ツール・ド・フランスでポガチャルが使用する謎のバイク「コルナゴ・プロトティポ」
福光俊介
- 2022年07月19日
日々激戦が展開されているツール・ド・フランス2022。大会はいよいよ第3週を迎えようとしている(本記執筆時点)。この先の注目は、何といってもマイヨジョーヌ着用中のヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)とタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)との首位攻防戦。昨年とは異なり、追う立場として最終週を迎えるポガチャルがどう攻撃を仕掛けるのか注目だ。
そんな彼の戦いぶりもさることながら、このツールで跨っているバイクにも世界の目が注がれている。この大会で本格デビューを果たし、今後市場に出ることが濃厚なコルナゴのニューバイクに迫ってみよう。
コルナゴ・プロトティポ
この夏、コルナゴ社が送り出したニューバイク。その名は“Prototipo(プロトティポ)”。これは商品名ではなく、同社がテストしているプロトタイプ5種のうちの1つとされている。同社のバイクを使うUAEチームエミレーツ所属選手などのフィードバックを取り入れながら、最終的には5種類を1台の完成形に持ち込む見通しだという。市販化する際は、既存の軽量エアロレースバイク「V3-RS」後継のV4-RSとなる予定だ。
過去2年のツールでポガチャルは、バイクチョイスを大幅に変えてきた。初優勝した2020年はほとんどのステージでリムブレーキモデルに跨り、平坦ステージに限定してディスクブレーキモデルを選択。昨年は大多数のステージでディスクを選び、山岳ではリムで走った。
そして今大会。ここまではすべてプロトティポでレースを走っており、仮に全21ステージをこのバイクで走り抜き、マイヨジョーヌを獲得したら、ツール史上初めてディスクブレーキモデルで走破して勝った選手となる。
ご覧いただく写真は、マイヨジョーヌ着用の日とマイヨブラン着用の日とで撮影日がまたがっていることからバーテープのカラーが異なるが、バイクそのものは同じ。
特筆に値するのは、ダウンチューブの形状。パッと見た感じでは分かりにくいが、ボトルケージ装着部分がわずかに沈んでおり、これによってボトルとケージがフレームにぴったりと収まるよう作られている。
フォークのクリアランスも良く、パヴェを走った第5ステージでポガチャルは30cのタイヤで臨んでいるが、問題は起きなかった様子。普段は26cを装着しているが、かなりの余裕があると感じられる。
また、このモデルはディスクブレーキのみであることも分かっている。
レースで使うバイクはいずれもUCIの承認が必要だが、このモデルについてはプロトタイプ製品であることを示すステッカーが貼られている。プロトタイプとして承認を得たものについては、UCI規定により承認から12カ月以内に商品化することが義務付けられている。
その他の機材では、他のメンバーと同様にカンパニョーロ・スーパーレコードEPSが装着されるほか、クランク長は172.5mm、タイヤはピレリ・Pゼロレース、ペダルはルック・Keo Blade Carbon、ボトルケージはエリート・レジェロカーボン、サドルはプロロゴ・スクラッチM5のポガチャルシグネチャーシリーズを使っている。
コルナゴのWEBサイト
https://www.colnago.com/
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。