやめた今、国士峠は自分の身体が重くなっても安心して上れる場所になってくれました(笑)。その安心感があるので、宿に来てくれたお客さんを案内することもあります。初級者〜中級者にオススメできる峠ですが、いっぽうでサイクリングに慣れ親しんだお客さんにも薦めています。「みんなが知っている有名な峠じゃなくて、もっと新たな発見や刺激が欲しい」という要望に答えてくれるという点で非常に優秀で、ベストな峠だと思っています。一年中いつでも走れるというのが特徴ですが、やはり伊豆全体の気候としては、春先と秋が走りやすくきれいですね。

マイナーな国士峠ですが、誇れるところもあります。峠の途中に日本最大級のワサビ田があることです。この地域は昔から地下からの湧水量が非常に豊富で、さらに水温もワサビの生育に適しています。ふつうワサビ田はポツポツと配置される小規模なものが一般的ですが、棚田のように並んだ風景はなかなか見られません。白く小さなワサビの花が咲く4月もレアでオススメです。

県道59号、伊東西伊豆線が国士峠越えのルートとなる。看板の汚れ具合を見てもわかるとおり、けっしてメジャーな峠ではない
峠の途中、静謐な林のなかに現れるワサビ田。ワサビの棚田というのは日本全国でもかなり珍しく、じつはレアな景色。ホテルや料亭で出されるような高級なワサビが育てられている
「峠の脇道にはまだ見ぬグラベルロードやきれいな景色がありそう」! 平塚さんは国士峠の新たな魅力を今も開拓中だ。走りに行くときはぜひアドバイスを受けてから走ってみたい
頂上はとくに景色が開けているわけではなく、この看板があるのみ。「数年前に新しくなったんですよ」と平塚さん。天気がよければ木々の合間から富士山が見えることもあるそうだ

思い出ですか? うーん、ほんとうに子どものころから国士峠を上っていますからね。あまりに昔すぎて、もはやそのころのことは覚えていないです(笑)。でも上っているときは今も昔も「つらい!」という感覚です。これにはふたつの意味があって。選手時代はメニューをこなすため強度を上げるからつらい。今は選手時代と比較して上れなくなったのでつらい(笑)。でも自分にとって「山を上ることのつらさ」は全然苦ではないですね。やっぱり好きだから。今はとくに楽しめているかな?

僕が考えるに「峠=厳しい=すばらしい」ではないのかな?と思っています。伊豆には西伊豆スカイラインや戸田峠など美しい景観をもったきつい道や峠はいくつもあります。でもそれが「すべての人にいい」というわけではない。それを証明してくれたのがこの国士峠です。23年間走り続けているので間違いないです(笑)。

峠から少し離れた場所だが、平塚さんオススメの補給ポイントは明徳表参道入口にあるやきもち・くさもちの販売所
名物の「ヨモギ饅頭」は本物のヨモギを用いた甘さ控えめの逸品
平塚さんが務めるコナステイ伊豆長岡。伊豆のリゾート拠点として積極的にスポーツ自転車を活用しているホテル。TOKYO2020のMTB海外選手も宿泊!

国士峠

距離:4.8km
平均勾配:5.0%
標高差:310m
スタート地点:湯ヶ島交差点 208m
ゴール地点:国士峠頂上看板 518m

教えてくれた人

コナステイ伊豆長岡 平塚吉光さん

静岡県沼津市出身。高校卒業後のプロロード選手時代を経て、2020年から伊豆の国市にあるホテル、コナステイ伊豆長岡のスタッフに。ホテル業務に加え、レンタサイクルの貸し出しや整備、ツアーガイド、トレーニング帯同、簡易コーチングなどを行う。

※この記事はBiCYCLE CLUB[2021年12月号 No.440]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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